聖女は王子たちを完全スルーして、呪われ大公に強引求婚します!

葵 すみれ

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38.操られていた従者2

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「できましたわ」

 シルヴィアは穏やかに微笑み、手を合わせて微笑んだ。
 そんな彼女を見て、マテウスとロイドは思わず感嘆の息を吐く。

「すげえな、シルヴィア。本当に呪印を解除できちまったよ」

「はい……まさかこれほどとは……」

 マテウスとロイドがシルヴィアを褒め称えていると、従者の一人がゆっくりと目を開けた。そして、周囲を見渡して呆然としている。

「あれ……? ここは……?」

「よう、起きたか」

 マテウスが従者に声をかけると、彼は驚いたように目を見開く。

「あ、あなたは……!?」

「おう、さっきはよくもやってくれたな」

 マテウスがニヤリと笑みを浮かべると、従者は怯えたように後ずさる。
 しかし、すぐにハッとした表情を浮かべ、シルヴィアに縋りついた。

「聖女さま! 助けてください! 私たちは騙されていたのです!」

 その言葉に反応してか、他の従者たちも一斉にシルヴィアの元へ集まってきた。そして口々に助けてくれと言い始める。
 そんな彼らを見て、シルヴィアは微笑みながら口を開いた。

「大丈夫ですわ。落ち着いてください」

 シルヴィアが声をかけると、従者たちは安心したように落ち着きを取り戻す。

「まずは、あなた方の怪我を治しましょう」

 そう言ってシルヴィアは両手を前に掲げる。
 すると、従者たちの傷がみるみるうちに塞がっていった。

「おお……!」

 従者たちは感嘆の声を上げ、シルヴィアに尊敬のまなざしを向ける。
 彼らに向かって、シルヴィアは優しく微笑みかけた。

「さあ、これでもう大丈夫ですわ」

「ありがとうございます! 聖女さま!」

 従者たちが一斉に頭を下げると、マテウスが呆れたようにため息をついた。そして、口を開く。

「おいお前ら……まだ終わったわけじゃねえんだぞ? わかってるのか?」

 マテウスの言葉に、従者たちはハッとした表情を浮かべた。そして、慌てて姿勢を正す。

「も、申し訳ございません! しかし……」

 従者の一人が言いかけたところで、マテウスはギロリと睨みつけた。
 その眼光の鋭さに従者たちは黙り込む。
 少し呆れながら、シルヴィアは穏やかな口調で語りかける。

「皆さんのお気持ちは分かりますわ。ですが、まずは落ち着いてくださいな」

 シルヴィアが優しく諭すように言うと、従者たちは落ち着きを取り戻したようだった。

「マテウスさま、この方たちが怯えるような真似はお控えくださいませ」

 シルヴィアはマテウスに向き直ると、諭すように言った。
 その口調は穏やかで柔らかいものだったが、有無を言わさぬ迫力がある。

「お、おう……すまん……」

 マテウスは素直に謝ると、従者たちに向き直る。

「で、お前たちを操っていた神官はどこにいる?」

 マテウスが尋ねると、従者たちは顔を見合わせる。そして、おずおずと口を開いた。

「それが……わからないのです」

「わからない? どういうことだ?」

 マテウスが眉をひそめると、従者の一人が説明を始めた。

「実は……私たちも精神支配を受けている間は、意識が曖昧でして……」

「ほう?」

「あの神官に術をかけられた後は、ずっと夢の中にいたような感覚でした」

 従者がそう言うと、マテウスとロイドは顔を見合わせた。

「つまり、あの神官に術をかけられたことは覚えてるが、その間のことは記憶に残ってないってことか?」

 マテウスの言葉に従者たちは頷く。

「はい……ですので、私たちが覚えているのは、ぼんやりとした記憶だけです。どこか洞窟……いえ、遺跡でしょうか……そういった場所を探索していた気がするのですが……」

「それと、あなたに殴られたことは、なんとなく覚えてます」

 従者の一人がおずおずと言った。
 すると、マテウスは眉根を寄せる。
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