聖女は王子たちを完全スルーして、呪われ大公に強引求婚します!

葵 すみれ

文字の大きさ
48 / 93

48.聖女の祝福1

しおりを挟む
 シルヴィアは翌日、早速行動に移すことにした。
 街の広場で、シルヴィアが神託を受けたことを宣言すれば、多くの人たちに伝わるはずだ。
 そして、この辺境の地でも育つ作物を祝福し、神からの贈り物であることを皆に知らしめる。
 そうすれば、きっとマテウスの助けになるはずだ。

「マテウスさま、いかがでしょうか?」

 シルヴィアはマテウスの執務室にやってきて、そう提案した。

「いや……まあ、悪くはねえと思うんだけどよ」

 マテウスは難しい表情を浮かべながら腕組みをした。
 シルヴィアは彼の側に歩み寄る。

「何か問題があるのでしょうか?」

「……問題というか……なんというか……」

 歯切れの悪い返事をするマテウスに、シルヴィアは首を傾げる。

「何かあるのなら、遠慮せずにおっしゃってくださいませ」

 マテウスはしばらく迷っていたようだが、やがて口を開いた。

「……あんたが言うんだから、祝福自体は本当にできるんだろう。だが、いきなりそいつをやっちまうと、おそらく神殿の連中は面白くないと思うんだ」

「え、どうしてでしょう?」

 シルヴィアが首を傾げると、マテウスは頭を掻いた。

「……こう言っちゃなんだけど、今まであんたは聖女として、ずっとお飾り扱いされてきただろ? だから、いきなりあんたがしゃしゃり出てくると、奴らは面白くないだろうな」

 マテウスの言葉を聞いて、シルヴィアは考え込む。
 確かに、シルヴィアはこれまで聖女として、神殿の言うことにはおとなしく従ってきた。
 マテウスに嫁ぐために自分を磨くことが重要で、その他のことには無頓着だったのだ。

「なるほど……そういうことでしたのね」

 シルヴィアは納得しながら頷いた。
 これまでは神殿の思惑とシルヴィアのやりたいことが矛盾しなかったため、受け入れていたに過ぎない。
 しかし、神殿としては従順なシルヴィアのことをお飾りの聖女、都合の良い駒と思っているのだろう。

「ああ……やるにしても、もっと根回しをした方がいいだろうな。そうしないと、あんたが神殿から睨まれる可能性がある。あんたをそんな目に遭わせるわけにはいかねえんだ」

 マテウスの言葉に、シルヴィアは胸が温かくなるのを感じた。
 自分のことを真剣に考えてくれていることが嬉しかったのだ。

「ありがとうございます、マテウスさま……でも、わたくしは平気ですわ」

 シルヴィアはマテウスを安心させるように微笑んだ。そして言葉を続ける。

「わたくしは、自分の為したいことをやるだけですわ。それこそ神が示してくれた、わたくしの進む道なのですから」

 シルヴィアは胸を張って答えた。
 マテウスは、そんなシルヴィアの姿を眩しそうに見つめると、大きくため息をつく。

「……わかった。なら、俺も覚悟を決めるぜ」

「マテウスさま?」

「ああ、あんたのやりたいようにやってやろうじゃねえか!」

 そう言って、マテウスはシルヴィアの肩に手を置く。

「ただし、俺も一緒にやるぜ。あんた一人じゃ危なっかしいからな」

 マテウスの言葉にシルヴィアは目を丸くした。

「え……よろしいんですの?」

「当たり前だろ。俺はここの領主だ。あんただけに背負わせるなんて、あり得ねえからな」

 マテウスはそう言うと、シルヴィアに顔を寄せてきた。

「それにな……惚れた女一人守れねえようじゃ、男が廃るってもんだろ?」

 耳元で囁かれて、シルヴィアの顔が熱くなる。
 そんなシルヴィアの様子を見て、マテウスは悪戯っぽく笑った。

「どうした? 真っ赤だぜ?」

「もう……意地悪しないでくださいませ」

 シルヴィアは頬を膨らませながら抗議するが、マテウスは意に介さない。

「何が意地悪だ? 俺はただ、あんたが可愛いと思っただけだぜ?」

 マテウスはそう言ってシルヴィアを抱き寄せる。そして額に口づけを落とした。
 シルヴィアの顔が、ますます熱くなっていく。
 そんなシルヴィアの様子を見て、マテウスは楽しそうに笑った。

「ほらな、やっぱり可愛いじゃねえか」

 マテウスはそう言って、もう一度シルヴィアを抱き寄せた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。 ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。 想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

処理中です...