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76.聖獣1
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「異端審問!? なんであいつが!? あいつは聖女だぞ!?」
予想外の報告に、マテウスは思わず立ち上がった。
「それが……大神官が、シルヴィアさまを聖女として失格だと断じ、異端者として排除しようとしているようなのです……」
ロイドはそう言いながら、手紙を差し出してくる。
「ベアトリクス王女殿下から預かって参りました。急ぎで知らせなければいけないことがあると……」
マテウスは手紙を受け取り、封を切る。そして、中に入っていた便箋に目を落とした。
そこには、大神官が聖女を手駒として不適切と判断したらしいこと、洗脳か排除するために異端審問にかけようとしていること、そしてシルヴィアを救い出すために力を貸してほしいと書かれていた。
「くそっ! ふざけた真似をしやがって……!」
手紙を握りしめた拳を震わせて、マテウスは叫ぶ。
「すぐに王都に向かうぞ! 準備しろ!」
「かしこまりました!」
マテウスの言葉に、ダンが即座に反応する。
「くそっ……猶予はあとどれくらいだ?」
「私も最大限急いで参りましたが……すでにシルヴィアさまは王都に着いているでしょう。マテウスさまが馬を乗り潰して向かったとしても……おそらくは……」
マテウスの問いかけに、ロイドが苦渋に満ちた表情で答える。
「それじゃあ……間に合わねえじゃねえか……!」
マテウスは歯噛みし、拳を握りしめる。
「……いえ、最初の数日間は予備拷問として、軽い拷問で済ませるはずです。ですから、無傷とは言えなくても、命に別状はないかと……」
「そういう問題じゃねえ! あいつが拷問を受けるだと!? そんなの許せるかよ!」
ロイドの言葉に、マテウスは激昂する。
シルヴィアが傷つけられると考えただけで、はらわたが煮えくり返りそうだった。
こんなことになるのなら、どう抗ってでも手放さなければ良かった。
彼女が傷つかないようにと思っての行動が、完全に裏目に出たのだ。
「落ち着いてください、マテウスさま」
マテウスを宥めるように、ダンが肩に手を置く。そして、諭すように言った。
「ここで感情的になってもシルヴィアさまを救うことはできません。冷静に対処いたしましょう」
ダンの言葉に、マテウスは深呼吸して心を落ち着ける。
「……そうだな。俺にできることは、一刻も早くあいつを救い出すことだ。急ごう」
マテウスの言葉に、ダンとロイドは深く頷いた。
「それでは、馬を手配して参ります」
そう言って、ダンが部屋を出ようとする。しかしその時──。
窓から何かが顔をのぞかせた。
「……ティア?」
マテウスは窓から顔を入れている白馬に呼びかける。
すると、ティアは窓の縁に前足をかけて、中に飛び込んできた。そして、何かを訴えかけるように嘶く。
「まさか……お前に乗っていけと言ってるんじゃねえだろうな?」
マテウスの言葉に、ティアは再び嘶いた。
「ははっ……マジかよ……」
冗談のつもりで言ったのだが、まさか本当に通じるとは思いもしなかった。
しかし、今は悩んでいる時間はない。迷っている暇があるなら、行動するべきだ。
「……わかった。お前に任せよう」
マテウスがそう言うと、ティアは嬉しそうに嘶いた。
そして次の瞬間、ティアの体が光に包まれ、その姿が変化していく。
光が収まると、そこには白銀の翼を持った美しい白馬が佇んでいた。
予想外の報告に、マテウスは思わず立ち上がった。
「それが……大神官が、シルヴィアさまを聖女として失格だと断じ、異端者として排除しようとしているようなのです……」
ロイドはそう言いながら、手紙を差し出してくる。
「ベアトリクス王女殿下から預かって参りました。急ぎで知らせなければいけないことがあると……」
マテウスは手紙を受け取り、封を切る。そして、中に入っていた便箋に目を落とした。
そこには、大神官が聖女を手駒として不適切と判断したらしいこと、洗脳か排除するために異端審問にかけようとしていること、そしてシルヴィアを救い出すために力を貸してほしいと書かれていた。
「くそっ! ふざけた真似をしやがって……!」
手紙を握りしめた拳を震わせて、マテウスは叫ぶ。
「すぐに王都に向かうぞ! 準備しろ!」
「かしこまりました!」
マテウスの言葉に、ダンが即座に反応する。
「くそっ……猶予はあとどれくらいだ?」
「私も最大限急いで参りましたが……すでにシルヴィアさまは王都に着いているでしょう。マテウスさまが馬を乗り潰して向かったとしても……おそらくは……」
マテウスの問いかけに、ロイドが苦渋に満ちた表情で答える。
「それじゃあ……間に合わねえじゃねえか……!」
マテウスは歯噛みし、拳を握りしめる。
「……いえ、最初の数日間は予備拷問として、軽い拷問で済ませるはずです。ですから、無傷とは言えなくても、命に別状はないかと……」
「そういう問題じゃねえ! あいつが拷問を受けるだと!? そんなの許せるかよ!」
ロイドの言葉に、マテウスは激昂する。
シルヴィアが傷つけられると考えただけで、はらわたが煮えくり返りそうだった。
こんなことになるのなら、どう抗ってでも手放さなければ良かった。
彼女が傷つかないようにと思っての行動が、完全に裏目に出たのだ。
「落ち着いてください、マテウスさま」
マテウスを宥めるように、ダンが肩に手を置く。そして、諭すように言った。
「ここで感情的になってもシルヴィアさまを救うことはできません。冷静に対処いたしましょう」
ダンの言葉に、マテウスは深呼吸して心を落ち着ける。
「……そうだな。俺にできることは、一刻も早くあいつを救い出すことだ。急ごう」
マテウスの言葉に、ダンとロイドは深く頷いた。
「それでは、馬を手配して参ります」
そう言って、ダンが部屋を出ようとする。しかしその時──。
窓から何かが顔をのぞかせた。
「……ティア?」
マテウスは窓から顔を入れている白馬に呼びかける。
すると、ティアは窓の縁に前足をかけて、中に飛び込んできた。そして、何かを訴えかけるように嘶く。
「まさか……お前に乗っていけと言ってるんじゃねえだろうな?」
マテウスの言葉に、ティアは再び嘶いた。
「ははっ……マジかよ……」
冗談のつもりで言ったのだが、まさか本当に通じるとは思いもしなかった。
しかし、今は悩んでいる時間はない。迷っている暇があるなら、行動するべきだ。
「……わかった。お前に任せよう」
マテウスがそう言うと、ティアは嬉しそうに嘶いた。
そして次の瞬間、ティアの体が光に包まれ、その姿が変化していく。
光が収まると、そこには白銀の翼を持った美しい白馬が佇んでいた。
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