聖女は王子たちを完全スルーして、呪われ大公に強引求婚します!

葵 すみれ

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90.結婚の許し2

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「なんと……それは……」

 国王は驚いたように目を見開く。そして、シルヴィアの方を見つめた。

「聖女シルヴィアよ。そなたはどうしたい?」

 国王の問いかけに、シルヴィアは迷いなく答える。

「わたくしはマテウスさまの妻となれるなら、それ以上に望むものはございません」

 きっぱりと言い切ると、国王は大きく頷いた。

「……よかろう。二人の婚姻を認めよう」

 国王の言葉に、謁見の間にいた者たちが一斉にざわめいた。

「まさか……聖女さまが……」

「あの呪われ……いや、大公閣下と……?」

 口々に囁き合う声が聞こえる。

「まあ、おめでとうございます! 英雄と聖女、とてもお似合いですわ!」

 そのような声を無視して、国王の側に控えていたベアトリクスが嬉しそうに声を上げた。

「マテウスさま、シルヴィアさま。お二人のご結婚を心よりお祝い申し上げます」

 ベアトリクスは満面の笑みを浮かべ、拍手をする。
 すると、それに呼応するように拍手が広がり始めた。やがて謁見の間には割れんばかりの祝福の声が響く。
 ディルクとナイジェルは、苦虫を噛み潰したような顔で俯いている。

「ありがとうございます、国王陛下」

 マテウスは恭しく頭を下げた。シルヴィアもそれに倣う。

「うむ。これからもこの国を頼むぞ」

 国王の言葉に、二人は力強く頷いた。
 謁見が終わり、マテウスとシルヴィアは控えの間へと戻った。
 するとそこに国王とベアトリクスが入ってくる。

「マテウス、聖女シルヴィア。改めて礼を言おう。本当によくやってくれた」

 国王は二人に向かって深々と頭を下げた。
 ベアトリクスもそれに倣い、深く頭を下げる。

「もったいないお言葉です」

 マテウスが答えると、国王はゆっくりと頭を上げた。

「これはおそらく、そなたが思う以上に大きな意味を持っているのだ。神殿からの干渉を防ぎ、王家の権威を守ることができるのだからな。それに……」

 そこで一旦言葉を切ると、国王は苦々しげに続ける。

「最後に残された呪石が、神殿にあったとはな。まったくもって、忌々しいことだ」

 国王は吐き捨てるように言った。そしてそのまま立ち上がると、窓際へと歩み寄る。

「……もっとも、王家も呪石の力を利用していたのだから、あまり人のことは言えないがな。すでに跡形もなくなっているが……マテウス、そなたが幼い頃に幽閉されていた塔があったのを覚えているか?」

 国王の問いかけに、マテウスは頷いた。

「あの塔は、もともと呪石を保管するために建てられたものだった。だが、時を重ねていくうちに忘れられ、呪石がどこにあるのかもわからなくなっていた。そなたが破壊したことによって、ようやく明るみに出たのだ」

「呪石を破壊……?」

 マテウスは首を傾げる。

「ああ、そうだ。そなたが魔力暴走を起こして塔を破壊したことになっているが……実際のところ、呪石を破壊しようとしてそうなったのではないかと、私は思っている」

 国王の言葉に、マテウスは目を見開いた。そして、考えを巡らせるように黙り込む。

「……まあよい、そなたが覚えておらぬのなら、無理に思い出す必要もあるまい」

 国王は苦笑しながら言った。

「かつての王家と神殿の過ちを正してくれたこと、改めて礼を言う。そして、二人のこれからの幸せを願っている」

 国王はマテウスとシルヴィアに向き直ると、再び頭を下げた。そして、ベアトリクスを伴って退出していく。
 マテウスとシルヴィアはその後ろ姿を見送り、扉が閉まると同時に顔を見合わせた。
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