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08.優しい朝に、牙を隠して2
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食堂に入ると、数人の使用人たちが控えていた。
朝の支度に慣れた手付きで動いてはいたが、どこか緊張が残っているのが伝わる。
(なるほど、今朝が初対面というわけですものね)
パメラはそっと息を整えて、花が咲くように微笑んだ。
「おはようございます。こんな朝に、支度をしてくださって……本当に、ありがとうございます」
言葉は柔らかく、けれど真っ直ぐ。
それだけで、ひとりの年配のメイドが目を丸くした。
「まあ……いえ、そんな。こちらこそ……!」
パメラは席に着くと、目の前に並べられた朝食を見つめて、ふわりと頬を緩めた。
「まぁ、なんて贅沢。これほど美味しそうなパン、久しぶりに見ましたわ」
うっとりとしながら、軽く手を叩く。
「このスープも、いい香り……。厨房の方に、お礼を伝えていただけますか?」
自分のために整えられた食卓に、素直に感動してみせる。
それが、最初の一手だった。
最初は控えていた若いメイドたちも、次第に視線を上げるようになり、背筋のこわばりが、少しずつほどけていくのがわかった。
ふと、ひとりの少年召使いが、ナイフとフォークの位置を微調整していることに気づく。
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですわ」
パメラはそっと声をかけて、少年の手元に目を落とした。
「とても丁寧に整えてくださって。……誰に教わったのかしら?」
「えっ……あ、姉に……です。昔、仕えていたお屋敷で……」
「まあ、素敵なお姉さまなのね。きっとご自慢の弟さんだと思いますわ」
言葉はわずかだったが、少年の耳がかすかに赤く染まる。
その様子に、年配のメイドが小さく笑い、まるで空気に温度が灯ったようだった。
(そう。これで、少しずつ)
パメラはナイフを手に取ると、ひと口分だけパンを切った。
口元に運び、微笑む。
「美味しい……本当に、幸せな朝ですわ」
そのひと言が、使用人たちの心に届いたのを、パメラは感じ取っていた。
そして、使用人たちの視線が自然と彼女に集まり始めたその時──レオが黙々と食事を続ける中、パメラはごく自然にその様子へと視線を向けた。
ナイフの動かし方。フォークを口に運ぶ角度。パンのちぎり方まで。
(……やっぱり、あの方は育ちがいい)
粗野に見せかけていても、手先に染みついた作法は嘘をつかない。
けれど、それを表には出さない。
あえて“成り上がり者”でいることで、何かを遠ざけている。
(でも、私は気づいていますわ。──だから、少しずつ近づいてみせます)
朝の光が窓から差し込み、控えめな食卓をあたたかく照らしていた。
そして、使用人たちの中で、ひそやかな囁きが交わされた。
「……お優しい奥さまだな」
「旦那さまも、不器用だけど……あんな方がいれば、きっと」
「奥さまが笑ってくださると、こっちまで嬉しくなるねぇ」
パメラは、そのすべてを“聞こえていないふり”で受け取り、何も知らない顔で、ゆっくりとカップを持ち上げた。
(……まずは、ここから)
静かな朝だった。けれど確かに、この屋敷の空気は──少しだけ変わり始めていた。
朝の支度に慣れた手付きで動いてはいたが、どこか緊張が残っているのが伝わる。
(なるほど、今朝が初対面というわけですものね)
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言葉は柔らかく、けれど真っ直ぐ。
それだけで、ひとりの年配のメイドが目を丸くした。
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うっとりとしながら、軽く手を叩く。
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ふと、ひとりの少年召使いが、ナイフとフォークの位置を微調整していることに気づく。
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですわ」
パメラはそっと声をかけて、少年の手元に目を落とした。
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「えっ……あ、姉に……です。昔、仕えていたお屋敷で……」
「まあ、素敵なお姉さまなのね。きっとご自慢の弟さんだと思いますわ」
言葉はわずかだったが、少年の耳がかすかに赤く染まる。
その様子に、年配のメイドが小さく笑い、まるで空気に温度が灯ったようだった。
(そう。これで、少しずつ)
パメラはナイフを手に取ると、ひと口分だけパンを切った。
口元に運び、微笑む。
「美味しい……本当に、幸せな朝ですわ」
そのひと言が、使用人たちの心に届いたのを、パメラは感じ取っていた。
そして、使用人たちの視線が自然と彼女に集まり始めたその時──レオが黙々と食事を続ける中、パメラはごく自然にその様子へと視線を向けた。
ナイフの動かし方。フォークを口に運ぶ角度。パンのちぎり方まで。
(……やっぱり、あの方は育ちがいい)
粗野に見せかけていても、手先に染みついた作法は嘘をつかない。
けれど、それを表には出さない。
あえて“成り上がり者”でいることで、何かを遠ざけている。
(でも、私は気づいていますわ。──だから、少しずつ近づいてみせます)
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そして、使用人たちの中で、ひそやかな囁きが交わされた。
「……お優しい奥さまだな」
「旦那さまも、不器用だけど……あんな方がいれば、きっと」
「奥さまが笑ってくださると、こっちまで嬉しくなるねぇ」
パメラは、そのすべてを“聞こえていないふり”で受け取り、何も知らない顔で、ゆっくりとカップを持ち上げた。
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