自分で書いた未完のラノベ小説の世界に転生したけどどうしたらいいですか?

黒野 ヒカリ

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No.47

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 サラサ王女の部屋は王族専用になっていてかなり広い。
 部屋にはキッチンやお風呂、トイレも完備していて普通の二DKのマンションである。
 
 それに比べ普通の生徒はお風呂トイレ共同でご飯は食堂で食べる。

 王族が普通の生徒と同じ部屋なのはおかしいと思いそんな設定にしたが、実際に自分の目で見ると不公平である。

 そしてバーゲンもサラサ王女と同じタイプの部屋なのが腹立つ。

 俺はサラサ王女に案内されて部屋の中へ入るとメイドさんがいて、メイドさんに大きなダイニングテーブルに案内された。 

 「ラグーさん、私のお誘いに答えてくれてありがとうございます」

 サラサ王女は今だフードを深く被り顔は見えないが、俺の対面に座り頭を下げた。

 「いえいえ、サラサさんに突然声を掛けて頂いて少し驚きましたが大丈夫ですよ」

 「そう言って頂けると助かります」

 サラサ王女はそう言ってタメ息を吐くと口を開いた。

 「お話と言うのは私の顔の事です」

 「確かにサラサ王女はフードを深く被ってお顔を拝見出来てませんが何か問題でもあるのですか?」

 俺の質問にサラサ王女は大きく息を吐くとフードを下ろした。

 「それは……ビックピグの呪い……」

 「やはり金の冒険者であるラグーさんは知ってましたか……」

 サラサ王女の顔はパンパンに腫れ上がり俺の描いた美貌とはかけ離れていた。

 ビックピグは体長五メートルほどの鋭い牙の生えた豚の魔物でそれほど強くない。
 しかしビックピグは魔法攻撃を受け死に絶えると魔力の乗った叫び声をあげる事がある。

 その叫び声は耳栓をしてても脳に直接響き、体内の魔力を乱れさせる。

 魔力が一度乱れると自力での制御は困難になり魔力が自然に体内で貯まってしまう。

 それが原因で体が膨脹しパンパンに膨れ上がり、上手く魔法が発動しなくなってしまうのだ。

 これをビックピグの呪いと言って冒険者の間でも恐れられている。

 物理攻撃で討伐すれば問題は無いのだが、サラサ王女は魔法で攻撃をしてしまったのだろう。

 「サラサ様は私を守る為にこのようなお姿になられてしまいました……」

 涙を流すメイドさんに「貴女の命が助かったのだから気にしなくていいのよ」と声をかけるサラサ王女は本当に優しいと思った。

 「ラグー様、ビックピグの呪いを治す為に色々手を尽くしましたが見つかりませんでした……」

 メイドさんはそう言って顔を手で覆い隠した。

 ビックピグの呪いは不治の病とされている。
 例えエリクサーを飲んだとしても治らない。
 治すには体の中に貯まった魔力を放出させて、魔力の循環を正常に戻せばいい。
 でもまだ治療法は確立されておらず、それが出来る人はいないとは言わないが本当に魔法を極めたごく少数だろう。しかし俺ならそれが出来る。

 「そうですか……でも手が無い事はありません」

 その瞬間サラサ王女の顔がパァとなった気がした。

 「本当に?本当に本当ですか?」

 治らないと思っていたビックピグの呪いが治ると言われれば詰め寄りたい気持ちは分かるが、それにしても顔が近い。

 「サラサさん、興奮する気持ちは分かりますが少しお顔が近すぎますので少し離れていただけると助かります」

 「私とした事が、失礼しました。少し興奮してしまって……」

 「いえいえ、大丈夫ですよ。その気持ちは分かりますので」

 「そう言っていただけると助かります」
 
 サラサ王女の顔はパンパンに腫れ上がり表情はよく分からないが照れてるように見え何故か可愛く思えた。

 「ラグー様、本当にサラサ様は治るのですか?」
 
 メイドさんは自分のせいでサラサ王女がビッグピグの呪いにかかってしまって負い目を感じていたのだろう、心の重りが取れた様に安堵した表情を浮かべた。

 「治りますよ。安心して下さい。それでは治療を始めますのでサラサさんお手を」

 俺はサラサ王女の両手を握ると自分の魔力をサラサ王女に流して行く。

 「何か体がポカポカして来ましたわ」

 サラサ王女の言葉に頷くと俺はサラサ王女の体に貯まった魔力に自分の魔力をぶつけ壊していった。

 そしてサラサ王女の体に貯まった魔力を全ての無くすとパンパンに腫れ上がったサラサ王女の顔が元に戻り、本来の美貌が姿を現した。

 猫目の二重瞼にパープルの大きな瞳が黒髪のロングヘアーによく似合った本当に美少女だった。

 「サラサ様……お美しい……本当に良かった……」

 メイドさんは元の姿に戻ったサラサ王女の姿 を見て涙しているがまだ治療が終わった訳ではない。
 俺はサラサ王女に再び魔力を流し込み、乱れた体内の魔力を正常になるまで循環させた。

 そして十分程魔力を循環させた所でサラサ王女の乱れた魔力が正常に循環したのを感じた俺は、魔力を流し込むのをやめた。

 「ふぅ、サラサ王女完了しました。試しに魔力操作をしてみて下さい」

 サラサ王女は頷くと魔力操作を始めた。 

 「す凄いわ!魔力が魔力操作が出来るようになりましたわ!」

 「サラサ様ーー!」

 涙を流しメイドさんは叫ぶとサラサ王女に抱きついた。

 「本当に…良かった…」

 「負い目を感じてる貴女を見るのが本当に辛かった…」

 二人は抱き合い涙している。
 俺は邪魔だろう。ここは帰るとしよう。

 「それではサラサさん、僕はこれで失礼します。しばらくは魔法の使用は控えて魔力操作をして慣らしていって下さい」

 「ラグーさん、本当にありがとうございました。このご恩は忘れません…そしてお礼は必ず……」

 「いえいえ、お礼は結構ですよ。本当に綺麗なお姿になられて良かったです。それでは」

 俺は涙を流し抱き合う二人にお辞儀をして部屋を出た。
 サラサ王女がブツブツ何かを言っていたが聞こえなかった。嬉し過ぎてぼやいていたんだろう。

 「それにしてもビックピグの呪いか…」

 サラサ王女がビックピグの呪いにかかるイベントはあった。
 しかしそれは一ヶ月後にある実戦研修でクラスメイトを守る為に変わりにかかるのだ。

 そしてラミラスがサラサ王女の為に一ヶ月かけて治療法を見つけ出し、治してしまうのだがはたして俺が治して良かったのか?
 色々と物語が狂って来てると思う。
 
 俺がこの世界に来てしまった影響なのかは分からないが俺は前に進むしかない。

 それにしても少し疲れた。
 サラサ王女の魔力が想像以上に多かった為に魔力を思ったより使いすぎた。

 「さっさと帰って寝よう……」

 女子寮を出てすっかり暗くなった男子寮への道を歩いていると、ウロウロとするメイさんを見つけ声を掛けた。

 「メイさんこんばんは、こんな所で何をしてるんですか?」

 「ラグー様、お探ししておりました。パメラ様が、パメラ様が!」

 こんなに慌てているメイさんは珍しい。
 俺は何かあったとすぐに分かった。

 「メイさん!落ち着いて下さい!パメラ様がどうしたんですか?」

 「パメラ様がバーゲン様のお部屋に行かれてからまだお戻りになりません!」

 「えっ!?」

 俺は全身から血の気が引いていくのを感じた。
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