私は猫

黒野 ヒカリ

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私は猫

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 私は猫、

 名前はまだない……

 なんてね!

 有名な小説の真似をしてみたけど名前はあるんだよ。

 『ミー子』って変な名前だけどね。

 私を拾ってくれた亜矢ちゃんが付けてくれた名前だから文句は言えないけど……

 そんな事より私の事、変な猫だと思ってない?思っているよね?

 しょうがないからちょっとだけ私の事を教えてあげるね。

 私はいわゆる…転生者

 忘れもしない、あれは二十四歳の春!突然胸が苦しくなって気を失った。そして気がついたら猫だったんだよね。しかもダンボールの中

 そこにたまたま通りかかった亜矢ちゃんが拾ってくれたお陰で今があるわけで…本当に感謝だよ。

 なになに?うん、
 気がついたら猫でなんでこんなに明るいのかって?それにもお答えしましょう。

 猫になってかれこれ五年、そんだけ猫やってれば開き直りもするってもんよ!とほほっ

 私を拾ってくれた時は中学生だった亜矢ちゃんも高校生になって最近すごく綺麗になった。
 だから悪い男が寄ってこないか少し心配なんだよね…
 ほら、男って狼じゃん?
 まぁ私は猫なんだけどね笑

 「ただいまー」

 噂をすればなんとやら、亜矢ちゃんが帰ってきたので玄関までお迎えに行きましょうかね。

 「あっ、ミー子ただいまー」

 「みゃー(おかえりなさい)」

 んっ?おやおや?、そちらにおられる野郎はどちら様ですかねぇ…

 「たかしくん入ってー、あっ、この子うちのミー子」

 なるほど、崇と言う名か……
 何しに来やがった!

 シャーっと威嚇する私に苦笑いをする亜矢ちゃん。でも威嚇はやめない。亜矢ちゃんの操は守らねばならぬのだ!

 「もぉミー子どうしたの?崇くんごめんね、いつもはこんな感じじゃないんだけど…」

 「大丈夫だよ、亜矢ちゃん」

 そう言って崇は私に顔を近づけた。

 「ミー子ちゃん、崇と言います。よろしくお願いします」

 まぁなんて丁寧な子なんでしょう!
 そしてイケメン!
 人間年齢と猫年齢合わせて二十九才の私を怯ませるほどの顔面力!末恐ろしい…

 そして私は崇に抱かれた。

 ちっ、イケメンには勝てないのだよ。

 私のモフモフを堪能した崇が、私をソファーに置くと鞄から教科書やら筆記用具を取り出してテーブルに並べた。 
 その間に亜矢ちゃんは台所に行ってコーヒーを用意している。

 「崇くん、どうぞ」

 「みゃー(堪能しろよ)」

 「亜矢ちゃんありがとう」

 亜矢ちゃんがコーヒーを持ってくると二人は一度口にして勉強会を始めた。

 「崇くん、これどうするの?」

 「これはね、こことここを、こうすると」

 「なるほど、ありがとう」

 「どういたしまして」

 かなりいい雰囲気で勉強している二人はとても微笑ましく見えた。

 なるほど、亜矢ちゃんは崇が好きっぽいな…

 「亜矢ちゃん、トイレ借りてもいい?」

 「どうぞ、ここを出て右に曲がったとこにあるから」

 「ありがとう」

 そう言って崇がトイレに行くと亜矢ちゃんは頬を赤くして私に話掛けてくる。

 「ミー子、崇くんかっこいいでしょ?私、崇くんが好きなんだ」

 「みゃーみゃうー(やっぱりね、亜矢ちゃん分かりやすいよ)」

 「崇くん、私の事好きかなぁ…」

 「みゃーうー(見た感じ、崇も好きだと思うよ?)」

 私の話が通じてるとは思わないけど私は思いを込めた鳴き声で返事を返した。

 「崇くん、おかえりなさい」

 「ただいま、亜矢ちゃん」

 トイレから帰ってきた崇と見つめ合う亜矢ちゃんはすごく眩しかった。

 しょうがない…
 亜矢ちゃんの為に頑張って差し上げましょう。

 私はソファーを降りて壁際まで行くと崇に向かって猛ダッシュで飛びかかった。

 私に驚いた崇は亜矢ちゃんの方に倒れむと、亜矢ちゃんを押し倒す形になった。

 「ご、ごめん」

 「いいよ、崇くんなら…」

 「亜矢ちゃん…」

 二人は見つめ合ってキスを……

 しなかった。

 いや、私がさせなかった。

 シャーっと威嚇して二人の間に私は割って入ったのである。
 応援はするけど誰もいないこの状況に最後まで行ったら大変だからね。
 うん、私はできる子だから!

 「もーいいところだったのに…」

 頬を膨らませる亜矢ちゃんには悪いとは思うけど流れに身を任せてはいけないのだよ。

 「ははは」

 苦笑いをしてる崇よ、チミはちゃんと気持ちを伝えないとダメだよ?はっきりしろ!

 私の思いが通じたのか、沈黙が続いた後に崇は亜矢ちゃんに告白をした。

 「亜矢ちゃん、好きです、付き合って下さい」

 「はい、よろしくお願いします」

 二人は照れ笑いを浮かべて幸せそうだった。

 「みゃうー(よかったね、亜矢ちゃん)」

 私は、亜矢ちゃんの想いが叶った事を素直に喜んだ。

 しばらく楽しそうに勉強会をした二人は、後片付けをすると立ち上がって玄関まで行く。

 「崇くん、また明日ね」

 「うん、また明日ね、亜矢ちゃん」

 そう言って崇は亜矢ちゃんの頬にキスをした。

 「もー崇くんたら…」

 恥ずかしそうにする亜矢ちゃん

 「亜矢ちゃんがあまりにもかわいいから…嫌だった?」

 「嫌じゃないけど…ずるいよ、崇くん…」

 そう言って亜矢ちゃんも崇くんの頬にキスをした。

 そして見つめ合う二人に私は威嚇する。

 「シャー(こら崇!亜矢ちゃん泣かせたら許さんぞ!幸せにするんだよ!)」

 しばらく見つめ合った後、崇は帰って行った。

 けど……、

 私頑張ったよ?頑張ったよね?
 なのに夕飯がいつも同じってどうゆう事なの?

 少し楽しみにしてたその日の夕飯はいつものキャットフードだった。
 不満はあったけど幸せそうな亜矢ちゃんが見れたから我慢したよ……グスン

 「行ってきまーす」

 翌朝、元気よく出ていく亜矢ちゃんの後ろ姿を見つめる私

 「みゃー(行ってらっしゃい)」 

 今日も亜矢ちゃんの帰りを待つ

 うん、いつもの朝、今日も平和だ!

 亜矢ちゃんが帰ってくるまで寝るとしましょう…

 そして、私はソファーでくるまって眠りについた。



 完
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