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キュンが始まる予感な件
しおりを挟む僕は周りからオタクと言われている。
小学校六年の頃に一つ下の妹から勧められて読んだラノベ小説にハマったのがきっかけで、それからラノベ小説を読み漁り、アニメにハマり、そして高校三年生になった今では自他共に認める『オタク』と呼ばれる存在になったのだけど………
「ねぇ染谷君、私と付き合ってくれない?」
何故か僕は今、人目のつかない校舎裏で予想外の告白をされている。
相手はうちの高校で一番人気のある女子の滝川杏子である。
成績優秀、スポーツ万能、オマケに容姿端麗と神が二物も三物も与えた人物の滝川さんは他の高校からも見来る人がいるほどの美女と有名で、この辺りでは知らない人はいないと言ってもいい。
生まれて十七年、彼女はおろか告白すらされた事も無い僕が滝川さんから告白されるという今の状況に嬉しさよりも『なんで僕?』と困惑の方が大きい。
僕は人と交流する事があまり好きではないので黒縁メガネをかけ、前髪で目元を隠し、僕に近づかないでオーラを出しているので滝川さんとは話した事は無い。と言うか数名のオタク仲間以外との交流は皆無である。
そんな僕が高校ナンバー・ワン、いや地元ナンバー・ワン美女の滝川さんからの告白に素直に喜べると思いますか?むしろ何かの罠ではないかと思ってしまう。
確かにラノベ小説やアニメでは美女がオタクに恋をする展開があったりもするけど、現実にそれが起こるとは思えない。
「染谷君、聞こえなかったかな?もう一度言うけど、私と付き合って下さい!」
目の前で立ったまま、なかなか返事をしない僕に痺れをきらせたのだろう滝川さんが僕にもう一度告白をした。
今までちゃんと滝川さんの顔を見た事がなかったけど、抜群のプロポーションで肩まで伸びた黒髪をなびかせて少し僕に近づいた滝川さんは二次元美女達にも負けないほどの美女で思わずドキッとしてしまった。
「えーっと……」
僕はそう呟いて一度唾を飲んだ後すぐに口を開いた。
「ごめんなさい」
◇◇◇
「はっ?よく聞こえなかったんだけどもう一度言ってもらってもいいかな?」
ヒクヒクとする口元でそう言った私はなかなか返事をしないコイツから最初より少し口調を変えた二度目の告白でやっと返事をもらえたと思ったらまさかの『ごめんなさい』だった。
「えーっと……」
私の問に考える素振りを見せるコイツを見てるとイライラが募る。
(コイツを選んだのは失敗だったかも…)
自分で言うのもなんなんだけど私はモテる。
代わる代わる私に告白してくる男子は日常茶飯事。百歩譲ってまだこれはいいけど、少し話をしただけで「俺の事好きだよね?」と言ってくる頭のおかしなヤツや、ずっと後をつけてくるストーカー紛いのヤツまでいて身の危険を感じる時もあるので本当にしんどい。
正直、私から告白されれば即オッケーされると思ってたのに実際は「ごめんなさい」と見事に断られた。
(好きでもない人にフラレるなんて……)
そう、私は目の前のコイツの事は好きじゃない。
『彼氏が出来れば私に寄ってくる人もいなくなるのでは?』と考えて、いつも隅っこの席で大人しくしている同じクラスの染谷賢一に狙いを付け、放課後に校舎裏に呼び出して告白したんだけど─────
「滝川さんの考えている事はわかっているから」
「はっ?」
キョロキョロと辺りを見ているコイツはどうして誰にも言っていない偽装の彼氏を作る事を知ってるの?ちょっとコイツの事が恐くなってきた。
「そ、染谷君はなんで私がやろうとしてる事を知ってるのかな?」
「だってこの状況だとそれしかないかなって」
どどどどうゆう事!
この状況だけで私の計画してる事がわかったって事なの?
前髪が目元まで伸びて顔もよくわからなくて、おとなしそうな感じだったけど実は恋愛の達人なの?人は見かけによらないとはこの事よね。
妙に納得してしまった私はこの時、お互いが違う事を考えている事に気がついていなかった。
「そうゆう事だから僕は行くね」
そう言ってスタスタと歩いて行くヤツの後ろ姿を見ている私は少しだけ認識を改めた。
けど、なんか────────
「すぅぅぅぅっごいムカつくーーー!」
ポツンと一人残された私の声が校舎裏には響いていた。
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