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三人でお昼ご飯を食べた件②
しおりを挟むシートに座る僕はかなり戸惑っている。
偽装の彼氏となった滝川さんはまだいい、でもなんで北澤さんまでいるのだろう?
校内の有名人二人と一緒にお昼を食べる僕には周りの男子の厳しい視線が向けられている。
僕はこの後、誰かに呼び出されてリンチされたりしないだろうかと心配になってしまう程の殺気を帯びた視線なのだ。
(堪えられない……)
僕の心の声は二人には聞こえない。
思わず「はぁ~」とタメ息が出てしまう。
「なんで賢はタメ息吐いてるのよ」
そう言った滝川さんは持っていた袋から篭を取り出すと蓋を開いた。
中身は色とりどりに敷き詰められたサンドイッチだった。
◇◇◇
「美味しそうでしょ?杏は料理も上手なんだよ!あっ、私は同じクラスの北澤美織です。よろしくね、知ってるよね?」
「知ってます北澤美織さん、僕は染谷賢一です。よろしくお願いします」
そんな染谷君を見て私は不思議に思う。
『どうして杏は染谷君を選んだんだろう』
杏は女子の私から見ても魅力的でモテる。
杏が沢山の男子に言い寄られて困っていたのは知っていたけど、それを避ける為に偽装の彼氏を染谷君にお願いしたのは失敗だと思う。
偽装の彼氏とは言え、杏と付き合ったと知れわたればきっと染谷君には周りからのすごいプレッシャーがのし掛かるだろう。
見た感じ、染谷君がそれに堪えられるとは思えない。
(変な事になって杏の株を下げる事はしないでね)
杏の作ったサンドイッチをボーと見つめる染谷君に心の中で私はお願いした。
◇◇◇
賢は私の作ったサンドイッチを見つめ固まっている。
折角頑張って作ったのに一口も食べないなんて……
「食べないの?」
サンドイッチに全く手を付けようとしない賢に私が聞くと顔を上げた賢が私を見た。
「いいの?これもしかして滝川さんが作ったの?」
「そうだけど…」
「すごく美味しそう……」
賢はまたサンドイッチを見つめひとつ掴むと口に運んだ。
「美味しい……美味しいよ…僕、家族以外の女子の手作りの料理食べたの初めてだよ……」
「そ、そうなの?偽装だけど彼氏なんだからこれからもお弁当作ってあげてもいいよ」
「本当に!」
私は嬉しそうにする賢がなんだか可愛く見えてしまった。
前髪で隠れてよく顔が見えないのにそう思ってしまった私はちょっとおかしいかもしれない。
「杏、染谷君で大丈夫なの?」
「何が?」
「染谷君、なんだか変だと思うんだけど…」
「確かに変だけど今の賢少しかわ──」
嬉しそうにサンドイッチを頬張る賢に聞こえない様に美織と小声で話をしていた私は『可愛い』と言おうとした途中で口を組むいだ。
ニヤニヤとする美織の「続きは?」には答えず私もサンドイッチを頬張った。
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