染谷君は知らない滝川さんはもっと知らない交差するキュンの行方とその発信源を

黒野 ヒカリ

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二人の告白の件

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 放課後───

 私が帰り支度をしているといつものように美織が近づいてきた。

 「杏、一緒に帰らない?」

 いつもと違う美織の口調と雰囲気に何も言わずに頷いた私は、帰り支度を急いで済ませて二人で教室を出た。

 そして、校舎を出た私と美織は無言で帰り道を歩く。

 話を聞きたいけど下を向いたまま歩く美織に喋りかけられずにいた。

 それでも私は何度か話しかけようとしたのだが、思い詰めた様に見える美織の表情は私に話しかけるタイミングを無くさせてしまう。

 タメ息をついた私はいつも美織と別れる別れ道が見えたところで美織から話しかけられた。

 「ねぇ杏、ちょっといいかな…」

 「うん、いいよ」

 「少しだけ、話をしたい…」

 元気のない美織を今まで見た事がない私は近くの公園に誘って二人で移動した。


◇◇◇


 私と杏は公園につくとベンチに並んで座った。

 公園で遊ぶ子供の声が聞こえる中、ふぅーっと息を吐いて私は口を開いた。

 「杏、染谷君の事どう思ってる?」


◇◇◇


 美織に言われて考える私は賢との偽装彼氏が始まってから今まであった事を思い出していく…

 色々あった、いきなり抱き締められたり、お弁当を作ってあげたり、一緒に夏祭りにも行った。賢の誕生日も一緒に過ごし怒ったり笑ったり、楽しかった出来事が思い出される。

 「私は、染谷君が好き」

 美織の突然の告白に驚いて私の意識は引き戻された。
 賢が入院した時に私と美織と紗枝ちゃんの三人で話をした時に美織は賢の事を気になってると言っていたけど好きだとはっきり言ってはいなかった。
 
 (美織、賢の事好きになったんだね……)

 「でも、杏の事も好き、紗枝ちゃんの事も」

 「うん…」

 「杏も、染谷君の事気になってるよね?」

 確かに私は賢の事を気になっている。
 好きかと言われたら分からないと答えるが、気になってるかと言われたら「はい」と答える。

 私は美織のその質問に頷いた。

 「だよね……でも、私も負けないから!」

 「うん…」

 「これからは、親友として、ライバルとしてよろしくね」

 そう言った美織の顔は笑顔だった。


◇◇◇


 染谷君への思いを杏に言えた事とライバル宣言した事で私の心は少しだけつっかえが取れたようだった。

 笑顔で差し出した私の手を杏は頷いて握り、握手を交わした。

(杏、負けないから)

 これからは正々堂々と杏と勝負しようと思った。


◇◇◇


 僕は有坂くんに誘われて校舎裏に来ていた。

 滝川さんに告白された場所に僕は懐かしさを感じていた。

 この場所から全てが始まったのだから…

 校舎裏に着くと有坂くんはすぐに話し始めた

 「染谷君、君は滝川さんとはどうゆう関係なのかな?」

 「えっと…」

 僕はお昼に紗枝に言われた事が引っ掛かって彼氏とは言えずにそれ以上言葉が出てこなかった。

 「俺は、滝川さんが好きだ。悪いけど本気だよ」

 「はい…」

 僕は無言で有坂くんの顔を見ていたけど有坂くんは沈黙を破る。

 「たとえ君が彼氏だとしても、俺は負けない。俺が滝川さんと付き合う事になっても文句は言わせない」

 有坂はそんな言葉を残して僕に背を向け、帰って行った。

 一人残された僕は沈み始めた夕日に照らされていた。

 有坂くんと滝川さんが付き合うのは嫌だと感じるこの気持ちはなんだろう…このモヤモヤは…

 僕は滝川さんの事が好きなのか?

 紗枝…

 北澤さん…

 僕はどうしたら…


 この日からうまく回っていた僕と滝川さんの歯車が狂い始めた。

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