元ヤンの伝説のアイドルを吸血した1888年から来た吸血鬼には浮気調査専門興信所はちょっとつらい

k_tokyo

文字の大きさ
27 / 41
第8章 腐った夢

第5話 夜の街に賭ける

しおりを挟む
そう。私は短大生で
「夜の街に 掛ける」というテーマで卒業論文を
書こうといろいろなお店を見て回っている。
と、いうことにしよう。よし、全然問題ない。

四隅が消えている趣味の悪いピンクの看板のネオンを見ながら
スナック「MiMi」の前で何度も口上を練習してから
恐る恐る重い扉を開けた。

店内は薄暗く、吐き気を催す臭いが立ち込めていた。
ウシガエルの様な何かしらの”演歌”の鳴き声が聞こえる。
ウシガエルの正体はステージでスポットライトに
照らされている見た目もウシガエルのような男だ。

数名の下品な男たちの中で、だみ声で笑っていたいかつい男性が

「おっ今日はなんか繁盛してるな」と私を見ていった。

「お姉ちゃんもバイトするか?」いやらしい声で
別の男が私の髪に触れてきた。

「夜の街に 掛ける」というテーマで卒業論文を
書こうといろいろなお店を見て回っている。
と、言おうとしたが声が出ない。大問題だ。

私は、下を向いて逃げようとしたが
脚が震えて早く進めなかった。

「逃げないでよ、彼女お~、逃げたら拉致っちゃうよ」
下品な男たちの笑い声がこだました。
もうダメだ。私はついに一歩も動けなくなった。



「ババババババババ・・・・」


あれ?この音は!

フォロワーさんに言っても
誰も信じてくれなかったんだけど

大きなスポットライトを浴びて
長く黒いコートを着た”Mysweet神司くん”が
現れたの。

あの時と同じように人とは思えないような
雰囲気を醸し出して。

スローモーションのように
優雅にそして美しく

ずっと見とれていたのに気が付いたら

「お前ここでなにしているんだ。」

って怒られたの。

「にいちゃん、どっから入ってきたんだ?
 あれっ、おまえあの外人の仲間か?」

どうやらジャックは人気者らしいな。

店の中には男が5人ほどいるが、全員衝突実験の仲間だろう。
誰が一番高い位の者だろうか?

検討をつけてその男に近づこうとすると

「しつけー野郎達だ。おめえも型にはめたろか?」

これは流行語なのだろうか?

男は近づいて来て俺の襟元を掴んだので
お返しにその男の襟元を掴んで、グラスのテーブルに側頭部を思い切りぶつけて
グラスを割ろうとした。

「ガッチャビャーアーーーン」

が、このグラスは脆く出来ていたので
大きな音がして、グラスはバラバラに砕けて、Pタイルの床に
男の頭が2分の1ぐらい埋まってしまった。

まさかこのグラスは我が故郷イングランドの物では・・・・

そういう心配をしている間もなく
衝突実験動物が刃物やクリケットのバットを
持って襲い掛かってきた。

「ブシュッアー・ブシュッアーッガッ・ブシュッアー・ッガブシュッアー」

が、今度は一番高い位の者と思われる者だけを残し
Pタイルに逆さに立たす事が出来た。

「これは誰の物で、何に使うんだ?」と
 ズボンの背中から”UTIWA”を取り出して、その男に見せてみた。

「それは・・・ウワウッウッウツ」

その”UTIWA”を見た男は突然苦しみだした。

手加減して両手の指の骨を折っただけなのに。
私の反省をよそにして、なぜか男の顔がみるみる黒ずみ
身体がブクブクとふくらみだした。

「ビュルビュルブチュブチュビュルーブビュルービュール・・・」

さすがの俺も気味が悪くなりその男から離れた。
男はその後も苦しみながらも、身体が元の1.5倍ほどに大きくなった。

俺の見識違いであった。
どんなことをしたらひとつの生物がほかの生物に
変わってしまうなんてことがあるのか?
あるのだ。目の前にいる。

「ギューーーーーッルッツ」

怪物になった男は、気味の悪い怒号をあげて
俺の首を両手で絞めつけながら、立ち上がった。
宙ぶらりんになりながらも安堵した。
俺が吸血鬼ヴァンパイアだから我慢できるが、
普通の人間なら”お漏らし”をしてしまうほどの怪力だ。

こいつには手加減しなくていいみたいだ。

「ドガッチュッドガッチュッ」

怪物の顔面に俺の長い脚で2回蹴りをいれると
さすがの怪物も俺を降ろしてくれた。

「ギュッワーーーッガッガッガッツ」

怪物は怒りで俺を両こぶしで3度叩いてくれたが
肩こりはしない俺はそれを拒否して
巨体をこの店で一番高価なものであろう
”KARAOKE”の機械に頭から投げ飛ばした。

「バギャッツビィッシィーーーーーーーー」

火花を散らしてテレビジョンの箱に
頭を突っ込んでいた怪物の首に
マイクロフォンのコードを巻き付けて
そのマイクロフォンを使って
「Rock-a-Bye Baby ロック・ア・バイ・ベイビー」を
歌って聴かせた。

”Rock-a-bye baby,on the treetop・・・
 And down will come baby,cradle and all”

怪物は最初は、なかなか寝付かなかったが
俺の優しい歌声で永遠のねむりにいざなった。


しかし大人しくなって落ち着いてみたら、なんとおぞましい怪物なのだ。
深夜のテレビジョンで観たモンスターのようだ。
俺はあれを観て怖くて、エリに抱いてもらいながら寝たのを思い出した。

気が付くと、朱里もいっしょにねむりに落ちている。
彼女は”追っかけ”をしているだけあって
大きな声で声援してくれるはずなのだが

店の片隅で寝そこなった御婦人がふたり抱き合って震えていた。
俺はなるべく優しく知っていることを話すようにお願いした。
すると年配の御婦人が話し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...