元ヤンの伝説のアイドルを吸血した1888年から来た吸血鬼には浮気調査専門興信所はちょっとつらい

k_tokyo

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第10章 戦夢

第2話 埴生の宿

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2階のパーティールームは少し薄暗く
静かなピアノ音楽(たしか新大陸のJAZZという音楽)が
奏でられいた。

中央にバーカウンターがあり、壁際にソファーや
個室ブースがいくつかある。控室は一番奥のようだ。

バーカウンターにはバーマンが1名いるが
こちらには気付いてないようだ。

ソファーには3組のカップル。
エリはいない。

ロビーでの勢いで目に付く者すべてに、イくつもりだったが
この雰囲気にはあまりにも合わない。
ここは吸血鬼ヴァンパイアらしく紳士的にいこう。

ブースをすこし早歩きで見て回った。
4つ目のブースでは、盛りのついた老紳士が
待ちきれずにしおれた尻を出してうめき声をあげていた。

怒りでそのケツをふたつに裂いてやろうと思ったが
騒ぎは起こせないと鎮めた。

そこへ黒服の従業員がこちらへ近づいてきた。
「御用はございますか?」と
小さなトーンで訪ねてきた。

俺はわざと英語で
「女の子を探している」と答えた。

男は理解して
手に抱えていたPADを操作しだした。
「女の子のお名前はわかりますか?」と
綺麗な英語で質問した。

さすがに一流企業相手に商売をしているだけあって
こういう仕事は出来るなと
ロビーの男たちに同情した。

「エリという子だ」と言った。
偽名をつかっていなければいいが

男はなにやら人差し指を縦横に動かしながら
PADの画面を操作している。

俺は黙ってそれを見てるだけだ。
少し劣等感を感じていた。

朱里にやっぱりこの機械の操作を
教えてもらわないと。

また日報やらを提出するのを
やらなければならないしな。

男は首を縦に何度か振って目的のものを
見つけたことを知らせていた。

「これはNEW Faceの子ですね、見つけましたが、
 残念ですがほかのお客様が、先にご予約されてそちらに行っております」

それを聞いて俺の2つの心臓が締め付けられて、
を起こしそうだ。

俺は我慢できなくなり、左手の3本の指の爪を長く伸ばし
男のみぞおちにすばやく刺し込んだ。

男は一瞬俺を見て数回震えて絶命した。
爪を刺したまま右手でPADを取り上げると
画面を覗き込んだ。

だがすでに画面には、エリの情報はなくなっていた。

「oh shit」

これが片付いたら本当に朱里にレクチャーを受ける。

仕方がない、バーマンに聞くか

そう思ってバーカウンターに近づこうとすると
エレベーターの扉が開いた

どう見てもこの高級倶楽部のメンバーにはなれない
男達がぞろぞろと6人降りてきた。

浅村組の残党のようだ。
"ジャパン"の凄さはきっとこういう絶え間ない実験をしているからだ。

全員が日本刀と小銃を持っている。
俺に気がついて
その内の2人が怒号を発しながら
日本刀を上段に構えて斬りかかってきた。

横に素早く避けながら1人の男の脚を払った。
その男の倒れ際に、握ったままの手首を引きちぎり刀を奪った。

別の1人が銃を撃ちはじめたが、撃たれるがままにして、
手首のない男に刀を突き刺した。

全員が恐怖で銃を撃ちはじめたが、
俺はいたって冷静に手首の付いたままの刀を
最小限の数だけ振って
全員を斬り捨てた。

刀剣の扱い方は親父ヴァンパイアに徹底的にしごかれた。
叔父ヴァンパイアは「ダルタニャンと三銃士」の四人全員と一度に剣をまじえた事がある、と自慢していたが
叔母ヴァンパイアによると、その頃は2度目の別居をしていて何も知らないそうだ。

パーティールームは最高潮を迎えたように、若い御婦人の黄色い歓声で溢れた。
もう一度バーマンに尋ねにいこうとすると、またエレベーターの扉が開いた。

又かと思ってため息をついたが、今度のメンバーは、
入会資格が人間に限られているのを知らなかったようだ。

「MiMi」にいた
怪物のお仲間が4体出てきた。
ふたたび御婦人の黄色い声援がこだました。

あの時と違い朱里の献血をしてもらったので
1対4でも貧血は起こさないだろう。

ただ一遍に来られると、忙しくなるので順番だけは守ってほしい。

と言ってる横から、全員がルール違反をして闇雲に突進してきた。

俺は後ろも見ずに飛び上がり、バーカウンターの上に立つと、
バーマンが震えてカウンターの中で縮こまっているのを見つけた
そこで彼に「オールドファッションド」をオレンジ強めにオーダーした。

彼は恐怖の眼で俺を見ていたが、牙を見せたら慌ててグラスを用意し始めた。

俺は4人のお仲間と楽しく遊ぼうと思い
ひとりひとりの頭の上に
「ホーム・スイート・ホームー埴生の宿」を歌いながら飛び回った。

お仲間はそのたびに頭の血行がよくなったのか
噴水の様な血潮を噴き上げて、くるくると回りながら俺と一緒に踊った。

時おり休憩を取りにカウンターに戻っては、オレンジ強めのオールドファッションドを
喉を潤すように飲んだ。

「UUUUUUUN」

なんという芳醇な香りのウィスキーだ。
しかも、好み通りのオレンジのテイストに
このバーマンもただ者ではないと驚いた。

俺はもう一杯お代わりをオーダーしてから
また楽しく5人で踊りと歌を楽しんだ。

「Oh, there is no place like home」

彼らも疲れて来たようなので、そろそろ4人とお別れの時間にしようと、ちょっと強めにお別れのタップを頭の上で披露して、今夜の夜会は終了した。

バーカウンターに戻って、残ったオールドファッションドを
いとおしそうに飲み干すと、バーマンにチップを渡した。

"ジャポン"はグラスもその中身も素晴らしい物を作ると感嘆した。

バーマンにエリのことを聞くと
常連さんが「今日新人とお相手をする」と言っていたと部屋番号も
教えてくれた。
俺は最後にバーマンに丁寧にお礼を言うと
バーマンも「We look forward to welcoming you back」と
笑顔で返してくれた。


やっぱり、「Better leave it to the specialist 餅は餅屋」だ。

俺はエリのいる402号室へ急いだ。

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