元ヤンの伝説のアイドルを吸血した1888年から来た吸血鬼には浮気調査専門興信所はちょっとつらい

k_tokyo

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第10章 戦夢

第1話 怒りの鉄拳

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「ドッガッガガッガガーーーーーン」

爆音ともに鉄製の扉がぶっ飛んだ。
もたもたしていてその扉に巻き込まれたひとりが
上半身と下半身をきれいに分離させて見せた。

隣にいた朱里が
「ヒッ」と大きく引きつった。

「お前がいっしょに行くと言ったんだから
 ちょっとは我慢しろ」
と思ったが
安心させるように、頭をぽんぽんと2回優しく叩いた

外観はどこにでもあるような、鉄筋コンクリートつくりの6階建てのビル。
そのビルの”XXXX建託”と書かれた看板には、不自然な点は一切なかった。
が、俺の五感が胡散臭さを嗅ぎ分けていた。

ロビーの中央奥に受付の大きなカウンターがあった。
何が起こったのかすぐにはわからずに、2人の黒服が立ちすくんでいたが
やっと状況が飲み込めたのかカウンターの下をごそごそと探りだした。

俺は構わずに、入り口の脇に立っていた男と
近くにいてこっちに向かってきた男をすぐに黙らせた。

カウンターの男たちはひとりは日本刀
ひとりは小銃を持って姿をあらわした。

「俺から離れるな」と言って
親猫が子猫にするように
朱里の襟をつかんで俺の後ろに隠した。

朱里はここぞとばかりに背後から両腕で抱き着いてきた。
が、かまわず大股で真っすぐ進んだ。

「てめー誰だ?」
ひとりが叫んだ。

「吸血鬼《ヴァンパイア》」
と答えると

「ええ?」と
朱里がやっぱりそうだったのかという顔で
俺の顔を覗き込んで見たので
少しはずかしくなった。

小銃男は撃つのをためらっているので
銃ごと腕を引き抜いてやり
迷い事を解消してやった。

それなのに、女みたいな悲鳴を・・・ 
おっとこれは失礼 
えーなんだ 
とにかく 
おかしな悲鳴を上げて
男は床を転げまわった。

それを見ていた日本刀男は恐怖で
間合いも計らず日本刀を振り回したので
わざと素手で受けて握って見せた。

それをそいつの目の前でゆっくり引いて
俺の右手の親指を切断して見せて
「ニヤッ」と笑った。

失禁状態になった奴の股間を天井にぶち当たるほど蹴り上げた。
こいつは何も言わずにおとなしく落ちてきた。

朱里はずっと目をつむっていたが
天井から男が目の前に落ちてきたので
こんどは
「ヒーーーー」と
大きく引きつって、さらに俺の背中を強く抱きしめてきた。

「やっぱり置いてくるべきだった。」
今さらだがちょっと考え直して

「朱里お前ここにいろ。それか所に帰れ」
俺は朱里がぶるぶる震えていたので
少しやさしい口調で諭した。

「えーーーだってえ紅さんのこと
 追っかけないと」
震えた声でなんとか絞り出した。

困ったなあと悩みながら
床に落ちた自分の親指を見て
「OK」

俺は半ば強引に朱里を左手で抱きしめた。
朱里はびっくりした表情で大きな瞳で俺をみた。
かまわずそのまま引き寄せて朱里の右のくびすじに顔をうずめた。
「あーーーん」
朱里は拒みもせず感嘆の声をあげた。

このまま連れて行けば足手まといだし
朱里を守れないかもしれない。
これからどんな怪物が出てくるかも知れない。
ちょっと協力してもらって
ここで少し眠っていてもらおう。

「あーーーん。すごい。すごい。」
朱里は俺の腕の中で体をくねらせて
歓喜の声をあげている。
それから何回か体をのけぞらせて失神した。

「ちょっとみすぎたかな」

俺は朱里を優しく両腕で抱き上げて
カウンター後ろのクローゼットまで運んで寝かせた。

そうだ朱里はよく"推しメン"に、
こうやって"お姫様抱っこ"してもらいたいって言ってたな。
良かったな。
いい夢みろよ。

さあこれでやっと力を発揮できるな。
朱里の血のおかげで親指はすっかり生えてきたし
思った以上に朱里のが良くて
これからたまには一杯誘ってみるかと思い直した。

クローゼットから出ると年配の会員らしい男がいたが
部屋の惨状と俺を見て慌てて出て行った。

「your lucky」

と慌てふためき逃走する男の後ろ姿に指をさしてから
両肩をぐるぐると回し、首の関節をゴキゴキと鳴らした。

「Are You Ready?」

みんなの歓声が聞こえた。

俺は巨大なカウンターを持ち上げて
扉の代わりに出入り口を塞いだ。


カウンターから落ちた書類をみた。
ビルの各階のフロアマップがあった。

2階がパーティールーム
345階が個室になっているようだ。
個室と言っても一部屋がかなり大きく。
全部で15室しかない。
これならエリの匂いが消されていても
早く助け出せる。

名簿もあった。
今日利用している奴はウイークデーでも10名以上来ている。

「 son of a bXXXX」

と吐き捨てて名簿を投げ捨てた。

とりあえず2階にあがるために
エレベーターの前に立った。

「?」

ボタンが無い。
エレベーターってボタンを押すはずだが。
こういう時に自分が何者かということを思い出させる。
どうしたものか従業員は全員イってしまっている。
朱里も完全にイってしまっている。

しかたなく
エレベーターの扉の隙間に爪を差し込んで
強引に左右に広げた。
「Wow」
エレベーターというのはこういう構造になっているのか
こんな時に不謹慎だが文明の発達というのは素晴らしい。
でもわが故郷イングランドが
あの蒸気機関を発明してから産業革命・・・・・

急ごう
エレベーターは4階に止まっているようだ。
俺は軽く飛び上がると2階の扉の前のわずかな空間に立ち
先ほどと同じく爪を使って扉を開いた。
開いた扉は勝手に閉じた。
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