悪役令嬢のビッチ侍従

梅乃屋

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本編

08:甘酸っぱいやつ

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 珍しくイジドールから呼び出しが掛かった。

 自宅に招かれ豪華な夕食を堪能し、情事に耽る。
 相変わらずの長い焦らしプレイ後の激しい攻めは満足感も大きいが気力体力共に消耗する。

 昨夜も銀髪クロヴィスと夜中まで話していたせいで少々寝不足な体は、ぐったりとシーツに溶けていた。

「珍しいなセブ。疲れているのか?」

 隣で寝そべり俺の髪を撫で付けるイジドール。

「んー少しだけ。でもまだイケるぞ」
 そう答えると、彼は嬉しそうに頭にキスを落とした。

「ところで、ペリゴールの子息から君の素性を知りたいと問い合わせがあったのだが、何かしたのかい?」

 ペリゴールの子息…クロヴィスじゃん!

「………あーそれね。何か懐かれたな。リディ嬢の取り巻きだからあまり信用は出来ないけど」
「なるほど。彼には八年くらい前にフェリシテ嬢が気に入って侍従にしている平民だと伝えたよ」
「ありがと。まぁ事実だな」
「ふふ。彼を誘惑してるのかな?少し妬けるな」
 なんて言ってるがこの男、奥方を亡くしてから何人も愛人を囲っているやり手なんだよ。

「誘惑なんかしてねーわ。そもそもお嬢様を糾弾した絶許対象者だぞ。どうやって追い詰めようか悩み中なくらいだよ」

 彼は俺の頭から耳元へキスを降らし、だらしなくうつ伏せになっている尻を撫で付けた。
 敏感になっている肌がピクリと震える。

「君が僕の部下なら……そのまま溺れさす方針にさせるけどね」
「高位貴族が俺に落ちるか?」
 しかもクーデレキャラでゲームでは難易度高めの男だ。
 たかだかちょっと顔が良いだけの平民侍従に落ちるか甚だ疑問なんだが。

「まぁ好みは人それぞれだが、今のセブの色気は大抵の男は落ちるよ…」
 ぐぷり、といきなり俺の後孔へ雄を捻り込んだイジドール。

「んはっぐぅ!」

 慣らされているとは言え、まったりしていた所にコイツの巨根はダメージが大きい。
 恨みがましい目で睨むと嬉しそうに口角を上げて微笑うイジドール。

 普段の伶俐な団長の仮面は剥がれ落ち、欲に塗れた凶暴な目付きで俺を揺さ振り、そして悦ばす。

 イジドールとの夜は長かった……。



 ◆



「昨夜は何故来なかった…」

 次の日の晩、またクロヴィスが中庭に現れ行ってみれば何故か俺が咎められている。
 しかもなんか拗ねてないか?

 俺がいない日は侯爵家の護衛がいるので任せていた。
 まぁ彼らはお嬢様のみを護る私設騎士団なので、中庭までは感知しないだろう。
 そもそも城内は王国騎士団が警護しているし。

 近くのベンチに腰を掛け話をするクロヴィスと俺。
 平民なので俺が立ったままでいると、彼はいつも隣りに座れと命令するので遠慮はしなくなった。

「友人と朝まで飲んでたんですよ」

 最近の彼との会話は、専ら愚痴を聞いている事が多い。昨夜も何か吐き出したい事があったのだろうか。

「どこで飲んでいたんだ?」
 え。それ聞く?
 正確には貴族街のイジドール邸だが、彼との関係を話す訳にはいかない。

「平民街の友人宅ですよ。というか、どこで何をしようとあなたには関係ないですよね?」

 そう言うと銀髪の貴公子は黙り込む。
 美しい銀髪がサラサラと頬を掠め、月明かりに照らされた憂いた横顔は精巧な人形のようだ。
 父親が宰相という立場であるため、彼に対する周囲の期待は計り知れず。
 ゲームでも『次期宰相』や『王子のブレイン』などの表現があったくらいだから相当頭の良い男だとは思うのだが、それ故に悩みやプレッシャーは大きいのだろう。

 今年で十九歳になる若者が抱え込む悩みじゃないと感じて、思わず愚痴に付き合っていた前世アラサーの俺。今はぴちぴちの二十歳だがな。お肌も昨日のアレでツヤツヤだぞ♡

 と呑気に満足していた俺に向き合うクロヴィス。
 綺麗な青灰色の瞳は俺を真っ直ぐに見つめ、黙ったまま意図のわからない視線が注がれる。

 何だ?
 訳が分からず首を傾げると、ふわりと頬を撫でられた。

 そのままゆっくりと顔が近付くと、柔らかい唇が重なる。
 ちゅ、と可愛いリップ音が響き唇が離される。

 は?

 あれ?これキスか!
 えぇやだ♡キスされたぞ?

 離宮の中庭で月明かりに照らされ甘酸っぱいキスて♡少女漫画じゃあるまいし!あ、これ乙女ゲームの世界だったわ!
 って待て待て。
 なにちょっとポッてなってんだ俺!昨日はイジドールとキスどころじゃないグッチャグチャのプレイしてきた俺だぞ?
 今更年下のキスに動揺してどうするよ!

 呆けている俺にクロヴィスは更に啄むようなキスをし、そして舌で唇をノックするとそのまま俺の口内へ入れ込んできた。
 遠慮なしに入り込んできた滑らかな舌が歯列を舐め上げ俺の舌と絡ませる。
 うっかりクセで俺も応えてしまい、目を細めたクロヴィスはそのまま俺を抱きしめ更に口付けを深くする。

 息が荒くなり、俺もどうしようか悩む間もなく抱き込まれた身体は次第に火照っていく。
 クロヴィスの厚い舌が俺の口内を蹂躙すると、神経質な熱い手が俺の体を撫で回す。
 快感に弱い俺は思わず鼻から甘い声を吐くと、クロヴィスの吐息も興奮を隠しきれずに荒ぶってきた。

 ……あ、やば。
 俺の薄っぺらい貞操観念が警鐘を鳴らす。

 その時。

 俺の感知魔法が反応した。

 しかも不審者はそのまま動きを止めているようだ。
 つまり、俺とクロヴィスの逢瀬を息を殺して盗み見てるのだろう。

 一体誰だ?
 でもお陰でエロ仕様になりかけた俺の脳みそが正気を取り戻してくれた。

 そしていい加減離してもらうようクロヴィスの胸を押してキスをやめさせた。

「おやめ下さい、ペリゴール様」
 俺はわざと彼を家名で呼んだ。

「セバスティアン…。名前で、クロヴィスと呼んでくれないか」
 名前呼びってマジか!
 それよか落ち着け俺。

「俺は高貴な方の戯れに付き合う気はありませんよ」

「戯れ…ではない。私は君のことが、最初に見た時から心を奪われていた」

 おぅっふ!表現がいちいちイケメン♡
 だけどもしやこれは使えるかな?

 昨夜のイジドールの提案が脳裏を過ぎる。

「俺は今でこそ侯爵家に仕えていますが、元はただの平民で身分が違いすぎます。どうかこれ以上は勘弁してください」

 そう言って俺は振り返らずその場を去った。

「待ってくれセバスティアン…!」

 追い縋ろうとするクロヴィスの声に、俺はほくそ笑んだ。



 …………そんで覗き魔は一体誰だったんだろうな?
 明日が楽しみだ。

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