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第一章 現状把握編
26、清掃計画
平民街に視察に行った次の日。三人で考えた王都の清掃計画とその後に行う予定の南区改造計画について話をするために、陛下と宰相様に時間を取ってもらっていた。
「三人とも仕事はどうだ。無理しすぎてはいないか?」
「はい。体を壊さぬように気を付けつつ、全力で仕事にあたっております」
「そうか、これからもよろしく頼むぞ」
「もちろんです」
陛下とファビアン様がそんな会話をして、早速本題に入る。
「して、今日は何の話があるのだ?」
「実はフィリップの得た知識を全てまとめ終えまして、その上でどこから着手していけば良いのかを考えましたので、陛下と宰相様のご意見を聞かせていただければと思っております」
ファビアン様のその言葉に、陛下と宰相様は一様に期待の眼差しを向けてくる。お二人の期待という重圧を感じる中、ファビアン様はそれを全く気にしていないかのように一枚の紙を取り出した。
「まず第一に着手すべきなのは、平民街の清掃だという結論に至りました」
「……確かに平民街は年々ひどくなっているな」
「しかし一度清掃をと考えて着手したこともあったのだけれど、あまり参加してもらえずに数ヶ月で元に戻ったんだよ。どのように参加してもらうつもりなんだい?」
宰相様が言うように、五年ほど前に平民街の清掃計画が持ち上がり、実際に実行された記録があったのだ。しかし期待通りの効果は得られず、結局その計画はその後実行されていない。
「今回は清掃に参加した者には対価を与えようと思っております。フィリップがいくつか水を出現させる魔道具を作ってくれますので、参加した者には一人当たり桶一杯の水を報酬にと考えています」
もちろん俺達はその記録を確認し、二の舞にならないように計画をしっかりと練った。
「……確かに桶一杯の水をもらえるならば、ほとんどの者は参加するだろうな」
「その水は飲めるほど綺麗な水なのかい?」
「はい。魔法陣で作り出す水は、山の湧き水のように綺麗なものです」
宰相様の質問には俺が答える。正確には魔法陣魔法ならば、泥水も不純物のない水も調節次第で作れるというのが正しい。
「それは効果が見込めそうだ」
「したがって今回の清掃も、民の力を借りて行いたいと思っています。流れとしてはまず大きな汚れを集めて回収し、それが終わったら建物の壁などにこびり付いた汚れを洗い流してもらいます。そして最後に地面に残った少しの汚れは、道路を掘り返して埋めてしまおうかと。さらに道路を平らに整備までできたら良いなと思っています」
平民街を歩いてみた感想としては、とてもじゃないけれど馬車なんて通れないだろうなというほどに、道がでこぼこだった。道路を掘り返して汚れを埋めるついでに、少しでも平らに整備できたら一石二鳥だ。
「汚れを洗い流す水は魔道具の水を使うつもりなのか?」
「いえ、基本的には皆が持っている川の水を使わせてもらおうと思っています。そしてその場合は、魔道具の水と交換という形にしようかと」
「確かにその方が良いな。……ふむ、私としてはこの計画反対する理由はない。ダスティンはどうだ?」
陛下が少しだけ考え込んだ後にそう宣言してくれた。そして宰相様にも意見を求める。
「私もやるべきだと思います。しかし清掃に参加した者に水を渡すというよりも、誰にでも自由に水を与えるからぜひ清掃に参加してほしいと、良心に訴えかける方が効果的ではないでしょうか。この国の民は義理堅い者が多いですし、自分達の住む街を綺麗にしたいという思いは誰もが持っているでしょうから。さらにそうしてしまえば、清掃をしていないのに水をもらっていたなどの揉め事も避けることが可能でしょう」
……確かにそうかもしれない。平民街を視察に行った感じだと、対価がなくても参加してくれそうな人が多くいた。後は今思いついたけど、理由もしっかりと説明した方が参加してくれるんじゃないだろうか。
「宰相様、ご意見ありがとうございます。確かにそちらの方が良いかもしれません。その方向で計画の変更を考えます」
「あの……ファビアン様、宰相様の意見を採用する前提なのですが、なぜ清掃をすべきなのか情報も公布した方が良いと思います。この汚れた街が病を流行らせる原因だと」
俺のその提案に、陛下と宰相様は驚きに目を見開いた。
「最近は病の蔓延が多いと思っていたが、まさか汚れが病を引き起こしていたのか?」
そして陛下が呆然とそう呟く。ファビアン様とマティアス様も、俺が最初に衛生観念についての知識を話した時に同じ反応をしていた。
驚くことにこの国では、汚いし臭いから綺麗にしたほうが良いとは思っても、衛生的でないし病気が蔓延するから綺麗にしなければいけないとは誰も考えていなかったのだ。……だからこそあの街が放置されてたんだろうけど。
「あのように不衛生な環境では病気が蔓延するのは当たり前です。できる限り綺麗な空気の中で生活をし、口に入れるものは極力汚れていないものをというのが、病気を防ぐ大前提です」
こんな基本中の基本、前の世界なら誰もが当たり前に知っていたことが全く知られていないなんて、本当に先が思いやられる。でも裏を返せばこんなに酷い環境でもここまで国が存続しているのだから、少しでも改善できれば一気に好循環に入るかもしれない。
「それは今すぐに広めるべき情報だ……」
「では清掃協力をお願いする際に、その情報も広めることにいたします。……そういえば手洗いの話も広めた方が良いだろうか?」
ファビアン様が俺に向けて疑問を口にする。
「広められるのならば是非。うがいも出来たら広めたいですね」
「分かった。では汚れが病を引き起こすこと、手洗いうがいの有用性とそのやり方、この二つはできる限り広めることにしよう」
それからも清掃計画の内容を詰めていき、実行は約二週間後ということに決まった。そしてそれまでの間に、先ほどの情報と清掃を実行する日付、そしてその際に飲み水を配布することも広めることになった。
俺はこの二週間で材料が来たら、ひたすらに魔道具作りだ。平民街全域に水を届けることを考えたら、できれば十個ほど作れると良いのだろうけど……流石にそれは無理だから目標は六個にしておく。
「平民街の清掃計画はこの予定で進めたいと思います。それでは次の話に移っても良いでしょうか?」
「もちろんだ、話してくれ」
そうして五人での話し合いは、新たな議題へと移ることになった。
「三人とも仕事はどうだ。無理しすぎてはいないか?」
「はい。体を壊さぬように気を付けつつ、全力で仕事にあたっております」
「そうか、これからもよろしく頼むぞ」
「もちろんです」
陛下とファビアン様がそんな会話をして、早速本題に入る。
「して、今日は何の話があるのだ?」
「実はフィリップの得た知識を全てまとめ終えまして、その上でどこから着手していけば良いのかを考えましたので、陛下と宰相様のご意見を聞かせていただければと思っております」
ファビアン様のその言葉に、陛下と宰相様は一様に期待の眼差しを向けてくる。お二人の期待という重圧を感じる中、ファビアン様はそれを全く気にしていないかのように一枚の紙を取り出した。
「まず第一に着手すべきなのは、平民街の清掃だという結論に至りました」
「……確かに平民街は年々ひどくなっているな」
「しかし一度清掃をと考えて着手したこともあったのだけれど、あまり参加してもらえずに数ヶ月で元に戻ったんだよ。どのように参加してもらうつもりなんだい?」
宰相様が言うように、五年ほど前に平民街の清掃計画が持ち上がり、実際に実行された記録があったのだ。しかし期待通りの効果は得られず、結局その計画はその後実行されていない。
「今回は清掃に参加した者には対価を与えようと思っております。フィリップがいくつか水を出現させる魔道具を作ってくれますので、参加した者には一人当たり桶一杯の水を報酬にと考えています」
もちろん俺達はその記録を確認し、二の舞にならないように計画をしっかりと練った。
「……確かに桶一杯の水をもらえるならば、ほとんどの者は参加するだろうな」
「その水は飲めるほど綺麗な水なのかい?」
「はい。魔法陣で作り出す水は、山の湧き水のように綺麗なものです」
宰相様の質問には俺が答える。正確には魔法陣魔法ならば、泥水も不純物のない水も調節次第で作れるというのが正しい。
「それは効果が見込めそうだ」
「したがって今回の清掃も、民の力を借りて行いたいと思っています。流れとしてはまず大きな汚れを集めて回収し、それが終わったら建物の壁などにこびり付いた汚れを洗い流してもらいます。そして最後に地面に残った少しの汚れは、道路を掘り返して埋めてしまおうかと。さらに道路を平らに整備までできたら良いなと思っています」
平民街を歩いてみた感想としては、とてもじゃないけれど馬車なんて通れないだろうなというほどに、道がでこぼこだった。道路を掘り返して汚れを埋めるついでに、少しでも平らに整備できたら一石二鳥だ。
「汚れを洗い流す水は魔道具の水を使うつもりなのか?」
「いえ、基本的には皆が持っている川の水を使わせてもらおうと思っています。そしてその場合は、魔道具の水と交換という形にしようかと」
「確かにその方が良いな。……ふむ、私としてはこの計画反対する理由はない。ダスティンはどうだ?」
陛下が少しだけ考え込んだ後にそう宣言してくれた。そして宰相様にも意見を求める。
「私もやるべきだと思います。しかし清掃に参加した者に水を渡すというよりも、誰にでも自由に水を与えるからぜひ清掃に参加してほしいと、良心に訴えかける方が効果的ではないでしょうか。この国の民は義理堅い者が多いですし、自分達の住む街を綺麗にしたいという思いは誰もが持っているでしょうから。さらにそうしてしまえば、清掃をしていないのに水をもらっていたなどの揉め事も避けることが可能でしょう」
……確かにそうかもしれない。平民街を視察に行った感じだと、対価がなくても参加してくれそうな人が多くいた。後は今思いついたけど、理由もしっかりと説明した方が参加してくれるんじゃないだろうか。
「宰相様、ご意見ありがとうございます。確かにそちらの方が良いかもしれません。その方向で計画の変更を考えます」
「あの……ファビアン様、宰相様の意見を採用する前提なのですが、なぜ清掃をすべきなのか情報も公布した方が良いと思います。この汚れた街が病を流行らせる原因だと」
俺のその提案に、陛下と宰相様は驚きに目を見開いた。
「最近は病の蔓延が多いと思っていたが、まさか汚れが病を引き起こしていたのか?」
そして陛下が呆然とそう呟く。ファビアン様とマティアス様も、俺が最初に衛生観念についての知識を話した時に同じ反応をしていた。
驚くことにこの国では、汚いし臭いから綺麗にしたほうが良いとは思っても、衛生的でないし病気が蔓延するから綺麗にしなければいけないとは誰も考えていなかったのだ。……だからこそあの街が放置されてたんだろうけど。
「あのように不衛生な環境では病気が蔓延するのは当たり前です。できる限り綺麗な空気の中で生活をし、口に入れるものは極力汚れていないものをというのが、病気を防ぐ大前提です」
こんな基本中の基本、前の世界なら誰もが当たり前に知っていたことが全く知られていないなんて、本当に先が思いやられる。でも裏を返せばこんなに酷い環境でもここまで国が存続しているのだから、少しでも改善できれば一気に好循環に入るかもしれない。
「それは今すぐに広めるべき情報だ……」
「では清掃協力をお願いする際に、その情報も広めることにいたします。……そういえば手洗いの話も広めた方が良いだろうか?」
ファビアン様が俺に向けて疑問を口にする。
「広められるのならば是非。うがいも出来たら広めたいですね」
「分かった。では汚れが病を引き起こすこと、手洗いうがいの有用性とそのやり方、この二つはできる限り広めることにしよう」
それからも清掃計画の内容を詰めていき、実行は約二週間後ということに決まった。そしてそれまでの間に、先ほどの情報と清掃を実行する日付、そしてその際に飲み水を配布することも広めることになった。
俺はこの二週間で材料が来たら、ひたすらに魔道具作りだ。平民街全域に水を届けることを考えたら、できれば十個ほど作れると良いのだろうけど……流石にそれは無理だから目標は六個にしておく。
「平民街の清掃計画はこの予定で進めたいと思います。それでは次の話に移っても良いでしょうか?」
「もちろんだ、話してくれ」
そうして五人での話し合いは、新たな議題へと移ることになった。
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