転生したら唯一の魔法陣継承者になりました。この不便な世界を改革します。

蒼井美紗

文字の大きさ
111 / 173
第三章 農地改革編

111、昼食会

しおりを挟む
「本日の昼食は、フィリップが考えた新しい料理も出る予定となっている。楽しんでもらえたら嬉しい」

 皆で席に着くと父上がティナに声をかけた。そしてその言葉から少し遅れて、給仕担当の使用人が食堂に入ってくる。

「わぁ……とても良い香りがします」
「オムレツでございます」

 そう、オムレツだ。この昼食会のためにうちの料理人クロードと卵が手に入るたびに試行錯誤して、オムレツを作り上げたのだ。しかもプレーンオムレツではなく、肉と野菜が入った豪華なやつ。上にはトマから作ったソースが掛けられている。

「とっても美味しいんだよ!」
「私は大好きです!」

 ローベルトとマルガレーテが、この美味しさを伝えようと必死に頑張っている。そんな二人を見てティナは、優しい笑みを浮かべながら口を開いた。

「食べるのが楽しみです。こちらの黄色い部分は卵……でしょうか?」
「正解。卵で肉や野菜を包んである料理なんだ。上に掛かってる赤いのは、前に畑で見てもらったトマから作られたソースだよ」

 孤児院には一度だけ卵をお土産として持っていったことがあるので、ティナは卵だと気づいたみたいだ。卵は孤児院で大好評で、皆が嬉しそうな笑顔で食べていた。

「あのトマがこちらのソースになっているのですね」
「このソースがとってもおいしいんだよ!」

 ローベルトはお腹が空いたのか、そわそわして待ちきれないみたいだ。父上がそんなローベルトを見て苦笑を浮かべ、食事を始める声掛けをしてくれた。

「ではさっそく食事にしよう。光の神、ティータビア様に感謝を」

 皆で祈りを捧げたら、さっそくナイフとフォークを手に取った。ちなみにオムレツの付け合わせには、いつも通りにジャモがたくさん盛られている。

 ……うん、やっぱり最高に美味い。肉と野菜は塩で味付けされているだけなんだけど、素材の旨味が際立って美味しいし、卵は半熟のトロトロで絶品だし、トマソースは少しだけ収穫できた香辛料も加えたので、味に深みが出ていて絶品だ。

「……っ、お、美味しいです!」
「良かった。気に入った?」
「はいっ」

 ティナはオムレツを口に入れて数回咀嚼すると、瞳を見開いて驚きを露わにした。苦手な味じゃないみたいで良かった……トマの酸味や香辛料の独特な味わいは、必ずしも万人に受け入れられるものではないと分かっていたので、少しだけ心配だったのだ。

「おいしいよね!」
「美味しいですよね!」

 ローベルトとマルガレーテはティナに美味しいと言ってもらえて嬉しいようで、さっきまでよりもニコニコだ。

「何度も食べたが、未だに驚くほどの味だな」
「ええ、本当に美味しいわ」
「このトマソースはどんなものにも合いそうです。例えば……コロッケなどにも」

 おおっ、ティナは料理のセンスがあるのかもしれない。初めて食べるトマソースを、別の料理に合わせることに思い至れるのだから。

「コロッケにも凄く合うよ。トマソースは気に入った?」
「とても好きな味です。今まであまり食べたことがない味なので表現するのが難しいのですが……とにかく美味しいです」

 ティナが好きなら、トマソースを使った料理をもっとたくさん開発したいな。やっぱり次はパスタを作るために、ムギを挽いてムギ粉を作ろう。
 あと一ヶ月ぐらいでムギも収穫できるだろうし、それまでにムギを挽くための魔道具を作っておくかな。あれはそこまで複雑な作りじゃなかったから、簡単に作れるだろうし。

「ティナは食事の作法が身に付いているんだな」

 俺がトマソースを使った料理に思考を飛ばしていたら、父上がそんな言葉を口にした。それに母上も頷いている。
 確かに……ティナはカトラリーの使い方が上手だ。それこそ貴族の中でも綺麗だと言われるほどに。
 
「ありがとうございます。教会で一通り教えていただく機会がありまして、身に付けることができました」
「教会ではそのような作法も身に付けられるのね」
「はい。しかし私は貴族街の教会に異動になり、初めて教えていただいたので、全ての教会で身に付けられるというわけでは無いと思います。私は幸運に恵まれたと思っております」

 そう言って微笑んだティナの様子に、父上と母上は感心しきりだ。ティナは勤勉で謙虚で心優しくて、実際に会って反対されることはないだろうと思っていたけど、反対されるどころか積極的に応援されそうな雰囲気になって来た。

「ティナは孤児院でどのような生活をしているのだ?」
「子供達の一通りの世話と、畑仕事がメインです。とても住み心地の良い場所に孤児院を設置いただきましたので、毎日楽しく過ごしております。さらにフィリップ様がお休みの日に孤児院を訪れてくださった際には、魔法陣魔法についても教えていただいています。院長のダミエンに変わり、王宮へ報告に行くこともございます」

 そういえばティナの治癒魔法について、父上と母上に話をしたことはなかったな。二人には話をしておいた方が良い気がする。

「父上、母上、ティナは魔法陣魔法にかなりの才能がありまして、治癒の魔法も使えるようになっています。魔力量も多いので、重い病気や怪我も治すことができるようになると思います」

 俺がそう言ってティナに視線を向けると、ティナは一つ頷いてから二人に視線を向けた。

「幸運にも才能に恵まれ、現在は治癒の力を伸ばしております」
「そうなのか。それは素晴らしいな」
「フィリップも治癒ができると聞いたけれど、同じぐらいの治癒が可能なのかしら?」
「いえ、まだフィリップ様には知識の面で遠く及びませんので、治癒できる疾患の幅は狭いです。しかしこれからも学び続け、少しでも近づけるように努力していきます」

 確かにまだ俺には及ばないけど、ティナの知識を吸収する速度はかなりのものがある。一年後には俺と同程度まで実力を上げているだろう。

「素晴らしいわ。ティナさんは頭も良いのね。計算はできるかしら?」
「基本的な計算はできますが、今まであまり使ってこなかったこともあり、複雑なものは難しいと思います」
「そう。でもそこはこれから学べば良いものね」
「ああ、まだまだ時間はある」

 そうして父上と母上がかなり先走って、これからについてティナと話をしていると、黙々とオムレツを食べ終えたローベルトが躊躇いながらも口を開いた。

「……ティナお姉ちゃん、もうたべおわった? ぼくのおへやにあんないしてもだいじょうぶ?」

 ローベルトは話が終わるのをしばらく待っていたようだけど、さすがに父上と母上の話が長くて待ちきれなかったらしい。本当は無作法だけど、申し訳なさそうに口を開いたローベルトに全員が顔を緩める。

 ローベルトは素直で無邪気で可愛いから、つい皆が甘くなってしまうのだ。まあまだ幼いし、賢い子だからそこまで心配する必要はないだろう。

「そうだな。ローベルトはティナを自室に案内するんだったか?」
「はい!」
「ははっ、そんな笑顔を向けられたら待てとはいえない。では昼食は終わりとしよう。ティナ、ローベルト達に付き合ってあげてくれないか?」
「もちろんです」

 ティナが頷いてローベルトに笑顔を向けたところで、ローベルトは嬉しそうに頬を紅潮させた。マルガレーテも隣で瞳をキラキラと輝かせて嬉しそうだ。

「では父上、母上、お先に失礼いたします」

 俺が代表して二人に退出の挨拶をして、ティナをエスコートしながら弟妹二人も連れて食堂を出た。ここからは子供だけの時間だ。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...