137 / 173
第四章 交易発展編
137、転移板
しおりを挟む
ティナに出立の報告をした次の日。実際に領地へ向けて王都を出るのは一週間後の予定なので、俺は急いで転移板を作るために魔道具工房に来ていた。
「シリル、今日は手伝いをよろしくね」
「かしこまりました。転移板の作成の過程を見学できるなど、とても光栄です! 次からは私も作成できるよう、勉強させていただきます」
「うん。でも俺も成功するかは分からないから、期待しすぎないでいて」
シリルにそう忠告はしたけど、キラキラと輝く瞳はそのままだ。シリルの中で俺はめちゃくちゃ凄い人みたいになってるんだよな……実際はそこまでじゃなくて、もう既存の魔道具作成ならシリルの方が上手いと思うんだけど。
「まずは魔鉱石を削るところからやるんだけど、これは手分けしても大丈夫な作業だから一つずつ作ろうか」
「かしこまりました」
「大きさはこの紙に詳細が書いてあるから、サイズを測りつつこの通りに作って欲しい」
大きさは人が三人は上に乗れるほどの広さにする予定だ。大きすぎても魔力の消費量が多すぎてほとんどの人が使えなくなってしまうし、小さすぎても運べるものが限定されてしまうので、このサイズが最適なのだ。これなら領地にも馬車で運べると思う。
俺とシリルは魔道具工房の床に巨大な魔鉱石を置いて、ノミや金槌を使って形を整えていく。ちなみに今日は俺達がここを占領するので、他の魔道具師は休みだ。テーブルなどは全て端に寄せて、床で作業できるように整えてある。
大まかに形を整えたらヤスリで綺麗に整えて、魔鉱石の削り出しは終了だ。ここで一度、水を使って綺麗に魔鉱石を洗い、それが終わったらさっそく魔力で魔法陣を描いていく。
転移の魔法陣はかなり複雑な作りだ。途中で止まらずに描き続けても五分は絶対にかかってしまうほどに、書き込みが多い魔法陣となっている。これを間違えずに彫らないといけないんだから……難易度はめちゃくちゃ高い。
「ふぅ、とりあえず魔法陣を描くところまではできたみたい」
「フィリップ様、さすがです! こんなに複雑だとは、少し予想外でした」
シリルは俺が描く魔法陣を横で覗き込みながらメモをしていたようで、自分で紙に描いた魔法陣を見直して感心したように声を上げた。
「私が書いたものは歪んでしまいました」
「それは最初だから仕方ないよ。多分シリルも何回か練習すれば描けるようになるから」
俺は実際に作る時のためにって、暇さえあれば難しい魔法陣を描く練習をしているので、転移の魔法陣はもはや描き慣れている。
「今日から頑張って練習しようと思います」
「うん、頑張って。これが一番難しい魔道具だと思うから、これが作れたら怖いものなしだよ」
俺のその言葉にシリルは瞳を輝かせて、絶対に習得しますと宣言した。この様子ならすぐにでもシリルは転移板を作れるようになるだろう。そこまでいけば、もう魔道具作成はシリルに完全に任せても大丈夫かな。
「じゃあ魔法陣を彫っていくから、ここからは静かにお願い」
「かしこまりました。しっかりと目に焼き付けておきます。もし何かありましたら、何でも私にお申し付けください」
「ありがと。じゃあいくよ」
魔法陣を彫り始めたら途中で止める術はないので、俺はとにかく無心で作業を進めた。魔力を流し続けるのを忘れずに、丁寧に早く、とにかく間違えないように。
無駄なことを考えるとすぐに失敗するから、他のものが視界に入らないように気をつけて、目の前の魔法陣だけと向き合った。
そうして魔道具作成を続けること五時間ほどが経過して……俺はやっと、一つの転移板に魔法陣を彫り切ることに成功した。
「一つ完成だぁー」
「フィリップ様、さすがです!」
「めちゃくちゃ疲れた。さすがに今日はもう無理かも」
二つを同日に作れたら良いなと思ってたんだけど、それはかなり無謀だということが分かった。今からもう一つを作り出すとしたら、すぐに集中力が続かなくてミスをしてしまうだろう。
「こちらは明日に回しますか?」
「うん、そうするよ。明日も皆に休んでもらっても大丈夫? 何か納品が近いものとかあったら、俺は魔道具作成部屋に行くけど……」
「いえ、数日は休んでも大丈夫なように調整してあるので、問題ありません」
「そうなんだ。それなら良かったよ」
遠慮なく明日もここを使わせてもらおう。明日は完成したら転移板の作動テストをやりたいから、ファビアン様とマティアス、それから陛下と宰相様にも来てもらおうかな。
そして次の日。俺はまた朝早くから魔道具工房に来ていた。昨日はあの後すぐに帰って休んだので、体力気力は回復している。
「シリル、今日もよろしくね」
「もちろんです!」
俺は昨日と同様に最大限に集中して、もう一枚の転移板に魔法陣を……間違いなく彫り切った。
「終わったぁー」
「本当にお疲れ様です……!」
「シリルもお疲れ様。途中で水分補給をさせてくれたり、本当にありがとう」
「いえ、当たり前のことですから。これで転移ができるのですか?」
「うん。多分大丈夫だと思うよ」
ただここで一度試してみると魔力が足りなくなるかもしれないから、それは皆を集めてからかな。
「空間石に仕舞って執務室に向かおうか」
「かしこまりました」
それから俺達は、絶対に割らないように落とさないように気を付けつつ、転移板を空間石に仕舞った。そして二人で執務室に入ると……俺達が入った瞬間に、全員がこちらに視線を向けた。
転移板の検証をすることは伝えてあったから、皆が楽しみにしていたんだろう。
「フィリップ、完成したのか?」
「はい。まだ試してはいませんが、使えるものができていると思います」
「おおっ、ではさっそく試そう!」
珍しくファビアン様が、興奮した様子で瞳を輝かせて席を立った。陛下や宰相様、マティアスも率先して場所を作るために片付けをしている。
俺はそんな皆の様子を見て苦笑しつつ、執務室の奥に足を向けた。
「シリル、今日は手伝いをよろしくね」
「かしこまりました。転移板の作成の過程を見学できるなど、とても光栄です! 次からは私も作成できるよう、勉強させていただきます」
「うん。でも俺も成功するかは分からないから、期待しすぎないでいて」
シリルにそう忠告はしたけど、キラキラと輝く瞳はそのままだ。シリルの中で俺はめちゃくちゃ凄い人みたいになってるんだよな……実際はそこまでじゃなくて、もう既存の魔道具作成ならシリルの方が上手いと思うんだけど。
「まずは魔鉱石を削るところからやるんだけど、これは手分けしても大丈夫な作業だから一つずつ作ろうか」
「かしこまりました」
「大きさはこの紙に詳細が書いてあるから、サイズを測りつつこの通りに作って欲しい」
大きさは人が三人は上に乗れるほどの広さにする予定だ。大きすぎても魔力の消費量が多すぎてほとんどの人が使えなくなってしまうし、小さすぎても運べるものが限定されてしまうので、このサイズが最適なのだ。これなら領地にも馬車で運べると思う。
俺とシリルは魔道具工房の床に巨大な魔鉱石を置いて、ノミや金槌を使って形を整えていく。ちなみに今日は俺達がここを占領するので、他の魔道具師は休みだ。テーブルなどは全て端に寄せて、床で作業できるように整えてある。
大まかに形を整えたらヤスリで綺麗に整えて、魔鉱石の削り出しは終了だ。ここで一度、水を使って綺麗に魔鉱石を洗い、それが終わったらさっそく魔力で魔法陣を描いていく。
転移の魔法陣はかなり複雑な作りだ。途中で止まらずに描き続けても五分は絶対にかかってしまうほどに、書き込みが多い魔法陣となっている。これを間違えずに彫らないといけないんだから……難易度はめちゃくちゃ高い。
「ふぅ、とりあえず魔法陣を描くところまではできたみたい」
「フィリップ様、さすがです! こんなに複雑だとは、少し予想外でした」
シリルは俺が描く魔法陣を横で覗き込みながらメモをしていたようで、自分で紙に描いた魔法陣を見直して感心したように声を上げた。
「私が書いたものは歪んでしまいました」
「それは最初だから仕方ないよ。多分シリルも何回か練習すれば描けるようになるから」
俺は実際に作る時のためにって、暇さえあれば難しい魔法陣を描く練習をしているので、転移の魔法陣はもはや描き慣れている。
「今日から頑張って練習しようと思います」
「うん、頑張って。これが一番難しい魔道具だと思うから、これが作れたら怖いものなしだよ」
俺のその言葉にシリルは瞳を輝かせて、絶対に習得しますと宣言した。この様子ならすぐにでもシリルは転移板を作れるようになるだろう。そこまでいけば、もう魔道具作成はシリルに完全に任せても大丈夫かな。
「じゃあ魔法陣を彫っていくから、ここからは静かにお願い」
「かしこまりました。しっかりと目に焼き付けておきます。もし何かありましたら、何でも私にお申し付けください」
「ありがと。じゃあいくよ」
魔法陣を彫り始めたら途中で止める術はないので、俺はとにかく無心で作業を進めた。魔力を流し続けるのを忘れずに、丁寧に早く、とにかく間違えないように。
無駄なことを考えるとすぐに失敗するから、他のものが視界に入らないように気をつけて、目の前の魔法陣だけと向き合った。
そうして魔道具作成を続けること五時間ほどが経過して……俺はやっと、一つの転移板に魔法陣を彫り切ることに成功した。
「一つ完成だぁー」
「フィリップ様、さすがです!」
「めちゃくちゃ疲れた。さすがに今日はもう無理かも」
二つを同日に作れたら良いなと思ってたんだけど、それはかなり無謀だということが分かった。今からもう一つを作り出すとしたら、すぐに集中力が続かなくてミスをしてしまうだろう。
「こちらは明日に回しますか?」
「うん、そうするよ。明日も皆に休んでもらっても大丈夫? 何か納品が近いものとかあったら、俺は魔道具作成部屋に行くけど……」
「いえ、数日は休んでも大丈夫なように調整してあるので、問題ありません」
「そうなんだ。それなら良かったよ」
遠慮なく明日もここを使わせてもらおう。明日は完成したら転移板の作動テストをやりたいから、ファビアン様とマティアス、それから陛下と宰相様にも来てもらおうかな。
そして次の日。俺はまた朝早くから魔道具工房に来ていた。昨日はあの後すぐに帰って休んだので、体力気力は回復している。
「シリル、今日もよろしくね」
「もちろんです!」
俺は昨日と同様に最大限に集中して、もう一枚の転移板に魔法陣を……間違いなく彫り切った。
「終わったぁー」
「本当にお疲れ様です……!」
「シリルもお疲れ様。途中で水分補給をさせてくれたり、本当にありがとう」
「いえ、当たり前のことですから。これで転移ができるのですか?」
「うん。多分大丈夫だと思うよ」
ただここで一度試してみると魔力が足りなくなるかもしれないから、それは皆を集めてからかな。
「空間石に仕舞って執務室に向かおうか」
「かしこまりました」
それから俺達は、絶対に割らないように落とさないように気を付けつつ、転移板を空間石に仕舞った。そして二人で執務室に入ると……俺達が入った瞬間に、全員がこちらに視線を向けた。
転移板の検証をすることは伝えてあったから、皆が楽しみにしていたんだろう。
「フィリップ、完成したのか?」
「はい。まだ試してはいませんが、使えるものができていると思います」
「おおっ、ではさっそく試そう!」
珍しくファビアン様が、興奮した様子で瞳を輝かせて席を立った。陛下や宰相様、マティアスも率先して場所を作るために片付けをしている。
俺はそんな皆の様子を見て苦笑しつつ、執務室の奥に足を向けた。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる