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第四章 交易発展編
138、転移板の作動テスト
皆で空間石にソファーや机を仕舞って、執務室の端と端に空間を作った。今までにないほど皆が力を合わせているのが伝わってきて面白い。
「フィリップ、ここにまずは一つ目を設置してくれるか?」
「分かりました。空間石から出しますので少し下がっていただけますか? かなり大きくて重いので気をつけて下さい」
全員の視線をビシバシと感じながら空間石に手を伸ばして、床に転移板を設置すると……皆の視線がキラキラと輝いたのが分かった。
「これが転移板か。なんだかカッコいいな」
そう呟いたのは陛下だ。転移板は大きな板に魔法陣がびっちりと描かれているから、その緻密さがカッコ良く映るのだろう。
「こんなに大きなものなんだな」
「はい。ただ大きさは変えられます。大きくするのは大変ですが、小さくするのはそこまで難しくはありません。そうですね……人が一人乗る程度の大きさまでなら問題なく小さくできると思います」
前世では小さな転移板も色んなところで使われていた。一番は手紙の輸送だ。手紙などの軽くて小さいものには、大きな転移板は必要ないのだ。
「それ以上に小さくするのは難しいの?」
「うん。それ以上は魔法陣に必要な情報を書き込み切れなくなっちゃうんだ」
「そうなんだ」
マティアスは意外と冷静で、転移板の情報を紙にメモしているようだ。
「もう一つも設置して試してみよう」
「分かりました」
ファビアン様のその言葉によって転移板を使う準備を整え、俺は片方の転移板の上にいくつかの食べ物や紙、家具や石など思いつく限りのものを乗せた。
「まずはこれらのものを転移させてみますね」
「これがあちらに移るのだな」
「そうです。ちなみに転移する距離は消費魔力量に関係はありませんので、転移板を設置さえすればどこまでも転移させられます」
「それは凄いな……ではここ王都から一番遠い領地へも転移可能なのだな」
「はい。問題なくできるはずです」
俺のその説明を聞いて、今まで転移板を輝く瞳で見つめていた皆さんが、表情を真剣なものに変えた。転移板の有能性を改めて認識しているのだろう。
「魔力を込めますので見ていてください。数人の方は向こうの転移板の様子を見てもらえますか?」
「かしこまりました」
そうして準備が整ったところで、俺は転移板の傍らにしゃがみ込んだ。そして両手を転移板に軽く置いて深呼吸をし、集中して一気に魔力を流し込む。
うわっ……この感覚は久しぶりだ。転移板は魔力を吸われるって感じが強くて、慣れるまでは気分が悪くなるのだ。
魔力を込め始めた時から転移板は光を放ち始め、その光が強くなってピカッと何も見えなくなるほどの強い光が放たれると……次の瞬間には、光は完全に消えて転移板の上には何もなかった。
「成功です! そちらはどうですか?」
送り先の転移板を見てもらっていた文官に様子を聞くと、文官は興奮の面持ちでこちらに視線を向けた。
「て、転移板が光り始めて、強く光ったと思ったら次の瞬間には、そちらにあったものがそのままこちらに!」
「それは本当か!?」
全員で慌てて向こうの転移板に向かうと、送る前と全く同じ状態のものが転移板の上に鎮座していた。
「触って確認してみてください。変質したりはしていないはずです」
「――ああ、どれを見ても触っても全てそのままだ。本当に凄いな」
「書類に書かれた文字も消えたりしていませんし、完璧です。こんなに一瞬で遠くに物を送れるなんて……どれほど国の在り方を変えるのか、想像もできないですね」
マティアスはそう呟くと、転移板をじっと見つめた。これが国に革新をもたらすことは確実だろう。特にこの国には運送業を生業にしている人がほとんどいないから、転移板の普及によって損を被る人がいない。
これはかなり大きいことだ。反対する人達がいると、その人達に納得してもらって他の仕事を紹介して……とかなりの労力が必要になるけれど、その労力がいっさい必要ないのだから。
ハインツとして生きていたあの世界よりも、よほど転移板の普及は早いだろう。
国が発展してないことでこんなメリットがあるなんて思わなかったな……喜んで良いのか悲しんで良いのか分からない。
「次は人の転移を試してみましょうか。これは物を送れることもとても便利ですが、やはり一番は人の転移だと思います。馬車で長い時間をかけて、危険と隣り合わせて領地に向かわなければいけないという問題を解消できます」
俺のその言葉に陛下やファビアン様が頷いてくれたので、さっそく人の転移を試してみることになった。
先ほど転移させた品物をとりあえず近くのテーブルの上に片付けて、俺は靴を脱いで片方の転移板の上に登る。
「え、登って大丈夫なの?」
「うん、問題ないよ。ただ少しでも転移板の劣化速度を抑えるために、靴を脱いで上がって欲しい」
「了解。そうメモしておくよ」
「フィリップ、人はまとめて転移も可能なのか?」
俺が乗った転移板を難しい表情で見つめているファビアン様が、そう口にした。
「この板の上に乗れる人数でしたら転移可能です。ちなみにその場合は誰が魔力を込めても問題ありません。また転移する人ではなく、先ほどの私のように外から魔力を込めるのでも大丈夫です」
「ほう、外からでも大丈夫なのだな。では次は私が魔力を込めても良いだろうか?」
「もちろん構いませんが……魔力を一気に吸われる感じになりますので、気分が悪くなる恐れがあります」
「それでも大丈夫だ」
「分かりました。ではお任せします」
俺はファビアン様が転移板の傍に膝をついたのを確認し、転移に備えて両足に力を入れた。
「よろしくお願いします」
「分かった、いくぞ」
ファビアン様は瞳を閉じて一度深呼吸をしてから、目を開いて一気に魔力を込めた。
「うっ、確かにこれは凄いな……」
そんな声が聞こえてきたけどファビアン様は魔力の供給を止めることなく、転移板は転移に必要な魔力を得てピカッと強く光り輝いた。するとその光と同時に、俺は地面が突然なくなったような浮遊感を感じ、数秒後にはもう一つの転移板の上にいた。
「フィリップ、ここにまずは一つ目を設置してくれるか?」
「分かりました。空間石から出しますので少し下がっていただけますか? かなり大きくて重いので気をつけて下さい」
全員の視線をビシバシと感じながら空間石に手を伸ばして、床に転移板を設置すると……皆の視線がキラキラと輝いたのが分かった。
「これが転移板か。なんだかカッコいいな」
そう呟いたのは陛下だ。転移板は大きな板に魔法陣がびっちりと描かれているから、その緻密さがカッコ良く映るのだろう。
「こんなに大きなものなんだな」
「はい。ただ大きさは変えられます。大きくするのは大変ですが、小さくするのはそこまで難しくはありません。そうですね……人が一人乗る程度の大きさまでなら問題なく小さくできると思います」
前世では小さな転移板も色んなところで使われていた。一番は手紙の輸送だ。手紙などの軽くて小さいものには、大きな転移板は必要ないのだ。
「それ以上に小さくするのは難しいの?」
「うん。それ以上は魔法陣に必要な情報を書き込み切れなくなっちゃうんだ」
「そうなんだ」
マティアスは意外と冷静で、転移板の情報を紙にメモしているようだ。
「もう一つも設置して試してみよう」
「分かりました」
ファビアン様のその言葉によって転移板を使う準備を整え、俺は片方の転移板の上にいくつかの食べ物や紙、家具や石など思いつく限りのものを乗せた。
「まずはこれらのものを転移させてみますね」
「これがあちらに移るのだな」
「そうです。ちなみに転移する距離は消費魔力量に関係はありませんので、転移板を設置さえすればどこまでも転移させられます」
「それは凄いな……ではここ王都から一番遠い領地へも転移可能なのだな」
「はい。問題なくできるはずです」
俺のその説明を聞いて、今まで転移板を輝く瞳で見つめていた皆さんが、表情を真剣なものに変えた。転移板の有能性を改めて認識しているのだろう。
「魔力を込めますので見ていてください。数人の方は向こうの転移板の様子を見てもらえますか?」
「かしこまりました」
そうして準備が整ったところで、俺は転移板の傍らにしゃがみ込んだ。そして両手を転移板に軽く置いて深呼吸をし、集中して一気に魔力を流し込む。
うわっ……この感覚は久しぶりだ。転移板は魔力を吸われるって感じが強くて、慣れるまでは気分が悪くなるのだ。
魔力を込め始めた時から転移板は光を放ち始め、その光が強くなってピカッと何も見えなくなるほどの強い光が放たれると……次の瞬間には、光は完全に消えて転移板の上には何もなかった。
「成功です! そちらはどうですか?」
送り先の転移板を見てもらっていた文官に様子を聞くと、文官は興奮の面持ちでこちらに視線を向けた。
「て、転移板が光り始めて、強く光ったと思ったら次の瞬間には、そちらにあったものがそのままこちらに!」
「それは本当か!?」
全員で慌てて向こうの転移板に向かうと、送る前と全く同じ状態のものが転移板の上に鎮座していた。
「触って確認してみてください。変質したりはしていないはずです」
「――ああ、どれを見ても触っても全てそのままだ。本当に凄いな」
「書類に書かれた文字も消えたりしていませんし、完璧です。こんなに一瞬で遠くに物を送れるなんて……どれほど国の在り方を変えるのか、想像もできないですね」
マティアスはそう呟くと、転移板をじっと見つめた。これが国に革新をもたらすことは確実だろう。特にこの国には運送業を生業にしている人がほとんどいないから、転移板の普及によって損を被る人がいない。
これはかなり大きいことだ。反対する人達がいると、その人達に納得してもらって他の仕事を紹介して……とかなりの労力が必要になるけれど、その労力がいっさい必要ないのだから。
ハインツとして生きていたあの世界よりも、よほど転移板の普及は早いだろう。
国が発展してないことでこんなメリットがあるなんて思わなかったな……喜んで良いのか悲しんで良いのか分からない。
「次は人の転移を試してみましょうか。これは物を送れることもとても便利ですが、やはり一番は人の転移だと思います。馬車で長い時間をかけて、危険と隣り合わせて領地に向かわなければいけないという問題を解消できます」
俺のその言葉に陛下やファビアン様が頷いてくれたので、さっそく人の転移を試してみることになった。
先ほど転移させた品物をとりあえず近くのテーブルの上に片付けて、俺は靴を脱いで片方の転移板の上に登る。
「え、登って大丈夫なの?」
「うん、問題ないよ。ただ少しでも転移板の劣化速度を抑えるために、靴を脱いで上がって欲しい」
「了解。そうメモしておくよ」
「フィリップ、人はまとめて転移も可能なのか?」
俺が乗った転移板を難しい表情で見つめているファビアン様が、そう口にした。
「この板の上に乗れる人数でしたら転移可能です。ちなみにその場合は誰が魔力を込めても問題ありません。また転移する人ではなく、先ほどの私のように外から魔力を込めるのでも大丈夫です」
「ほう、外からでも大丈夫なのだな。では次は私が魔力を込めても良いだろうか?」
「もちろん構いませんが……魔力を一気に吸われる感じになりますので、気分が悪くなる恐れがあります」
「それでも大丈夫だ」
「分かりました。ではお任せします」
俺はファビアン様が転移板の傍に膝をついたのを確認し、転移に備えて両足に力を入れた。
「よろしくお願いします」
「分かった、いくぞ」
ファビアン様は瞳を閉じて一度深呼吸をしてから、目を開いて一気に魔力を込めた。
「うっ、確かにこれは凄いな……」
そんな声が聞こえてきたけどファビアン様は魔力の供給を止めることなく、転移板は転移に必要な魔力を得てピカッと強く光り輝いた。するとその光と同時に、俺は地面が突然なくなったような浮遊感を感じ、数秒後にはもう一つの転移板の上にいた。
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