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第四章 交易発展編
140、領地へ
転移板が完成してから数日後の朝。
俺は貴族街にある外門に来ていた。いつもは森に行くのに便利な平民街の外門から街の外に出ているけれど、今日は森に行くわけでは無いので貴族街の外門を使う。
「フィリップ様、騎士団は全員揃っております」
「冒険者も準備完了です」
ヴィッテ部隊長とパトリスが報告に来てくれた。今回領地に向かうのは、いつも俺と一緒に森を探索しているメンバーだ。
「二人とも、報告ありがとう。出発まで休んでて」
「かしこまりました」
皆は騎士と冒険者で二人一組となって、騎乗で領地に向かう。俺はニルスとフレディ、それから父上も一緒に行くことになったので父上とその従者、護衛と共に馬車だ。
今日はいつも乗っている馬車ではなくて大きい馬車なので、少しだけ楽しみだったりする。あんまり大きい方の馬車には乗る機会がないんだよね。
「フィリップ、緊張しているか?」
「いえ、緊張よりも楽しみな気持ちが大きいです。私は領地の様子をほとんど覚えていませんので、初めて向かうような気持ちです」
「確かにフィリップが小さい頃に一度だけだからな。領地の者達は改めて紹介しよう」
「よろしくお願いします」
馬車の準備がまだ終わらないようなので、俺は見送りに来てくれている家族とティナのところに向かった。
「母上、マルガレーテ、ローベルト、行って参ります」
「ええ、気をつけて行ってくるのよ」
「もちろんです。父上のことはお任せください」
「ふふっ、頼りにしているわ」
母上は優しい笑みを浮かべて、俺のことを一度だけ抱きしめてくれる。久しぶりに抱きしめられた母上の腕の中は、なんだか安心した。
「お兄様、頑張ってください!」
「兄上、行ってらっしゃい……」
マルガレーテは笑顔で見送りをしてくれているけど、ローベルトはちょっと泣きそうだ。俺と長期間会えない事実が悲しいなんて……嬉しいな。
「マルガレーテ、ありがとう。ローベルト、俺は絶対無事に帰ってくるから大丈夫だよ。父上もいるからね。それに転移板の話はしたでしょう? お休みの日には帰ってくるよ」
「うん、分かってる。兄上、頑張ってね」
「もちろん。俺が転移板で帰ってきたら皆も領地に転移してもらう予定だから、ローベルトも向こうで頑張らないとだよ」
俺がその言葉を発すると、悲しそうだったローベルトの表情が嬉しそうに輝いた。ローベルトは三年経って六歳になりかなり成長したけど、やっぱりまだまだ子供らしいところもあるのだ。
「そうだった。楽しみにしてるね!」
「うん。それまでは頑張って勉強してて。領地の人にローベルトができる子だって見せないと」
「僕、頑張るよ! 僕は公爵家を継ぐからね!」
ローベルトは俺の言葉にやる気を出したらしく、拳を握って鼻息荒くそう宣言した。最近はローベルトも物事を理解できるようになっているので、ローベルトが公爵位を継いで俺は侯爵位をもらうことも話しているのだ。
完全にでは無いけど少しは理解しているようで、最近は勉強を頑張っている。本当に頼もしい弟だ。
「じゃあ皆、行ってきます」
「気をつけてね」
「ヴィクトリア、マルガレーテ、ローベルト、行ってくる」
「あなたも行ってらっしゃい。気をつけてね」
「父上も頑張ってね!」
「お父様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
俺の後にやってきた父上が皆に挨拶をしているのを見て、俺は皆のところを離れた。そして少し離れた場所にいるティナのところに向かう。
「ティナ、行ってくるね」
「はい。……フィリップ様、絶対にご無事で戻ってきてください」
「もちろんだよ。まだまだやりたいことはたくさんあるからね。ティナを残すなんてこと絶対にしないよ」
「ありがとうございます。信じています」
ティナは不安そうな表情を見せながらも、俺に笑顔を向けてくれた。家族皆は父上が何度か領地に行ってるから慣れてるけど、ティナは俺が遠くの領地に行くのは初めてだからな。やっぱり不安は消せないのだろう。
「途中で転移板で帰ってくるから、そしたらティナに会いに来るよ」
「はい。楽しみに待っていますね。ただ、無理はしないでください」
「それはもちろん。でもティナのところに帰ってくれば疲れは癒えるから大丈夫」
「ふふっ、ではフィリップ様を癒せるように美味しいお菓子を用意しておきます」
ティナと話しながら美味しいお菓子を食べるとか……それだけで疲れは吹き飛ぶな。
「楽しみにしてるよ。ティナも転移板で領地に行くことになるだろうから、その準備もよろしくね」
「もちろんです」
そうして俺はティナと笑顔を向けあって、ティナとの会話に癒されて馬車に乗り込んだ。ついに領地へと出発だ。
街を出てから数時間が経過し、俺は馬車の窓を開けて外の景色を眺めていた。辛うじて整備はされているガタガタの道路の脇はすぐに草原となっていて、風が吹くと草がなびいて綺麗なのだ。
ただ魔物が草原に隠れて馬車に近づけるので、魔物の襲撃には気をつけないといけない。馬車の周りを走る騎士と冒険者は、真剣な表情で気を張っている。
「フィリップ、あと数時間で街に着くだろう。着いてからの流れをもう一度確認しても良いか?」
「もちろんです」
俺は父上に話しかけられたことで、窓の外に向けていた視線を馬車の中に戻した。フィリップになった当初は馬車の中は暗いのが普通だったけど、今は雷球があるので外よりも明るいぐらいだ。
「あと数時間、日が沈む前には領都へ着くだろう。着いたら門を開けてもらい中に入って、今日はそのまま屋敷へ向かう。そして屋敷では家令を始めとした使用人達に紹介する予定だ。そのつもりでいるように」
「かしこまりました」
「その後は夕食をとったら今日はすぐに休みだ。明日からは忙しいからちゃんと休むんだぞ」
「分かっています。明日はさっそく領地内を見て回るのですよね?」
「その予定だ」
領地を見て回るのは楽しみだなぁ……父上が領地の改革も始めているので、綺麗に整ってるはずだ。王都よりも土地が空いていて自然が多いって話だから、新たに畑を作るのは簡単だろう。
「早く街に着いてほしいですね」
「そうだな」
それからも父上と話をしながら馬車に揺られ、特別な問題はなく領都に到着することができた。まだ日が沈み始めたぐらいの時間だ。早く中を見てみたいな。
俺は貴族街にある外門に来ていた。いつもは森に行くのに便利な平民街の外門から街の外に出ているけれど、今日は森に行くわけでは無いので貴族街の外門を使う。
「フィリップ様、騎士団は全員揃っております」
「冒険者も準備完了です」
ヴィッテ部隊長とパトリスが報告に来てくれた。今回領地に向かうのは、いつも俺と一緒に森を探索しているメンバーだ。
「二人とも、報告ありがとう。出発まで休んでて」
「かしこまりました」
皆は騎士と冒険者で二人一組となって、騎乗で領地に向かう。俺はニルスとフレディ、それから父上も一緒に行くことになったので父上とその従者、護衛と共に馬車だ。
今日はいつも乗っている馬車ではなくて大きい馬車なので、少しだけ楽しみだったりする。あんまり大きい方の馬車には乗る機会がないんだよね。
「フィリップ、緊張しているか?」
「いえ、緊張よりも楽しみな気持ちが大きいです。私は領地の様子をほとんど覚えていませんので、初めて向かうような気持ちです」
「確かにフィリップが小さい頃に一度だけだからな。領地の者達は改めて紹介しよう」
「よろしくお願いします」
馬車の準備がまだ終わらないようなので、俺は見送りに来てくれている家族とティナのところに向かった。
「母上、マルガレーテ、ローベルト、行って参ります」
「ええ、気をつけて行ってくるのよ」
「もちろんです。父上のことはお任せください」
「ふふっ、頼りにしているわ」
母上は優しい笑みを浮かべて、俺のことを一度だけ抱きしめてくれる。久しぶりに抱きしめられた母上の腕の中は、なんだか安心した。
「お兄様、頑張ってください!」
「兄上、行ってらっしゃい……」
マルガレーテは笑顔で見送りをしてくれているけど、ローベルトはちょっと泣きそうだ。俺と長期間会えない事実が悲しいなんて……嬉しいな。
「マルガレーテ、ありがとう。ローベルト、俺は絶対無事に帰ってくるから大丈夫だよ。父上もいるからね。それに転移板の話はしたでしょう? お休みの日には帰ってくるよ」
「うん、分かってる。兄上、頑張ってね」
「もちろん。俺が転移板で帰ってきたら皆も領地に転移してもらう予定だから、ローベルトも向こうで頑張らないとだよ」
俺がその言葉を発すると、悲しそうだったローベルトの表情が嬉しそうに輝いた。ローベルトは三年経って六歳になりかなり成長したけど、やっぱりまだまだ子供らしいところもあるのだ。
「そうだった。楽しみにしてるね!」
「うん。それまでは頑張って勉強してて。領地の人にローベルトができる子だって見せないと」
「僕、頑張るよ! 僕は公爵家を継ぐからね!」
ローベルトは俺の言葉にやる気を出したらしく、拳を握って鼻息荒くそう宣言した。最近はローベルトも物事を理解できるようになっているので、ローベルトが公爵位を継いで俺は侯爵位をもらうことも話しているのだ。
完全にでは無いけど少しは理解しているようで、最近は勉強を頑張っている。本当に頼もしい弟だ。
「じゃあ皆、行ってきます」
「気をつけてね」
「ヴィクトリア、マルガレーテ、ローベルト、行ってくる」
「あなたも行ってらっしゃい。気をつけてね」
「父上も頑張ってね!」
「お父様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
俺の後にやってきた父上が皆に挨拶をしているのを見て、俺は皆のところを離れた。そして少し離れた場所にいるティナのところに向かう。
「ティナ、行ってくるね」
「はい。……フィリップ様、絶対にご無事で戻ってきてください」
「もちろんだよ。まだまだやりたいことはたくさんあるからね。ティナを残すなんてこと絶対にしないよ」
「ありがとうございます。信じています」
ティナは不安そうな表情を見せながらも、俺に笑顔を向けてくれた。家族皆は父上が何度か領地に行ってるから慣れてるけど、ティナは俺が遠くの領地に行くのは初めてだからな。やっぱり不安は消せないのだろう。
「途中で転移板で帰ってくるから、そしたらティナに会いに来るよ」
「はい。楽しみに待っていますね。ただ、無理はしないでください」
「それはもちろん。でもティナのところに帰ってくれば疲れは癒えるから大丈夫」
「ふふっ、ではフィリップ様を癒せるように美味しいお菓子を用意しておきます」
ティナと話しながら美味しいお菓子を食べるとか……それだけで疲れは吹き飛ぶな。
「楽しみにしてるよ。ティナも転移板で領地に行くことになるだろうから、その準備もよろしくね」
「もちろんです」
そうして俺はティナと笑顔を向けあって、ティナとの会話に癒されて馬車に乗り込んだ。ついに領地へと出発だ。
街を出てから数時間が経過し、俺は馬車の窓を開けて外の景色を眺めていた。辛うじて整備はされているガタガタの道路の脇はすぐに草原となっていて、風が吹くと草がなびいて綺麗なのだ。
ただ魔物が草原に隠れて馬車に近づけるので、魔物の襲撃には気をつけないといけない。馬車の周りを走る騎士と冒険者は、真剣な表情で気を張っている。
「フィリップ、あと数時間で街に着くだろう。着いてからの流れをもう一度確認しても良いか?」
「もちろんです」
俺は父上に話しかけられたことで、窓の外に向けていた視線を馬車の中に戻した。フィリップになった当初は馬車の中は暗いのが普通だったけど、今は雷球があるので外よりも明るいぐらいだ。
「あと数時間、日が沈む前には領都へ着くだろう。着いたら門を開けてもらい中に入って、今日はそのまま屋敷へ向かう。そして屋敷では家令を始めとした使用人達に紹介する予定だ。そのつもりでいるように」
「かしこまりました」
「その後は夕食をとったら今日はすぐに休みだ。明日からは忙しいからちゃんと休むんだぞ」
「分かっています。明日はさっそく領地内を見て回るのですよね?」
「その予定だ」
領地を見て回るのは楽しみだなぁ……父上が領地の改革も始めているので、綺麗に整ってるはずだ。王都よりも土地が空いていて自然が多いって話だから、新たに畑を作るのは簡単だろう。
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