転生したら唯一の魔法陣継承者になりました。この不便な世界を改革します。

蒼井美紗

文字の大きさ
141 / 173
第四章 交易発展編

141、領地の使用人

 馬車から父上の従者であるメディーが降りていき、門番と少し話をするとすぐに門が開かれた。馬車がゆっくりと進んで門の中に入ると、兵士の格好をした男性が出迎えてくれる。
 
「旦那様、ようこそお越しくださいました」
「出迎えありがとう。特に変わりはないか?」
「はい。旦那様のおかげで快適な毎日を過ごしております」

 父上は領民に慕われていると聞いていたけど、予想以上みたいだ。話をしている兵士もその後ろにいる兵士も、さらに少し遠くに見える領民も皆が嬉しそうに俺達が乗る馬車を見ている。

「それは良かった。ではまた後日街を回るので、本日は屋敷に向かう」
「かしこまりました。お通りください」

 そうして俺達は簡単なチェックを通り抜け、街の中へ入った。街中は王都ほど建物が密集していなく、人々がのびのびと暮らしているようだ。

「街の中は綺麗ですね」
「フィリップが王都の清掃をして給水器や降雨器を設置した際に、同じことをしたからな。フィリップの功績とも言える」

 俺の功績か……そう言われると嬉しいな。目の届く範囲だけではなく、こうして遠くの街にも影響を与えていると分かると、自分がやってきたことの効果が出ているとより実感できる。

 それから領民に手を振りながら屋敷に向かうと、屋敷のエントランス前にはたくさんの使用人が出迎えに出てきてくれていた。

「皆、久しぶりだな」
「旦那様、お久しぶりでございます。無事にご到着されて何よりです。そしてフィリップ様、覚えていらっしゃらないと思いますので、ご挨拶をさせてください。家令のクレマンと申します」
「クレマン、丁寧にありがとう。これからよろしくね」
「よろしくお願いいたします」

 クレマンは少し髪が薄い男性だ。昔に会ったことがあるって話だったけど、予想通り全く記憶にない、やっぱり子供の頃の記憶って残ってないんだな。

「皆の者、長男のフィリップだ。顔を覚えてほしい」
「フィリップ・ライストナーです。この領地を、そして国を良くしていきたいと思ってる。これから力を貸してほしい」

 俺のそんな挨拶に、使用人の皆は笑みを浮かべてしっかりと頭を下げてくれた。

「よろしくお願いいたします」

 そして全員で声を揃えて挨拶をすると、ピッタリと揃えて顔を上げる。ちゃんと教育されてるんだな……これだけでクレマンの有能さが分かる。

「クレマン、一緒に来た騎士と冒険者に部屋を案内してくれ。私達は私室に向かう」
「かしこまりました。お任せください」

 エントランスでの顔合わせを終えた俺達は、屋敷の中に入った。こっちの屋敷には父上の部屋しかないので、俺は客室を使うようで、一番広い客室に案内された。
 中に入ると綺麗に整えられていて、居心地は良さそうだ。

「ニルス、フレディ、王都の屋敷とそこまで違いはない?」
「はい。同じように快適に過ごしていただけると思います。少し狭い程度ですね」
「それなら良かった。こっちでの生活もよろしくね」
「もちろんでございます」

 俺は設置されている椅子に腰掛けて、ニルスとフレディが忙しく部屋を動き回る様子を眺めた。まだ夕食まで一時間ぐらいはあるかな……それまでここでのんびりしていよう。さすがに朝から夕方まで馬車に乗っているのは疲れた。

「フィリップ様、お茶をお淹れいたしましょうか?」
「良いの? じゃあお願いしようかな」
「かしこまりました。少々お待ちください」

 ニルスは空間石からポットを取り出すと、魔法陣魔法で熱湯を出現させた。もうニルスもフレディも魔法陣魔法は使いこなせるようになっている。特にニルスは難易度が高い魔法陣もお手のものだ。フレディは苦手みたいで簡単なものだけだけど、実戦でも使えている。

 ニルスがお茶を淹れると、すぐに部屋中が良い香りに包まれた。落ち着くなぁ……やっぱりお茶は良い。もう水だけを飲んでいた生活には戻りたくない。

「果物も食べられますか?」
「ううん、もうすぐ夕食だからお茶だけで良いよ」
「かしこまりました」

 それから俺はお茶を飲みながら二人と会話をして疲れを癒し、夕食の時間に食堂へ向かった。食堂に入るとすでに父上がいて、料理人と話をしているようだ。

「遅れてすみません」
「いや、私が早かっただけだから大丈夫だ。料理長と話があったからな。料理長、夕食を頼む」
「かしこまりました」

 ワゴンに載って運ばれてきた夕食は、とても美味しそうなピザだった。ムギはその優秀さからすぐにたくさんの領地へと広められ、今では国中のどこにいてもパンを食べることができるのだ。
 まだ領民には広まっていないところは多いけど、貴族の屋敷なら食べることができる。

「どうぞお召し上がりください」
「美味しそうだよ。ありがとう」

 俺が本心からそう告げると、料理長は嬉しそうに微笑んでくれた。

 ピザは肉がたくさん載っている、かなりボリュームのあるものだった。味付けには塩といくつかの香辛料が使われていて、トマソースもとても味わい深い。こっちの屋敷の料理長も腕が良いな。

「父上、とても美味しいですね」
「ああ、本当に食事は改善したな」

 父上がしみじみと呟いたその言葉には、いろいろな思いが乗っているようだった。三年前と比べたらしみじみもするよな……蒸したジャモにほんの少しの肉と、ほぼ具材の入ってないスープ。それが朝昼晩、ほとんど全ての食卓に並ぶ生活だったのだから。

「フィリップ、我が領地には王都周辺にはない植物があるかもしれないのだったか?」
「はい。まだ見ぬ美味しい植物があると思います」
「そうか、ならばそれを見つけたらまだこの食卓は豊かになるのだな」
「もちろんです。そのために頑張ります」
「私も協力する」
「ありがとうございます」

 俺が今欲しいのはとにかくイネだ。イネから取れるコメが欲しくてたまらない。後はミルクと砂糖も欲しいな。他にも欲しいものはたくさんあるんだけど、まずはこの三つだろう。この三つがあるだけで、また一気に食文化が発展するはずだ。

「領地を見て回ったら、さっそく森の探索に行く予定ですので期待していてください」
 
 俺のその言葉に父上が優しく微笑んでくれて、そうして夕食は和やかな雰囲気で終わった。明日から頑張ろう。
感想 22

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/