転生したら唯一の魔法陣継承者になりました。この不便な世界を改革します。

蒼井美紗

文字の大きさ
152 / 173
第四章 交易発展編

152、コメのお披露目

しおりを挟む
 皆が領地に来て数日が経過し、昨日の午後に皆は王都に戻った。俺はこの数日は皆と一緒にのんびりと過ごしていたので、今日からは遅れを取り戻すためにもバリバリと仕事をこなすつもりだ。

 まずは何よりも先にコメの量産体制を整えないといけないので、今日は領民にコメのお披露目会をする予定でいる。クレマンを始めとして領都邸の使用人の皆が手伝ってくれてお披露目会の準備は済んでいるので、後は俺が上手くやるだけだ。

「父上、そろそろ向かいましょう」
「そうだな。今日は頼んだぞ」
「もちろんです」

 一応父上も隣にいてくれることになったけど、主に説明するのは俺なので頑張らないと。俺はニルスに色々と荷物を持ってもらって、屋敷から出て街中にある広場に向かった。

 広場には大きな木製の台が置いてあって、その上にテーブルが設置されている。俺はその台の上に登って、机の上にはニルスに持ってきてもらったイネやコメを置いた。

「旦那様、フィリップ様!」

 台の上からぐるっと辺りを見回してみると、見学のために多くの領民が集まってくれているのが分かる。前の方にはできる限り参加して欲しいと頼んだ、農家の皆が真剣な表情でいる。

 俺はそんな皆を見回して一度深呼吸をしてから、皆に届くようにお腹から声を張った。

「皆、集まってくれてありがとう。今日はイネという植物のお披露目をするよ。これは近くの森の中に生えていたもので、とても優秀な作物なんだ。これからこの領地の特産品にしたいと思ってる。だから皆にはイネを大量生産して欲しいんだ。ということで、今日は真剣に話を聞いてくれたら嬉しい」
「皆、イネはとても美味しい作物だった。ムギから作られるパンを食べたことがあるだろうか? その代わりになるようなものだ。皆が一般的に食べているものと比較したらジャモだな。ジャモの代わりに毎日食べるものになるだろう。その認識でイネを見てほしい」

 俺の言葉の後に父上が補足をしてくれて、集まってくれた皆はイネに興味津々な様子になった。机の上に置いているイネを見ようと身を乗り出している人がたくさんいる。

「まずはこれを見てほしい。これが収穫して何も手を加えていないイネだよ。これが地面から生えてくるんだ。食べられるのは先についている細かい種みたいな部分。ここが実なんだ」

 そう言いながらイネを持ち上げると、イネは風に吹かれてサラサラと揺らめいた。イネが風に揺れてるのって綺麗だよな。

「確かにムギみたいだな」
「ムギと味は違うんかね?」
「食べてみたいな」

 そんな皆の声を聞きながらしばらくイネを掲げて、次は外皮などを取り除いたコメを皆に見せる。これはお皿に載せてあるから見づらいかな……

「これがさっきのイネの外皮などを取り除いて、中の実を取り出したものだよ。この状態になったらコメっていうんだ。……見えないかな? これから皆にはコメを少しずつ食べてもらうから、それを取りに来てもらうときにコメも一緒に見てほしい」

 俺はそう言ってコメが載った皿を机に下ろすと、クレマンに合図をして使用人の皆に炊いたコメを持って来てもらった。
 いくつもの大きな鍋に入った熱々のコメは、お腹がすく香りをあたりに漂わせる。

「森の中で収穫期のイネをたくさん集めてもらって、それをコメにして少量の水で茹でた、正確には炊いたっていうんだけど、そうして調理したものだよ。何も味をつけてない状態で食べてみてほしい。少し甘みがあってもちもちしてて美味しいと思うんだ」

 俺のその言葉を聞いて、皆は鍋に興味津々だ。

「なんか良い香りがするな」
「あんまり嗅いだことない匂いじゃないか?」
「美味いのかな」
「前にいる方から一列に並んでください。こちらで炊く前のコメを見てから、こちらで一口分ですが炊いたコメを受け取って食べてみてください」

 ニルスがそう言って領民の皆を誘導してくれたので、スムーズにコメの試食を始められた。まず一番に来たのは、一番前で真剣な表情で俺の話を聞いてくれていた農家のおじさんだ。

「ほう、これがコメか……硬い質感だな」
「うん。そのままだと食べられないから、何かしら火を通さないとなんだ。茹でたり煮込んだり、基本的には水気があるもので調理するよ。そのまま焼くだけだと、そこまで美味しくないかな。焼くにしてもまずは茹でてから焼いたほうが美味しくなる」
「火を通しただけだと柔らかくならないんだな。ふむ、面白い。ではそちらをいただこう」

 ニルスがスプーンに掬ったコメをおじさんの掌に載せると、おじさんはいろんな角度からコメを観察して匂いを嗅いでから口に入れた。そして数回咀嚼して驚きの表情を浮かべる。

「これは食感が面白いな……今までにないものだ。確かに噛めば噛むほどに少し甘みが出てくる。うん、美味いな」

 おおっ、気に入ってもらえたみたいだ。農家に気に入ってもらえるかどうかはかなり重要だから良かった。第一関門突破だ。

「これを育てるのはやりがいがある仕事だな」
「そう言ってもらえて良かった。農家の皆にはこれから頑張ってもらわないとだから、よろしくね」
「ああ、任せておけ」

 そうして最初に高評価を得たコメは、その後も皆に大絶賛された。

「おおっ、これは新しい」
「俺は凄い好きだ」
「あら、とっても美味しいじゃない!」

 俺は皆のそんな感想を飽きもせずにずっと聞いていた。領地の特産品にするには皆が気に入ってくれないと始まらないからな……本当に良かった。それにコメの美味しさを分かってもらえて凄く嬉しい。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...