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3、人間との遭遇
「お前、脚大丈夫か?」
とりあえず襲われることはなさそうだったので怪我の心配をしてみると、言葉が伝わっているのかその動物は瞳を潤ませて感動的な表情を浮かべた……気がする。
「ヒヒンッ、ヒヒヒンッ、ヒヒーン!」
……何を言ってるのか全く分からない。ただ何となく悪いことを言われているわけじゃないと思う。
「よく分かんないけど、仲間? が増えて嬉しいよ」
こんなところに一人で放り出されて寂しいので、ここぞとばかりに仲間宣言をしてみると、顔をべろりと舐められた。
「うわっ、ちょっとそれは止めてくれ」
「ヒヒーン……」
落ち込んでるよ……本当に俺が言ってることが分かるのかもしれない。この世界の動物って凄いな。
それにしても仲間となると、脚の怪我が可哀想だ。どうにかして治してあげられたら良いんだけど……そうだ、スラくんをこいつに預けてみたらどうだろう。
何故かスラくんを抱きしめてると疲れを感じないし、昨日の夜転んだ時にできた手のひらの怪我も、朝には無くなっていたのだ。
「スラくん、こいつの怪我を治したりできる?」
俺のその質問に、スラくんはぷるんぷるんっと大きく震えて肯定を示してくれたので、スラくんを足の怪我に近づけてみると……一瞬だけスラくんが光り輝き、足の怪我は影も形もなくなった。
……マジか、本当に怪我を治せるのか。この世界のスライムってもしかして強キャラ?
「ヒヒンッ!」
「もう痛くないか?」
「ヒヒーンッ!」
馬のような動物はよほど嬉しかったのか、大きな声で嘶いて俺の顔をべろべろ舐めてきた。だ、だからそれは嫌なんだって……!
それからしばらく経つとやっとこいつも落ち着いてきたみたいで、俺はこの馬にも名前をつけることにした。ずっとこいつって呼んでるのも不便だからな。
毛の色は基本的に真っ白で、首の周りや頭の毛だけが綺麗な金色だ。そしてツノはシルバーに輝いている。
「お前の名前は……ユニーで良いか?」
確か馬にツノが付いたのはユニコーンって言うんじゃないかと思って、そこから安易に名前をつけると、ユニーは嬉しそうに顔を擦り付けてきた。ユニーで良いみたいだ。
「ユニー、これからよろしくな」
「ヒヒンッ」
「なぁ、ユニーは人がどこにいるか知ってるか? 俺はとにかくこの草原から抜け出したいんだけど」
ダメ元でユニーの首周りを撫でながらそう聞いてみると、ユニーは首を縦に振った。
「知ってるの!?」
「ヒヒンッ」
もちろんだとでも言うようにドヤ顔で頷き、その場にしゃがみ込んで背中に乗れと合図してきた。もしかして人間のところまで連れてってくれるのか……?
「ユニーお前……良いやつだな! マジでありがとう!」
俺はやっとここから抜け出せる希望が見えて、思わず泣きそうになってしまった。それほどにこの草原に一人でいるのは心細かったのだ。
スラくんを腕に抱いたままユニーに乗ると、ユニーは俺が落ちないように気を付けてくれているのか、揺れないようにゆっくりと歩き始めた。
ユニーが向かった方向は……俺が歩みを進めていた方向とは全く違った。マジでユニーと会えて良かったな。見当違いの方向に進んで、一生人間に会えなかった可能性すらある。
――それから一度だけ日が沈んで朝が来て、太陽が真上に来た頃、ついに草原から抜け出すことに成功した。今俺の目の前にあるのは、明らかに人の手によって作られたであろう街道だ。
「ついに草原から出られた……!」
俺は感激のあまりユニーの上で思わず叫んでしまう。マジでどうなることかと思ったけど、人間に会えればとりあえずここがどこだか分かるはずだ。
「ユニー、スラくん、街道だぞ街道! この世界に文明はあるんだ!」
世界中が草原と森ばかりです、話が通じる相手はいません。みたいな鬼畜な世界じゃなくて良かった。不幸中の幸いだ。
ん? 街道の先に何かが見える気がする。何とか詳細を見ようと目を細めると……人間だ。人間がいる! 地球にいた人類とほとんど同じ見た目だ!
「おーい! そこの二人ー!」
俺は人間がいたことが嬉しすぎて、その相手が良い人か悪い人かなんて全く考えず、とにかく大きく手を振って声を張った。そしてユニーから降りて、二人の下に全速力で駆け寄る。
「ちょっと止まれ!」
しかし二人組の男の方にそう声をかけられたことで、まだお互いの顔が何とか見える程度の場所で立ち止まった。言葉も通じるみたいだな……マジで良かった。
「君は誰だ? 冒険者じゃないよな……? 旅人でもなさそうだし、その奇妙な格好は何だ? 貴族様にしては少し違う気もするし……もしかして他国の者か?」
今度は二人組の女性の方がそんな質問をしてきた。俺はそこでやっと冷静になり、自分がどれだけ怪しい存在かに思い至る。
「驚かせてごめん。俺は気付いたらそこの草原の中に倒れてて、自分でも何が起きてるのか分からないんだ。もし迷惑でなければ、街の場所を教えてもらえたら嬉しい」
落ち着いてそう告げると、二人はまだ警戒しながらも俺に近づいてきてくれた。これでやっと人間の街に行ける、そう安堵したその瞬間、二人の様子が一変した。
「き、君は……何て魅力的なんだ!」
「めっちゃ良い体してるな! 顔もカッコいいし……好きだ!」
突然俺のことをボーとした表情で見つめたと思ったら、次の瞬間には目をハートにしてそんな言葉を叫んだのだ。しかも女性だけじゃなくて男性まで。さらにそれだけじゃ飽き足らず、俺の方に両手を広げて駆け寄ってきている。
「ちょっ、ちょっと待て、止まって!」
俺のそんな叫びも虚しく、二人の男女は俺に飛びついてきた。そしてハートの瞳のままに、頬擦りされて好きだと叫ばれる。
「マジで怖いんだけど! 本当に離れて! ちょっと、マジで気持ち悪いから!」
俺が二人に押し倒されながら必死に抵抗していると、ユニーが凄い形相で駆け寄ってきて二人を蹴り飛ばしてくれた。ユニー……お前は命の恩人だ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
マジで何なんだ。遠くで話してた時は普通だったのに、近づいたらまるで人が変わったようになった。
俺が息を整えていると、遠くに飛ばされた二人が起き上がったようで、俺の姿を視界に入れると今度は思いっきり睨んでくる。
何なんだよ……この世界の人間は突然人格が変わるのが普通なのか? ダメだ、せっかく人間に会えたのに全く安心できない。
何で俺がこんな仕打ちを受けないといけないんだ。早く帰りたい……神様でも何でも良いから、早く俺を地球に帰してくれ!!
とりあえず襲われることはなさそうだったので怪我の心配をしてみると、言葉が伝わっているのかその動物は瞳を潤ませて感動的な表情を浮かべた……気がする。
「ヒヒンッ、ヒヒヒンッ、ヒヒーン!」
……何を言ってるのか全く分からない。ただ何となく悪いことを言われているわけじゃないと思う。
「よく分かんないけど、仲間? が増えて嬉しいよ」
こんなところに一人で放り出されて寂しいので、ここぞとばかりに仲間宣言をしてみると、顔をべろりと舐められた。
「うわっ、ちょっとそれは止めてくれ」
「ヒヒーン……」
落ち込んでるよ……本当に俺が言ってることが分かるのかもしれない。この世界の動物って凄いな。
それにしても仲間となると、脚の怪我が可哀想だ。どうにかして治してあげられたら良いんだけど……そうだ、スラくんをこいつに預けてみたらどうだろう。
何故かスラくんを抱きしめてると疲れを感じないし、昨日の夜転んだ時にできた手のひらの怪我も、朝には無くなっていたのだ。
「スラくん、こいつの怪我を治したりできる?」
俺のその質問に、スラくんはぷるんぷるんっと大きく震えて肯定を示してくれたので、スラくんを足の怪我に近づけてみると……一瞬だけスラくんが光り輝き、足の怪我は影も形もなくなった。
……マジか、本当に怪我を治せるのか。この世界のスライムってもしかして強キャラ?
「ヒヒンッ!」
「もう痛くないか?」
「ヒヒーンッ!」
馬のような動物はよほど嬉しかったのか、大きな声で嘶いて俺の顔をべろべろ舐めてきた。だ、だからそれは嫌なんだって……!
それからしばらく経つとやっとこいつも落ち着いてきたみたいで、俺はこの馬にも名前をつけることにした。ずっとこいつって呼んでるのも不便だからな。
毛の色は基本的に真っ白で、首の周りや頭の毛だけが綺麗な金色だ。そしてツノはシルバーに輝いている。
「お前の名前は……ユニーで良いか?」
確か馬にツノが付いたのはユニコーンって言うんじゃないかと思って、そこから安易に名前をつけると、ユニーは嬉しそうに顔を擦り付けてきた。ユニーで良いみたいだ。
「ユニー、これからよろしくな」
「ヒヒンッ」
「なぁ、ユニーは人がどこにいるか知ってるか? 俺はとにかくこの草原から抜け出したいんだけど」
ダメ元でユニーの首周りを撫でながらそう聞いてみると、ユニーは首を縦に振った。
「知ってるの!?」
「ヒヒンッ」
もちろんだとでも言うようにドヤ顔で頷き、その場にしゃがみ込んで背中に乗れと合図してきた。もしかして人間のところまで連れてってくれるのか……?
「ユニーお前……良いやつだな! マジでありがとう!」
俺はやっとここから抜け出せる希望が見えて、思わず泣きそうになってしまった。それほどにこの草原に一人でいるのは心細かったのだ。
スラくんを腕に抱いたままユニーに乗ると、ユニーは俺が落ちないように気を付けてくれているのか、揺れないようにゆっくりと歩き始めた。
ユニーが向かった方向は……俺が歩みを進めていた方向とは全く違った。マジでユニーと会えて良かったな。見当違いの方向に進んで、一生人間に会えなかった可能性すらある。
――それから一度だけ日が沈んで朝が来て、太陽が真上に来た頃、ついに草原から抜け出すことに成功した。今俺の目の前にあるのは、明らかに人の手によって作られたであろう街道だ。
「ついに草原から出られた……!」
俺は感激のあまりユニーの上で思わず叫んでしまう。マジでどうなることかと思ったけど、人間に会えればとりあえずここがどこだか分かるはずだ。
「ユニー、スラくん、街道だぞ街道! この世界に文明はあるんだ!」
世界中が草原と森ばかりです、話が通じる相手はいません。みたいな鬼畜な世界じゃなくて良かった。不幸中の幸いだ。
ん? 街道の先に何かが見える気がする。何とか詳細を見ようと目を細めると……人間だ。人間がいる! 地球にいた人類とほとんど同じ見た目だ!
「おーい! そこの二人ー!」
俺は人間がいたことが嬉しすぎて、その相手が良い人か悪い人かなんて全く考えず、とにかく大きく手を振って声を張った。そしてユニーから降りて、二人の下に全速力で駆け寄る。
「ちょっと止まれ!」
しかし二人組の男の方にそう声をかけられたことで、まだお互いの顔が何とか見える程度の場所で立ち止まった。言葉も通じるみたいだな……マジで良かった。
「君は誰だ? 冒険者じゃないよな……? 旅人でもなさそうだし、その奇妙な格好は何だ? 貴族様にしては少し違う気もするし……もしかして他国の者か?」
今度は二人組の女性の方がそんな質問をしてきた。俺はそこでやっと冷静になり、自分がどれだけ怪しい存在かに思い至る。
「驚かせてごめん。俺は気付いたらそこの草原の中に倒れてて、自分でも何が起きてるのか分からないんだ。もし迷惑でなければ、街の場所を教えてもらえたら嬉しい」
落ち着いてそう告げると、二人はまだ警戒しながらも俺に近づいてきてくれた。これでやっと人間の街に行ける、そう安堵したその瞬間、二人の様子が一変した。
「き、君は……何て魅力的なんだ!」
「めっちゃ良い体してるな! 顔もカッコいいし……好きだ!」
突然俺のことをボーとした表情で見つめたと思ったら、次の瞬間には目をハートにしてそんな言葉を叫んだのだ。しかも女性だけじゃなくて男性まで。さらにそれだけじゃ飽き足らず、俺の方に両手を広げて駆け寄ってきている。
「ちょっ、ちょっと待て、止まって!」
俺のそんな叫びも虚しく、二人の男女は俺に飛びついてきた。そしてハートの瞳のままに、頬擦りされて好きだと叫ばれる。
「マジで怖いんだけど! 本当に離れて! ちょっと、マジで気持ち悪いから!」
俺が二人に押し倒されながら必死に抵抗していると、ユニーが凄い形相で駆け寄ってきて二人を蹴り飛ばしてくれた。ユニー……お前は命の恩人だ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
マジで何なんだ。遠くで話してた時は普通だったのに、近づいたらまるで人が変わったようになった。
俺が息を整えていると、遠くに飛ばされた二人が起き上がったようで、俺の姿を視界に入れると今度は思いっきり睨んでくる。
何なんだよ……この世界の人間は突然人格が変わるのが普通なのか? ダメだ、せっかく人間に会えたのに全く安心できない。
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