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8、冒険者ギルド
「俺は日本っていう国から来ました。何者だっていう質問は難しいんですけど……強いて言えばアイドル、ですね」
俺のその返答を受けて、アンドレさんを始めとして応接室にいる全員が怪訝な表情で首を傾げた。まあそうなるのが普通だよな。
「まずその日本って国はどこにあるんだ? あと、あいどる? とは何だ?」
「日本は多分ですけど、こことは違う世界にある国だと思います。アイドルっていうのは……こういうキラキラした衣装を着て、マイクを持って歌って踊る仕事のことです」
俺はポケットに入れていたマイクを取り出して手に持ち、薄汚れたけどまだ煌びやかさは辛うじてある衣装を翻してポーズを決めた。すると三人には凄く微妙な表情を浮かべられる。
このポーズはファンの子達なら黄色い声をあげてくれるものだったんだけどな……珍獣でもみるような視線を向けられると心が折れそうだ。
「その珍妙な服装は何なのかと思っていたが、仕事着だったのだな。世の中には不思議な仕事もあるんだな……」
珍妙な衣装って……国が変わればアイドル衣装はそう言われるのか。まあ確かに、日本でだって街中でアイドル衣装を着てたら変な人だって思われると思うけど。
「……とりあえず、アイドルは忘れてください。それでこのマイクを見てもらえますか? この国にはこういう材質の物ってあるでしょうか」
「なんだか不思議な素材でできておるな……少なくとも、このマイクというものは今まで見たことがない」
「ではこれが別の世界から来たという証明にならないでしょうか?」
俺のその言葉を受けて、アンドレさんとナタリアさんはもう一度マイクをまじまじと見つめた。
「リョータさんが先ほどから仰っている日本、別の世界というのは……日本という国はこの世界にないということでしょうか? つまりこの大陸にも、海を越えた先にもないと」
「そういうことです」
「なんでそんなことが分かるんだ? 探せばその日本という国がどこかにあるかもしれないぞ」
「うーん、その可能性は低いと思います。まず日本にはスキルなんてものはありませんでした。スラくんやユニーのような動物もいませんし、冒険者ギルド? もありません。この世界にそんな国はあるのでしょうか?」
俺が発したその言葉に、誰もが難しい顔をして黙り込んでしまう。今俺がいるここが地球であるって可能性は限りなく低いよな……だって地球は既に調べ尽くされていたはずだ。スキルがあってスライムがいて、そんな国や大陸があったら発見されてないはずがない。
「……分かった。とりあえずリョータは、別の世界の日本という国から来たということにしよう。だがどうやってここまで来たんだ?」
「それが俺にも分からないんです。立ちくらみがして目を閉じて、目を開いたら草原にいました。そして草原をずっと進んで街道に出て、この街に辿り着きました」
「ということは、何でここにいるのかもどうやって来たのかも、また帰り方も何も分からないということだな」
「そういうことですね」
俺が肯定すると、アンドレさんは大きなため息をついて額に手のひらを当てた。厄介ごとを持ち込んで本当にすみません……
「これからどうすれば良いのかも全く分からなくて、最初に会った男女には冒険者になれば良いと言われたんですけど、俺でもなれるのでしょうか?」
「そうだな。登録料さえ払えば誰でも冒険者にはなれる。冒険者ギルドカードがあればほとんどの街には入れるから、生きていくことはできるだろう。ただ家を買ったり部屋を借りたりするにはその街の市民権を買う必要があるぞ」
そうなのか……俺はどうにかして地球に帰る予定だし、冒険者が一番都合が良いな。家を買ったりするつもりはないし、市民権はいらない。
「それなら冒険者に登録したいです。冒険者って依頼を選んで受注して、達成できたら報酬がもらえるみたいな仕組みですか?」
「まあそうだな。基本的にはあっておる。ただその仕事内容は基本的に魔物の討伐や危険な場所での素材採取になるが」
「魔物とは……スラくんやユニーのことですか?」
「そうだ。魔力を持つ知能をあまり持たない生物のことを全て魔物と言う」
魔物を討伐するとか俺にできるかな……スラくんやユニーみたいに好かれちゃったら討伐することなんてできない気がする。もし無理そうなら素材採取の仕事だけをする冒険者になれば良いか。
後の問題は……というか一番の問題は、スキル封じが三十分しか持たないことだな。街に入る時は毎回リラに頼まなければならない。
「何かリラに頼む以外でスキル封じができる方法ってないのでしょうか?」
「わしは知らんな。そもそもスキル封じなんてこの国でリラしか持ってないようなスキルだ。もしかしたらダンジョンの深層から出るダンジョン品の中には、スキルを封じられる何かがあるかもしれんが……」
この世界にはダンジョンなんてものまであるのか。ダンジョンってあれだよな、地下深くに続いてて魔物がたくさん生息してて、たまにドロップする宝箱から貴重なお宝が出てくるやつ。
「それを手に入れられる可能性は……」
「そうじゃな、数十年ダンジョンに挑み続ければいつかはって感じだろう」
数十年って、そんなの待ってられるわけがない。しかもそれで手に入れられるのがスキルを封じるアイテムってことだよな。地球に帰れるアイテムならまだやる気も出るけど。
「俺はこれからどうすれば良いんだ」
自分のこの先が真っ暗すぎて思わず頭を抱えてそう呟いたら、突然隣から肩を叩かれた。もちろん肩を叩いたのは……リラだ。
「リョータさん、私がリョータさんとパーティーを組みましょうか?」
「え……俺と、一緒にいてくれるってこと!?」
「はい。リョータさんが私と常に一緒にいれば、スキルの問題は解決しますよね?」
「そ、それはめちゃくちゃありがたいけど……良いのか? リラだって今までの生活があると思うけど」
「大丈夫です! 実は私って今までソロで冒険者をやってたんです。そろそろパーティーに入ろうかと思ってたけど、私のスキルが強すぎてどのパーティーが信頼できるのか決めきれなくて……リョータさんなら私がいないと生活すらままなりませんし、裏切られることなんて絶対にないかなって。それにリョータさんのスキルは最強ですけど、私には効果ないので私に対してリョータさんはとても弱いですし」
おぅ……リラって素直で明るくて良い子って感じだと思ってたら、意外と腹黒で強かなんだ。まあ冒険者なんて職業で生き残っていくには、このぐらいの強さが必要なんだろう。
今の俺にとってもお互いに利益がある関係性の方が、気を遣わずに済むからありがたい。見返りを求めない善意には、どうしても裏があるって疑っちゃうから。
「そういうことならぜひ頼みたい」
「本当ですか! じゃあこれからよろしくお願いします」
リラは無邪気な笑みを浮かべて俺の手を握った。色々と打算ありの関係だけど、めちゃくちゃありがたい仲間ができたな。これでとりあえずこの世界で生きていくことはできそうだ。俺はその事実に安堵して、やっと自然な笑みを浮かべることができた。
俺のその返答を受けて、アンドレさんを始めとして応接室にいる全員が怪訝な表情で首を傾げた。まあそうなるのが普通だよな。
「まずその日本って国はどこにあるんだ? あと、あいどる? とは何だ?」
「日本は多分ですけど、こことは違う世界にある国だと思います。アイドルっていうのは……こういうキラキラした衣装を着て、マイクを持って歌って踊る仕事のことです」
俺はポケットに入れていたマイクを取り出して手に持ち、薄汚れたけどまだ煌びやかさは辛うじてある衣装を翻してポーズを決めた。すると三人には凄く微妙な表情を浮かべられる。
このポーズはファンの子達なら黄色い声をあげてくれるものだったんだけどな……珍獣でもみるような視線を向けられると心が折れそうだ。
「その珍妙な服装は何なのかと思っていたが、仕事着だったのだな。世の中には不思議な仕事もあるんだな……」
珍妙な衣装って……国が変わればアイドル衣装はそう言われるのか。まあ確かに、日本でだって街中でアイドル衣装を着てたら変な人だって思われると思うけど。
「……とりあえず、アイドルは忘れてください。それでこのマイクを見てもらえますか? この国にはこういう材質の物ってあるでしょうか」
「なんだか不思議な素材でできておるな……少なくとも、このマイクというものは今まで見たことがない」
「ではこれが別の世界から来たという証明にならないでしょうか?」
俺のその言葉を受けて、アンドレさんとナタリアさんはもう一度マイクをまじまじと見つめた。
「リョータさんが先ほどから仰っている日本、別の世界というのは……日本という国はこの世界にないということでしょうか? つまりこの大陸にも、海を越えた先にもないと」
「そういうことです」
「なんでそんなことが分かるんだ? 探せばその日本という国がどこかにあるかもしれないぞ」
「うーん、その可能性は低いと思います。まず日本にはスキルなんてものはありませんでした。スラくんやユニーのような動物もいませんし、冒険者ギルド? もありません。この世界にそんな国はあるのでしょうか?」
俺が発したその言葉に、誰もが難しい顔をして黙り込んでしまう。今俺がいるここが地球であるって可能性は限りなく低いよな……だって地球は既に調べ尽くされていたはずだ。スキルがあってスライムがいて、そんな国や大陸があったら発見されてないはずがない。
「……分かった。とりあえずリョータは、別の世界の日本という国から来たということにしよう。だがどうやってここまで来たんだ?」
「それが俺にも分からないんです。立ちくらみがして目を閉じて、目を開いたら草原にいました。そして草原をずっと進んで街道に出て、この街に辿り着きました」
「ということは、何でここにいるのかもどうやって来たのかも、また帰り方も何も分からないということだな」
「そういうことですね」
俺が肯定すると、アンドレさんは大きなため息をついて額に手のひらを当てた。厄介ごとを持ち込んで本当にすみません……
「これからどうすれば良いのかも全く分からなくて、最初に会った男女には冒険者になれば良いと言われたんですけど、俺でもなれるのでしょうか?」
「そうだな。登録料さえ払えば誰でも冒険者にはなれる。冒険者ギルドカードがあればほとんどの街には入れるから、生きていくことはできるだろう。ただ家を買ったり部屋を借りたりするにはその街の市民権を買う必要があるぞ」
そうなのか……俺はどうにかして地球に帰る予定だし、冒険者が一番都合が良いな。家を買ったりするつもりはないし、市民権はいらない。
「それなら冒険者に登録したいです。冒険者って依頼を選んで受注して、達成できたら報酬がもらえるみたいな仕組みですか?」
「まあそうだな。基本的にはあっておる。ただその仕事内容は基本的に魔物の討伐や危険な場所での素材採取になるが」
「魔物とは……スラくんやユニーのことですか?」
「そうだ。魔力を持つ知能をあまり持たない生物のことを全て魔物と言う」
魔物を討伐するとか俺にできるかな……スラくんやユニーみたいに好かれちゃったら討伐することなんてできない気がする。もし無理そうなら素材採取の仕事だけをする冒険者になれば良いか。
後の問題は……というか一番の問題は、スキル封じが三十分しか持たないことだな。街に入る時は毎回リラに頼まなければならない。
「何かリラに頼む以外でスキル封じができる方法ってないのでしょうか?」
「わしは知らんな。そもそもスキル封じなんてこの国でリラしか持ってないようなスキルだ。もしかしたらダンジョンの深層から出るダンジョン品の中には、スキルを封じられる何かがあるかもしれんが……」
この世界にはダンジョンなんてものまであるのか。ダンジョンってあれだよな、地下深くに続いてて魔物がたくさん生息してて、たまにドロップする宝箱から貴重なお宝が出てくるやつ。
「それを手に入れられる可能性は……」
「そうじゃな、数十年ダンジョンに挑み続ければいつかはって感じだろう」
数十年って、そんなの待ってられるわけがない。しかもそれで手に入れられるのがスキルを封じるアイテムってことだよな。地球に帰れるアイテムならまだやる気も出るけど。
「俺はこれからどうすれば良いんだ」
自分のこの先が真っ暗すぎて思わず頭を抱えてそう呟いたら、突然隣から肩を叩かれた。もちろん肩を叩いたのは……リラだ。
「リョータさん、私がリョータさんとパーティーを組みましょうか?」
「え……俺と、一緒にいてくれるってこと!?」
「はい。リョータさんが私と常に一緒にいれば、スキルの問題は解決しますよね?」
「そ、それはめちゃくちゃありがたいけど……良いのか? リラだって今までの生活があると思うけど」
「大丈夫です! 実は私って今までソロで冒険者をやってたんです。そろそろパーティーに入ろうかと思ってたけど、私のスキルが強すぎてどのパーティーが信頼できるのか決めきれなくて……リョータさんなら私がいないと生活すらままなりませんし、裏切られることなんて絶対にないかなって。それにリョータさんのスキルは最強ですけど、私には効果ないので私に対してリョータさんはとても弱いですし」
おぅ……リラって素直で明るくて良い子って感じだと思ってたら、意外と腹黒で強かなんだ。まあ冒険者なんて職業で生き残っていくには、このぐらいの強さが必要なんだろう。
今の俺にとってもお互いに利益がある関係性の方が、気を遣わずに済むからありがたい。見返りを求めない善意には、どうしても裏があるって疑っちゃうから。
「そういうことならぜひ頼みたい」
「本当ですか! じゃあこれからよろしくお願いします」
リラは無邪気な笑みを浮かべて俺の手を握った。色々と打算ありの関係だけど、めちゃくちゃありがたい仲間ができたな。これでとりあえずこの世界で生きていくことはできそうだ。俺はその事実に安堵して、やっと自然な笑みを浮かべることができた。
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