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12、街並みと宿
応接室を出ると他の冒険者にジロジロと見られたけど声を掛けられることはなく、ギルドの外に出ることができた。
「リラ、俺のことってどこまで広まってるのか分かる?」
「うーん、リョータに実際に会った冒険者はその能力を察してるかもしれないけど、言いふらすことはないんじゃないかな。だからそこまで広まらないと思うよ」
「そんなものなんだ」
「高ランクの優良パーティーばかりだったから」
そうだったのか……そんな人達に迷惑かけてたんだな。後で会ったらお詫びに何か渡したりしようかな。今はお金もないし無理だけど……冒険者登録料や数日暮らすお金はギルドから借りてる状態なのだ。いわば今の俺は借金がある状態ってことになる。
アイドルとして頑張って活動してお金には困ってなかったはずなんだけど、突然借金持ちになるとか人生って何が起こるか分からないな。
「あっ、リョータ見て。あれが魔車だよ」
リラがそう言って指差したのは、馬に似た魔物が引いた車だった。魔物が引く車ってことで魔車と呼ぶらしい。魔車って聞くと魔力で動く自動車みたいなやつかと思うけど、どちらかというと馬車に近い乗り物だ。
「あれってかなり高いよな?」
「そうだね……部屋を数ヶ月は借りられるぐらいかな」
「それは相当稼がないと無理だな……というか今更だけど、お金について教えてもらわなかったよ。申し訳ないけど教えてもらっても良い?」
「もちろん」
それから屋台などを眺めつつ教えてもらったところによると、この国の通貨はラルというらしく、ほとんど円と同じような単位だった。百ラルで串焼きが二本買えるぐらいの感じた。
紙幣はなくて全て硬貨で、一ラル硬貨、十ラル硬貨、百ラル硬貨と順番に百万ラル硬貨まで存在するらしい。しかし日常生活で使用されるのは、一万ラル硬貨までがほとんどなんだそう。
「理解できたよ。ありがと」
「どういたしまして。じゃあ屋台の匂いでおなか空いちゃったし、今日はもう宿に向かうので良い? そろそろ夕方だし、あと十分ぐらいで効果が切れちゃうから」
「それは大変だ。急ごうか」
「うん!」
三十分で効果が切れるのはかなり不便だな。街中では魔法を使わない方が良いらしいし、スキル封じを掛け直しづらいのだ。やっぱり早急に魔車を買わないと。魔車で移動すれば、魔車に戻ってスキル封じを掛け直してもらうこともできるから。
「そういえば、リラは魔力がなくなることってないの?」
「そうだね……かなり大きな魔法を何発も使ってたらさすがにヤバいかもしれないけど、スキル封じを使うぐらいなら自然回復の方が早いぐらいだよ」
「へぇ、じゃあ魔力が多いんだ」
「かなりね。リョータはどうなの? さっき魅了をたくさん使ってたけど、魔力はどう?」
「俺は……減った感じはないかな」
体の中にある自由に動かせる何かは、いくら使ってもなくならないような気がする。俺もかなり魔力が多いのかもしれないな。
「じゃあ私と同じで、あんまり魔力切れは気にしなくても良いかもね」
「それなら良かった」
そこまで話をしたところで、街中に大きな鐘の音が響き渡った。アニメや映画で聞いたことがあるような、おしゃれな鐘の音だ。
「夜の鐘だね」
「鐘の音は毎日鳴る?」
「そうだよ。朝の鐘、昼の鐘、夜の鐘って三回。六時と十二時と十八時に鳴るんだ」
「それで時間が分かるってことなんだ」
「そうだね。でも今はほとんどの人が時計を持ってるし広場に時計が設置されてるし、鐘の音は伝統って感じだけどね」
そういえば冒険者ギルドにも時計があったな。ちなみに時計は日本のものと全く同じだった。この世界は一日が二十四時間で、一年は三百六十日らしい。日本と同じように日々を暮らせるのはありがたいよな。
「あっ、宿が見えてきたよ。あそこが私が定宿にしてる川のせせらぎ亭」
「綺麗な宿だな……結構高かったりする?」
「そうだね、安くはないかな。でもその代わりに朝晩の食事がついてお風呂も無料で使えるし、部屋にトイレまであるんだよ。女性一人でも安心の治安の良さだし、ご夫婦で経営してるんだけど凄く良い人達なんだ」
それは高いけど選びたくなる宿だな。リラは若い女の子一人で可愛いし、その辺をちゃんとしないと危ないだろう。
「スラくんとユニーは泊まれるかな?」
「もちろん従魔も泊まれるよ。ただ小型は室内でも良いんだけど、大型は外の魔物用の部屋になるけど」
「そっか。ユニーは一緒には寝れないんだってさ。ごめんな」
隣を大人しく歩いているユニーにそう声を掛けると、ユニーは寂しそうな顔をして俺に顔を擦り付けてくれた。本当に可愛いやつだな……ちなみに街の中で従魔は放し飼いでも構わない。ただ従魔が何かをやらかした場合、全ての責任は飼い主が取ることになっている。
「ユニーちゃん、これからは私も一緒だからよろしくね。スラくんも」
リラのその言葉を受けて、二人は嬉しそうに顔を擦り付けて体をプルプル振るわせた。二人もリラを歓迎しているらしい。
そうして二人とも戯れながら宿に向かい、ユニーには外で待っていてもらってリラに付いて宿の中に入ると、愛想の良い中年の女性が声を掛けてくれた。
「リラおかえり! ……その人は誰だい?」
「ただいま。私のパーティーメンバーになったリョータだよ」
リラのその紹介を受けて、女性は不審人物を見るように俺を上から下まで見つめた。まだアイドル衣装だから仕方ないか。お金を借りてる状態だからあまり使いたくなくて、明日依頼を受けてお金を稼いでから買い物をしようと思ってたのだ。
「リョータと言います。リラさんとパーティーを組みました。よろしくお願いします」
丁寧に、しかし丁寧になり過ぎないように気をつけて、精一杯の笑顔で挨拶をした。すると女性は少し警戒心を解いてくれたようで、俺に手を差し出してくれる。
「私はカミーユだよ」
「カミーユさんですね。これからは俺もここに泊まって良いでしょうか?」
「まあ……あんたなら良いかね。リラが選んだ相手だし。一人部屋で良いかい?」
「もちろんです」
そうして俺はなんとかカミーユさんに認められて、宿の一室を借りることができた。これでとりあえず寝泊まりできる場所は確保だな。自分の部屋があるってだけでマジで安心する。
「スラくんは一緒の部屋でも良いですか? もう一人ユニコーンのユニーがいるんですけど、ユニーは魔物用の部屋を借りたいです」
「ユニコーンとは珍しいね。じゃあ準備しておくから従魔は裏に連れて来な」
「分かりました。よろしくお願いします」
それからユニーを魔物用の部屋に連れて行き、俺も自分の部屋の鍵をもらって、やっと部屋の中に入ることができた。スキル封じの時間ギリギリだった……もっと余裕を持って行動しないとダメだな。
「リラ、俺のことってどこまで広まってるのか分かる?」
「うーん、リョータに実際に会った冒険者はその能力を察してるかもしれないけど、言いふらすことはないんじゃないかな。だからそこまで広まらないと思うよ」
「そんなものなんだ」
「高ランクの優良パーティーばかりだったから」
そうだったのか……そんな人達に迷惑かけてたんだな。後で会ったらお詫びに何か渡したりしようかな。今はお金もないし無理だけど……冒険者登録料や数日暮らすお金はギルドから借りてる状態なのだ。いわば今の俺は借金がある状態ってことになる。
アイドルとして頑張って活動してお金には困ってなかったはずなんだけど、突然借金持ちになるとか人生って何が起こるか分からないな。
「あっ、リョータ見て。あれが魔車だよ」
リラがそう言って指差したのは、馬に似た魔物が引いた車だった。魔物が引く車ってことで魔車と呼ぶらしい。魔車って聞くと魔力で動く自動車みたいなやつかと思うけど、どちらかというと馬車に近い乗り物だ。
「あれってかなり高いよな?」
「そうだね……部屋を数ヶ月は借りられるぐらいかな」
「それは相当稼がないと無理だな……というか今更だけど、お金について教えてもらわなかったよ。申し訳ないけど教えてもらっても良い?」
「もちろん」
それから屋台などを眺めつつ教えてもらったところによると、この国の通貨はラルというらしく、ほとんど円と同じような単位だった。百ラルで串焼きが二本買えるぐらいの感じた。
紙幣はなくて全て硬貨で、一ラル硬貨、十ラル硬貨、百ラル硬貨と順番に百万ラル硬貨まで存在するらしい。しかし日常生活で使用されるのは、一万ラル硬貨までがほとんどなんだそう。
「理解できたよ。ありがと」
「どういたしまして。じゃあ屋台の匂いでおなか空いちゃったし、今日はもう宿に向かうので良い? そろそろ夕方だし、あと十分ぐらいで効果が切れちゃうから」
「それは大変だ。急ごうか」
「うん!」
三十分で効果が切れるのはかなり不便だな。街中では魔法を使わない方が良いらしいし、スキル封じを掛け直しづらいのだ。やっぱり早急に魔車を買わないと。魔車で移動すれば、魔車に戻ってスキル封じを掛け直してもらうこともできるから。
「そういえば、リラは魔力がなくなることってないの?」
「そうだね……かなり大きな魔法を何発も使ってたらさすがにヤバいかもしれないけど、スキル封じを使うぐらいなら自然回復の方が早いぐらいだよ」
「へぇ、じゃあ魔力が多いんだ」
「かなりね。リョータはどうなの? さっき魅了をたくさん使ってたけど、魔力はどう?」
「俺は……減った感じはないかな」
体の中にある自由に動かせる何かは、いくら使ってもなくならないような気がする。俺もかなり魔力が多いのかもしれないな。
「じゃあ私と同じで、あんまり魔力切れは気にしなくても良いかもね」
「それなら良かった」
そこまで話をしたところで、街中に大きな鐘の音が響き渡った。アニメや映画で聞いたことがあるような、おしゃれな鐘の音だ。
「夜の鐘だね」
「鐘の音は毎日鳴る?」
「そうだよ。朝の鐘、昼の鐘、夜の鐘って三回。六時と十二時と十八時に鳴るんだ」
「それで時間が分かるってことなんだ」
「そうだね。でも今はほとんどの人が時計を持ってるし広場に時計が設置されてるし、鐘の音は伝統って感じだけどね」
そういえば冒険者ギルドにも時計があったな。ちなみに時計は日本のものと全く同じだった。この世界は一日が二十四時間で、一年は三百六十日らしい。日本と同じように日々を暮らせるのはありがたいよな。
「あっ、宿が見えてきたよ。あそこが私が定宿にしてる川のせせらぎ亭」
「綺麗な宿だな……結構高かったりする?」
「そうだね、安くはないかな。でもその代わりに朝晩の食事がついてお風呂も無料で使えるし、部屋にトイレまであるんだよ。女性一人でも安心の治安の良さだし、ご夫婦で経営してるんだけど凄く良い人達なんだ」
それは高いけど選びたくなる宿だな。リラは若い女の子一人で可愛いし、その辺をちゃんとしないと危ないだろう。
「スラくんとユニーは泊まれるかな?」
「もちろん従魔も泊まれるよ。ただ小型は室内でも良いんだけど、大型は外の魔物用の部屋になるけど」
「そっか。ユニーは一緒には寝れないんだってさ。ごめんな」
隣を大人しく歩いているユニーにそう声を掛けると、ユニーは寂しそうな顔をして俺に顔を擦り付けてくれた。本当に可愛いやつだな……ちなみに街の中で従魔は放し飼いでも構わない。ただ従魔が何かをやらかした場合、全ての責任は飼い主が取ることになっている。
「ユニーちゃん、これからは私も一緒だからよろしくね。スラくんも」
リラのその言葉を受けて、二人は嬉しそうに顔を擦り付けて体をプルプル振るわせた。二人もリラを歓迎しているらしい。
そうして二人とも戯れながら宿に向かい、ユニーには外で待っていてもらってリラに付いて宿の中に入ると、愛想の良い中年の女性が声を掛けてくれた。
「リラおかえり! ……その人は誰だい?」
「ただいま。私のパーティーメンバーになったリョータだよ」
リラのその紹介を受けて、女性は不審人物を見るように俺を上から下まで見つめた。まだアイドル衣装だから仕方ないか。お金を借りてる状態だからあまり使いたくなくて、明日依頼を受けてお金を稼いでから買い物をしようと思ってたのだ。
「リョータと言います。リラさんとパーティーを組みました。よろしくお願いします」
丁寧に、しかし丁寧になり過ぎないように気をつけて、精一杯の笑顔で挨拶をした。すると女性は少し警戒心を解いてくれたようで、俺に手を差し出してくれる。
「私はカミーユだよ」
「カミーユさんですね。これからは俺もここに泊まって良いでしょうか?」
「まあ……あんたなら良いかね。リラが選んだ相手だし。一人部屋で良いかい?」
「もちろんです」
そうして俺はなんとかカミーユさんに認められて、宿の一室を借りることができた。これでとりあえず寝泊まりできる場所は確保だな。自分の部屋があるってだけでマジで安心する。
「スラくんは一緒の部屋でも良いですか? もう一人ユニコーンのユニーがいるんですけど、ユニーは魔物用の部屋を借りたいです」
「ユニコーンとは珍しいね。じゃあ準備しておくから従魔は裏に連れて来な」
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