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23、採取依頼
次の日の午前中。俺はリラとスラくん、ユニーと共に深淵の森にいた。なんで危ないと言われている森にいるのかというと……もちろん依頼を受けたからだ。
今日受けた依頼は、月光花という深淵の森でたまに見つかる花の採取。月光花はかなり見つける難易度が高くずっと残っていた依頼で、報酬が釣り上げられていたので受注した。入手難易度が高いのは俺達も同じなんだけど、そこは厄介だけど最強のスキルがある。そう、俺の魅了だ。
リラ曰く、俺の魅了で深淵の森にいる魔物に、月光花まで案内させることができるかもしれないってことらしい。確かに操れて意思疎通ができるなら、案内してもらうことも不可能じゃないだろう。
「深淵の森って、意外と魔物は少ないのかな」
「東の森よりも広いからね。魔物の密度は低いのかも」
深淵の森に入って五分ほどは歩いているけど、まだ一度も魔物が俺に寄ってこないのだ。スキル封じはかけてないから、俺に魔物が寄ってこないということは、十メートル以内に魔物はいないということになる。
それからしばらく、体感では十五分ほど歩いていると、やっと魔物と遭遇した。大きな犬のような魔物で、顔はかなり凶悪だ。でかい牙が口の中に収まりきれずに顔を覗かせている。犬みたいだけど可愛さはほとんどないな……
「その場に止まれ」
俺達に飛びかかってこようとしたところに魅了をかけると、魔物はすぐに動きを止めて地面に伏せをした。
――本当に魅了の力が強すぎて自分で怖くなる。この力を悪人が持ったらって考えたら、世界が滅びそうな気がする。
「月光花は知ってる? 知ってるなら案内して欲しい」
「うぅぅぅ」
魔物に近づいて声を掛けると、魔物は唸り声をあげながら、ぎこちない動きで俺達に背を向けた。もしかしたら魅力に完全には支配されず、なんとか抗おうとしてるのかもしれない。
「リラ、この状態で自由にして良いって魅了を解いたらどうなると思う?」
「そしたらほぼ間違いなく、尻尾を振って好意的にリョータに飛びついてくるんじゃない? あの魔物が今いる場所はパッシブの範囲内だから。ただリョータの魅了はもちろん意図的にかけた方が強いから、もしかしたらパッシブだけだと抗われるかもしれないけど」
「でも今すでに、抗おうとしてない?」
「これは違うと思うよ。私達を害したいからそれに反する行動に反発したいっていうより、リョータが好きで近づきたいのにそれを止められてるのが嫌なんじゃないかな」
そっちか、そっちの反発なのか。それは考え付かなかったな。意図的な魅了を一度切ってみるかな……自分のスキルについて色々と試してみたいと思ってたのだ。
もしこれでこの魔物がパッシブの魅了に抗って俺逹を襲ってきたら、深淵の森の魔物にはパッシブではあまり効果がないと知ることができる。
俺は魔物がどんな反応をするのか緊張しつつ、意を決して魅了を切ってみた。すると目の前にいた犬型の魔物は凄い勢いで俺の方を振り返り……尻尾を思いっきり振って俺に駆け寄ってきた。
「止まれ!」
凄い勢いだったので完全に近づかれる前にと慌てて動きを止めると、魔物は少しだけ悲しそうな表情を浮かべてその場に止まった。これは完全にパッシブも効いてるな。
やっぱり俺のスキルは相当に強いみたいだ。どこまでのレベルだと魅了が効かなくなるんだろう。
魅了の強さを正確に認識しておきたいけど、それを確かめるには強い魔物と相対しないといけないし、難しいよな……
「本当にリョータの魅了は凄いよね。この魔物は結構強い部類なんだよ? リョータには全く伝わらないだろうけど」
リラが苦笑しつつそう言ったので俺は改めて魔物に視線を向けた。伏せをしながら尻尾を振って、瞳をキラキラと輝かせて耳を嬉しそうに後ろに倒している。
――うん。もう従順な犬にしか見えないな。
というかこんな瞳で見つめられたら、俺にはこいつを倒すことなんてできそうにない。俺は攻撃魔法を習得したとしても、武器の扱いを身につけても、全く役に立たないかもしれない……
「リラ、少なくともパッシブの魅了が効く魔物は俺には倒せないかも……ごめん」
前もってちゃんと伝えておこうと思ってそう口にすると、リラは同意するように頷いてくれた。
「確かにこれは辛いね。……私でも倒すのに躊躇するよ。この子はスラくん達みたいに従魔にするの?」
「いや、際限なく増えちゃうから、従魔は増やさないことにしようと思ってる」
「そっか。じゃあ案内してもらったら森に帰ってもらおう。本当は倒せるなら倒した方が良いんだけどね」
「……リラ、ありがとう。そうしてくれると嬉しい」
「気にしないで。私達が受けるのは魔物討伐じゃなくて、植物とかの採取中心が良いかもね」
「確かにそうかも。そうしてくれると、めちゃくちゃありがたい」
俺が心から言ったその言葉に、リラは苦笑を浮かべて頷いてくれた。
「できる限りそうしようか。植物採取も結構数があって、難しいのは報酬が高かったりするし」
「本当にありがとう。でも魔物を倒すのは仕方がないって自分の中で理解はできてるから、絶対に魔物を倒すのはダメなんて思わなくて良いよ」
「分かった。じゃあ必要な時は倒しつつ、倒すことを無駄に選ぶようなことはしないようにするよ」
そうしてリラと今後の方針を話したところで、俺達はこの魔物に再度案内を頼むことにした。
俺の魅了に引き寄せられる魔物を操って遠ざけたり、貴重な素材が得られるものはリラが倒したりしつつ、魔物に付いて歩くことしばらく。俺達は深淵の森を奥には行かず森の外縁と平行に進んだところに、小さな池があるのを発見した。
「うわぁ、こんな場所があったなんて」
「もしかして、これが月光花?」
「うん。これ全部そうだよ!」
池のほとりには、思わず見惚れてしまうほどに綺麗な花畑があった。ここはまだ誰にも見つけられていない場所なのかもしれない。人の手は入ってなさそうだ。
「途中で少し危ない道もあったし、わざわざここまできた人がいなかったんだろうね。魅了スキルって本当に凄いよ」
「役に立てて良かった」
この魅了スキルは、めちゃくちゃ使えることは疑いようもない事実だ。このスキルがパッシブじゃなかったら良かったのに。なんでパッシブスキルだったんだか。
「凄く綺麗だし、ギルドに報告はしないようにしようか」
「確かに……ここが冒険者に荒らされたら勿体ないな」
「うん。依頼に必要な分だけ採取していこう」
それから俺達は群生している月光花の端から数本だけ採取して、形が崩れないように慎重に容器に入れて鞄にしまった。これで依頼は完了だ。
「ここでお昼を食べていかない?」
「そうしようか。こんなに綺麗な景色を見ながらとか贅沢だよ」
鞄から今日も買ってきたベーグルを取り出して、スラくんには魔石を、ユニーには一つだけ買った紫色の果物をあげた。
ベーグルにかぶりつくと、噛めば噛むほどに口の中に甘みが広がる。
「今日のやつも美味い」
「美味しいよね! ここで食べてるだけで、いつもの倍は美味しい気がする」
今日のはベリー入りにしたから、酸味と甘みがあって美味しいな。甘いベーグルも結構いける。
そうして俺達は綺麗な景色と美味しい食事を楽しみ、また魔物に対処しながら街に戻った。
今日受けた依頼は、月光花という深淵の森でたまに見つかる花の採取。月光花はかなり見つける難易度が高くずっと残っていた依頼で、報酬が釣り上げられていたので受注した。入手難易度が高いのは俺達も同じなんだけど、そこは厄介だけど最強のスキルがある。そう、俺の魅了だ。
リラ曰く、俺の魅了で深淵の森にいる魔物に、月光花まで案内させることができるかもしれないってことらしい。確かに操れて意思疎通ができるなら、案内してもらうことも不可能じゃないだろう。
「深淵の森って、意外と魔物は少ないのかな」
「東の森よりも広いからね。魔物の密度は低いのかも」
深淵の森に入って五分ほどは歩いているけど、まだ一度も魔物が俺に寄ってこないのだ。スキル封じはかけてないから、俺に魔物が寄ってこないということは、十メートル以内に魔物はいないということになる。
それからしばらく、体感では十五分ほど歩いていると、やっと魔物と遭遇した。大きな犬のような魔物で、顔はかなり凶悪だ。でかい牙が口の中に収まりきれずに顔を覗かせている。犬みたいだけど可愛さはほとんどないな……
「その場に止まれ」
俺達に飛びかかってこようとしたところに魅了をかけると、魔物はすぐに動きを止めて地面に伏せをした。
――本当に魅了の力が強すぎて自分で怖くなる。この力を悪人が持ったらって考えたら、世界が滅びそうな気がする。
「月光花は知ってる? 知ってるなら案内して欲しい」
「うぅぅぅ」
魔物に近づいて声を掛けると、魔物は唸り声をあげながら、ぎこちない動きで俺達に背を向けた。もしかしたら魅力に完全には支配されず、なんとか抗おうとしてるのかもしれない。
「リラ、この状態で自由にして良いって魅了を解いたらどうなると思う?」
「そしたらほぼ間違いなく、尻尾を振って好意的にリョータに飛びついてくるんじゃない? あの魔物が今いる場所はパッシブの範囲内だから。ただリョータの魅了はもちろん意図的にかけた方が強いから、もしかしたらパッシブだけだと抗われるかもしれないけど」
「でも今すでに、抗おうとしてない?」
「これは違うと思うよ。私達を害したいからそれに反する行動に反発したいっていうより、リョータが好きで近づきたいのにそれを止められてるのが嫌なんじゃないかな」
そっちか、そっちの反発なのか。それは考え付かなかったな。意図的な魅了を一度切ってみるかな……自分のスキルについて色々と試してみたいと思ってたのだ。
もしこれでこの魔物がパッシブの魅了に抗って俺逹を襲ってきたら、深淵の森の魔物にはパッシブではあまり効果がないと知ることができる。
俺は魔物がどんな反応をするのか緊張しつつ、意を決して魅了を切ってみた。すると目の前にいた犬型の魔物は凄い勢いで俺の方を振り返り……尻尾を思いっきり振って俺に駆け寄ってきた。
「止まれ!」
凄い勢いだったので完全に近づかれる前にと慌てて動きを止めると、魔物は少しだけ悲しそうな表情を浮かべてその場に止まった。これは完全にパッシブも効いてるな。
やっぱり俺のスキルは相当に強いみたいだ。どこまでのレベルだと魅了が効かなくなるんだろう。
魅了の強さを正確に認識しておきたいけど、それを確かめるには強い魔物と相対しないといけないし、難しいよな……
「本当にリョータの魅了は凄いよね。この魔物は結構強い部類なんだよ? リョータには全く伝わらないだろうけど」
リラが苦笑しつつそう言ったので俺は改めて魔物に視線を向けた。伏せをしながら尻尾を振って、瞳をキラキラと輝かせて耳を嬉しそうに後ろに倒している。
――うん。もう従順な犬にしか見えないな。
というかこんな瞳で見つめられたら、俺にはこいつを倒すことなんてできそうにない。俺は攻撃魔法を習得したとしても、武器の扱いを身につけても、全く役に立たないかもしれない……
「リラ、少なくともパッシブの魅了が効く魔物は俺には倒せないかも……ごめん」
前もってちゃんと伝えておこうと思ってそう口にすると、リラは同意するように頷いてくれた。
「確かにこれは辛いね。……私でも倒すのに躊躇するよ。この子はスラくん達みたいに従魔にするの?」
「いや、際限なく増えちゃうから、従魔は増やさないことにしようと思ってる」
「そっか。じゃあ案内してもらったら森に帰ってもらおう。本当は倒せるなら倒した方が良いんだけどね」
「……リラ、ありがとう。そうしてくれると嬉しい」
「気にしないで。私達が受けるのは魔物討伐じゃなくて、植物とかの採取中心が良いかもね」
「確かにそうかも。そうしてくれると、めちゃくちゃありがたい」
俺が心から言ったその言葉に、リラは苦笑を浮かべて頷いてくれた。
「できる限りそうしようか。植物採取も結構数があって、難しいのは報酬が高かったりするし」
「本当にありがとう。でも魔物を倒すのは仕方がないって自分の中で理解はできてるから、絶対に魔物を倒すのはダメなんて思わなくて良いよ」
「分かった。じゃあ必要な時は倒しつつ、倒すことを無駄に選ぶようなことはしないようにするよ」
そうしてリラと今後の方針を話したところで、俺達はこの魔物に再度案内を頼むことにした。
俺の魅了に引き寄せられる魔物を操って遠ざけたり、貴重な素材が得られるものはリラが倒したりしつつ、魔物に付いて歩くことしばらく。俺達は深淵の森を奥には行かず森の外縁と平行に進んだところに、小さな池があるのを発見した。
「うわぁ、こんな場所があったなんて」
「もしかして、これが月光花?」
「うん。これ全部そうだよ!」
池のほとりには、思わず見惚れてしまうほどに綺麗な花畑があった。ここはまだ誰にも見つけられていない場所なのかもしれない。人の手は入ってなさそうだ。
「途中で少し危ない道もあったし、わざわざここまできた人がいなかったんだろうね。魅了スキルって本当に凄いよ」
「役に立てて良かった」
この魅了スキルは、めちゃくちゃ使えることは疑いようもない事実だ。このスキルがパッシブじゃなかったら良かったのに。なんでパッシブスキルだったんだか。
「凄く綺麗だし、ギルドに報告はしないようにしようか」
「確かに……ここが冒険者に荒らされたら勿体ないな」
「うん。依頼に必要な分だけ採取していこう」
それから俺達は群生している月光花の端から数本だけ採取して、形が崩れないように慎重に容器に入れて鞄にしまった。これで依頼は完了だ。
「ここでお昼を食べていかない?」
「そうしようか。こんなに綺麗な景色を見ながらとか贅沢だよ」
鞄から今日も買ってきたベーグルを取り出して、スラくんには魔石を、ユニーには一つだけ買った紫色の果物をあげた。
ベーグルにかぶりつくと、噛めば噛むほどに口の中に甘みが広がる。
「今日のやつも美味い」
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