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34、魅了スキルと日本について
リラは陛下が良いと言うまでスキル封じをかけてくれそうにないので、俺は騎士の様子をじっと見つめている陛下に勇気を出して声をかけた。
不敬だと言われるかもとは思ったけど、それよりも現状から逃れたかったのだ。
「あの……もう、終わりで良いでしょうか?」
「ちょっと待て。もう少し様子を観察したい」
「……かしこまりました」
マジで早くして! この若い騎士もめちゃくちゃ可哀想だから、明らかに人生で一番の黒歴史を作り出してるから!
「リョータ、こっちを向いてはくれないのか……?」
「向かない! 向かないからちょっと離れて!」
声に魅了は載せないように注意してそう叫んだけど、それだと全く効果はないようで、若い騎士は拒否されたのに嬉しそうに頬を緩めている。
うぅ……辛い。マジで陛下は鬼畜だ。
「宰相、他のパターンも見たい。もう何人か騎士を魅了の範囲内に入れてみてくれ」
「かしこまりました」
え、もう何人か!? マジかよ……と衝撃を受けている間に宰相はテキパキと指示を伝え、若い騎士から年配の騎士まで合計三人が俺に向かって近づいて来た。
そして十メートルの範囲内に入ったところで、全員が瞳をハートにして駆け寄ってくる。
一人の年配の騎士は、今俺の目の前にいる騎士と同じで甘い言葉を囁くパターンだったけど、他の二人は飛びついてくるパターンだった。
「うわっ、ちょっ、ちょっと、マジで止めて!」
「おいお前、リョータが痛がってるじゃないか!」
「はぁ? これは喜んでんだよ」
「リョータ、俺が一番好きだよな」
俺を押し倒したい系の騎士と甘い言葉を囁く系の騎士が、二対二で言い合いを始めた。
私のために争わないで! ってセリフ。よく女の子の憧れのセリフとかって言われてたけど、あれ絶対に嘘だ。こんな状況が憧れなわけない。
いや、でもこの四人が女性だって考えたら……それでも怖いわ!
「全員、全員好きじゃないから……!」
俺は火事場の馬鹿力を発揮して、俺の上に乗っていた騎士を何とか突き飛ばして騎士達から逃れた。そして俺達が入って来た扉辺りにまで謁見室の中を逃げ、四人の騎士を魅了の範囲外に出すことに成功する。
「はぁ、はぁ、はぁ」
四人が言い争ってくれてたおかげでなんとか逃げられた。不幸中の幸いだ。
「あれ、俺はなんであんなことを……」
「うわぁぁぁぁぁ、恥ずかしすぎる」
「あんなの俺のキャラじゃない。絶対に違う。さっきの俺は俺じゃない。操られてたんだ……」
「魅了スキルのレベル十、凄いな」
四人は魅了が解けて、それぞれ異なる反応を見せた。呆然としてる人、頭を抱えてその場に蹲った人、ぶつぶつと呟いて自分の本心じゃないと言い聞かせてる人、魅了スキルの能力に意識を持っていき、さっきの出来事を忘れようとしている人、様々だ。
「あのー! もうスキルを封じてもらっても良いでしょうか?」
騎士から逃げたことで遠くにいる陛下にそう聞くと、陛下が頷いてくれたので、すぐリラにスキル封じを掛けてもらった。
ふぅ、これでもう大丈夫だ。
「リラ、ありがと」
「リョータこそお疲れ様」
「……マジで疲れたよ」
「魅了スキルについては理解した。そこのリラという少女にはスキルが効かないことも、スキルを封じることができるのも本当らしいな」
陛下はそう言って一度頷くと、騎士達を元の場所に戻したので、俺とリラも最初の位置に戻ってもう一度跪いた。
「ではもう一つ聞きたいことがある。報告ではリョータは別の世界からやって来たと聞いたのだが、それは本当か?」
「はい。日本、という国からやって来ました。ご存知でしょうか?」
「ニホン……聞いたこともないな」
「そう、ですか」
この国の王が知らないとなると、この世界で日本について知ってる人がいる可能性はかなり低くなる。これは帰り道を探すのはかなり大変かな……
「突然ルリーユの街近くの草原に現れたのだったな」
「そうです。日本という国で私はアイドルという、舞台に上がる仕事をしていたのですが、その舞台上で目眩を感じて気付いたら草原にいました。私でも何が起きたのかさっぱり分からなくて……」
俺のその言葉を聞いて、半数の人は懐疑的な瞳を向けて来て、もう半分は同情の眼差しを向けてくれている。
「それは大変だったな。ということは、帰る術は分からないのだな」
「はい。それを探しながら、生活のために冒険者として働いています」
「……分かった。では私の方でも日本という国に関する情報を集めてみよう。しかしその代わりに条件がある。まず一つ目は我が国と敵対しないこと。二つ目は国の依頼を最優先で受注すること。そして他国に向かう際には騎士を数名同行させること。この三つの条件を受け入れてもらいたい」
……これは受け入れても良いのだろうか。とりあえずそこまで悪い条件ではない気がする。
敵対しないのはもちろんだし、依頼を受けるのも問題ない。他国に行く際に騎士を同行させるのは……まあ、仕方ないかな。そのぐらいの不自由を受け入れて、この国での安全と国の協力が得られるのなら悪くない気がする。
というかそもそも、断るなんてことが許されるのか分からないし、この雰囲気で断れない。
「かしこまりました」
「ありがとう。ではこのあと書面にサインを頼む。それから最後になるが、今回のドラゴン討伐に対して国から褒美を与える。目録は後で受け取ってくれ」
「ありがたく、受け取らせていただきます」
その俺の返事を聞いて、陛下は宰相と数人の騎士を連れて謁見室を出ていった。これで終わり……だよな。
――マジで良かった。処刑とか牢屋行きにならなかった。もうそれだけで大成功だ。
俺はほっとして体の力を抜いて息を吐き出す。
「リョータ、良かったね」
「うん。リラが隣にいてくれて心強かった。ありがと」
俺とリラは力の抜けた笑みを浮かべて、お互いを労った。
不敬だと言われるかもとは思ったけど、それよりも現状から逃れたかったのだ。
「あの……もう、終わりで良いでしょうか?」
「ちょっと待て。もう少し様子を観察したい」
「……かしこまりました」
マジで早くして! この若い騎士もめちゃくちゃ可哀想だから、明らかに人生で一番の黒歴史を作り出してるから!
「リョータ、こっちを向いてはくれないのか……?」
「向かない! 向かないからちょっと離れて!」
声に魅了は載せないように注意してそう叫んだけど、それだと全く効果はないようで、若い騎士は拒否されたのに嬉しそうに頬を緩めている。
うぅ……辛い。マジで陛下は鬼畜だ。
「宰相、他のパターンも見たい。もう何人か騎士を魅了の範囲内に入れてみてくれ」
「かしこまりました」
え、もう何人か!? マジかよ……と衝撃を受けている間に宰相はテキパキと指示を伝え、若い騎士から年配の騎士まで合計三人が俺に向かって近づいて来た。
そして十メートルの範囲内に入ったところで、全員が瞳をハートにして駆け寄ってくる。
一人の年配の騎士は、今俺の目の前にいる騎士と同じで甘い言葉を囁くパターンだったけど、他の二人は飛びついてくるパターンだった。
「うわっ、ちょっ、ちょっと、マジで止めて!」
「おいお前、リョータが痛がってるじゃないか!」
「はぁ? これは喜んでんだよ」
「リョータ、俺が一番好きだよな」
俺を押し倒したい系の騎士と甘い言葉を囁く系の騎士が、二対二で言い合いを始めた。
私のために争わないで! ってセリフ。よく女の子の憧れのセリフとかって言われてたけど、あれ絶対に嘘だ。こんな状況が憧れなわけない。
いや、でもこの四人が女性だって考えたら……それでも怖いわ!
「全員、全員好きじゃないから……!」
俺は火事場の馬鹿力を発揮して、俺の上に乗っていた騎士を何とか突き飛ばして騎士達から逃れた。そして俺達が入って来た扉辺りにまで謁見室の中を逃げ、四人の騎士を魅了の範囲外に出すことに成功する。
「はぁ、はぁ、はぁ」
四人が言い争ってくれてたおかげでなんとか逃げられた。不幸中の幸いだ。
「あれ、俺はなんであんなことを……」
「うわぁぁぁぁぁ、恥ずかしすぎる」
「あんなの俺のキャラじゃない。絶対に違う。さっきの俺は俺じゃない。操られてたんだ……」
「魅了スキルのレベル十、凄いな」
四人は魅了が解けて、それぞれ異なる反応を見せた。呆然としてる人、頭を抱えてその場に蹲った人、ぶつぶつと呟いて自分の本心じゃないと言い聞かせてる人、魅了スキルの能力に意識を持っていき、さっきの出来事を忘れようとしている人、様々だ。
「あのー! もうスキルを封じてもらっても良いでしょうか?」
騎士から逃げたことで遠くにいる陛下にそう聞くと、陛下が頷いてくれたので、すぐリラにスキル封じを掛けてもらった。
ふぅ、これでもう大丈夫だ。
「リラ、ありがと」
「リョータこそお疲れ様」
「……マジで疲れたよ」
「魅了スキルについては理解した。そこのリラという少女にはスキルが効かないことも、スキルを封じることができるのも本当らしいな」
陛下はそう言って一度頷くと、騎士達を元の場所に戻したので、俺とリラも最初の位置に戻ってもう一度跪いた。
「ではもう一つ聞きたいことがある。報告ではリョータは別の世界からやって来たと聞いたのだが、それは本当か?」
「はい。日本、という国からやって来ました。ご存知でしょうか?」
「ニホン……聞いたこともないな」
「そう、ですか」
この国の王が知らないとなると、この世界で日本について知ってる人がいる可能性はかなり低くなる。これは帰り道を探すのはかなり大変かな……
「突然ルリーユの街近くの草原に現れたのだったな」
「そうです。日本という国で私はアイドルという、舞台に上がる仕事をしていたのですが、その舞台上で目眩を感じて気付いたら草原にいました。私でも何が起きたのかさっぱり分からなくて……」
俺のその言葉を聞いて、半数の人は懐疑的な瞳を向けて来て、もう半分は同情の眼差しを向けてくれている。
「それは大変だったな。ということは、帰る術は分からないのだな」
「はい。それを探しながら、生活のために冒険者として働いています」
「……分かった。では私の方でも日本という国に関する情報を集めてみよう。しかしその代わりに条件がある。まず一つ目は我が国と敵対しないこと。二つ目は国の依頼を最優先で受注すること。そして他国に向かう際には騎士を数名同行させること。この三つの条件を受け入れてもらいたい」
……これは受け入れても良いのだろうか。とりあえずそこまで悪い条件ではない気がする。
敵対しないのはもちろんだし、依頼を受けるのも問題ない。他国に行く際に騎士を同行させるのは……まあ、仕方ないかな。そのぐらいの不自由を受け入れて、この国での安全と国の協力が得られるのなら悪くない気がする。
というかそもそも、断るなんてことが許されるのか分からないし、この雰囲気で断れない。
「かしこまりました」
「ありがとう。ではこのあと書面にサインを頼む。それから最後になるが、今回のドラゴン討伐に対して国から褒美を与える。目録は後で受け取ってくれ」
「ありがたく、受け取らせていただきます」
その俺の返事を聞いて、陛下は宰相と数人の騎士を連れて謁見室を出ていった。これで終わり……だよな。
――マジで良かった。処刑とか牢屋行きにならなかった。もうそれだけで大成功だ。
俺はほっとして体の力を抜いて息を吐き出す。
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