異世界でパッシブスキル「魅了」を得て無双する〜最強だけど最悪なスキルに振り回されてます〜

蒼井美紗

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42、王都の冒険者ギルド

 次の日の朝。俺達はドゥニさんが作った美味しい食事を朝から贅沢に堪能し、サミーさんが御者を務める魔車で王都の冒険者ギルドまでやってきた。
 国からの褒美で王都に屋敷をもらっちゃったし、国からの依頼を優先的に受けると約束したし、これからは王都を拠点にすると決めたのだ。だからまずはここの冒険者ギルドに顔を出すことにした。

 魔車とユニーのことはサミーさんに任せてギルド内に入ると、豪華な魔車でやってきたということで気になるのか、ギルド中の視線が俺達に集まる。

「リラ、俺達のことって誰も知らないのかな?」
「どうなんだろう。ギルドマスターは国からの報告で知ってると思うけど、それ以外は知らないんじゃない? まだ王都に来たばかりだし」
「そっか」

 そんな話を小声でしながら受付に向かうと、受付の若い女性は緊張の面持ちで立ち上がって俺達を迎えてくれた。

「い、いらっしゃいませ! 本日はどのようなご用件でしょうか……?」
「普通に依頼を受けに来たのですが、Aランクからは個室が使えると聞いていましたので、まずは受付にと」
「え、Aランク!? っ……」

 女性は俺達のランクを叫んでから、マズいと思ったのか口を咄嗟に塞いだけど、すでにギルド中が女性の叫びを聞いてしまった。
 まあ個室を使ってれば高ランクだってすぐにバレるだろうし、別に隠すつもりもないから良いんだけど。

「す、すぐにご案内いたしますので、少々お待ちください……!」

 それから数分待っていると、さっきの女性とは違う落ち着いた雰囲気の女性が俺達の方にやって来てくれた。さっきの人は新人なのかな……あんまり怒られてなきゃ良いけど。
 そんなことを考えながら案内されて個室に向かうと、中にはガタイが良くて鋭い目つきの男性が一人で待っていた。その人は俺達が部屋の中に入ると、立ち上がって挨拶をしてくれる。

「よく来たな。俺は王都の冒険者ギルドでギルドマスターをしている、ウスマンだ。お前達のことは、国とルリーユの街から通達が来たので知っている」
「初めまして、リョータです」
「リラです」

 ウスマンさんは俺達の挨拶を聞くと、一つ頷いてから席を勧めてくれた。ふぅ、やっと落ち着けたな。やっぱりジロジロ見られてるのは緊張する。

「一応ギルドカードを見せてもらえるか?」
「もちろんです」

 ギルドカードで名前とランクを確認したところで、ウスマンさんは居住まいを正した。ここからが本題みたいだ。

「リョータのスキルのことは詳細を把握している。こちらのギルドでも配慮できることはする予定なので、何かあったら遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます」
「それからお前達はAランクなので、特別扱いというわけではなく普通に個室が使える。依頼達成報告や依頼を受ける際にも活用してほしい。Aランク以上はかなり少ないので受付もすぐに顔を覚えるだろうし、声をかけてもらえれば個室に案内されるはずだ。というよりも、できる限り個室を使って欲しい。Aランク以上は他の冒険者に聞かせない方が良い話が多くあるからな」

 これは個室を使えるというよりも、個室を使ってくれって感じなんだな。俺達にとっても個室の方がありがたいし、ここはありがたくAランクの恩恵を受けさせてもらおう。

 俺とリラがその意思を伝えると、ウスマンさんはほっとしたように息を吐いた。そして隣に置いていた紙束の中から、一枚の豪華な紙を取り出す。

「ではさっそくなんだが、国からお前達に依頼が来ている。これを見てくれ」

 もう依頼が来てるのか……さすがに早すぎない? 
 そう驚きながらも紙を受け取って覗き込むと、そこには依頼の内容が簡潔に書かれていた。

「ダンジョンの攻略……?」
「もしかして、育ちすぎたダンジョンの攻略が依頼の内容ですか?」

 リラが難しい表情で発したその言葉に、ウスマンさんは真剣な表情で頷いた。育ちすぎたダンジョンってどういうことだろう。そもそも俺はダンジョンについて、ほとんど何も知らないんだよな。

「リラ、説明をお願いしても良い?」
「あっ、ごめん。そうだったね。……ダンジョンっていうのは世界中のどこにでも突然できるものなんだけど、最初は魔物もいなくてダンジョンコアって呼ばれるダンジョンの心臓? みたいなやつが出現するだけなんだ。でも放置してると段々とそれが地中深くに潜っていって、ダンジョンの中を進まないとダンジョンコアに辿り着けなくなる」

 この世界のダンジョンはそんな仕組みなのか。ということは、初期段階で気づいてダンジョンコアを壊すとかすれば、ダンジョンの脅威はほとんどないってことだな。

「ダンジョンからは魔物が定期的に排出されるから、できる限り早くにダンジョンコアを破壊してダンジョンを潰したいんだけど、人気がない森の中とかにできたダンジョンは誰にも見つからずに大きく育っちゃうんだ。それが育ちすぎたダンジョンだよ」

 確かに森の中なんて初期段階で気づけるわけないよな。気づいた時にはもう魔物が排出されてる段階で、ダンジョンコアは地中深くに潜っていて、そこに辿り着くには相応の実力者が必要になるんだろう。
 この世界のダンジョン、結構な鬼畜設定じゃない? 人が住んでない場所なんてたくさんあるんだから、育ちすぎたダンジョンがそこかしこに生まれてそうだ。

「それを潰すのが俺達への依頼ってことだな」
「うん。基本的に育ちすぎたダンジョンは国が討伐隊を組んで潰すんだけど、たまに中が狭いダンジョンもあって、そういう場所は人数がいても仕方がないから冒険者に依頼されるんだよね……今回は私たちにその番が回ってきたみたい」

 ということは、今回のダンジョンは地中深くまで伸びた狭いダンジョンってことなんだな。俺達で奥まで辿り着けるんだろうか……かなり心配だ。俺は腕っぷしが強いわけじゃないから尚更。

「緊張してる?」
「うん。だって俺は強いわけじゃないし、大丈夫かなって」
「断定はできないけど、多分大丈夫だと思うよ。リョータの魅了があればそこまで苦戦はしないんじゃないかな。この世界にドラゴンよりも強い魔物はいないから」
「……そっか、それなら良かった」

 よく考えたら俺達はドラゴンを倒したんだもんな。現実感がなくて忘れそうになってしまう。

「ドラゴンに効いた時点でリョータの魅了が効かない相手はいないだろうから、安心して大丈夫だよ」

 リラがそう言って浮かべてくれた笑顔で、体に入っていた力が抜けた。そうだよな、俺の魅了は厄介だけど優秀なんだから信じよう。
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