異世界でパッシブスキル「魅了」を得て無双する〜最強だけど最悪なスキルに振り回されてます〜

蒼井美紗

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43、国からの依頼内容

「依頼を受けてくれるか?」

 ウスマンさんのその問いかけに、俺とリラは一緒に頷いた。するとウスマンさんはホッとしたように息を吐く。俺達が断ったら、それを伝えるのはウスマンさんの役目なのかもしれない。

 ……できる限り断らないように頑張ろう。国からの依頼を断られましたなんて報告するの、絶対に嫌な仕事だろうから。

「依頼のダンジョンについて、情報をいただけますか?」
「それはもちろんだ。こちらで持っている限りの情報を渡そう。まず場所だが、ここ王都から西に十キロほど進んだ森の中に入り口がある。そのダンジョンができるまでは穏やかな森で冒険者以外の人達も訪れてたんだが、約十年前にダンジョンができてからは、ダンジョンの周り一帯が立ち入り禁止となっている」

 王都から十キロか……それってかなり近いんじゃないだろうか。王都の近くでダンジョンから魔物が出てきていたら比較的初期段階で気づくだろうし、なんでその時に潰せなかったんだろう。
 俺のそんな疑問が分かったのか、ウスマンさんは言葉を続けた。

「実はこのダンジョンの入り口は……谷底にあるんだ。そこまで深くて広い谷ではないが地面の割れ目が存在していて、ほとんどの者は危ないからと近づくのを避けていた。そんな谷の底にダンジョンの入り口は出現したため、気付くのが遅れたんだ」
「そんな経緯があったのですね……存在に気づいたということは、魔物は谷から登って来られるということですよね?」
「その通りだ。谷の端は緩やかな坂道になっていて、ほとんどの魔物は登れてしまう。もちろん俺達もそこから出入りが可能だ」

 谷の底にダンジョンができるとか、それは気づけるわけないな。入り口まで薄暗いダンジョンとか憂鬱すぎる……俺って暗い場所とか狭い場所とかあんまり好きじゃないのだ。
 はぁ……俺はため息を心の中に押し隠して、スラくんのプルプルボディーをギュッと抱きしめた。めちゃくちゃ落ち着く。

「十年前と仰っていましたが、どのぐらいの深さになっているのか分かるでしょうか?」
「いや、正確なところは分からない。ただ地上に出てくる魔物がオークなど比較的強い魔物らしいので、かなりの深さになっているだろう。予想では十階を超えてるんじゃないかって話だ」
「やはりそのぐらいにはなってますよね……」

 それからリラに説明してもらったところによると、地下に十階も伸びているダンジョンは相当にレベルが高いらしい。ダンジョンは地下に伸びれば伸びるほどに広くなり、階下への階段を探すのも大変になり、また魔物の強さも右肩上がりに上がっていくのだそうだ。
 十階だと国が討伐隊を出すなら百人単位になるんだとか。それを俺達二人で潰しに行くとか……魅了スキルがあるとしても不安すぎる。

「国が討伐できないってことは狭いダンジョンだから、一気に大勢の魔物に襲われることはないだろうけど……それぞれ個の強さはかなりのものになると思う。油断はしないで臨もうか」
「うん。ちゃんと準備して、ダメそうなら撤退も視野に入れよう」
「それはもちろん」

 それからも俺達はウスマンさんからダンジョンに関する情報を色々と聞き、一時間ほどで冒険者ギルドを後にした。本当は依頼板から日帰りの依頼を選ぶ予定だったんだけど、大幅な予定変更だ。

「サミーさん、ただいま戻りました」
「リョータさん、リラさん、おかえりなさいませ」

 ギルドから出ると、サミーさんが穏やかな笑顔で俺達を迎えてくれた。サミーさんの笑顔って実家のような安心感というか、とにかく和むな。サミーさんを御者として雇って良かった。

「お次はどこへ向かいますか?」
「次は市場に向かってもらえますか? 依頼でダンジョンに行くことになりまして、食料などをたくさん買い込みたいです」
「かしこまりました」

 サミーさんとユニーに魔車は任せて、俺達は中でこれからのことについて話し合う。

「ダンジョンにはいつ出発にする?」
「できる限り早い方が良いと思う。時間が経てば経つほどにダンジョンは大きくなるから。そうだね……今日は一日準備にして、明日からはどう?」
「俺はそれで大丈夫」
「じゃあそうしようか。色々と買い込まないとだね。十階もあるダンジョンは日帰りでのクリアは絶対に無理だから、数日はダンジョン内で野営になるよ」

 うわっ、マジか。それはかなり憂鬱だ。狭いダンジョンってことだし魔車は入れないだろうから、何もない外で野営ってことだよな。

「野営道具はテントとか買うの?」
「ううん。ダンジョン内は洞窟で雨が降ることはないし、丈夫な敷き布といくつかの温かい布団があれば大丈夫だと思う。アイテムバッグをもらえて本当に良かったよ。あれはかなり容量が大きいみたいだし、必要なものは問題なく持ち運べるだろうから」

 確かにそうだな。……まあ、この依頼を俺達に頼むこと前提でアイテムバッグをくれたって可能性もあるけど。というか、かなりの高確率で俺の予想が当たってる気がする。
 国に上手く使われてるなぁ……まあ逆らうつもりはないし仕方がない。上手く使われつつ、俺も国を利用するぐらいの気持ちでいよう。

「食料ってどういうものを持ってくの? やっぱりベーグルみたいなやつ?」
「そうだね。後は何かトラブルがあったりして長引いた時のためにも、かなり日持ちするものも持っていきたいかな。調理前の穀物なら数ヶ月は保存できるからそれと、常温保存が可能な野菜も買っていこう。そうすれば肉はダンジョン内でも魔物を倒せば手に入るし、中で料理もできるよ。あっ、調味料と調理器具も必要だね」
 
 中で料理をすることもあるのか。俺って料理はあんまり得意じゃないんだよな……ここにきて思わぬ障害だ。
 日本では弁当がどこでも買えるんだから、料理なんてできなくても生きていけるって思っていた。マジで過去の自分を殴りたい。少しでも上達するように努力しておけば良かった。
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