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第五章 都市旅行の魔力

【戦場都市】いきなり戦闘開始

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 はい、ということで前の投稿から二週間、少々多忙でしたので投稿が遅れてました。何故か戦場都市とかいう戦闘描写が多いやつを書いていたので投稿期間が長くなったのもあります。
 別に某呪術なやつ見てたとかでは無いので



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 拳と拳が交差する。互いに避けつつもフェイントをかます。技術レベルが高い達人同士の戦い、正直素人目で見ても分からない。

「……にしてもどーしてこうなるかね」

 獰猛な笑みを浮かべる兄貴とその実力と同じ力を持つ彼女を見ながらため息混じりに溢してしまう。
 確かあれはダンジョンを何とか抜けて戦場都市に着く前だった。





「飽きたぁー」

 ユリがだらんと崩れる。飽きる理由は分かる。さっきから同じ景色だし自動運転ができると知ってからクリムさんは兄貴の背後に行ったからバイクでの爽快感は味わえない。
 正直、あんなに風が気持ちいいとは思わなかった。
 でもクリムさんが兄貴と乗れて嬉しそうだから無理を言うことはできない。

「敵もいない、というか外のお二人が率先して倒していますから敵を倒すこともできませんから分かりますわ」
「……なぁ、アリスお前はいつからそんな戦闘狂というか殲滅狂になったんだ? 俺は不思議で仕方ないんだが」

 たわいもない会話をしていると急に車体がガタンと大きく揺れて停車する。こういう時、大抵がトラブルなんだよなぁ、荒野の中でそういうのやめてほしいんだが……。

「何々? 事件! それとも事故かな! さぁ早く行こう今すぐ行こう!」
「なんでユリは目ぇ輝かせてんの?」
「ごちゃごちゃ言ってないで早く早く」

 無理矢理急かされて外に出ると何やら兄貴たちが車の前輪前で屈んでいた。

「どーしたんだ兄貴」
「あー、それがですね」

 曰くタイヤに岩を削ったようなトゲが刺さっていたのだそう。実物を見るとかなり鋭くそりぁタイヤパンクするわと納得できるものだった。
 しかもそのトゲ、道のあちらこちらに生えている。こんなところ機動力のあるものじゃないと走れるわけがない。さらにいやらしいことに縦に真っ直ぐ生えているわけではなく、さまざまな方向に生えているのだ。中には返しの付いている殺意が高いものまであった。
 真っ直ぐだったらちょっと揺れるくらいで行けたんだがなぁ。

「これ、なんなんでしょうね」
「ん」
「少なくとも自然に出来たようには見えませんわ」
「魔術か、それともスキル、はたまたモンスターのせい?」

 ん~? なーんか違和感を感じる。トゲは荒野全体に生えているわけではなく、ここら辺具体的に言うと周囲10mほどに生えている。
 それに気のせいかトゲのあるここら辺って周りに比べて微妙に膨らんでいるような……いやいやまさか、ね。



「“識別”」


No.58【鋭棘鋼岩巨大亀メタルスパイクグレートタートル
分類:タートル
脅威度:★★★★★★
生息地:旅の荒野
ドロップ品:高級亀肉 鋼岩の甲羅 鋭棘鋼岩
テキスト:幼体岩亀ロックルが成長した姿の一つ。鋼のようにとても硬い皮膚と甲羅、さらに甲羅には攻撃にも防御にも使える鋭いトゲが生えている。このトゲは自動的に生え変わり、辺りにマキビシのようにばら撒く。またトゲをミサイルのように飛ばすこともできる。岩亀は岩を主食として食べているため、たまに地中に潜っている姿を確認できる。このときの岩亀は他の地面と見分けが付きづらいため各個体の特徴を把握しておくことが大切である。それを怠れば岩亀の逆鱗に触れるだろう。



 わー、モンスターだー。予想通りすぎて何も言えないー。しかも説明文の最後にとても不吉なことが書いてあるー。

「逃げ──」
 ようとするが地面をモンスターと認識した途端に地面、もとい巨大な亀が起き上がる。
 酷い揺れによって車とバイクは自動的に収納され、立つのもままならなくなるのはそう遅くない、そう判断すると同時にトゲが甲羅全体に生え出したため、急いで甲羅から退避する。
 間一髪というところで逃げることに成功し、大岩亀の全貌を見ることにも成功する。


「ほわぁぁぁ!!!?」

 完全に立ち上がった大岩亀は文字通り巨大で……体長は約20mくらい、高さは少なくとも10はあるだろうか。
 どう考えても前に変な洋館で戦った厄災アマリスとやらと同じくらい、もしくはそれ以上の強さだとわかる。巨大なのは強いと相場が決まっているのもある。

「グロッオォォク!!!!」

 腹に響く重低音の効いた獲物を威嚇するための咆哮。それは開戦の幕引きと同時に先制攻撃を浴びせてくる。
 先程まで平面だった地形が変動し、実に走り難いデコボコとした地形になってしまった。しかも岩トゲのおまけ付きである。

「変な鳴き声、とわぁ!?」

 岩トゲが発生すると同時にぶっといトゲが俺の足元に出来そうだったので急いでその場を退くとトゲが3m大になった。串刺しは勘弁願いたい、それに尻からとか最悪だろ。
 少し俺が怯んでいる間に兄貴はいつのまにか大岩亀の足元まで接近し、掌を思い切り太い足へと叩き付ける。

 “ボゴンッ!”

 足が無数の破片となって砕かれる。どうやら大岩亀は足が岩で出来てるっぽい。
 これなら兄貴にあの技で足を壊して貰えばいいと思ったがそうはいかないのが現実。大岩亀が周りの地面を食ったかと思うと足が超速で再生していく。そのあまりの速さに兄貴でさえ反応しきれなかった。

「マジかぁ」
「うっわー、そういうのなくないですか?」

 露骨に嫌そうな顔をしている兄貴を脇目に取り敢えず俺は斬ってみることにした。今の俺は斬ることしかできないからな。深呼吸をし、意識を集中させ、意識を体の隅々まで行き渡らせることで抜刀に最も適した状態へと移行する。

「壱の太刀“刹那”」

 そして、解き放つ。刹那の一撃は硬質な物体を確かに切り離した、が次の間にはたちまち超再生で治ってしまう。
 このままで終われるかと連続で攻撃を仕掛けるも先程までの威力はでない上、【瞬速の連撃】のせいで攻撃する度に威力が落ちてしまう。

「一度退避するッ!」

 余ってた氷結爆弾を置き土産に投げつつ退避する。
 逃げる途中でドデカイトゲに攻撃されそうになるがなんとか戻って来れた。
 クリムさんが大岩亀に呪詛デバフを、ユリが兄貴に付与バフをかけて攻撃しているがダメージを与えられているようには見えない。
 度々飛んでくる破裂して辺りを攻撃するミサイルから二人を守りつつ兄貴の攻防を眺めていると──。

「埒が明かない」

 クリムさんがそう言い放ちイベントで手に入れたポイントでも使ったのか、一丁のスナイパーライフルを構えていた。
 妙に貫禄を感じさせる狙いを定め引き金を引く。実弾銃だったのか辺りに大きな発砲音が響き、耳鳴りがする。
 大岩亀が耳が痛くなる悲鳴を上げると目から血を噴き出した。
 クリムさんは眼を狙い命中させるという離れ業を披露した。確かに普段の目への狙いも凄いし、射撃というか狙撃の才能があるようだ。
 てかあんなん針穴に糸を通すような偉業だと思うんだが……凄まじい集中力と技術力だな。


「グッロ゛ッォォォグゥ!!!!」


 もう一発撃とうとしたみたいだが大岩亀が首を振って狙いが外れたらしく、らしくもない舌打ちをしていた。そのあと接近した兄貴が注意を引いていたが大岩亀が咆哮すると吹き飛ばされてしまう。
 それと同時に降り注ぐミサイルを迎撃しつつこちらに来る。

「強制ノックバックに超再生……前衛殺しですかこれ」
「大体遠距離攻撃だしそうなんじゃない?」
「辛いなぁ……足は岩みたいだが甲羅らへんは血が出てたし生物っぽいから甲羅に攻撃すんのが良さそうだな」

 情報共有をしつつ兄貴が地面から生えてくる岩槍を砕く。ということで俺が後衛組を守り、兄貴が跳んで甲羅に攻撃を仕掛けることになった。

 自分の周りにトゲを作りまくってそのトゲを波のように動かすという殺意の高い攻撃をしているが兄貴は難なく渡る。
 そして【見えざる盾】で大岩亀の顔の横まで跳躍すると急に加速し、クリムが狙撃した方の目に飛び膝蹴りをかます、そして頭の上まで行き、巨大な鉄塊を取り出すと急速落下して痛みを叫ぶ大岩亀の頭部に思いっきりぶつける。

「う、うわぁ」

 外道というか、なんという容赦の無い攻撃。大岩亀が目を抉られて、しかも頭を殴ったせいなのか脳震盪を起こしてるっぽい。
 さらにそこへアリスからの容赦なき魔術が解き放たれる。

「さぁ、焼き亀になりなさい『獄焔よ、渦とブレイズンなりて蹂躙せよボルテックス』」

 アリスが火の粉を撒き散らしている赤い魔法陣を輝かせると大岩亀の甲羅辺りに焔嵐が発生する。風刃を伴うその地獄の業火は相手を倒すには十二分に威力を発揮するだろう。
 というかクソ強い技がさらに強化されている。範囲はもちろんのこと、なんか獄焔嵐がある方向に向かって強い風が吹いている。飛ばされるほどでは無いが獄焔嵐に近づけば近づくほど強くなっており、相手を逃さないという強い意思を感じた。



「“水源属性付与アクアエレメント” “暴風属性付与ゲイルエレメント” “雷撃属性付与ボルトエレメント”」

 兄貴が自身に属性を付与していく。水が柔軟性を、風が軽さを、雷が速さを与えてさらに相性が良いのか雷が弾ける霧を纏っていた。

「ふふっ」

「あ、ちょ」

 止める暇もなく凄まじい速さで駆け抜けていく。多分あれ獄焔嵐の周りのものを吸い込む力を利用して加速してるわ。
 そしてそのまま獄焔嵐に突っ込む。いくらフレンドリーファイアが無いからって炎の中に突っ込むとかないわー。まぁ俺が行ったら後衛組が守れなくなるからだけど。

「何やってんだよ兄貴……」
「ヒャッハーって言ってたね」


◇『カルマ』


「ヒャッホー、きっもちいぃ!!」

 バイクほどでは無いが生身でここまで速く走れるのはかなり楽しい。まぁ縮地を使えばできなくはないが疲れるので無理。
 獄焔嵐を突き破り、燃え盛る焔と斬り裂く刃に蝕まれて絶叫している大岩亀さんにさらなる地獄をお見舞いすることにした。

 まず空歩と【見えざる盾】を駆使して大岩亀の甲羅淵まで来ると氷結爆弾を甲羅の中央ら辺に向けて投げる。氷結爆弾は着弾と共に破裂して強い冷気を撒き散らす。
 ところでガラスや岩などは急な温度変化があると脆くなるのを知っているだろうか。物質が熱で膨張し、急に冷やして縮小してしまうせいで急な温度変化に耐えきれなくなり割れやすくなってしまうということである。

 そしてただでさえ熱せられてひび割れている大岩亀さんの甲羅を冷やしたらどうなるだろうか?
 答えは、酷く脆くなるだ。しかも風刃が当たるせいで余計に砕けていく。その度に悲鳴を上げるせいで耳が痛くて仕方ない。
 ……どうせならランを連れて【不可視の槍】でも撃ってもらえばよかったですね。ま、護衛中なので無理なんですけど。

「にしてもなんか良い匂いが……亀肉って美味しいんですかね」

「グラッォォォォググ!?!!?!??!?」

 なんだか別の悲鳴が混ざったような気がするが気のせいですね。ではもう少し氷結爆弾を撒いて甲羅を割りますか。



「グッラアァァァァァァァ…………」

 ドスンと大きな音を立てながらいずれ大岩亀は力を失い倒れてしまう。かなり粘ったが内部を焼かれるという痛みに耐えきれなかったようだ。まぁハッキリ言ってこれ拷問ですしね。拷問よりも拷問してる気がしますし……ま、まぁ倒せたしいいでしょう。



「ん?」

 戦闘が終了したというリザルトが表示され、あまり活躍できなかったと嘆くユリを慰めていると何処からか視線を感じた。
 それは敵意を感じるものではなかったがこちらをねっとりと観察するような眼差しで正直気持ちが悪い。
 視線に敏感なのかユリとランが嫌そうな表情になっている。


「そこ」

 クリムがそう言っていつのまにか取り出していた閃光銃を岩場に撃つ。……しばらくしても誰もいないためクリムは銃を下ろした瞬間、岩の物陰から黒い影が飛び出してくる。
 クリムが迎撃するが黒い影は避けて一気に距離を詰めてくる。そのままクリムを殴ろうとしたので足払いをして腹を殴り吹き飛ばそうとするも失敗、拳を止めてバックステップで後ろに下がる。
 太陽光で見えづらかったがどうやらプレイヤーのようで──。


「こんにちわ、お兄さんお姉さん方、アタシの名はカミツレ。旅する格闘家だよ」




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【スケジュール?】
5月21日18時ごろ

【ニャルの語り】

 はいはいはーい、なんだかいつもより二倍くらい久しぶりな気がするニャル様だぜい。

@ジーニスへ「ソーって言葉が出てきたので口縫わせてもらえない?」
 残念それはボクではないからね。というかなんでボクだって断言してるの? いくらボクが大体のことに絡んでいるからってさすがに酷いんじゃないかな?
 ソーナルラとかいう英語での縫うとナルラトホテプが合わさったやつ、一見ボクに関係ありそうだけどないかもしれないじゃないか。
 世界には似たような名前が沢山あるからね。だからその糸と針を仕舞おうか。


 さてと暇なので本編の感想てか裏話を言うことにするよ。だって最近出番がないし、この後の戦場都市も賭博都市もないからね。知ってる? 人ってずぅーっと自由な時間が続くと好きなことばっかやって飽きてきちゃうんだって、それにやっていることが変わらないからアイデアも湧かないし、っと脱線だったね。

 さて、今回戦った大岩亀さんこと【鋭棘鋼岩巨大亀メタルスパイクグレートタートル】。本来ならもっと強いやつなはずなんだよね。攻撃方法が下にあるやつなんだけどさ。
 クソ強いはずなんだよね。体力もかなりあるし、硬い装甲に守られているから倒せない系の敵……なんだけどあれだね、アリスの焔嵐が強すぎた。

【地形変化・トゲ】
 地形のあちらこちらに岩でできたトゲを生やし、攻撃する。チクチクダメージ。

【ドデカランス】
 ドデカイ槍のようなトゲを生やす。かなり威力が高い。

【オオトゲミサイル】
 甲羅に生えているトゲをミサイルのように飛ばす。また地面に着弾した際に破裂して周りを攻撃する。

【オオモノ咆哮】
 大きな声で叫んで周りにいる敵を吹き飛ばす。

【オオカイテン】
 岩の足を砕き、地形を連続して変化させることで回転する。この際、側面に大きな岩トゲが生成される。また周りの砂塵を巻き込むため範囲攻撃となる。

【オオスタンプ】
 跳躍して落下する時、周りに鋭いトゲを着地点を囲むように広範囲に作り出す。
 避けることは難しいが一部にトゲが作られない場所があり、それは跳躍した時に地面が崩れていない場所となる。

【レンゲキタン】
 舌を鞭のようにしならせ、前方を攻撃する。また巻き付かせて相手を連続で攻撃する。
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