マリーゴールド

Auguste

文字の大きさ
7 / 71

第6幕 嘲笑う目

しおりを挟む
葬式前日の7月1日。
俺は係長に事情を話し、今日の残業は無しにしてもらった。
相変わらずニヤニヤしてたが……。


今日の外回りが終わり、会社に戻って帰る準備をしていると
「いやー。本当に最近調子がいいね、小田君。」
「やっぱいいことあったでしょ?」

「そんなことないですよ。」

「そうか?俺はてっきり嫌いな女とその男を殺して、スッキリしたのかと思ったよ。」
「明日の葬式ってまさかその女のか?」
俺は凍りついた。
なんで係長が知ってるんだ。
まさかあの警察が?
いや、わざわざ無関係の係長のところまで行くのか?
俺に疑惑の目を向ける人、ニヤニヤしてる人。
まさかこの人達もそう思ってるのか?
俺は頭が真っ白になり、木原の方を見た。
笑っていた。
悪魔の様な笑みで。

俺は小さい声で「嘘だ。」と言った。

「はー?聞こえないよー。」
スカンクが煽ってきた。

「俺は人殺しなんてしてません。」

「嘘をつくな!」
「鏡で見てみろ。人殺しの目をしてるぞ。」
実際そうなのかもしれない。
怒りが込み上げてくる。
だが、ここで一悶着あれば俺はクビだ。
懲戒免職にでもなったら、転職も難しくなる。
堪えるしかない。

「すみません。急ぎますのでお先に失礼します。」

「おーい。逃げんのか?頼むから俺は殺さないでくれよー。」
スカンクの口撃は続いてるが、無視して会社から出た。

早くタバコでも吸って、一息つきたい。
イライラしながらエレベーターを待っていると
「おい。ちょっと待てよ。」
振り返ると木原だった。
臭男と同じようなニヤニヤした顔で。
よく考えてみたら臭男や他の社員の笑みはこういうことだったのか。

「あの人にも困ったもんだよな。」
「あっさりネタバラししちゃってさ。」

「なんで………こんなことしたんだ?」

「は?別にいいじゃねぇかよ。」
「ガキみたいなこと言ってんじゃねぇよ。」
「別に言わないでくれなんて頼まれてもないしな。」
ショックだった。
親身になってくれてた木原の本性がこんなだったなんて。

「なんでこんなことした?」
「面白いからだよ!」
「よく言うだろ?人の不幸は蜜の味ってな!」
絶句した。
もう何を言っていいかわからない。

「お前は別れてたことを隠してたつもりだろうが、はっきり言ってバレバレだ。」
「急に調子崩したもんな。」
気づいていたのか……。

「最高だったぜ!」
「最近調子こいてたお前が一気に落胆した顔は。」
「人は人の上に成り立つっていうだろ。」
「そう!お前は俺の踏み台だ。」
その瞬間怒りが頂点に達し、俺は木原を殴ろうとした。
だが、体格差もあり学生時代ラグビー部だった木原に、強烈なカウンターを食らう羽目になった。

「踏み台のくせに調子に乗るなよ。」
「早く実家帰って親にでも慰めてもらうんだな。」
「それか元カノの代わりにママのおっぱいでもしゃぶってな。」
木原は笑いながら会社に戻る。
頬が痛い。
血の味がする。
どこか切ったんだろう。
早く帰ろう。
ここには居たくない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...