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体術

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 クラスのみんなが訓練ルームで座っている。

「よ~し、みんな集まったな」

 みんなの前でクロはみんながいるかを確認する。

「せんせ~、今日の授業って何するんですか?」

 ソラがいつものように先生に聞く。

「今日は体術の訓練をする」

 クロがそう言うと、みんなが「え~」といやそうに言う。

「体術は重要だぞ」

「どうしてですか?」

 ソラがみんなの気持ちを率先して訊いた。

「体術は基本だぞ。アレン、ソラこっちへ来い」

「は……はい、わかりました」

 そう言って、アレンとソラは前に出た。

「二人がかりで俺を倒せるか? 俺は体術しか使わないぞ」

「そりゃ……倒せるんじゃないか?」

 ソラがアレンに言う。

「う~~ん、どうだろう?」

 一度戦っていて、一回だけとはいえ夜に組手の稽古をしてもらっているから、アレンはクロがなんとなく強いことを知っている。

「どうだ、試してみるか?」

 少し笑いながらクロは二人に聞いてみる。

「やってみようぜ、アレン」

「まあ、楽しそうだからやってみようか」

 と、アレンは笑いながら賛同する。

「じゃあ、二人とも準備しろ」

 そう言われてアレンとソラは戦闘の為にクロから距離をとった。

「そろそろ始めるぞ~~」

 クロも戦闘の為に少し移動して二人に訊く。

「オッケ~」

「はい」

 ソラとアレンが返事をする。
 そして、ソラが先に突撃する。

「おりゃ~~!」

 勢いよくこぶしを振るう。

「遅いぞ」

 そう言いながらクロはソラの拳に手を添えながら横に勢いをそらす。

「いって~」

 クロは自分の勢いで体制を崩して倒れる。

「こぶしの振りが甘いぞ」

 と、クロはこけて倒れている空を見ながら言う。

「わかりましたよ」

 そう言いながらソラは笑いながら起き上がる。
 クロは笑いいに察して後ろを振り向く。
 するとアレンが消えていた。

「それで気配を消しているつもりか」

 だがクロはアレンが上にいることに気づいていた。

「くっそ~」

 そう叫びながら全力でこぶしを振り下ろす。
 だがクロはアレンの振るう腕をつかみ腹部を押し背中向きに倒す。

「がはっ」

 強くぶつけたせいで息を強く吐き出す。

「これが体術のいいとろだぞ」

 そう言いながら悔しがる二人を見る。

「確かにすごいっすね」

 ソラは心の底からすごいと思いながら肩を落とす。

「どうする二人ともまだやるか?」

「俺はもういいです」

 アレンは倒れたままで断る。

「そっちは?」

「参りました」

 ソラも負けを認める。

「それじゃあみんな二人組を組め」

 そう言われてみんながペアを組み始める。

「兄さ――」

 アリスがアレンをペアに誘おうとする言葉を遮るように、

「ファンタズマはファンタズマ同士でくめよ~」

「そう言う事だからすまんな」

 アレンは申し訳なさそうに謝る。

「兄さんのせいじゃないよ」

 笑顔を作ってアリスはそう言った。

「アレ~ン、一緒に組もうぜ」

 ソラはアレンを誘う。

「ああ、わかった。じゃあなアリス」

「うん、頑張ってね」

 そう言って、ソラの方へ歩いていくアレンを見送る。

「よ~し、みんなペアを組んだな。それじゃあ組手をはじめろ」

 みんなは組手を始める。

「いって~な!」

 そして力の加減が出来ずに飛ばされる人が出る。

「初めはゆっくりでいいぞ」

 みんなはゆっくりと組手を始める。

 ――キーンコーンカーンコーン

 少し時間がってから学園中にチャイムの音が鳴り響く。

「授業終わるぞ。次も今のペアでやるから相手を覚えておくように」

 そう言って朝と同じようにクロは職員室に向かった。

「終わったな~」

 そう言ってアレンは大きく伸びる。

「お前って意外と組手上手いな」

 ソラが伸びているアレンの背中をたたきながら言う。

「まあな、それより早めに教室に戻るぞ」

「そうだね、兄さん。さっきみたいに慌てる羽目に会うのは嫌だしね」

 そう言ってアリスは笑顔で答える。

「そうだな」

 ソラは話をそらされた気がして少し不満げな顔をして言う。
 そして三人は教室へ戻って行く。
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