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第3章・炎帝龍の山

四十七話・辺境伯日誌・飛竜での調査記述「6」

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飛竜に乗ってやって来た帝国
皇帝の執務室にある帝国の地図
その地図のソドムがあった位置に空白がある
ソドムが一方的に開戦されて滅びた。

「それで、帝国はどう動くんだ?」

私は、皇帝に詰めよる

「君が怒るのは分かる。だから、真っ先に君を呼んだんだ。」

私は怒りを押さえ込み、皇帝と冷静に話をしようとしたが難しい。
それは…私にとって、ソドムは特別な国だったから

「君が長い年月を費やして、ソドムとの間取り持ってくれたんだから」
「そうだよ。何年もかかったのは、あのバカな貴族連中が獣人達を奴隷にしていたからだろうが!!」

昔、帝国でも獣人を奴隷することが普通だった。
その当時の奴隷制度では、三つの区分があった。

犯罪奴隷
犯罪を犯した者が奴隷になる制度
負債奴隷
借金の返済するために奴隷になる制度
不法奴隷
人攫いなどで拉致や誘拐、監禁して不法に売り買いされる不法な奴隷
不法奴隷は、違法行為の為闇市などで闇取引されていた。
「しかし…獣人は、人族ではないと言う解釈で闇取引されずに公に取引されていた歴史がある」

しかし、獣人は獣の姿と能力を有しているだけで
決して人族に劣ると言う訳ではない。
だが、世の中の国々では、人間こそが神によって作られた完全な生命体だっと言う認識が染みついている。
それに、人間至上主義が聖天教会の指針になったのが、一因でそれが世間の常識だった。

「私だって、貴族を正したいが中々進まないんだ」
「それは、帝国が世襲制にこだわっているからだろう?」
「世襲制廃止には、反対派が多いんだ。賛成派が後押ししてくれてはいるが…」

貴族どもは、世襲制だから才能がなくてもなれる
だから、貴族はバカな連中が多い
民を虐げる奴らが大半だ。
そんな連中が居ると次第には国が腐る
最も、優れた貴族も居るが…
バカな貴族に比べるとあまり多くはない。

「それに獣人達の国が無くなったとすると…帝国にも影響が出るぞ?」
「当たり前だろう!!ソドムは、皮革製品の産出国だったからな…」

私は、獣人達が優れた能力を持っているのを知っている
古代林の中で、採取できる素材を使って彼らが作り上げる工芸品
特に魔物の皮を使った革製品
ジルヴァの付けている鞍もソドム製のものだ
以前の鞍よりもずっと、付け心地が良いっと言っていた。
ソドム製の製品に空間魔法を付与して作る
アイテムバックを長い年月を使っても、長持ちするほど丈夫だ。
それに圧縮コンパクトの魔法で収納してから展開リサイズしても型崩れしない。
そんな製品は、他に存在しない。

「やはり、エルフやドワーフに頼みのは難しいだろうか?」
「出来なくはないが…ソドムの質と量に及ばないぞ!!」

木工や付与魔法を得意とするエルフ族
金工や酒造を得意とするドワーフ族
狩猟と皮革を得意とする獣人族

「それに…頼んだとして、エルフとドワーフ達のこれまでの仕事が滞ったら、どうするんだ⁉︎」
「それは…」

この三つの種族が主だって、帝国の生活は成り立って居る
もちろん、他にも製品はあるにはあるが
この三つの種族の作り出す品々の量と質には、程遠い
質と量しか生産出来ない。

「どうするにしても…何としても生き残りを探して、保護するしないぞ」
「ああ、分かっているだが…この帝国とソドムとは、あの国が間にある」
「あの国か…厄介だぞ」

あの国とは、私が辺境伯として任に就いている街
シャンティの街の隣国…
タルダート王国も聖天教会の息がかかっている
獣人へ差別意識が根強い。
例えるならば、例え白だったとしても
聖天教会が黒と言えば、黒にする国だ。
そんな国がソドムと帝国の間にあるんだ。

「兵の派遣は?まさか、出来ないとか言うんじゃないだろうな?」
「俺も出したいんだが…」

皇帝が私から目をそらした。
これは、後ろめたい事がある時にする癖だ。
つまり…

「…兵は、出さないってか?」
「ソドムの国王の要請がない今となっては、他国への侵略行為だ。」

他国への兵の派遣は、それに関係する国の政府か国王の要請が必要だ。
それ以外での兵の派遣は、他国への侵略行為と判断されかねない。
だが、今回の件は違うはずだ。

「難民保護だと言えばいいんじゃないのか?」
「いや、それも提案したが…議決できない。」

は?
議決できない⁉︎

「帝都の貴族の反発が大きいんだ。だから…」

この帝国は、昔ならば皇帝の一存だけで指針が決められていたが
今の帝国の指針は、皇帝だけでは決定できない。
帝国の評議会が決議で、決める決まりだからだ。
国内の有力者たちが議員だ。
しかし、国の歴史が長ければそれなりの弊害が出る。
その議会の議員の大半が帝都の貴族街に住む貴族バカ達がなっている。

「それなら、帝都以外から出せばいいだろうが!!」
「私の一存だけで、帝都や私の私兵以外の兵達を動かす事が出来ないのは、君だって知ってるだろう?」

もちろん、知ってるがな。
皇帝といえど好き気ままに議会てば、振る舞えない。

「ああ、知ってるさ。例の独裁抑止のための取り決めだろう?」
「分かっているなら、難しいって言っているのも分かってほしいんだが?」

この帝国の皇帝は、評議会が反対すれば
政策を実行する事が出来ない。
その度に、私と皇帝は言い争う
だから、私は辺境伯をしている。
帝都の家も家があるがそこには住む気はない。
全く、宮殿に来るたびにこんな感じの話ばかりだからな。 
近くに居れば、議論や言い争いをして
自分たちのするべき仕事が進まない。

「そもそも、君が皇帝になっていれば、また今回の件も違っていたんだろうけど。」
「また、その話をする気か?」

皇帝こいつは、相変わらずだな。
何年間いや、何十年もその話をする

「私はしないって言うよりも、側室の子でもない者が皇帝にはなれないって、帝国の皇族の血統の決まりだから無理…まぁその方が良かったんだろうがな」

私と皇帝は、従兄弟だ。
皇帝は、皇帝の実子の第一子。
私は、先帝の妹の子だ。
帝国は、第一子がなる決まりで皇帝がなった。
私の母には、仮初めとはいえど皇位継承権があったが…
私には、その仮初めの皇位継承権すらそもそもない。
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