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第119話 一騎当千
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山花大佐も矢切飛行兵曹長も、国王が「遊覧飛行」で満足したのであれば、それで良かった。
昨日の天道地教会の「神の子の復活祭」では、グリトニル辺境伯が、「一日で千里を飛ぶ奇跡を行った。」として盛大に持ち上げられていた。
教皇マルティン2世も、まさか本当にグリトニルが期限までに王都へ辿り着くとは思わなかったらしく、民衆の歓声に応えるグリトニルの横で、顔を引きつらせていた。
要するに、今回の陸攻と重爆の要務飛行は、めでたくその目的を遂げたということである。
「さあ、用も済んだし、帰りましょうかね。」
矢切が山花とケッペル男爵に言うと、ケッペルが
「ヤギリ様、実は、国王陛下が、『此度の飛行、真に有意義であった。ついては褒美を取らす。』と申されております。何か希望はございましょうか。」
と訊いて来た。
「褒美、ですか。欲しい物と言われても、俄かには思い浮かびませんね。まあ、今までどおり属領首府が我々の面倒をよく看るように願いたい、というくらいですかね。属領首府も、我々のために随分とカネを使っているでしょうから。」
「承知致しました。国王陛下には、その旨を言上させていただきます。」
矢切の提案に、ケッペルはそう答えた。
この矢切の提案を受けてか、陸攻のブリーデヴァンガル島帰還に際して、ミズガルズ王から金貨1万枚、500㎏相当が贈られた。
「やれやれ。こいつぁ墜ちる訳には行かないぜ。」
矢切は軽口を叩いてみせたが、金貨500㎏には、さすがに緊張した。
金貨を入れた木箱の到着から積み込みまでの間、練兵場周辺をうろつく不審な人影が再三見受けられ、陸戦隊と挺身隊、近衛兵が厳重に警戒をした。
そんな状況だから、復路は、グリトニル辺境伯とイザベラ姫、および随行者は重爆に搭乗し、その分、挺身隊員が陸攻に乗り込み、万一に備えることにした。
ちなみにイザベラ姫は、父王から王都残留を懇願されたものの
「未来の夫に従うのが務め。」
と言い張って、復路もグリトニル二同行し、ブリーデヴァンガル島へ向かうことにしたのである。
帰還当日、零戦に続き、金貨を積んだ陸攻が地上滑走を始めたところ、どこに潜んでいたのか、山賊らしき200騎ほどの騎馬の一群が現れ、後方と左側面から陸攻に駆け寄ろうとした。
この襲撃に気付いた近衛兵が割って入る前に、胴体尾部20㎜機銃、胴体上部20㎜機銃と胴体側面20㎜機銃が射撃を開始した。
ドドドドド…
という重い発射音とともに、曳光弾が山賊の群れに吸い込まれて行った。
20㎜弾が命中した山賊は、手足が吹き飛ぶ者、胴体が破裂する者、首から上が無くなる者が続出し、馬に弾が命中すると、やはり首や脚が吹き飛ばされたり、胴体に大穴が開いたりしてその場に倒れ込み、騎乗の山賊はその場に投げ出された。
弾幕の激しさに、山賊は陸攻に近寄ることができない。
続けて地上滑走に入った重爆も、山賊目掛けて防御機関銃を発射した。
胴体上部の20㎜機関砲、側面及び尾部の12.7㎜機関砲が射撃を開始し、こちらも曳光弾が山賊の群れに吸い込まれて行く。
ダダダダダ…
陸攻の機銃射撃で生き残っていた山賊も、次々と血飛沫を上げて斃れて行く。
更に、離陸後、上空で山賊襲来に気付いた零戦隊が、低空での機銃掃射の体勢に入った。
陸攻と重爆の機銃弾の嵐から幸運にも生き残っていた山賊は、急降下して来る零戦の爆音に恐れをなし、逃走を図ったが、襲い掛かる機銃掃射の弾幕で、これも次々と撃ち据えられていった。
結局、近衛兵が出る幕もなく、山賊の大部分は射殺され、生き残ったごく少数の者が脱出に成功した。
「畜生。誰だい、簡単に奪えるお宝の山なんて言った奴は。これじゃ、あの時と一緒じゃないか。」
運良く生き延びた山賊の一人、頭をスカーフで覆い、手に蛮刀を握った女山賊、ロレッタ・アテマが馬上で毒付いた。
彼女は以前、旧公国派の残党と手を組み、ブリーデヴァンガル島の街道上で富豪の馬車を狙ったが、通り掛かった日本軍の戦車隊に散々に蹴散らされたことがある。
彼女自身は危うく首を落とされそうになりながらも、デ・ノーアトゥーン到着後、官憲に引き渡されたが、その後、脱獄に成功していたのである。
「二ホン軍の奴ら、覚えておいで。今度は鼻を明かしてやるんだから。」
彼女はそう言うと、林の中に消えて行った。
一方、陸攻と重爆は、何事もなかったかのように離陸し、ブリーデヴァンガル島へと向かって行った。
「聞きしに勝る凄まじい火力ですな。」
近衛兵の一人が、隊長に向かって言った。
「うむ。あの火力を向けられては、千騎の兵も敵うまい。文字どおりの一騎当千というやつだな。」
「彼らは、あの『ヒコーキ』とかいう物のほかに、海に浮かぶ鉄の城の軍艦や、陸を行く鉄の車『センシャ』という物も持っている由。」
「あれらが我が陣営にあって実に幸運だ。敵に回しては、何人たりとも敵うまいぞ。」
近衛隊長は、実感を込めて言った。
「しかし、我が国の高級貴族の一部には、『属領の食客如き何するものぞ、武威をもって排せよ。』などと息巻く向きもあるとか。そんな連中が、今の戦闘を見たら、何というのかな。」
この点、近衛隊長は顔をしかめて言った。
昨日の天道地教会の「神の子の復活祭」では、グリトニル辺境伯が、「一日で千里を飛ぶ奇跡を行った。」として盛大に持ち上げられていた。
教皇マルティン2世も、まさか本当にグリトニルが期限までに王都へ辿り着くとは思わなかったらしく、民衆の歓声に応えるグリトニルの横で、顔を引きつらせていた。
要するに、今回の陸攻と重爆の要務飛行は、めでたくその目的を遂げたということである。
「さあ、用も済んだし、帰りましょうかね。」
矢切が山花とケッペル男爵に言うと、ケッペルが
「ヤギリ様、実は、国王陛下が、『此度の飛行、真に有意義であった。ついては褒美を取らす。』と申されております。何か希望はございましょうか。」
と訊いて来た。
「褒美、ですか。欲しい物と言われても、俄かには思い浮かびませんね。まあ、今までどおり属領首府が我々の面倒をよく看るように願いたい、というくらいですかね。属領首府も、我々のために随分とカネを使っているでしょうから。」
「承知致しました。国王陛下には、その旨を言上させていただきます。」
矢切の提案に、ケッペルはそう答えた。
この矢切の提案を受けてか、陸攻のブリーデヴァンガル島帰還に際して、ミズガルズ王から金貨1万枚、500㎏相当が贈られた。
「やれやれ。こいつぁ墜ちる訳には行かないぜ。」
矢切は軽口を叩いてみせたが、金貨500㎏には、さすがに緊張した。
金貨を入れた木箱の到着から積み込みまでの間、練兵場周辺をうろつく不審な人影が再三見受けられ、陸戦隊と挺身隊、近衛兵が厳重に警戒をした。
そんな状況だから、復路は、グリトニル辺境伯とイザベラ姫、および随行者は重爆に搭乗し、その分、挺身隊員が陸攻に乗り込み、万一に備えることにした。
ちなみにイザベラ姫は、父王から王都残留を懇願されたものの
「未来の夫に従うのが務め。」
と言い張って、復路もグリトニル二同行し、ブリーデヴァンガル島へ向かうことにしたのである。
帰還当日、零戦に続き、金貨を積んだ陸攻が地上滑走を始めたところ、どこに潜んでいたのか、山賊らしき200騎ほどの騎馬の一群が現れ、後方と左側面から陸攻に駆け寄ろうとした。
この襲撃に気付いた近衛兵が割って入る前に、胴体尾部20㎜機銃、胴体上部20㎜機銃と胴体側面20㎜機銃が射撃を開始した。
ドドドドド…
という重い発射音とともに、曳光弾が山賊の群れに吸い込まれて行った。
20㎜弾が命中した山賊は、手足が吹き飛ぶ者、胴体が破裂する者、首から上が無くなる者が続出し、馬に弾が命中すると、やはり首や脚が吹き飛ばされたり、胴体に大穴が開いたりしてその場に倒れ込み、騎乗の山賊はその場に投げ出された。
弾幕の激しさに、山賊は陸攻に近寄ることができない。
続けて地上滑走に入った重爆も、山賊目掛けて防御機関銃を発射した。
胴体上部の20㎜機関砲、側面及び尾部の12.7㎜機関砲が射撃を開始し、こちらも曳光弾が山賊の群れに吸い込まれて行く。
ダダダダダ…
陸攻の機銃射撃で生き残っていた山賊も、次々と血飛沫を上げて斃れて行く。
更に、離陸後、上空で山賊襲来に気付いた零戦隊が、低空での機銃掃射の体勢に入った。
陸攻と重爆の機銃弾の嵐から幸運にも生き残っていた山賊は、急降下して来る零戦の爆音に恐れをなし、逃走を図ったが、襲い掛かる機銃掃射の弾幕で、これも次々と撃ち据えられていった。
結局、近衛兵が出る幕もなく、山賊の大部分は射殺され、生き残ったごく少数の者が脱出に成功した。
「畜生。誰だい、簡単に奪えるお宝の山なんて言った奴は。これじゃ、あの時と一緒じゃないか。」
運良く生き延びた山賊の一人、頭をスカーフで覆い、手に蛮刀を握った女山賊、ロレッタ・アテマが馬上で毒付いた。
彼女は以前、旧公国派の残党と手を組み、ブリーデヴァンガル島の街道上で富豪の馬車を狙ったが、通り掛かった日本軍の戦車隊に散々に蹴散らされたことがある。
彼女自身は危うく首を落とされそうになりながらも、デ・ノーアトゥーン到着後、官憲に引き渡されたが、その後、脱獄に成功していたのである。
「二ホン軍の奴ら、覚えておいで。今度は鼻を明かしてやるんだから。」
彼女はそう言うと、林の中に消えて行った。
一方、陸攻と重爆は、何事もなかったかのように離陸し、ブリーデヴァンガル島へと向かって行った。
「聞きしに勝る凄まじい火力ですな。」
近衛兵の一人が、隊長に向かって言った。
「うむ。あの火力を向けられては、千騎の兵も敵うまい。文字どおりの一騎当千というやつだな。」
「彼らは、あの『ヒコーキ』とかいう物のほかに、海に浮かぶ鉄の城の軍艦や、陸を行く鉄の車『センシャ』という物も持っている由。」
「あれらが我が陣営にあって実に幸運だ。敵に回しては、何人たりとも敵うまいぞ。」
近衛隊長は、実感を込めて言った。
「しかし、我が国の高級貴族の一部には、『属領の食客如き何するものぞ、武威をもって排せよ。』などと息巻く向きもあるとか。そんな連中が、今の戦闘を見たら、何というのかな。」
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