日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨

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第136話 叙勲と爵位

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 ガルフ・ピッケン島から帰還した各艦艇は、避難民たちをデ・ノーアトゥーン港周辺で降ろした。

 避難民たちのために、属領首府は大規模なテント村を築き、仮の住まいとした。

 ただ、3千人に及ぶ避難民たちの生活の世話は、属領首府の手に余るところがあり、いずれはミズガルズ王国本国へ移送なり移住なりさせることが、考えられていた。

 とりあえず、彼らを食べさせなければならなかったが、ここで大活躍したのが間宮型給糧艦浦賀である。

 何しろ、元々、3万人の15日分の食料補給が可能なのである。

 属領首府による食糧配給が円滑に行われるまでの間、焼かれたパンのほか、ビフテキ、カツレツなどの肉料理や、避難民の食習慣に合うかどうか心配された、天ぷらなどの和食も配られた。

 また、ケーキや最中、羊羹などの甘味のほか、アイスクリームまでも供給され、ラムネのような飲料も提供されたことで爆発的人気を呼び、避難民たちは、デ・ノーアトゥーンの住人から、非常に羨ましがられた。

 そんな中で、2月11日の紀元節祝賀行事が、根拠地隊全体で厳粛に挙行された。

 これを待っていたかのように、根拠地隊司令官桑園少将と戦艦出雲艦長白石大佐、空母蛟龍艦長稲積大佐、特設水上機母艦令川丸艦長南郷大佐に、叙勲と爵位授与の話が持ち上がった。

 転移以来の、ゴブリン退治、旧公国派撃退、セイレーン殲滅、そしてガルフピッケン島全島民避難のそれぞれの功に対して、王国獅子勲章を授与するとともに、勲功爵に叙する、というものである。

 これには、正直、当事者の桑園たちは戸惑った。

 言うまでもなく、桑園たちは日本軍人であり、皇軍の軍人であって、ミズガルズ国王の臣下ではないのである。

 叙勲については、東郷平八郎元帥のように、各国の最高勲章を授与された例すらあるので、まあ受容もできる。

 が、爵位を授けられるということは、臣下の礼を取ることであり、いくら領地を伴わない爵位授与といっても、これは受け入れることはできない。

 逆に、ミズガルズ国王にしてみれば、爵位を授けることで、曖昧な地位にある根拠地隊を臣下籍に置くという意図があるから、領地を割かない爵位の一つや二つ、惜しくもないのであろう。

 いずれにせよ、桑園たちは、根拠地隊の総意として

「叙勲は賜るが、爵位授与は慎んでお断りする。」

と回答した。

 その後数日を経て

「ヘネラールソウエン、カピタンシライシ、カピタンイナヅミ、カピタンナンゴウの皆様方は、叙勲のため、2月16日、王都クラズヘイムのヴァ―ラスキャールヴ城へご足労願いたい。」

という信書が届けられた。

「おい、そう嫌そうな顔をするな。」

 蛟龍の司令官室で、桑園が稲積に言った。

「いえ、そのようなことはありません。」
「嘘を付け。君の顔いっぱいに『嫌だ』と書いてあるぞ。」

 稲積が否定すると、桑園はからかうように言った。

「では、司令官は喜んで赴かれるのですか?」
「そんなはずがなかろう。君と一緒だ。」

 二人は顔を見合わせて苦笑いした。

「きっと白石君も南郷君も同じだろう。」

 桑園が言うとおり、白石も南郷も、王都行きには全く気乗りがしなかった。
 
 まず、相変わらず日程がギリギリである。

 また、単純に観光旅行ならば良いが、儀式となれば話が違う。

 おそらく、王侯貴族が見守る中、授与式は仰々しく行われるのであろう。

 それだけでもウンザリだが、記念の会食でも行われた日には、目も当てられない。

 できればご免被りたいところであるが、そうも行くまい。

 桑園以下、4人一蓮托生である。

 ただ、4人が不在の間の指揮権の問題があったが、これは、先任の大佐であることから、元々は25航戦参謀の山花大佐を代理とし、千早艦長の如月大佐を次席とした。

 ◆◆◆◆

 2月15日早朝、ギムレー飛行場から、桑園以下4名を乗せた一式陸攻と、警護の陸戦隊員5名を乗せた四式重爆撃機飛龍が、王都クラズヘイムを目指して離陸した。

 今回は、直掩の戦闘機は付けないでいる。

 天気は上々、3時間ほどの快適な飛行の後、2機はクラズヘイム城外の練兵場に着陸した。

 今回は、さすがに敵意剥き出しの騎士や兵士による出迎えはなく、国王の正使として、官部尚書ブローム侯爵が一同の到着を待っていた。

 陸攻が地上走行を終えて停止し、一同の中で最初に桑園が、胴体部の出入口から外へ出ようとすると、豪華な4頭立ての馬車がカラカラと近付いて来て停まり、王室の執事が駆け寄ると、緋毛氈の絨毯を、陸攻と馬車の間の地面に敷いた。

「何じゃこりゃ。」

 桑園は目を剥いた。

「土の上に絨毯を敷くことはなかろうに。」

 あまりに形式張った応対振りに、桑園は苦笑した。 

「ヘネラールソウエン、カピタンシライシ、カピタンイナヅミ、カピタンナンゴウ、王国侯爵ヨナタン・オーケニウス・ファン・ブローム、国王に成り代わりましてお出迎えにまかり越してございます。」

 あまりに仰々しい挨拶に、桑園は返答に困った。

「お役目大儀にございます。私どもも、この地に降りられて誠に光栄です。」

 こんなんで良いのかな、と思いつつ、桑園は答えを返した。

 儀式、ということもあり、桑園以下の叙勲対象者は第一種軍装に短剣装着、白手袋、警護の陸戦隊員も、全員、第一種軍装に艦内帽を被り、鉄帽を背中に括り付け、指揮官の少尉は軍刀に拳銃、その他の下士官兵は、三人が九九式小銃、一人が百式機関短銃を携行し、それぞれ弾薬を弾帯に縛着しているほか、糧嚢を背負っている。

 馬車は、桑園たち一行と警護の者が乗車するものがそれぞれ用意されており、ブローム侯爵は、桑園たちの馬車に乗り込み、ヴァ―ラスキャールヴ城へ向けて出発した。

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