1 / 19
一章
始まりは (須藤和夫視点)
しおりを挟む「気持ち良くしてあげるから、ね?」
昼下がりの団地の一室。目の前には三十半ばの男性が一人、肉付きの良い体を密着させ、ズボン越しにこちらの陰茎を撫でさすっていた。
男の名は津村仁美。大きな垂れ目と柔らかな笑み、整えた短めの顎ひげがチャームポイントの壮年男性だ。
今日、自身は彼に想いを伝えるべく勇気を振り絞り、家を訪問した。その矢先の出来事であった。
男の顔が下を向く。しゃがみ込み、両の手でズボンの金具を外したかと思うと、そのまま下着越しに昂りを口に含んだ。
「アッ……、ぅ」
既に先走りでびしょびしょになった布地を舌先でくすぐり、唇で形を確かめるよう食む。上目遣いにこちらを見やる想い人の姿。興奮で頭がどうにかなりそうだった。
ゴミ出しですれ違った折、愛らしい笑顔をこちらに向けてくれた彼。町内会の草むしりで、冷えたペットボトルを差し出し優しく声をかけてくれた、自身より一回り小柄な年上の男。穏やかで人当たりが良く、壮年の男性でありながらどこか清楚な雰囲気を纏っている。
彼の清らかな美しさに触れるたび、己の内で膨らみ続けたのは浅ましいまでの情欲で、初めて会った時からずっとそうだった。だから。
「つ、津村さん」
無意識に、口が男の名を紡ぐ。彼は視線で以て続きを促した。それに応えるまま、己が欲望を舌に乗せ吐き出す。
「じ、直に舐めて、吸ってください、ッはぁ、オ、おねがいします……」
興奮のあまり声が上擦る。彼は何も言わなかった。代わりに窮屈になった下着を両手でずり下ろすと、育ちきった陰茎をためらいなく口内に含み、喉奥まで飲み込む。
ちかちかと視界に無数の火花が散った。人より小ぶりな唇が、赤黒く血管の浮いた性器をめいいっぱいに咥えストロークを繰り返す様を、目に焼き付けたいのに視界が白む。
きゅうきゅうと締め付ける喉奥も、幹を這う舌の動きも、吸い上げる唇も全てが堪らなく心地良い。もっと味わっていたいという心に反し、興奮しきった体はとうに限界を迎えていた。
ずるりと引き抜く際にこすれる内頬と、先端をえぐる舌先に腰が震えた刹那。膨大な快楽の奔流が腰骨から全身を伝い、そうして弾けた。
「~~ッ、ぅ、ン、ん」
温かい粘膜の中に射精する感覚が心地良く、舌の上に陰茎を擦り付けるよう腰を動かす。彼もはじめは体を強張らせていたが、やがてこちらの精を残らず絞るよう、唇をすぼめて陰茎を吸い上げる。
ああ、堪らなく良い。こんなに気持ち良いことは生まれて初めだった。
長い射精が終わり、男が口から陰茎を引き抜く。そうして手のひらを受け皿に、零すよう口内に溜まった精を吐き出す。
男の童顔はほんのりと薄赤に染まり、甘く垂れた目元は涙で潤んでいた。その柔らかな唇と舌と手のひらを汚している白濁が、今まさに自身の吐き出したそれであると認識した途端。全身の血がカッと燃えるかのようにたぎった。
「アッ、ちょっと」
もっとぐちゃぐちゃに汚したい。所有の証を刻み、その身を抱いて犯して文字通り己のものにしたい。欲望に駆られるまま、肩を掴もうとした手を男によって制される。
「ね、そんなに慌てないで。今日は何も準備してないから、続きはまた今度にしよ?」
「今度っていつですか」
「来月……二週間。ううん、一週間後」
上目遣いにこちらを見る彼の瞳は、うっすらと浮かぶ涙で潤みきらきらと輝いていた。その目に満ちているのは期待か、それとも別の何かか。
家を訪れ、想いを告げて早々、自らこちらにしなだれかかり誘惑してきた年上の男。自身の想い人は、清楚な見た目からは想像もつかないほどに淫靡で、大胆で。そうして抗えない程に蠱惑的だった。
一週間。短いようで長いその時間の後、訪れるであろう享楽の気配に、ごくりと大きく一つ生唾を飲んだ。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
忘れさられた花嫁
梨子ぴん
BL
【CP】
年下ツンデレ捻くれ美形花嫁攻め×年上包容力あり健気平凡花婿受け
【あらすじ】
ボルト・バリエは花嫁ルスク・ウォータルを迎え入れるが、前途多難で……。
★ハッピーエンドです!
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる