とある団地にて

由井実緒

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一章

津村仁美のその後

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「うっゥ、入らないよぉ~~……」

 布団の上で一人、泣きべそをかきながら腰を動かす。入り口にぐにぐにと押し当てては滑る、男性器を模した性玩具。あと三日もないのに、これはマズいと危機感だけが募る。

 津村仁美36歳。夫と死別して早数年、使い慣れていた筈の自身の後ろはすっかり固くなり、指二本が精々のありさまとなっていた。

 四日前、須藤と名乗る若者に突如家に押し入られ、告白され。何やかんやの末、一週間後に性行為をする約束を取り付けてしまって以降。日夜こうして後ろの再開発に明け暮れている。

 逃げたい。そう何度も思いはしたが、一週間という時間は人一人が逃げて身を隠すには余りに短い。裏で準備こそ進めているが、少なくとも次の逢瀬だけはあの青年と対峙する必要があった。

 須藤和男。あの後人伝てで調べたが、どうやらこの町に住んでおり、自身とも何度か面識があるようだった。

 思い返せば、顔を隠した大柄な青年と時折り町中やイベントで言葉を交わした記憶がある。あの日は気付かなかったが、普段小声ながら男が発していた声色とも一致している。ほぼ間違いなく同一人物だろう。

「も、ほんと何で……アッ、いててっ」

 先端がめり込むも、痛みから咄嗟に腰を引く。ダメだ埒が開かない。一度ディルドを布団の上に投げ捨て、再びローションをまぶした指を後腔に入れる。

「ッ……ん」

 つぷりと一本、奥まで差し入れた後に二本目を潜り込ませた。押し広げるよう指を動かしつつ、すりすりと腹の方にある肉壁を人差し指で探る。

 昔は、確かここにあった筈だった。気を紛らわせるよう、快楽の得られる場所を探すも見つからない。もしくは見つけているが、久しぶりで上手く感覚を拾えないのかもしれない。

「ハァっ、ぁ、もう」

 空いた手で、自身の裸の胸を揉み、尖り始めた先端を刺激する。やはり記憶にあるものより弱く、それでも確かな快感を得ながら一心不乱に後ろをかき混ぜ、拡げていく。

 自分は独り、一体何をしているのか。そんな虚しさが胸中に広がる。

 本来こういうことは心を通わせた相手とするべきなのに、自らの保身のため、よく知らない男へと身を捧げる準備をしている。その事実に心が折れそうであった。

 嗚呼、ごめんなさい明人さん…………。

 内心で、今は空の上にいる伴侶への謝罪の言葉を紡ぐ。その一瞬、恋しい男の顔が脳裏を過りぞくぞくと腰が震えた。そんな自身の浅ましさに嫌気が差しつつ、しかし後腔を慣らす指の動きが止まることはなかった。

 
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