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四章(ハッピーエンド編)
その1
しおりを挟む「須藤くんの家、綺麗で広いね」
「そ、そうですか?」
「うん。部屋数は違うけど、丸々俺の家が入っちゃいそう」
そう言って笑う想い人、津村仁美の姿。彼は今自身の部屋のベッドに腰掛け、ニコニコとした笑顔でこちらを見上げていた。
今度君の家に行ってみたい。そう津村から提案された時、思わず口から心臓が飛び出るかのような心地を味わったものだ。
「(つ、津村さんが、俺に興味を示してくれている……!)」
一瞬、自分で言ってて悲しい気持ちになったが、事実なので仕方ない。彼は性的な事柄には積極的だが、それ以外に関してはとことん受け身だ。
それでも構わないと思っていたが、いざ彼から歩み寄って来て貰えると、その喜びもひとしおである。絶対に幻滅されたくないと、普段散らかしがちな部屋を片付け、ダメ押しで清掃サービスも頼んだ。通常であれば家に他人を入れるなどもっての他だが、背に腹は変えられない。
その努力の甲斐もあり、津村の感触は概ね良さそうであった。ホッと胸を撫で下ろすと同時、試練はまだ終わっていないと気を引き締め直す。
「つ、津村さん。それで、あの」
「大丈夫、分かってるよ」
そう言って男はこちらの手を取り、引き寄せた。彼自身もまた腰を引いて、ベッドの奥へと進みこちらが乗り上げるスペースを用意してくれる。
やはりするのか。いや、何度も彼の家でそういうことをしているのだから、自分の家では例外なんてことは通らないだろう。ごくりと一つ息を飲み、覚悟を決めて男の上へと乗り上げた。
普段自身が寝起きしているベッドに、津村がいる。その事実に興奮が昂りそうになるのを辛うじて抑えた。こちらを見上げる津村の瞳にもまた、隠しきれない緊張の色が垣間見えたからだ。
「電気、消しますね」
照明を落とし、薄暗くなる視界の中で覚悟を決めた。前回は慣らしに入る前、彼の家で寝てしまう醜態を晒したが、今日こそはやってみせると。
「津村さん……」
一声かけた後、彼の首筋へと触れた。津村はびくりと体を震わせるが、その後堪えるようにぎゅっと目を瞑る。その初心な反応が新鮮で、湧き上がる嗜虐心を寸での所で抑えた。
いきなり事に及ぶのでなく、まずは互いにリラックスすることが肝心だと。前回津村が言っていたことを思い出す。丁寧にじっくりと彼の肌をなぞり、体の形を確かめる。
津村の体はどこもかしこも綺麗で、湯上がりの肌はしっとりと自らの手に馴染む。彼を怖がらせたくないという思いに反し、自らの欲望が肉体的にも精神的にも、徐々に昂っていくのを感じた。
「ぁっ」
内腿の付け根へと触れた時、男がびくと体を震わせ、掠れた甘い声が上がる。
その瞬間思った。もう限界だと。
「っ、す、みません」
「なに?」
「一旦休憩を、挟んでも良いですか」
己の声が、微かに上擦っているのを自覚する。津村はしばしの沈黙の後、ふ、と小さく息を漏らして笑った。
「自分で止まれて、えらいね須藤くん」
俺このまま食べられちゃうかと思ったよ。そう冗談めかして笑う彼の声色は、微かに震えているように思えた。
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