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6話 急に上がった彼の好感度

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「あ、会計先にしとくんだった。 
俺としたことが、、、ごめんなさい。」 

そういう言い方は可愛いと思った。 

「トイレ行ってるね。」 

彼が入り口で会計していたので、 
さちこは先に店を出た。 

トイレから出ると 
すぐ横にあるエレベーターホールに 
彼が立っていた。 

彼はさちこが出てきた姿を確認すると 
エレベーターのボタンを押した。 

「お待たせ~。ごちそうさまでした。」 

さちこが彼に近づくと彼は腰に手を回し 
抱き寄せた。 

25cmも身長差があると 
やらしさよりも大きな安心感を感じた。 

彼は少し屈んでさちこに顔を近づけてきた。 
そして唇が触れそうになる直前で寸止めした。 

(草食そうに見えて、結構大胆なことするな。 
初面談で、こんな真昼間の 
明るいレストランフロアのエレベーターホールで 
当然監視カメラで見られてそうだし、 
誰か来るかもしれないじゃん。 
とりあえずトイレでうがいしといて良かった。) 

予期せぬシチュエーションにドキドキ感も相まって 
さちこは彼の舌の侵入を許した。 

決して下品な感じではなく、 
濃厚なディープキスでもなく、 
お上品な舌の挨拶という感じだったが 
それが心地よかった。 

キスが終わるとちょうど性欲とはかけ離れていそうな 
年配の女性達が騒がしくやってきた。 

(一番見られたくない人種に 
見られなくて良かった。) 

エレベーターの扉が開き次々と人が乗り込んだ。 

エレベーターは満員でさちこの体は彼に密着していた。 
心地よいキスの後の密着は気持ちが昂った。 

エレベーターを降りると彼が手を繋いできて 
地下街を歩いた。 

彼が待ち合わせに遅れてきたせいで時間潰しで 
さっきまで用もなくブラブラと歩いた食料品街を 
今度は背の高い彼と手を繋いで歩く。 

食料品街で呼び込みをしている店員さん達に 
顔を覚えられてはいないかと 
さちこはなんだか恥ずかしくて下を向いて歩いた。 

彼はタクシーで仕事に戻るらしかったが、 
さちこの路線の改札口まで送ってくれた。 

「じゃあ、またね。ありがとう。」 
「うん、またね。」 

彼は柄にもなくウインクをしながら手を振って言った。 

さちこは改札を通ってから振り返ると 
彼はまだ手を振って見送ってくれていた。 

(やっぱり男はこうでなくっちゃ。) 

帰る頃にはずいぶん彼への好感度は上がっていた。 
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