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7話 男の可愛げ

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彼は理系男子にありがちなのか、 
業務連絡以外はラインしないタイプだと 
プロフィールの時点で述べていた。 

会った時も 
「普段は非通知にしているから 
<おはよう>とか<おやすみ>の挨拶は 
タイムリーに見れないから返せないし、 
送ってもいいけど意味ないよ。」 
と言っていた。 

だからさちこは 
次回会う時間と場所も大体決まっていたので 
こちらから連絡するつもりはなかった。 

1週間が経ち、彼の方からラインがきた。 

「早く会いたい。」 

(なんだ。
女子みたいなライン送ってくることあるんだ。 
可愛いとこあるじゃん。) 

「私も。」 

そう思っていなくても社交辞令でそう送った。 

また1週間後、彼からラインがきた。 

「来週会えるね。」 
「そうだね。楽しみ。」 

楽しみでなくても社交辞令でそう送った。 

だんだんと彼からのラインは頻度が増してきた。 

「あと4日だね。」 
「そうだね。楽しみ。」 

さちこは毎度そう返信するしかなかった。 

さちこがなぜそんなにテンションが 
上がらないかというと 
近頃の出会い系サイトではクズ男ばかり 
引き寄せていたのもあるし 
彼とはラインで会話するほど 
会話が盛り上がりそうにないし、 
どうしても彼が立派な竿の持ち主でも 
セックス上手にも思えなかったからである。 

ラインのメッセージが可愛いぐらいで 
過度な期待はしまいと平常心を保っていた。 

当日の朝、やっぱり彼からラインがきた。 

「おはよう。昨日は緊張してよく眠れなかった。」 

(可愛いな。私はガッツリ寝たけどね。笑) 

「おはよう。私も今朝早く目が覚めちゃった。」 

(すぐ二度寝できたけどね。笑) 

彼が1週間前から緊張して苦手なラインを 
送ってきていることはよくわかっていた。 
だからこそ<緊張してよく眠れなかった>ことは 
理解できるし、可愛げがあるなと思い、 
急にテンションが上がった。 

とはいえ、さちこは 
彼が今日も待ち合わせに遅れてきたら 
キレそうな自分がいることには気づいていた。 

だからこそ過度な期待はするまいと 
平常心を保つことに気をつけながら電車に乗った。 

前回15分前に着いて15分遅刻されて 
キレそうだったので 
今回は5分前に着くように出掛けた。 

予定通り待ち合わせの駅に着いたので 
トイレで化粧を整えていると 
彼からラインがきていた。 

待ち合わせ場所の写真を送ってくれていた。 

トイレから出て、その写真を見ながら 
待ち合わせ場所にたどり着くと彼が立っていた。 

相変わらずスラッとした長身の彼は
見つけやすかった。 
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