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5話 手を繋いでこない男

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「早く次の予定教えて。」
「あー、ごめん。忘れてた。じゃあ来週の火曜か水曜はどう?」
「じゃあ水曜がいい。」
「オッケー。何時?」
「13時に前と同じところね。」
「オッケー。ありがとう。」

待ち合わせ当日、さちこは午前中用事を済ませ、
昼食で時間を調整してから待ち合わせ場所に向かった。
電車に乗っていると彼からラインがきた。

「着いてるよ。」
「え?13:30だったよね?13:23に駅に着く予定。」

さちこはラインのやり取りを遡って確認していると
彼はラインのやり取りのスクショを送ってきた。

「ごめーん!昨日確認したはずなのに!完全に勘違いしてた!
どっかで待ってて!」
「いいよ。改札口の横の本屋で待ってるね。」
「うん。ありがとう。」

駅に着いて、急いで本屋に向かった。

「ごめんね!」
「いいよ。」
「やっちまったね。こんなことならこっちに着いてから
時間潰しとけば良かった。」
「じゃあ行こうか。こっち。」
「うん。」

さちこは前回自分の話ばかりしていた気がしたので、
今日は彼について質問しながらカラオケ屋に向かった。
地元でもないのに今日も手を繋いでこない彼には不思議であったが、
あの冷たくて薄っぺらい手を自分から繋ぎたいとは思わなかったので
そのまま歩いた。

彼が案内したカラオケ屋の前に着くと閉店しており、
改装業者らしき男が中で作業していた。

「あれ?閉まってる?」
「ぽいね。」
「ちゃんとhp確認したら営業中ってなってたのに。」
「でも工事してるっぽいよ。潰れたんじゃない?」

彼はドアを引いた。
中から年配の男が慌てて出てきた。

「何か?」
「あ、すみません。店閉まってますよね。」
「はい。自分は改装工事頼まれてやってるんで営業してないですよ。笑」
「ですよね。すみません。」

さっき来た道を戻った。

「こっちにもカラオケ屋あったはずだから。」
「そうなんだ。」

左に曲がると大手カラオケチェーン店が2軒見えてきた。

「あ、ほんとだ。」
「良かった。」

(こっちのが駅から断然近いのに
なんであんなマイナーなカラオケ屋に連れて行こうとしたんだ?
そんな長くいるわけじゃないし、平日昼間だし、料金変わらないと思うけど
やっぱ節約思考なのかな?)

受付を済ませてしばらく待合席で話をしていた。
順番が来たので部屋に入った。


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