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第3章
午前11時13分 (首相官邸 内閣総理大臣室)
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「国立天文台の渡辺天文台長でしょうか。内閣総理大臣の 大泉伸次郎です。」
「大規模な太陽フレアの発生と言う事で、大至急連絡が欲しいと連絡を頂きましたので電話をしました。いったい、どのような状況で なにが起きているのでしょうか?」
連絡を受けた内閣総理大臣の大泉伸次郎は事態の緊急性を感じて渡辺国立天文台・天文台長に早々に要点を問いかけた。
大泉は44歳という日本の憲政史上においては 日本の初代総理大臣の伊藤博文に次ぐ若い年齢で内閣総理大臣になった「政界のプリンス」といわれる若手政治家で、祖父も総理大臣を務め、父親も主要大臣ポストを歴任した政治家一家の貴公子ともいわれる存在だった。
埼玉県を地盤とする政治家の家柄で育ち、慶明大学を卒業し、父親の秘書を務めた後、父親の地盤を継いで国会議員となり、若手政治家の中でもイケメンと言われる顔立ちや、ソフトな語り口の中に 民衆の心を巧みにとらえる鋭い政治感覚は 多くの女性たちや、有権者のハートをつかみ30歳で代議士になったあと、女性の追っかけも出るほどの人気が沸騰し、世論の支持率で70%を超える絶大の人気を博した中で 今年の春に総裁の座についたのだった。3月に行われた総選挙では、民政党の大勝利を呼び寄せ、大泉人気の中で勝ち得た勝利を持って若手政治家に推される形で総理大臣に選出されたばかりだった。
東京オリンピックの開催を前にして首相に就任した大泉はその若さゆえに、与党、民政党の政治家をはじめ、野党の歴戦の年配の政治家達を取りまとめての政治、内閣運営は簡単な物ではなかったが、大泉派ともいうべき若手政治家たちの政治研究会の結成によって従来の古い感覚の政治体制を作り替えようとする政治活動や、積極的な若手議員の登用で国民世論の後押しを得る中で その姿は国民に強い支持層と支持率を呼び寄せていた。
「総理、お忙しいところお電話いただきまして恐縮です。本来ならば首相官邸に赴いて 予想される事態をご説明すべきところですが、事態は急を要していますので まずは電話でのご説明をと考えております。」
渡辺は挨拶も手短に太陽フレアの発生から考えられる今後の事態を説明し始めた。
「太陽フレアの発生という事体そのものは特別に珍しいものではありません。太陽にある黒点の部分からは毎日のように小さいフレアと呼ばれる爆発現象は発生しています。しかしながら本日発生した太陽フレアの規模は 我々科学者にとってもこれまで経験したことのない大規模な物です。」
渡辺は今回の太陽フレアの特異性を口にした。
「太陽と地球との距離は 光の速さでもおよそ8分の時間を必要とする距離なのですが、日本時間の午前10時12分頃に太陽表面で発生した太陽フレアを10時20分に地球で確認することとなりました。今回の太陽フレアで記録したその強さの規模は X62という数値で、これは私たちが太陽観測を始めて以来最大規模の非常に強いフレア現象です。地震でいえばマグニチュード9以上の巨大地震、あるいはスーパー台風に相当する非常に厳しい状況の物です。」
「太陽フレアの発生で強い放射線が地球に降り注いでいるため 10時35分には 高度400キロの地球の大気圏外の宇宙に位置する 国際宇宙ステーションの搭乗員5人は全員が放射線の防御隔離区画に避難しました。日本のJAXAから乗り込んでいる内田飛行士も無事避難しています。」
説明を受ける中で大泉はあらためて渡辺に質問を返した。
「まだ、その太陽フレアという事態の状況が分からないのですが、今回の太陽フレアの発生によって強い放射線が地球に降り注いでいるのですか? それは国民にとって被ばくの危険性があるという事ですか?」
大泉は【放射線】という言葉に強く反応をした。2011年の東日本大震災の際に発生した原発事故の記憶から、政府内において反原発、脱原発派の急先鋒の中心的政治家として政治活動をして来たという自負もあった大泉としては放射線被ばくという言葉や事態には強く懸念を感じたのだった。
「大泉首相 ご説明が言葉足らずですみませんでした。」
「太陽フレアによる放射線の地球への影響は心配いりません。 もちろん通常時の状況と比較すればその影響が全くないとは断言することはできませんが、放射線の量が直接人体の生命に影響を及ぼすことはないだろうと考えています。」
「太陽フレアと言う現象での放射線の地球への放射や影響は、地球は大気圏に覆われ、アンバレンタイという磁気圏に守られていますので、太陽からの放射線で人間や動物、植物などが被ばくする可能性はほとんどないと思われます。」
「ただ、今回の太陽フレアでは これから別の意味で厄介な事態が引き起こされることが懸念されます。」
渡辺は 大泉の発した放射線に対しての懸念を打ち消しながらも、今後発生しうる数々の想定される事態を口にし始めた。
「150年ほど前、1859年のことで、日本では江戸時代にあたるの記録になるのですが、『キャリントン・イベント』と名付けられた歴史的にみて大規模な太陽フレアが発生し地球に襲来した記録が残っています。 この時代、まだ人類の文明では電気製品が使われ始めた時期で、電灯や電信、電話と言った機器が社会に登場し、社会生活の中に出回り始めた時代であったのですが、普及し始めた電信や電気の送電施設が太陽フレアによってもたらされた太陽嵐と呼ばれる磁気の大きな変化によって大きな被害を受ける事となりました。それは、アメリカやヨーロッパという電気を使い始めた社会に大規模な停電事故をもたらす事となったのです。」
「この停電事故と言うのは地球の電離層が太陽フレアの影響を受けて 地上で雷の発生のように誘導電流が引き起こされて、それが元で変電施設や送電施設などに大きな電流が流れ、その影響で停電や発火現象が引き起こされるものなのですが、近年では1989年に大規模な太陽フレアの発生によって、カナダのケベック州周辺でも広範囲な停電事故が発生する事故が起きたことがありました。」
大泉は今回の太陽フレアが停電を引き起こす可能性があると聞き、すぐに渡辺に聞き返した。
「じゃあ 今回の太陽フレアでも日本で大規模な停電事故が発生する可能性があるといわれるのですか?」
「首相、今回の太陽フレアによって日本国内で必ず大きな停電事故が発生すると言った確証はありません。停電の被害も1989年のカナダの事例のように 地球上のごく一部の限られた地域でのみの停電に収まるかもしれないですが、今回の太陽フレアの規模ですと楽観はできません。」
「最悪、地球、世界全体が停電に襲われるかもしれません。運が良ければ全く影響が出ずに通り過ぎることも考えられますが、観測された太陽フレアの規模はこれまでに現代人が経験したことのない大規模の物です。『ケベック嵐』と言われたカナダの時の太陽フレアの爆発規模はX27程度と言われていますし、『キャリントンイベント』と言われる記録上残っている最大規模の太陽フレアの爆発規模でもX45ほどだろうと言われています。今回観測した太陽フレアの規模は X62というこれまで人類が観測をしたこともない大規模なもので。正直なところ、どの程度の被害が出るか今のところまったく予想ができません。」
宇宙の事象に詳しい渡辺にもあくまで一般論としての災害予測をするのが精いっぱいだった。
ひと通り 渡辺の話を聞いた大泉は差し迫っている災害の可能性を理解しようと改めて質問をした。
「渡辺さん、この太陽フレアによる被害は すぐに発生するのですか、それとも時間的に対処できる余裕はあるのですか? 停電以外に考えられる影響は有るのでしょうか?」
大泉は、渡辺から聞いた停電という災害、電気が通じなくなるかもしれないという事態に対してどのように政府が対応してよい物かも想像もできない、まさに想定外の災害の襲来と事態に突然引き込まれ、大きな戸惑いと不安だけが胸に押し寄せてくることを感じるのだった。
9年前の東日本大震災の時 原子力発電所の事故が発端でそれまで政府が考えても来なかったような「想定外」と言い放った原子力発電所の事故に襲われ、そのことによって計画停電に追い込まれた首都東京や東日本の各地では電力不足の中で 社会生活や経済全体に大きな影響が及んだことが記憶にあった。2年ほど前の2018年にも北海道で発生した地震によって 北海道全体が停電となり「ブラックアウト」になったとして大混乱になった記憶が呼び起こされた。 現代人にとって電気の存在はなくてはならないもので その停電という影響が長時間に及べば社会全体が大混乱に陥ることが予想されることは肌を持って感じた苦い経験でもあった。
「太陽フレアの影響はこれから20時間から48時間後頃が大きな山になるものと考えられます。」
「フレアの発生からすでに1時間ほどが過ぎましたが、もっとも早く地球に到着するのが電磁波で、これは光の速さと同じで発生から8分ほどで地球に到達していますので、すでに通信衛星などでは電波障害が出始めています。また放射線の影響は種類によってこれから順次地球に影響が出てきます。X線や紫外線などの放射線はすでに地球に降り注いでいますので、その影響を避けて国際宇宙ステーションなどでは退避行動をとっているのですが、他の放射線も今後の数時間ほどで地球に順次到達し降り注ぎます。この放射線は先ほどご説明しましたように人類にとってそれほど大きな影響はないものと考えていますが、決して侮ることはできませんから外出を控え、できる限り室内にいる方が安全だと思います。」
渡辺は予想される時間的な被害の状況を矢継ぎ早に説明し始めた。
「今後、太陽フレアの影響で最も懸念されるのが太陽コロナから大量のプラズマが放出されて大規模なエネルギーの質量放出による磁気嵐が発生し、それが地球に向けてやってくる時のことです。」
太陽のコロナという言葉は皆既日食の時に観測できる白い幻想的な姿として首相もご存知の事と思いますが、このコロナはプラズマの粒子の事です。通常の太陽の状況ではこのプラズマが地球に及ぼす影響は心配する物ではないのですが、大規模な太陽フレアの爆発的現象によって、コロナのプラズマが大きく宇宙空間に向けて吹き出し、その大量のプラズマが地球に襲来すると多くの問題を地上で引き起こすことが判っています。」
「今後、24時間から数日のうちに大規模なプラズマ質量放出によって、地上で誘導電流が発生する可能性が高くなります。これが最も厄介で危険な現象です。簡単に言えば地上の多くの場所で雷が発生するようなもので、発電所や変電所、高圧電線などの送電線に大きな電磁波電流が混入することで、電力送電系統が強い影響を受けてショートし、大規模な停電が広範囲にわたって引き起こされる可能性が高まります。」
「宇宙空間にある通信衛星やGPS衛星、気象衛星などはこの質量放出の影響を受けてその多くが機能不全に陥ってしまう事も考えられます。」
「この誘導電流というのは送電線や変電所だけに収まらず、大規模な場合、家庭のテレビやパソコン、冷蔵庫や電子レンジといった家電製品はもとより、携帯電話やスマートフォン、それに自動車に積まれたマイコンチップなどにも影響を与え機能停止に追い込む事も可能性として否定できません。車のほか、飛行機、船舶、電車などの多くの交通機関も搭載されたマイコンやコンピューターシステムの誤動作や機能停止によって動かなくなる事が考えられます。電磁パルス現象といわれるもので 大規模な過電流が走り ICやLSIチップと言った集積回路に強い電流が流れる為、電気配線が熱を発して時には火を噴く事態さえ考えられます。」
大泉はこの渡辺の説明を聞いて いま人類が目の前に置かれている非常事態とも思われる脅威を切実に感じることとなった。
「テレビやパソコン、自動車までも動かなくなる可能性があるのですか?」
大泉は思い描いていた停電とは違い、電気、電子機器全体が破壊される背筋が凍り付くような可能性を耳にする中で恐怖さえ感じ始めた。
「あくまで可能性の一つですが、最悪の場合、現代文明が一夜にして文明開化前の明治時代以前の電気の無い生活に戻ってしまう可能性すら考えなくてはならないと思います。」
「かって、キャリントン・イベントと名付けられた、1859年の太陽フレアの発生時には 電報を発する電信機の真空管の多くが火を噴きました。現代であれば、電子部品のICやLSIといった大規模集積回路ではわずかな過剰電流でも電子機器が熱を発し、火を噴いて故障する可能性があります。自動車や航空機などはまさに電子部品の塊ですから、大きな影響を受ける可能性は高いと思います。」
渡辺は数年前にアメリカのNASAが報じた『大規模太陽フレアの発生で懸念されること人類の危機』という論文を基にして大泉首相に向けてレクチャーをした。
2012年の7月ロンドンオリンピックが開幕する1週間ほど前に太陽で巨大な太陽フレアが発生した。その規模は1859年のキャリントン・イベントと同規模の物であったと観測されたが、幸いにもその太陽フレアの発生場所は地球から見て太陽の左側面で、地球のいた方向からずれていたため、地球に被害が及ぶことはなかった。もし、この太陽フレアの発生が1週間ほど遅れていれば まさに地球はNASAの予言通りになったのであろうとさえいわれていた。もし、NASAが予言したような事態が引き起こされたときには、その状態を元に戻すには数年単位の時間が必要になるであろうとの予想も発表していた。
「今回発生した これだけ大きなフレアですと、今晩、東京の空でもオーロラが観測できるかもしれません。」
「東京でオーロラが見えるのですか?」
大泉は驚いた声を上げた。
「首相、日本でのオーロラの発生は 歴史の中でも『赤気(せっき)』といわれる現象でなんども歴史の記録に残されています。」
「赤気ですか・・・日本でもオーロラが見えたことがあったのですね。」
大泉は『オーロラ』と言う現象の発生の可能性に 少し心が癒された気分になったが、その後の渡辺の説明を聞くと背筋が凍りつくほどの危険な状況であることを覚えることとなった。
「首相、オーロラが日本で見えるという事は その後に続く数々の悲惨な現象の引き金となるかもしれません。言い換えればその地域で想定される非常事態のスイッチが入ったことを意味しているのです。」
大泉は 改めて渡辺に問いただした。
「本当にそのような事態が起きる可能性があるのですか? もし、そのような事態が起きるのだとしたら、今の私たちに何ができるのですか?」
渡辺は 大泉のその問いかけについては自身の主観としての答えしか話すことはできなかったが率直に自分の予想を話して伝える事とした。
「あくまで可能性ではありますが、かなりの高い確率で地球上のどこかの場所で お話ししたような事象が引き起こされる事が考えられます。それは、日本かもしれないし、アジアの一部地域、あるいはヨーロッパやアメリカだけで発生することになるかもしれません。しかし、もし地球上のどこかの地域で発生すれば、それによって大混乱が引き起こされることは間違いありません。この災害は地震や台風などとは全く違った災害で、現代生活で電気が使えなくなるという直接的に人体が危険に冒されることはないにしても、その生活に大きな困難が降り注ぐ災害です。」
「現在、NASAをはじめ 世界の太陽活動観測施設や機関と連絡を取り合って事態の分析を進めています。もう少し詳しい分析結果がわかり次第お伝えしたいと思います。」
渡辺はこうした事実関係と 太陽フレアの発生によって起こり得る予測を大泉首相に説明した後電話を切った。
大泉は 渡辺から伝えられた予測についていまだに信じられない思いだった。
首相官邸の大きな窓から見下ろす外の景色は、新緑の芝生と白い石畳のアプローチがまぶしいほどに反射して、隣に見える煉瓦造りの国会議事堂は、5月の高い南の位置から差し込む太陽に照らされて、陽気を上げているかのように思えたのだった。 街を歩く人たちは まさか照り付ける太陽で、そんな恐ろしい事が起きていることを知っている人はまだいないであろうし、日常の生活の中で、今という時間が大きな災害の真っただ中にあると感じている人もいないであろうと思われた。
見上げる太陽はいつもと変わらないように地球を照らし続け、いつものように人々を温めているように見える。
しかし、大泉にはこの太陽の姿が より赤く・強く・怒りを伴って燃えているかのように感じたのだった。
大泉は腕時計の時間を確認した。時計の針はあと2分余りで11時30分を指そうとしていた。
「中村君、大至急 乾 官房長官と連絡を取ってください。それと1時間後の12時30分から緊急閣議を招集したいと思います。関係閣僚と共に関係各所にも出席を要請し、非常事態の到来に対して時間もあまりありませんので、緊急防災対策会議も同時に立ち上げたいと思います。 地震や水害時の防災の専門家に加えて、警察、自衛隊、消防関係からも人選をして会議への参加を要請してください。そして、今回の緊急防災会議には電力関係者の専門家にも出席を要請しますので、電力関係者として関東電力からも必ず出てもらうように指示してください。」
大泉は中村首席補佐官に思いつくまま矢継ぎ早に指示を飛ばした。防災会議とは言っても それはこれまで想定してきた地震や火山噴火、風水害などとは全く異なった災害対策の対応が必要となるであろうことは想像できた。日本にとってまさに想定外の事態として 考えもしなかった災害の発生が目の前に迫っていて、その対応に全力で取り組んでいかなければ恐ろしい事態が引き起こされる可能性が突き付けられていたのだった。
今回の太陽フレアの発生に対しての事案においては、日本だけの事態ではなく、世界が同時に同じ局面に追い込まれていることが想像できた。おそらくアメリカをはじめ欧州の国々、中国やアジアの国々でもそれぞれの国がこの非常事態の中で右往左往していることだろうと思われた。大泉は内閣調査室を通して 現時点での各国での対応の様子や対策手段の状況を入手するように指示を出したが、どこまでの対応策や対処の情報が手に入るのかは全く不透明な状況であると思われた。
太陽フレアの発生と同じような事態が引き起こされる状況として、核爆発によるEMP電磁パルス攻撃の被害想定に対しては、2年ほど前に隣国が核爆弾の実験を繰り返し、恫喝的な態度を前にして政府の中では、その想定と対応策が軍事防衛の観点から議論されたことがあったことを思い出した。 高度30キロから200キロほどの高高度の成層圏において核爆弾を爆発させると そこから放出されるガンマ線によって電磁パルスが発生し、その影響で大停電が引き起こされて社会基盤やライフラインの運用を大きく狂わせる可能性があるというもので、強力な電磁パルスの発生は、コンピューターなどの電子部品を破壊し、大規模な社会的な混乱を招く可能性があるとの指摘がされたこと記憶している。
1958年に、アメリカが太平洋中部のジョンストン島の上空約76キロの高度で核爆発実験をおこなった時には 1500キロほど離れたハワイでは家庭や工場のヒューズが切れて大停電を引き起こしたことがあったという記録が残されている。 この時の経験からアメリカでは軍事施設などにおいて 電磁パルスへの対応策が取られ始めたと聞いてはいたが、実際にどのような電磁波対策が取られたのかは知るところでは無かった。ただ、米軍は電磁波を武器にした場合や電子戦の中での戦闘の想定や電磁波防御策については海軍を中心に各軍隊に対応策を示していると聞いたことはあったが、日本でこのような軍事的な攻撃や災害の到来に対しては充分な研究をして来たとは思えなかった。
日本の緊急対策の要である警察をはじめ消防や救急医療機関など各機関や各部署においては電磁波対策に力を注いでいるという事は聞いたこともない。 日本においてはこのような状態を想定して準備をしている場所や機関はほとんどない事だけは確かであろうと思われた。
電子系の企業においては 雷被害対策として「電磁シールドシステム」を構築している所もあるだろうが、広範囲にわたって停電被害が発生すれば、どこまで持ちこたえることができるのだろうか。 残された少ない時間の中で、専門家を集め、できる限りの対応策を講じて対処していかなければ、日本と言う国が立ち向かう事態は想像できないような悲惨なものとなってしまいかねない。対応を誤れば、政治に対しての責任の追及も避けて通れないものなることだろう。
「大規模な太陽フレアの発生と言う事で、大至急連絡が欲しいと連絡を頂きましたので電話をしました。いったい、どのような状況で なにが起きているのでしょうか?」
連絡を受けた内閣総理大臣の大泉伸次郎は事態の緊急性を感じて渡辺国立天文台・天文台長に早々に要点を問いかけた。
大泉は44歳という日本の憲政史上においては 日本の初代総理大臣の伊藤博文に次ぐ若い年齢で内閣総理大臣になった「政界のプリンス」といわれる若手政治家で、祖父も総理大臣を務め、父親も主要大臣ポストを歴任した政治家一家の貴公子ともいわれる存在だった。
埼玉県を地盤とする政治家の家柄で育ち、慶明大学を卒業し、父親の秘書を務めた後、父親の地盤を継いで国会議員となり、若手政治家の中でもイケメンと言われる顔立ちや、ソフトな語り口の中に 民衆の心を巧みにとらえる鋭い政治感覚は 多くの女性たちや、有権者のハートをつかみ30歳で代議士になったあと、女性の追っかけも出るほどの人気が沸騰し、世論の支持率で70%を超える絶大の人気を博した中で 今年の春に総裁の座についたのだった。3月に行われた総選挙では、民政党の大勝利を呼び寄せ、大泉人気の中で勝ち得た勝利を持って若手政治家に推される形で総理大臣に選出されたばかりだった。
東京オリンピックの開催を前にして首相に就任した大泉はその若さゆえに、与党、民政党の政治家をはじめ、野党の歴戦の年配の政治家達を取りまとめての政治、内閣運営は簡単な物ではなかったが、大泉派ともいうべき若手政治家たちの政治研究会の結成によって従来の古い感覚の政治体制を作り替えようとする政治活動や、積極的な若手議員の登用で国民世論の後押しを得る中で その姿は国民に強い支持層と支持率を呼び寄せていた。
「総理、お忙しいところお電話いただきまして恐縮です。本来ならば首相官邸に赴いて 予想される事態をご説明すべきところですが、事態は急を要していますので まずは電話でのご説明をと考えております。」
渡辺は挨拶も手短に太陽フレアの発生から考えられる今後の事態を説明し始めた。
「太陽フレアの発生という事体そのものは特別に珍しいものではありません。太陽にある黒点の部分からは毎日のように小さいフレアと呼ばれる爆発現象は発生しています。しかしながら本日発生した太陽フレアの規模は 我々科学者にとってもこれまで経験したことのない大規模な物です。」
渡辺は今回の太陽フレアの特異性を口にした。
「太陽と地球との距離は 光の速さでもおよそ8分の時間を必要とする距離なのですが、日本時間の午前10時12分頃に太陽表面で発生した太陽フレアを10時20分に地球で確認することとなりました。今回の太陽フレアで記録したその強さの規模は X62という数値で、これは私たちが太陽観測を始めて以来最大規模の非常に強いフレア現象です。地震でいえばマグニチュード9以上の巨大地震、あるいはスーパー台風に相当する非常に厳しい状況の物です。」
「太陽フレアの発生で強い放射線が地球に降り注いでいるため 10時35分には 高度400キロの地球の大気圏外の宇宙に位置する 国際宇宙ステーションの搭乗員5人は全員が放射線の防御隔離区画に避難しました。日本のJAXAから乗り込んでいる内田飛行士も無事避難しています。」
説明を受ける中で大泉はあらためて渡辺に質問を返した。
「まだ、その太陽フレアという事態の状況が分からないのですが、今回の太陽フレアの発生によって強い放射線が地球に降り注いでいるのですか? それは国民にとって被ばくの危険性があるという事ですか?」
大泉は【放射線】という言葉に強く反応をした。2011年の東日本大震災の際に発生した原発事故の記憶から、政府内において反原発、脱原発派の急先鋒の中心的政治家として政治活動をして来たという自負もあった大泉としては放射線被ばくという言葉や事態には強く懸念を感じたのだった。
「大泉首相 ご説明が言葉足らずですみませんでした。」
「太陽フレアによる放射線の地球への影響は心配いりません。 もちろん通常時の状況と比較すればその影響が全くないとは断言することはできませんが、放射線の量が直接人体の生命に影響を及ぼすことはないだろうと考えています。」
「太陽フレアと言う現象での放射線の地球への放射や影響は、地球は大気圏に覆われ、アンバレンタイという磁気圏に守られていますので、太陽からの放射線で人間や動物、植物などが被ばくする可能性はほとんどないと思われます。」
「ただ、今回の太陽フレアでは これから別の意味で厄介な事態が引き起こされることが懸念されます。」
渡辺は 大泉の発した放射線に対しての懸念を打ち消しながらも、今後発生しうる数々の想定される事態を口にし始めた。
「150年ほど前、1859年のことで、日本では江戸時代にあたるの記録になるのですが、『キャリントン・イベント』と名付けられた歴史的にみて大規模な太陽フレアが発生し地球に襲来した記録が残っています。 この時代、まだ人類の文明では電気製品が使われ始めた時期で、電灯や電信、電話と言った機器が社会に登場し、社会生活の中に出回り始めた時代であったのですが、普及し始めた電信や電気の送電施設が太陽フレアによってもたらされた太陽嵐と呼ばれる磁気の大きな変化によって大きな被害を受ける事となりました。それは、アメリカやヨーロッパという電気を使い始めた社会に大規模な停電事故をもたらす事となったのです。」
「この停電事故と言うのは地球の電離層が太陽フレアの影響を受けて 地上で雷の発生のように誘導電流が引き起こされて、それが元で変電施設や送電施設などに大きな電流が流れ、その影響で停電や発火現象が引き起こされるものなのですが、近年では1989年に大規模な太陽フレアの発生によって、カナダのケベック州周辺でも広範囲な停電事故が発生する事故が起きたことがありました。」
大泉は今回の太陽フレアが停電を引き起こす可能性があると聞き、すぐに渡辺に聞き返した。
「じゃあ 今回の太陽フレアでも日本で大規模な停電事故が発生する可能性があるといわれるのですか?」
「首相、今回の太陽フレアによって日本国内で必ず大きな停電事故が発生すると言った確証はありません。停電の被害も1989年のカナダの事例のように 地球上のごく一部の限られた地域でのみの停電に収まるかもしれないですが、今回の太陽フレアの規模ですと楽観はできません。」
「最悪、地球、世界全体が停電に襲われるかもしれません。運が良ければ全く影響が出ずに通り過ぎることも考えられますが、観測された太陽フレアの規模はこれまでに現代人が経験したことのない大規模の物です。『ケベック嵐』と言われたカナダの時の太陽フレアの爆発規模はX27程度と言われていますし、『キャリントンイベント』と言われる記録上残っている最大規模の太陽フレアの爆発規模でもX45ほどだろうと言われています。今回観測した太陽フレアの規模は X62というこれまで人類が観測をしたこともない大規模なもので。正直なところ、どの程度の被害が出るか今のところまったく予想ができません。」
宇宙の事象に詳しい渡辺にもあくまで一般論としての災害予測をするのが精いっぱいだった。
ひと通り 渡辺の話を聞いた大泉は差し迫っている災害の可能性を理解しようと改めて質問をした。
「渡辺さん、この太陽フレアによる被害は すぐに発生するのですか、それとも時間的に対処できる余裕はあるのですか? 停電以外に考えられる影響は有るのでしょうか?」
大泉は、渡辺から聞いた停電という災害、電気が通じなくなるかもしれないという事態に対してどのように政府が対応してよい物かも想像もできない、まさに想定外の災害の襲来と事態に突然引き込まれ、大きな戸惑いと不安だけが胸に押し寄せてくることを感じるのだった。
9年前の東日本大震災の時 原子力発電所の事故が発端でそれまで政府が考えても来なかったような「想定外」と言い放った原子力発電所の事故に襲われ、そのことによって計画停電に追い込まれた首都東京や東日本の各地では電力不足の中で 社会生活や経済全体に大きな影響が及んだことが記憶にあった。2年ほど前の2018年にも北海道で発生した地震によって 北海道全体が停電となり「ブラックアウト」になったとして大混乱になった記憶が呼び起こされた。 現代人にとって電気の存在はなくてはならないもので その停電という影響が長時間に及べば社会全体が大混乱に陥ることが予想されることは肌を持って感じた苦い経験でもあった。
「太陽フレアの影響はこれから20時間から48時間後頃が大きな山になるものと考えられます。」
「フレアの発生からすでに1時間ほどが過ぎましたが、もっとも早く地球に到着するのが電磁波で、これは光の速さと同じで発生から8分ほどで地球に到達していますので、すでに通信衛星などでは電波障害が出始めています。また放射線の影響は種類によってこれから順次地球に影響が出てきます。X線や紫外線などの放射線はすでに地球に降り注いでいますので、その影響を避けて国際宇宙ステーションなどでは退避行動をとっているのですが、他の放射線も今後の数時間ほどで地球に順次到達し降り注ぎます。この放射線は先ほどご説明しましたように人類にとってそれほど大きな影響はないものと考えていますが、決して侮ることはできませんから外出を控え、できる限り室内にいる方が安全だと思います。」
渡辺は予想される時間的な被害の状況を矢継ぎ早に説明し始めた。
「今後、太陽フレアの影響で最も懸念されるのが太陽コロナから大量のプラズマが放出されて大規模なエネルギーの質量放出による磁気嵐が発生し、それが地球に向けてやってくる時のことです。」
太陽のコロナという言葉は皆既日食の時に観測できる白い幻想的な姿として首相もご存知の事と思いますが、このコロナはプラズマの粒子の事です。通常の太陽の状況ではこのプラズマが地球に及ぼす影響は心配する物ではないのですが、大規模な太陽フレアの爆発的現象によって、コロナのプラズマが大きく宇宙空間に向けて吹き出し、その大量のプラズマが地球に襲来すると多くの問題を地上で引き起こすことが判っています。」
「今後、24時間から数日のうちに大規模なプラズマ質量放出によって、地上で誘導電流が発生する可能性が高くなります。これが最も厄介で危険な現象です。簡単に言えば地上の多くの場所で雷が発生するようなもので、発電所や変電所、高圧電線などの送電線に大きな電磁波電流が混入することで、電力送電系統が強い影響を受けてショートし、大規模な停電が広範囲にわたって引き起こされる可能性が高まります。」
「宇宙空間にある通信衛星やGPS衛星、気象衛星などはこの質量放出の影響を受けてその多くが機能不全に陥ってしまう事も考えられます。」
「この誘導電流というのは送電線や変電所だけに収まらず、大規模な場合、家庭のテレビやパソコン、冷蔵庫や電子レンジといった家電製品はもとより、携帯電話やスマートフォン、それに自動車に積まれたマイコンチップなどにも影響を与え機能停止に追い込む事も可能性として否定できません。車のほか、飛行機、船舶、電車などの多くの交通機関も搭載されたマイコンやコンピューターシステムの誤動作や機能停止によって動かなくなる事が考えられます。電磁パルス現象といわれるもので 大規模な過電流が走り ICやLSIチップと言った集積回路に強い電流が流れる為、電気配線が熱を発して時には火を噴く事態さえ考えられます。」
大泉はこの渡辺の説明を聞いて いま人類が目の前に置かれている非常事態とも思われる脅威を切実に感じることとなった。
「テレビやパソコン、自動車までも動かなくなる可能性があるのですか?」
大泉は思い描いていた停電とは違い、電気、電子機器全体が破壊される背筋が凍り付くような可能性を耳にする中で恐怖さえ感じ始めた。
「あくまで可能性の一つですが、最悪の場合、現代文明が一夜にして文明開化前の明治時代以前の電気の無い生活に戻ってしまう可能性すら考えなくてはならないと思います。」
「かって、キャリントン・イベントと名付けられた、1859年の太陽フレアの発生時には 電報を発する電信機の真空管の多くが火を噴きました。現代であれば、電子部品のICやLSIといった大規模集積回路ではわずかな過剰電流でも電子機器が熱を発し、火を噴いて故障する可能性があります。自動車や航空機などはまさに電子部品の塊ですから、大きな影響を受ける可能性は高いと思います。」
渡辺は数年前にアメリカのNASAが報じた『大規模太陽フレアの発生で懸念されること人類の危機』という論文を基にして大泉首相に向けてレクチャーをした。
2012年の7月ロンドンオリンピックが開幕する1週間ほど前に太陽で巨大な太陽フレアが発生した。その規模は1859年のキャリントン・イベントと同規模の物であったと観測されたが、幸いにもその太陽フレアの発生場所は地球から見て太陽の左側面で、地球のいた方向からずれていたため、地球に被害が及ぶことはなかった。もし、この太陽フレアの発生が1週間ほど遅れていれば まさに地球はNASAの予言通りになったのであろうとさえいわれていた。もし、NASAが予言したような事態が引き起こされたときには、その状態を元に戻すには数年単位の時間が必要になるであろうとの予想も発表していた。
「今回発生した これだけ大きなフレアですと、今晩、東京の空でもオーロラが観測できるかもしれません。」
「東京でオーロラが見えるのですか?」
大泉は驚いた声を上げた。
「首相、日本でのオーロラの発生は 歴史の中でも『赤気(せっき)』といわれる現象でなんども歴史の記録に残されています。」
「赤気ですか・・・日本でもオーロラが見えたことがあったのですね。」
大泉は『オーロラ』と言う現象の発生の可能性に 少し心が癒された気分になったが、その後の渡辺の説明を聞くと背筋が凍りつくほどの危険な状況であることを覚えることとなった。
「首相、オーロラが日本で見えるという事は その後に続く数々の悲惨な現象の引き金となるかもしれません。言い換えればその地域で想定される非常事態のスイッチが入ったことを意味しているのです。」
大泉は 改めて渡辺に問いただした。
「本当にそのような事態が起きる可能性があるのですか? もし、そのような事態が起きるのだとしたら、今の私たちに何ができるのですか?」
渡辺は 大泉のその問いかけについては自身の主観としての答えしか話すことはできなかったが率直に自分の予想を話して伝える事とした。
「あくまで可能性ではありますが、かなりの高い確率で地球上のどこかの場所で お話ししたような事象が引き起こされる事が考えられます。それは、日本かもしれないし、アジアの一部地域、あるいはヨーロッパやアメリカだけで発生することになるかもしれません。しかし、もし地球上のどこかの地域で発生すれば、それによって大混乱が引き起こされることは間違いありません。この災害は地震や台風などとは全く違った災害で、現代生活で電気が使えなくなるという直接的に人体が危険に冒されることはないにしても、その生活に大きな困難が降り注ぐ災害です。」
「現在、NASAをはじめ 世界の太陽活動観測施設や機関と連絡を取り合って事態の分析を進めています。もう少し詳しい分析結果がわかり次第お伝えしたいと思います。」
渡辺はこうした事実関係と 太陽フレアの発生によって起こり得る予測を大泉首相に説明した後電話を切った。
大泉は 渡辺から伝えられた予測についていまだに信じられない思いだった。
首相官邸の大きな窓から見下ろす外の景色は、新緑の芝生と白い石畳のアプローチがまぶしいほどに反射して、隣に見える煉瓦造りの国会議事堂は、5月の高い南の位置から差し込む太陽に照らされて、陽気を上げているかのように思えたのだった。 街を歩く人たちは まさか照り付ける太陽で、そんな恐ろしい事が起きていることを知っている人はまだいないであろうし、日常の生活の中で、今という時間が大きな災害の真っただ中にあると感じている人もいないであろうと思われた。
見上げる太陽はいつもと変わらないように地球を照らし続け、いつものように人々を温めているように見える。
しかし、大泉にはこの太陽の姿が より赤く・強く・怒りを伴って燃えているかのように感じたのだった。
大泉は腕時計の時間を確認した。時計の針はあと2分余りで11時30分を指そうとしていた。
「中村君、大至急 乾 官房長官と連絡を取ってください。それと1時間後の12時30分から緊急閣議を招集したいと思います。関係閣僚と共に関係各所にも出席を要請し、非常事態の到来に対して時間もあまりありませんので、緊急防災対策会議も同時に立ち上げたいと思います。 地震や水害時の防災の専門家に加えて、警察、自衛隊、消防関係からも人選をして会議への参加を要請してください。そして、今回の緊急防災会議には電力関係者の専門家にも出席を要請しますので、電力関係者として関東電力からも必ず出てもらうように指示してください。」
大泉は中村首席補佐官に思いつくまま矢継ぎ早に指示を飛ばした。防災会議とは言っても それはこれまで想定してきた地震や火山噴火、風水害などとは全く異なった災害対策の対応が必要となるであろうことは想像できた。日本にとってまさに想定外の事態として 考えもしなかった災害の発生が目の前に迫っていて、その対応に全力で取り組んでいかなければ恐ろしい事態が引き起こされる可能性が突き付けられていたのだった。
今回の太陽フレアの発生に対しての事案においては、日本だけの事態ではなく、世界が同時に同じ局面に追い込まれていることが想像できた。おそらくアメリカをはじめ欧州の国々、中国やアジアの国々でもそれぞれの国がこの非常事態の中で右往左往していることだろうと思われた。大泉は内閣調査室を通して 現時点での各国での対応の様子や対策手段の状況を入手するように指示を出したが、どこまでの対応策や対処の情報が手に入るのかは全く不透明な状況であると思われた。
太陽フレアの発生と同じような事態が引き起こされる状況として、核爆発によるEMP電磁パルス攻撃の被害想定に対しては、2年ほど前に隣国が核爆弾の実験を繰り返し、恫喝的な態度を前にして政府の中では、その想定と対応策が軍事防衛の観点から議論されたことがあったことを思い出した。 高度30キロから200キロほどの高高度の成層圏において核爆弾を爆発させると そこから放出されるガンマ線によって電磁パルスが発生し、その影響で大停電が引き起こされて社会基盤やライフラインの運用を大きく狂わせる可能性があるというもので、強力な電磁パルスの発生は、コンピューターなどの電子部品を破壊し、大規模な社会的な混乱を招く可能性があるとの指摘がされたこと記憶している。
1958年に、アメリカが太平洋中部のジョンストン島の上空約76キロの高度で核爆発実験をおこなった時には 1500キロほど離れたハワイでは家庭や工場のヒューズが切れて大停電を引き起こしたことがあったという記録が残されている。 この時の経験からアメリカでは軍事施設などにおいて 電磁パルスへの対応策が取られ始めたと聞いてはいたが、実際にどのような電磁波対策が取られたのかは知るところでは無かった。ただ、米軍は電磁波を武器にした場合や電子戦の中での戦闘の想定や電磁波防御策については海軍を中心に各軍隊に対応策を示していると聞いたことはあったが、日本でこのような軍事的な攻撃や災害の到来に対しては充分な研究をして来たとは思えなかった。
日本の緊急対策の要である警察をはじめ消防や救急医療機関など各機関や各部署においては電磁波対策に力を注いでいるという事は聞いたこともない。 日本においてはこのような状態を想定して準備をしている場所や機関はほとんどない事だけは確かであろうと思われた。
電子系の企業においては 雷被害対策として「電磁シールドシステム」を構築している所もあるだろうが、広範囲にわたって停電被害が発生すれば、どこまで持ちこたえることができるのだろうか。 残された少ない時間の中で、専門家を集め、できる限りの対応策を講じて対処していかなければ、日本と言う国が立ち向かう事態は想像できないような悲惨なものとなってしまいかねない。対応を誤れば、政治に対しての責任の追及も避けて通れないものなることだろう。
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