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藪から始まる言葉
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柑子さんの言う通り、猫は逞しい生物なようだ。
覚束無い様子の三足歩行も半日もしたら器用に歩くようになった。
とはいえジャンプとかは出来ないようだが、俺の部屋を自由に歩き回っている。カップラーメンの容器を首に巻いて。
かなり笑える様子なのだが、サバ自身は大真面目な様子。
それをカワイイと思ってしまう俺がいて、気が付けば俺のカメラとスマフォのメモリーはサバだらけになっている。
今サバがカップラーメンの器を首に填めているのは、エリザベスカラー代わりである。エリザベスカラーは苦手なようで、つけると死に物狂いで外そうとする。
外したら外したで、傷を舐めようとする。それを叱ると機嫌悪くなり、俺を攻撃してくる。
その繰り返しだった。タマさんがネットでカップラーメンの器でつくった自家製エリザベスカラーだと軽くて負担が少ないという情報を教えてくれた。
皆の部屋にあったカップラーメンの器を持ち込み、穴のサイズを試行錯誤しながらベストなものを作り出しそれを付けてもらっている。アパートの住民の中でシマさんが意外と手先が器用。
装着できてサバには外せないという絶妙なサイズの穴のカラーを見事に作りだす。シマさんの珍しいドヤ顔が見られた。
しかしその才能を生かせるのも今日までで、明日は抜糸。それだけに今の装着している姿が見納め。それを皆で眺めていた。
カップラーメンの器を装着しながら猫らしくお澄ましをした感じでいる事が益々面白い。
ヤクザな顔の猫だけに、そのカップラーメン容器のエリザベスカラーが厳つさとワイルドさを台無しにしている。
その様子をサバには悪いが楽しんでいる。
「サバちゃん、カワイイわ~」
スアさんはサバの気儘な様子を見てそう呟く。以前だったら首を傾げていた言葉に俺は素直に頷く。
「まあエリザベスカラーは、もう外してあげてもいいんだろうけどね」
ジローさんの言葉に俺はとんでもないと首を横にふる。そんな俺にジローさんは笑う。
「藪先生は、腕も確かなのもあるけど、メスや医療器具の管理もしっかりしているから傷の塞がりが早いんだ。去勢手術しても、すぐに皆退院して元気に走り回っている」
俺は首を傾げる。
「医療器具の違いでそんなに治りに差がでるんですか?」
「麻酔の違いで体力の回復に違いもでるし、メスをちゃんと使い捨てしている病院は切り口がキレイで傷の塞がりも早くなるんだ」
俺は改めて藪先生の姿勢に感心してしまう。
「素晴らしい先生ね。私の手術もお願いしたいわ~」
スアさんの言葉にジローさんは苦笑する。
「まあ、人間の先生になっても良い医者になったのだろうけど、名前が悪すぎるから動物を診てるって言っていた」
スアさんとシングは首を傾げる。日本語はかなり堪能な人たちに見えて、意外とこういった言い回しが通じない事がある。
いや逆に普通に会話出来るジローさんがおかしいのかもしれない。
「藪医者って、日本では腕のない医者の事を指す言葉なんだ。
だから柑子さんがこの名前にしたのもその為なんだ。藪柑子という日本では縁起の良い植物の名前にして、悪い意味をなくしたかったからだって」
シングが目を細めて意味ありげな顔をしている。
「柑子さんね~」
「なんだよ、その顔……」
俺がそう返してもニヤニヤとしているだけ。なんでだろうか、ジローさんは澄ました様子だけど、なんか笑っている。
スアさんも俺を見て面白そうな顔をしている。俺が視線で『何?』と聞くと、シングと似たような意味ありげな目でスアさんも笑う。
「サバが元気に……なったから、お祝パーティーでもするか。
柑子ちゃんも呼んで。先生や竹子さんは忙しくて来ないだろうけど」
ジローさんが俺の肩をポンと叩きそんな事を言ってくる。猫も快気祝いをするものなのだろうか? とも思ったが皆がそんなにサバが元気になったのが嬉しいという事だろう。俺は戸惑いつつ頷いた。
覚束無い様子の三足歩行も半日もしたら器用に歩くようになった。
とはいえジャンプとかは出来ないようだが、俺の部屋を自由に歩き回っている。カップラーメンの容器を首に巻いて。
かなり笑える様子なのだが、サバ自身は大真面目な様子。
それをカワイイと思ってしまう俺がいて、気が付けば俺のカメラとスマフォのメモリーはサバだらけになっている。
今サバがカップラーメンの器を首に填めているのは、エリザベスカラー代わりである。エリザベスカラーは苦手なようで、つけると死に物狂いで外そうとする。
外したら外したで、傷を舐めようとする。それを叱ると機嫌悪くなり、俺を攻撃してくる。
その繰り返しだった。タマさんがネットでカップラーメンの器でつくった自家製エリザベスカラーだと軽くて負担が少ないという情報を教えてくれた。
皆の部屋にあったカップラーメンの器を持ち込み、穴のサイズを試行錯誤しながらベストなものを作り出しそれを付けてもらっている。アパートの住民の中でシマさんが意外と手先が器用。
装着できてサバには外せないという絶妙なサイズの穴のカラーを見事に作りだす。シマさんの珍しいドヤ顔が見られた。
しかしその才能を生かせるのも今日までで、明日は抜糸。それだけに今の装着している姿が見納め。それを皆で眺めていた。
カップラーメンの器を装着しながら猫らしくお澄ましをした感じでいる事が益々面白い。
ヤクザな顔の猫だけに、そのカップラーメン容器のエリザベスカラーが厳つさとワイルドさを台無しにしている。
その様子をサバには悪いが楽しんでいる。
「サバちゃん、カワイイわ~」
スアさんはサバの気儘な様子を見てそう呟く。以前だったら首を傾げていた言葉に俺は素直に頷く。
「まあエリザベスカラーは、もう外してあげてもいいんだろうけどね」
ジローさんの言葉に俺はとんでもないと首を横にふる。そんな俺にジローさんは笑う。
「藪先生は、腕も確かなのもあるけど、メスや医療器具の管理もしっかりしているから傷の塞がりが早いんだ。去勢手術しても、すぐに皆退院して元気に走り回っている」
俺は首を傾げる。
「医療器具の違いでそんなに治りに差がでるんですか?」
「麻酔の違いで体力の回復に違いもでるし、メスをちゃんと使い捨てしている病院は切り口がキレイで傷の塞がりも早くなるんだ」
俺は改めて藪先生の姿勢に感心してしまう。
「素晴らしい先生ね。私の手術もお願いしたいわ~」
スアさんの言葉にジローさんは苦笑する。
「まあ、人間の先生になっても良い医者になったのだろうけど、名前が悪すぎるから動物を診てるって言っていた」
スアさんとシングは首を傾げる。日本語はかなり堪能な人たちに見えて、意外とこういった言い回しが通じない事がある。
いや逆に普通に会話出来るジローさんがおかしいのかもしれない。
「藪医者って、日本では腕のない医者の事を指す言葉なんだ。
だから柑子さんがこの名前にしたのもその為なんだ。藪柑子という日本では縁起の良い植物の名前にして、悪い意味をなくしたかったからだって」
シングが目を細めて意味ありげな顔をしている。
「柑子さんね~」
「なんだよ、その顔……」
俺がそう返してもニヤニヤとしているだけ。なんでだろうか、ジローさんは澄ました様子だけど、なんか笑っている。
スアさんも俺を見て面白そうな顔をしている。俺が視線で『何?』と聞くと、シングと似たような意味ありげな目でスアさんも笑う。
「サバが元気に……なったから、お祝パーティーでもするか。
柑子ちゃんも呼んで。先生や竹子さんは忙しくて来ないだろうけど」
ジローさんが俺の肩をポンと叩きそんな事を言ってくる。猫も快気祝いをするものなのだろうか? とも思ったが皆がそんなにサバが元気になったのが嬉しいという事だろう。俺は戸惑いつつ頷いた。
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