カッコウの子供

白い黒猫

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何かそこにいる?

一見何気ない日常の光景

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 次の週末、姉貴の家に遊びに行くと、甥っ子の陽一が期待に満ちた目で俺を迎えてくれた。
 凛々しい顔をした姉貴に似て、甥っ子もこの年齢の子にしては顔が整って可愛いとは思う。
 「タカユキ、来たんだ、上がっていいぞ」
  叔父である俺の事を呼び捨てで横柄な言い方をして、一見生意気に見える。
 しかしコレは姉が俺の事を『タカユキ』というからそれを真似してるにすぎず、言葉使いもまだ幼く言葉が足りていないだけなのだ。
 本人に悪気はない。奧から『タカユキオジサン、どうぞ上がって下さいでしょ!』と姉の声が聞こえる。
 「おお、来てやったぞ」
  態と俺は、そう言う口調で陽一に言葉を返す。
 陽一はキャッキャと俺の言葉を笑い喜ぶ。このような言い方を俺がするから余計に丁寧な言葉を覚えないのかもしれない。
 リビングに俺を誘いながら陽一の目は俺の下げている紙袋にジッと注がれている。
 ラッピングなんてしてこなかったから、DSが丸見えである。
 「DSそれ俺のだよな?」
  そういい手を突っ込み取ろうとするので、俺はそれを止める。
 「いや、どうしようかな~? 止めようかな~?」
  俺の言葉に陽一は少しショックをうけた顔をしている。
 姉はニヤニヤしながら、ソファーに座った俺の前に珈琲をおく。
 「なんで!」
 「だって、陽一。前のDSお片付けをちゃんとしないから壊したんだろ?
 そういう子供にあげるとまた壊しそうだろ? それはイヤだな~と思って」
  陽一は途端に目をキョロキョロさせて動揺する。
 「しかも、お前ってゲーム始めたら夢中になって、ご飯に呼ばれても全然止めないんだってな」
  叔父として、甥っ子の教育にはちゃんと参加するべきである。
 陽一は悪事がすべて俺に筒抜けになっている不満を覚えているようだが、渋々といった様子で、『良い子にする。ちゃんとお片付けする。「止めなさい!」と言われたらゲームを止める』という誓いをする。
 それを見守ってから、DSを手渡した。しかし子供の事だ、もう一時間もしたら忘れてしまいそうだ。
 早速電源を入れ夢中になってゲームで遊んでいる。姉はお盆を手に『ちゃんと、お礼をいいなさい』と叱る。
 『タカユキありがと!』と画面を見入ったまま陽一は心の入ってない言葉を告げる。
 俺の前にお菓子をおき、姉は苦笑しながら俺の前のソファーに座る。そしてポッケからポチ袋を出し俺にそっと渡す。
 封筒をもった感じでは、お札が少し入っているようだ。
 「ごめんね、助かったわ。大した金額はいってないの。買い取り料だと思って受け取って!」
  横暴なようで、こういう所はシッカリしているのが姉である。
 「良かったのに、使ってないものだし。俺もう働いているし……」
  そんなお金なんかもらうつもりなかっただけに、戸惑っている俺に姉はニカリと笑う。
 「こういう事は、姉弟のような関係でもキッチリしておくべきなの! ギブアンドテイクが健全な人間関係をつくる基本よ!」
  姉の言っている事は正しいのだろう、姉と弟だからといってお金の問題とかを曖昧にしておくとそれが積もっていくうちに大変な事態になるというのは、会社の人の会話からも良く聞く話である。
 俺は素直に受け取る事にした。俺達のやり取りなんて、聞いてもいないのだろう、陽一はマルコカートに夢中になって遊んでいる。
 「今日は夕飯食べていくでしょ? あんた一人暮らしでどうせろくなモノ食べてないでしょうから、家庭料理というのをタップリ味合わせてあげるわよ!」
  義兄さんはゴルフに出かけて、お舅さんとお姑さんは仲良く温泉旅行に出ているらしい。
 気を遣う人がいない事で俺は甘える事にした。あんなに大雑把な姉が立派に主婦やっていている事は未だに信じられない所がある。
 姉がいつのまにか、俺が好きだった母の味のロールキャベツをちゃんと自分のモノにしている事に驚いてしまった。
  陽一はというと、もう慣れた味でそんな感動もないのだろう。
 俺との約束の手前渋々ご飯が出来て食卓にやってきたものの、さっさと食べてから『ごちそうさま』と言いゲームをしに戻ってしまっていた。
 姉は苦笑いしながらも、久しぶりに弟との会話を楽しむ事にしたようで、二人でそのまま珈琲を楽しむ。
 子供時代はむかついていただけの存在だった姉とも、大人になってからは落ち着いて話せるようになるというのも面白い。
 互いの生活の事とか語り合いながらそれなりに意義ある時間を過ごした。もう良い時間になりお暇をしようと陽一を捜しにいくと、子供部屋で一人で遊んでいたようだ。
 何故か会話しているような声が聞こえる。
 「お前スゲ~!! じゃあ次俺の番~♪」
  その声に首を傾げる俺に姉は笑う。
 「子供って独り言多いものなのよ! 思った事全て口に出す感じ」
  俺はとりあえずノックしてドアを開け、陽一に声をかける。陽一はレースの途中なようでソレを終わらせるまでコチラに反応をしめさない。
 「陽一! もう俺帰るからな。あんまりお母さんやお父さん達を困らせるなよ!」
  俺の言葉に陽一は明らかに何も考えてないだろうという感じで、脳天気にニッカリと笑う頷く。
 「うん! 良い子にしているから。また今度くる時にゲーム頂戴!」
  子供って、意外にチャッカリしているものである。俺は笑いながら頷き陽一の頭を撫で、お別れの言葉を言い姉の家を去ることにした。
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