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ablib improvisation solo
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何となく透さんが好きだという女性が分かってきた。
商店街で雑貨屋をやっているという人で週に二回程黒猫にやってくる。二十代? 年齢は読めないけれど透さんと同じくらいだと思う、カウンターに座って透さんとの会話を楽しみにきて、軽くお酒を飲んで、食事を楽しんでいくそんな感じ。お酒はあまり強くないようだ。相手の女性のキラキラした透さんを見る視線と、ユキさんの優しさ倍増の笑顔が、見ていてムズムズする。でものんびりした感じが似ていて、お似合いのようにも思える。
といっても二人の関係はよくよく注視しなければ分からないレベル。透さんだって仕事中だからそんなにその女性だけを構っているわけもない。その女性がずっと透さんを見ている事もあるし、透さんがその女性に視線を向ける事が多いから視線の合う事合う事。二人で視線合わせてフワリと微笑みあうそんな感じ。透さんの変化は傍で見続けていたから気が付けるくらいのささやかな変化。何故気が付いたかというと、その女性が来たら、俺が対応しようとするのを、杜さんがドリンクを運ばせたり別のテーブルの対応に行かせられたりと軽く邪魔するのと、商店街の誰だかがやってきて、二人の様子を嬉しそうに眺めてお酒飲んでいるのを見て流石に気が付いた。でも気が付いてしまうと、コレ以上ないくらいそこに愛の世界がある。でも会話をきいてみると、二人はあくまでもご近所さんという立場で付き合っているようだ。
そんな遅々とした二人の関係とは別に、キーボくん一号と二号の関係はもうすごい展開になっている。放浪の旅に二号さんが出ている間に、一号さんは事故にあって記憶喪失。そこに上手く立ち回った間男事俺だと思われる男。そして俺をスッカリ恋人と勘違いしていて二人でラブラブな生活をしているところに、戻ってくる二号……。
いくらなんでも、記憶なくしたからって恋人の種から違っていたら、二号と俺が違う相手ってわかると思うのだが……。
他には俺様二号と鬼畜な俺に振り回され翻弄されていく一号。そして最終的に二号選び商店街から去っていく俺。
どちらにしても俺が噛ませ犬の立場。その役割が嫌なのではなくて、それ以前に俺をガッツリ物語に巻き込まないで欲しい。たとえ相手がキーボちゃんでも遠慮したい。相手は人間の女性が良いし。そして生身の。
今日透さんがなんだかの講習会があるとかで、俺は透さんの代わりにお酒の注文をしに篠宮酒店に来ていた。
「そろそろ熱くなってきたからビールの売り上げもあがってんなぁ」
店長の燗さんはそう注文票を見てつぶやく。
「ま、冷えたのちゃんと持っていくから安心してくれ!
あっ、あと商店街事務局宛に、キーボ君のファンからまた荷物届いているんだ。ユキ坊に届けてくれないか?」
俺は燗さんが差し出す紙袋を上から見てため息をつく。カワイイ紙袋に薄い本が何冊か入っている。手にとり一冊出すと、抱き合っている二対のキーボくんの絵が描かれていて、上に『商店街の中心で愛を叫ぶ青』というタイトルがある。中身は、もう見たくない……。コレみると、透さんがまた大騒ぎして動揺するのも見えている。
「あの、ユキさん繊細だから、こういったのは凄く動揺されるんですよね。だから安住さんの方に渡されてくださいませんか? 安住さんは、このような世界を楽しむ事出来るみたいなので」
俺の言葉に、燗さんは『ん、そういやそうだな。分かった』と納得してくれた。ユキさんだけが、あんなに苦悩するのも不公平である。同じキーボくんとして安住さんにこのブツは任せることにした。
「まあ、キー坊同士の恋愛なんてどうでもいい、ところでどうなんでぇ? お前さんから見て」
燗さんはいきなりそんな事聞いてくる。
「ブルーマロンのお嬢さんとユキ坊は!」
確かに商店街の人が気にするのはそこなのだろう。透さんと相手の女性との関係。俺は苦笑して首を横にふる。
「まあ、良いお友達って感じみたいですね」
正直に現状を報告すると、燗さんはあからさまに、ガックリとした顔になる。
「そんなテンポだと、爺さんになっちまうぞ! やはり、ここはもう俺らで動くしかないか!」
ニヤリと笑うその顔に、俺は不穏なモノを感じたが気づかなかった事にして、お店を後にした。
安住さんの実家が商店街にあるお寺である事もその時教えてもらったので、次の日、黒猫に積まれていたモノも紙袋に詰めてお届けにいき、安住さんのお姉さんに渡しておいた。その時見知らぬ女性がつけていて、制作者に二号さんの住処がバレてしまっていたのは気が付いてもなかった。制作者から直でお寺にその続きが届けられるようになってしまうなんて知るはずもない。
そして俺と透さんは、制作者がもう飽きてこの騒ぎは終わったと思い喜んでいた。
大学の学食で同じサークル仲間の岸本大介にばったり合う。彼も字は違うものの俺と同じダイスケでサークル内ではややこしいのでダイサクと名乗っている。一緒に喫茶店トムトムのバイトの面接を受けたものの同じ理由で断られ、代わりに同じ商店街の中華飯店神神を紹介された男である。同じ商店街で働いて顔を合わすことも多く、互いのバイト先にいって楽しんだりとして結構仲が良い。
他愛ない会話を楽しんでいると、ダイサクの口からとんでもない情報を仕入れる事になる。
「ランチといったら、今のランチデートラブラブ大作戦、そろそろ次の段階に移そうって話あるみたいだけど、聞いてる?」
なに? そのベタで怪しい作戦って。
「何? その大作戦って」
俺が聞くと、ダイサクは驚くが、一人何故か納得した顔をする。
「ああ。お前はランチ関係ないから、別働隊だったのか」
俺はどんな部隊にも入っているつもりはない。そしてダイサクは話してくれる。ユキさんと相手の女性が上手くいってもらおうと商店街で色々策を講じていると。そして今行っているのは、強制的に二人が同じお店でお昼を食べるようにいて、強引に相席にして一緒にランチを楽しんでもらっている事をしているらしい。
透さん、すごい陰謀に巻き込まれていますよ。いや巻き込まれているというレベルではなく渦中の人となっています。
恐らくは二人は全く気が付いてない。し かも商店街のバイトレベルにまで見守られているって、物凄く恥ずかしい気がする。このまま知らぬが花でソッとしておいた方が良いのだろうか?
作戦は次の段階に進むって、何が起きるのだろうか? スゴく気になる。俺は、ダイサクに何か分かったら教える代わりに、次なる作戦が決行される事になったら教えて貰う事にした。
※ ※ ※
ablib improvisation solo=ソロの即興演奏の事
商店街で雑貨屋をやっているという人で週に二回程黒猫にやってくる。二十代? 年齢は読めないけれど透さんと同じくらいだと思う、カウンターに座って透さんとの会話を楽しみにきて、軽くお酒を飲んで、食事を楽しんでいくそんな感じ。お酒はあまり強くないようだ。相手の女性のキラキラした透さんを見る視線と、ユキさんの優しさ倍増の笑顔が、見ていてムズムズする。でものんびりした感じが似ていて、お似合いのようにも思える。
といっても二人の関係はよくよく注視しなければ分からないレベル。透さんだって仕事中だからそんなにその女性だけを構っているわけもない。その女性がずっと透さんを見ている事もあるし、透さんがその女性に視線を向ける事が多いから視線の合う事合う事。二人で視線合わせてフワリと微笑みあうそんな感じ。透さんの変化は傍で見続けていたから気が付けるくらいのささやかな変化。何故気が付いたかというと、その女性が来たら、俺が対応しようとするのを、杜さんがドリンクを運ばせたり別のテーブルの対応に行かせられたりと軽く邪魔するのと、商店街の誰だかがやってきて、二人の様子を嬉しそうに眺めてお酒飲んでいるのを見て流石に気が付いた。でも気が付いてしまうと、コレ以上ないくらいそこに愛の世界がある。でも会話をきいてみると、二人はあくまでもご近所さんという立場で付き合っているようだ。
そんな遅々とした二人の関係とは別に、キーボくん一号と二号の関係はもうすごい展開になっている。放浪の旅に二号さんが出ている間に、一号さんは事故にあって記憶喪失。そこに上手く立ち回った間男事俺だと思われる男。そして俺をスッカリ恋人と勘違いしていて二人でラブラブな生活をしているところに、戻ってくる二号……。
いくらなんでも、記憶なくしたからって恋人の種から違っていたら、二号と俺が違う相手ってわかると思うのだが……。
他には俺様二号と鬼畜な俺に振り回され翻弄されていく一号。そして最終的に二号選び商店街から去っていく俺。
どちらにしても俺が噛ませ犬の立場。その役割が嫌なのではなくて、それ以前に俺をガッツリ物語に巻き込まないで欲しい。たとえ相手がキーボちゃんでも遠慮したい。相手は人間の女性が良いし。そして生身の。
今日透さんがなんだかの講習会があるとかで、俺は透さんの代わりにお酒の注文をしに篠宮酒店に来ていた。
「そろそろ熱くなってきたからビールの売り上げもあがってんなぁ」
店長の燗さんはそう注文票を見てつぶやく。
「ま、冷えたのちゃんと持っていくから安心してくれ!
あっ、あと商店街事務局宛に、キーボ君のファンからまた荷物届いているんだ。ユキ坊に届けてくれないか?」
俺は燗さんが差し出す紙袋を上から見てため息をつく。カワイイ紙袋に薄い本が何冊か入っている。手にとり一冊出すと、抱き合っている二対のキーボくんの絵が描かれていて、上に『商店街の中心で愛を叫ぶ青』というタイトルがある。中身は、もう見たくない……。コレみると、透さんがまた大騒ぎして動揺するのも見えている。
「あの、ユキさん繊細だから、こういったのは凄く動揺されるんですよね。だから安住さんの方に渡されてくださいませんか? 安住さんは、このような世界を楽しむ事出来るみたいなので」
俺の言葉に、燗さんは『ん、そういやそうだな。分かった』と納得してくれた。ユキさんだけが、あんなに苦悩するのも不公平である。同じキーボくんとして安住さんにこのブツは任せることにした。
「まあ、キー坊同士の恋愛なんてどうでもいい、ところでどうなんでぇ? お前さんから見て」
燗さんはいきなりそんな事聞いてくる。
「ブルーマロンのお嬢さんとユキ坊は!」
確かに商店街の人が気にするのはそこなのだろう。透さんと相手の女性との関係。俺は苦笑して首を横にふる。
「まあ、良いお友達って感じみたいですね」
正直に現状を報告すると、燗さんはあからさまに、ガックリとした顔になる。
「そんなテンポだと、爺さんになっちまうぞ! やはり、ここはもう俺らで動くしかないか!」
ニヤリと笑うその顔に、俺は不穏なモノを感じたが気づかなかった事にして、お店を後にした。
安住さんの実家が商店街にあるお寺である事もその時教えてもらったので、次の日、黒猫に積まれていたモノも紙袋に詰めてお届けにいき、安住さんのお姉さんに渡しておいた。その時見知らぬ女性がつけていて、制作者に二号さんの住処がバレてしまっていたのは気が付いてもなかった。制作者から直でお寺にその続きが届けられるようになってしまうなんて知るはずもない。
そして俺と透さんは、制作者がもう飽きてこの騒ぎは終わったと思い喜んでいた。
大学の学食で同じサークル仲間の岸本大介にばったり合う。彼も字は違うものの俺と同じダイスケでサークル内ではややこしいのでダイサクと名乗っている。一緒に喫茶店トムトムのバイトの面接を受けたものの同じ理由で断られ、代わりに同じ商店街の中華飯店神神を紹介された男である。同じ商店街で働いて顔を合わすことも多く、互いのバイト先にいって楽しんだりとして結構仲が良い。
他愛ない会話を楽しんでいると、ダイサクの口からとんでもない情報を仕入れる事になる。
「ランチといったら、今のランチデートラブラブ大作戦、そろそろ次の段階に移そうって話あるみたいだけど、聞いてる?」
なに? そのベタで怪しい作戦って。
「何? その大作戦って」
俺が聞くと、ダイサクは驚くが、一人何故か納得した顔をする。
「ああ。お前はランチ関係ないから、別働隊だったのか」
俺はどんな部隊にも入っているつもりはない。そしてダイサクは話してくれる。ユキさんと相手の女性が上手くいってもらおうと商店街で色々策を講じていると。そして今行っているのは、強制的に二人が同じお店でお昼を食べるようにいて、強引に相席にして一緒にランチを楽しんでもらっている事をしているらしい。
透さん、すごい陰謀に巻き込まれていますよ。いや巻き込まれているというレベルではなく渦中の人となっています。
恐らくは二人は全く気が付いてない。し かも商店街のバイトレベルにまで見守られているって、物凄く恥ずかしい気がする。このまま知らぬが花でソッとしておいた方が良いのだろうか?
作戦は次の段階に進むって、何が起きるのだろうか? スゴく気になる。俺は、ダイサクに何か分かったら教える代わりに、次なる作戦が決行される事になったら教えて貰う事にした。
※ ※ ※
ablib improvisation solo=ソロの即興演奏の事
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