37 / 66
式場選び
ウェディングプランナー
しおりを挟む次に候補にあげたホテルは、駅から見えるところにあった。道を渡らねばならないけど、関東に慣れてない人は迷わ事はないだろう。
ここで私達を担当してくれたのもブライダルプランナーという肩書の男性。百八十センチくらいの三十代くらいで平井堅さんぽい、かなり濃い顔をしている。
「このような顔していますが田中です。生粋の日本人ですので」
初っぱなから、そんな挨拶で私達を和ませてくれた。
ザ・ホテルマンという感じで物腰や柔らかく慇懃。丁寧なだけでなく心のある接し方が印象的だった。
この式場では、たまたま九月にキャンセルが出ていたために、一番早く結婚式を挙げられる。
「この日にちだったら、ゆりぞ…百合子さんの誕生日の丁度一ヶ月前でいい感じだよね。覚えやすい」
流石に他の人の前で、いつもの名前で呼び合うのは恥ずかしい。
「百合子さん」「渚さん」と呼び合うのが、なんかくすぐったい。そんな二人の様子を、平井さん……ではなく田中さんはニコニコと見守ってくれている。
「しかも九月に結婚出来るのって嬉しいよね」
他の所で上げるよりも、一ヶ月も早く二人で暮らせる。
色々検討した結果、このホテルで式を挙げることにした。このホテルは丁度改装したてで綺麗だった。
さらに十年記念イベントで価格的にも結構お得に豪華に挙げられるというのが大きい。いろんな意味で私達にとっては条件が良かった。
ブライダルプランナーの田中さんという人物の魅力も大きかったのかもしれない。
質問に真摯に答えてくれる。田中さんが担当してきた過去の結婚式の経験を元に様々なアドバイスとかもしてくれた。
子供用の天使の羽の仮装とか、無料で使えるアイテムの存在をコッソリと教えてくれた。
あまり年齢が誓いこともあり、提案のフィーリングが合っていたのだと思う。
大陽くんも、他のオジチャン、オバチャンの相談員に比べて話しがやすく良かったようだ。
でも、彼がココに決めたのは、十周年記念特別イベントである『炎のケーキ】があったからに違いない。
新郎が炎を操りアイスケーキを仕上げて振る舞うという出し物が用意されていたのだ。
このイベントの良いところは、新郎の手によってかなり派手なショーを来賓客に楽しんでもらえる。さらにデザートが一品増えるのだ。
なんてお得なイベントなんだろう。しかも来賓客もビックリするのも間違いない。
こんな面白い隠し球も用意できた結婚式、楽しいものになりそうだ。二人でワクワクしながらホテルを後にした。
二人で手を繋いで、駅まで態と遠回りして帰る。だってここからだと二人の家は間反対にあるためにホームから違う電車に乗って帰らないと駄目だから。
「じゃあ、仮押さえしていた式場、キャンセルをいれないとね」
すっぽりと私の手を包む、大陽くんの大きい手の温かさが気持ち良い。
「だね~。全部で六件か。
じゃあ俺最初に行った三件はキャンセルの電話かけておくから、百合蔵さん残りお願い」
三十センチ上から、大陽くんが私の顔を見てニコリと笑う。私も同じような笑顔を返す。
「了解! 明日でもかけておくね。なんかいよいよ走り出したって感じでワクワクするね」
何がオカシイのか、私をみて人の悪い顔で笑う。
「そう? ま、一生に一度の事だから、楽しまないとね」
「だね!」
私は繋いでた、大陽くんの左手を自分のほうに引っ張り両手で抱きしめる。
「重いよ!」
大陽くんは、サッと腕を引きその手を私の左肩におきグッと力をいれて上から押す。
「重い!!」
「仕返し!」
クスクス笑って、そのまま肩を抱き寄せてくる。
人が少ない暗い道だとはいえ、やってることはハッキリいって馬鹿ップルである。
自分でもある意味、こんな風に人に甘えたり、ジャレたり出来るようになった事に驚いている。でもなんでだろう、そんなに馬鹿になっている自分も嫌じゃない。
そのまま他愛ない話をしながら、馬鹿ップルな私達は夜の道を歩いていった。
※ ※ ※
次の日、会社の昼休み私は手帳に挟んであった、ホテルの名刺を取り出す。大きく深呼吸して一件目のキャンセルの電話をいれることにする。
「本当に申し訳ありません。担当の方にも本当にお世話になったのですが――」
散々色々相談に乗ってもらいお世話になった事もある。出来る限り丁寧にそして誠意をもってキャンセルの意図を伝えることにした。
「そうですか、分かりました。ちなみに、ドチラの式場に決められたのでしょうか?」
電話の向こうの女性が、あまりにも想定外の事を聞いてきた。
ここまで聞いてくるものなのだろうか?
「あ…………新横浜ロイヤルホテルです……」
なんか、凄く言いにくい。内心かなりビビリながら私は自分が挙式するホテルの名前を相手に伝えた。
「そうですか」
なんか、良くいえば落ち着いた、悪く言えば抑揚のない言葉が怖い。嫌な汗が流れる。
「では、またの機会のご利用お待ちしております」
そう言って、電話は切れた。
(え? またの機会って、どういうこと? また結婚式挙げるときはどうぞって、嫌味?)
残り二件、電話するのが怖くなってきて、私は大きく溜息をついた。
でも、そのホテルのその女性だけが、おかしかったようだ。残りの二件は、穏やかに『ウチとしては残念ですが、無事会場も決まって良かったですね。式の準備頑張ってくださいね』といった暖かい言葉をで応じてくれた。
お陰で、ドーンと落ち込んでしまった嫌な気持ちは少し治まった。大陽くんに、メールで聞いてみた所、アチラの三件も何の問題もなくキャンセル出来たらしい。
ということは、一カ所だけが怖かったということなのね。良かったあんな式場ばかりでなくて。私は妙な事に安堵していた。
0
あなたにおすすめの小説
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
ソウシソウアイ?
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。
その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。
拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、
諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。
夜の声
神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。
読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。
小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。
柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。
そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
