上 下
2 / 4
再来

World circumstances

しおりを挟む
8月15日、日本国東京都渋谷区原宿の駅前の喫茶店にて。
「これをこうして…こう、ああああああああ壊れたああああああああああ」デスクトップには『プログラムが停止しました』というウィンドウと共に画面は薄い白に包まれた。
「あのぉ…お客様、他のお客様のご迷惑となりますので店内での発狂はご遠慮下さい。」
「ああ、すいません…つい…」何という不幸か。まさか保存時にフリーズするとは…まして完成してたのに…
店員がついさっき持って来たブラックコーヒー(豆はブレンドとなっておりますと書いてあり何のブレンドまでかは不明)を取ろうとした時、周囲を見ると気にせず喋っている人が多いがその他大半の人が『何事?!』目線で私を見ている。ああ、やっちった…
だが数秒もすると何事もなかったかの如く我に帰っていった。
此処の人々は、今近隣の情勢が変化しているのを知っているのだろうか?それを踏まえてあえて出していないのか?と思うぐらい平和に暮らしている。まあ、気にする人間なんてそう多くはない。例え周辺の情勢が変化しようと日々の生活に支障のないことだったらあまり気にしない。事がもし隣国が宣戦布告をし徴兵されるや自分の住んでいる地域が攻撃を受けたりなどは気にするとは思うがそれ以外では気にしない。それは日々生活している中でも同じことが言えるだろう。
例えば電車に急いで乗ろうとしたが間に合わずドアが閉まりホームで落ち込んでいる何者か知らない赤の他人を心配するか?基本的には気にしない人がほとんどだろう。
「可哀想だな」や「残念だな」とこんぐらいしか思っていないだろう。
話を戻そう。
近年、この日本及び近隣周辺各国、世界規模でその根底が崩れつつある。近年とは言えどざっと3年前、第一の要因は米国が行った中東侵攻の『大』敗退が原因であろう。
何故米国が中東に侵攻したかと言うとイスラム帝国なる国境を持たない非合法武装組織を掃討すると言う題目だが実際は世界へ向けての建前、本当の目的は化石燃料等の資源の確保にある。
米国はは別に国内でも十分に石油等の化石燃料が取れたり困る要素等が零に近い。しかし米国内では次の世代に向けての資源等を考え議論した結果、2016年2月16日丁度京都議定書効力発動日に合わせて『次世代資源規制保護法』成るものを制定した。内容としては国内で取れる化石燃料及び鉱石などの資源を規制すると言うものである。これには背景があり年々増加する国内の二酸化炭素排出量を減す事が第一条件だがこれにより年々力を増してきつつある新興国に向けてこれと同じ様な法を制定させるような雰囲気を世界に知らしめるための牽制と言う意味もあった。これにより石油の産出量が規制され国外への輸出量が一気に減少。米国内の石油企業は大きな打撃を与えられた。
但しこの法律は国内でのみで有効であり国外ではまるっきり意味をなさない。まして出来たばかりの法のためあまり詳しい議論はなされなかった。
丁度、その頃中東において反政府ゲリラ組織の活動が活発化とある一か所に集中しイスラム教過激派組織『イスラム国』なるものを結成した。初期の頃はさほど脅威ではなかったが占領地の拡大志願兵の増加が引き金となりますます拡大し1万ちょっとだったがこの様な事がありおよそ8万人ましてそれ以上居るかと思うぐらいに増加してしまった。初期の頃の略奪からどんどんイスラム国の行動は過激になり酷い時等は某北の様に各国から少年少女の誘拐、科学者や外交官また大手企業重要人物の拉致、諸外国の記念館や博物館、宗教上の建物の爆破等の卑劣極まりないテロ活動を行い国連ではこのイスラム国を一級テロ組織に認定した。
それは米国が中東を攻めるにいい口実であった。
その様なゲリラ組織を殲滅し、イスラム国旧占領地を駐屯地化し秘密裏に資源の採取を行うと言う手だ。湾岸戦争以降国内の石油企業による中東への関心がなくなっていたが国内での規制、イスラム国の拡大が引き金となり国内の期待が高まり始めた。
丁度、その頃米国議会では満場一致で中東への派兵を決定、同盟各国に対する協力や部隊の編成を行い始めた。
しかし、誰もが予想もしていなかった事が起こった。イスラム国内でのクーデターである。まあ、統制が取れていないならず者の集団なら当たり前の事と誰もが予想はしていたがクーデターを起こした人物が予想外であったのだ。
それは突然であった。イスラム国のアカウントが消え、新たにイスラム帝国なるアカウントが制作され、それと同時に『全世界へ向け』と言う動画が投稿された。投稿された動画においては何故この動画を上げたかと言う理由と共にクーデターを行い成功したと供述した。クーデターの首謀者は自称16歳と評する少年兵らしいが顔は仮面を付け肌を見せないように西洋風の甲冑をつけて居たため肌の色での人種判断は出来なかった。喋っていた言語は英語、口調はしっかり発音も出来ていた。動画の前半はクーデターの理由、中盤はイスラム国が行った非道に対する謝罪、拉致被害者の早期返還、賠償額の支払い額などを述べ、動画後半では今後の活動内容や正規の国家としての申請と捉える発言と共に近隣各国との友好関係の樹立をすると供述したのであった。それが2017年1月31日。米国が同盟各国に中東に対する派兵を行うように外交を通じて交渉を行っている時であった。
予想外の出来事に対し世界は疑念を抱いたが継続して出される拉致被害者安否の映像、クーデター時の様子を映し出した映像、民間人が録ったと思われる映像により次第に一時安堵はしたものの依然として信用はせず、国連は使節団の入国を要求した。これにもイスラム帝国は快く受け入れ使節団の入国を認めた。
使節団の報告では、治安は軍人とは違った警官らしき人物が巡回し治安を維持していてるらしい。また、大通りでは多くの露天商が食料から日用品を売っておりそのせいか大通りには人が多く歩いていた。使節団の人間が民間人に話を聞いたところ全員とても良い生活である、と言っていて後日の海外のジャーナリストが取材した際も同じくとても良いと答えた。
この様な事から世界各国はイスラム帝国は比較的安全と判断し、国際社会は派兵に関して一息し国家としての認定を行うべく事の要件を進めていたがこれに対し快く思わない勢力がいた。中東への派兵を掲げていた米国だ。
米国はイスラム帝国のyotubeアカウントをハッキング、そこからイスラム国の映像を編集したものを配信しようと試みたが失敗。逆に米国がイスラム帝国へ行う嫌がらせの計画書をばらされてしまい国際世論から非難を浴びた。
流石にこの案件で懲りたかと思ったがそれでも諦めない米国は派兵を強行、イスラム帝国に宣戦布告をした。
米国は破竹の勢いで海岸線を制圧、その後も進軍しイスラム帝国仮首都を目前にした。しかしイスラム帝国の首都前の防衛要塞を目前に敗退それどころか中東連合軍の集中攻撃を喰らい撤退、撤退時の帰還兵は五割にも満たなかったと言われている。。
ただこの敗退は詳しい情報は米国、イスラム帝国のどちらからも出されていない。とある米国の帰還兵曰く『戦場で赤く染まった悪魔を見た』『狂人達が突っ込んできた』はたまた『吸血鬼に違いない』と言い張る者もいた。ただ共通として言えることは湯気を纏い日本刀らしき刀剣を持ち背中には小さい羽根と思しきものがついていたという。帰還兵の大半は遠距離特科兵。まあ狙撃手や観測兵、指揮官なんかの後方に待機している人間が生き残ったと考えてもらった方が早い。
この戦いは俗名『中東大戦』と呼ばれた。
米国の敗退の影響は全世界を混乱させた。まず起きたのが金融恐慌だ。それも2007年のリーマンショックよりも大きく例えるなら1927年に近いものが起きた。これにより多くの企業が廃業や廃業寸前まで追い詰められた。流石にこれに対し各国は総力を尽くし割ける分の費用はとことん減らした。軍事費用から何まで減らし2021年現在何とか取り戻してきつつある。
この元凶であるイスラム帝国は米国との戦争後はと言うと国連にイスラム帝国の国家としての認定を受け、世界が恐慌であーだこーだ言ってるとき中東版EUことMCCは創設(中東協力連合体:Middle East cooperation coalitionの頭文字を取り)、軍備は強化したりしていた。軍備増強に関しては小国が米国と言う大国を退けたことにより慎重化、何にも言わず。もはや中東は一つの大国になっていた。
また力を出し始めたのはイスラム帝国だけではなかった。それはロシアである。ロシアはこの機に乗じて世界の至る所に『赤』を派遣した。そうコミンテルンである。第二次大戦中ソビエト連邦(現在のロシア連邦)は世界に諜報員ことスパイを派遣した。一番知られているのはゾルゲ事件だろう。詳しい事件の詳細は知らない。あんな左翼新聞社のことなど。
そんな感じで世界の情報をいち早く入手するべくまだ派遣していない国なんかにもしているらしい。実際中東の戦争以降イスラム帝国にも派遣したみたいだが十日もせず逮捕され捕虜となったらしい。ざまぁw
にしても遅い。集合時間は30分前だと言うのに。我が誇り高き読売新聞社が特別に手に入れたルートから独占取材のアポ。私が入社初めての取材がまさかイスラム国に誘拐され今の今まで行方が解らなかった小町川五十六さんと言う話題の人物とは…先輩からは嫉まれるぅ…何で社長直々の推薦なのよぉ…
情報は男の人ってことや名前、取材場所、コンタクト方法以外聞かされなかった。
「あのー貴女が富沢望さんですか?」
PC画面から目線をあげると日本人の平均体格とは思えない人物が現れた。
「あ、はいそうです。今回取材をさせていただきます。富沢望です。宜しくお願い致します。」挨拶を行い名刺を渡した。
「いやー、目の前のデモ行進のせいでここに来るのに結構時間を要しましたよ。待たせてしまいましたか?」
「いえ、さほど待ってませんよ。私もついさっき来たばかりなもので」(まあ、一時間前に来てたんだけど…)
この人が小町川五十六氏っと内心思いながらスマートに座る目の前の人物を観察していた。顔はマスクで覆われて解らないが目は見えていて20代とは思えない眼光をしていた。例えるなら色々と経験してきた目と言ったほうがいいか。体格は185?ぐらいだろうがっちりしていて細く言うなればガンダムにパテやキットで盛った装甲強化版的な感じである。
「?、どうかしましたか?私の顔になんか付いてますか?」
「いえ、特に何も。」
その後、話が途切れ沈黙が訪れた。なんか切り出せない独特の感じが訪れた。まるで初対面の人間と出会ったけど話す話題がなくそのまま時間が来てしまったコミュ障の現場に近いものがここで起きた。
だがこの様な状況を経験してたかの如く切り出したのは小町川の方だった。
「にしても、外が騒がしいですね。まさか秋葉原に留まらず原宿もこうだとは思いもやりませんでしたよ。」
「そうですね、私の先輩方もその取材で秋葉原に行っていて、聞いた話だと日本全土から若者などが集まっているとか。確か青少年健全育成法でしたっけ?あれって完全に表現の自由に違憲してますよね。一人の記者として言いますが。」
「『青少年の健全育成のため不健全と思われる図書及びそれに準ずる表現を禁止する』だったような、仕方ありませんよ。共産党が独立政権を獲得してることや二次創作の作品愛好家の批判によってTPP交渉がいきず待っているですから。そりゃ、強行策の一つや二つ出してきますよ。」
「こんな漫画や小説みたいな状況が今この日本でおきているなんて、想像もしていませんでしたよ。」
「誰もこんな状況が出来るとは思いませんよ。まして共産党が政権を握るだなんて…おかげで計画が早まってしまったよ」
「計画ってなんですか?」
「いや、独り言ですよ。ははは」
なんか隠しているなと思いつつ話が軌道に乗ってきたことを計らい富沢は本題について切り出した。
「そろそろ、取材を行ってもよろしいですか?」
「はい、どうぞ」
「ええっと、申し訳ないですが年齢はいくつでしょうか?」
「年齢? ああ、20です。ちなみに生年月日は2月2日で…」
「ッ?!」
正直20と聞いてむせた。20んな訳あるか。どう見ても30代後半だろ。私だってまだ24なのにこの人一体何者ですか。
「大丈夫ですか?」
「ゴッ、ゴホ、大丈夫ですぅ…次の質問」
いかん、仕事なのにあまりの驚きにリアクションを隠せなかった。
「中東はどのような感じでしたか?」
「中東はとても良かったですよ。色々物知りはいるわ、ゴリラはいるわ、懐っこい奴はいるわ、多国籍でそれなりに良かったです…多分アイツもそういうでしょう…アイツも生きていれば…」
やべぇ…昔の事思い出して重くなってる感じだよ…何とかしないと…
だがやはり切り出したのは小町川の方だった。
「貴方は中東大戦時現れた紅き鉄の悪魔が私ですって言ったらどう思いますか?」
『紅き鉄の悪魔』ネットでは帰還兵の証言からそう命名された。専ら2chの軍事掲示板が勝手に命名したのだがいつの間にかそれが広がったらしい。
「いや、まさか…」
「じゃあ、私がイスラム帝国初代代表の覆面小僧だったら?」
覆面小僧、これもまた2ch発祥の名前だ。イスラム帝国最初の映像に登場した、少年兵の顔が覆面により隠されてわからなかったためこれがついた。
「…」
どれもこれも唐突過ぎて頭が混乱してきた。だがもしそうだとしたら結構やばい事をいっている。もし世界に大体的に発表されれば国際社会様の一部勢力による報復で日本は孤立しかねない。
「極力内密に頼むよ。」
いや、貴方それを初対面の人に言うか。例えるなら合コンでとても大好きなネット有名アップロード主が来ていて実は本人です、っと暴露してると様なものだ。
そんな中、話が勝手に進んでいった。
「そういや、社長から今日の予定聞いた?」
「いいえ、以降の事は何も…」
「はぁ...言うの忘れてんじゃねーか彼奴。あ、ちょっと今日一日俺に付き合って貰うから宜しく。」
「は?」
あまりにも唐突過ぎつい本音が出てしまった。
しおりを挟む

処理中です...