傷を舐め合うJK日常百合物語

八澤

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冬銀河、寒いから体を寄せ合って眠る二人 01

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「……おいっ」
「ん?」
「いつまで起きてる、もう二時だよ」

 ふわぁ……と欠伸しながらレイは言う。そんな馬鹿な、と思いスマホのステータスバーを下げると、確かに夜中の二時を回っているわね。

「明日休みだけどさ、夜更かしはお肌の大敵……ふふっ」
「そんな簡単に肌荒れしないし」「若いから?」「若いから……ってかなんで笑ってんのよ」
「『夜更かしはお肌の大敵』って私の一度は言ってみたいセリフの一つだったから。言っちゃった……。しかもすんなりと日常会話で」
「なにそれ」
「他にも『こんな場所にいられるか。私は部屋に戻る!』とか『ここは私に任せて先に行って!』、あと『この泥棒猫!』などなどあります」
「あぁ、そういう奴。でも、泥棒猫って言われたら絶対に笑う」
「ね! 言えた方はめっちゃドヤ顔しそう。修羅場なのにね……」

 レイは溜息をつき、ぎゅぅっと私のお腹を縛るように拘束を強めた。今日は私の家にレイが泊まった。外は氷点下を下回り、部屋の中なのに窓から冷気が侵入してくるようで寒い。お客用の布団は無いので、私のベッドにレイと一緒に眠る。まぁ、布団敷いてもレイは私の寝床に潜り込んでくるんだけどね。

 寒いから。

 って言い訳みたいに口にして。まぁ本当に寒いから文句は言わないけど。
 レイがこうして密着するので、寒さはいくらかマシだった。
 ──レイの腕や指先は……レイに直に触れるとびりっと痺れるような寒気を覚えるけど、服の上から触れると温もりを感じる、と最近理解した。

「また本ですかぁ……ふぁぁ」私の握るスマホに映し出される電子書籍をちらと見てレイは欠伸混じりに訊く。高校生に上がってから私はピアノから離れ、今まで抑えていた欲求を発散するかのように色々なエンタメに手を出していた。最近は小説に嵌っている。
「えぇ」
「エロい奴?」
「……あんたそれしか言わないのね」
「だってサクラエロ本好きそうじゃん」

 その言葉に一瞬ドキリとしたけど、あれは別に好きってわけじゃなくて、たまたま、偶然……で、別に好んで読もうとしたわけじゃない! と私は言い訳がましい思いを抱いてしまい、それから目を背けるようにスマホに表紙を映し出す。

「普通の……ごくごく一般的な小説よ。題名は──」
「ふぅん」

 レイは興味なさそうに唸り、眠たそうに私の胸元に顔を擦り付ける。私たちの体温で暖められた毛布と掛け布団の中で、レイは暖かいのか冷たいのかよくわからない体温で私に迫る。背丈は殆ど同じはずなのに、頭一つ下がった位置に居るので何だか小動物っぽい愛らしさを覚えた。可愛い。きゅっと胸が絞られるような感傷に浸る。余った腕でポンポンとレイの頭部を撫でると、レイは「ふふふ……」と嬉しそうに笑った。振動が直に伝わり擽ったいわ。サラサラした髪が指に纏わりつく。指にからめてもするっと抜け落ちてしまう……。

「今いいところだから、あと少しだけ……」
「眠いよぉ」
「勝手に寝なさい。あ、画面明るい?」「……別に」「レイ?」

 うねうねと芋虫のように蠢き、今度ははっきりと私の胸に顔を埋めた。その瞬間、ひやっとする感覚を予想するけど思っていたよりも暖かく、その落差で安堵の溜息をつきそうになる。

「やわらかーい。ぷにぷに……。まぁ私よりも小さいけどね」
「うるさい。ってかいい加減にして」
「サクラは本読むのに集中しなさい」「もう……ねぇ、レイ……」

 暗闇に目は慣れたけど、真っ暗な部屋でレイの表情は見えない。けど、レイに睨まれているのがわかる。胸に顔を当てながらじぃっと私を見つめている。大きな瞳が爛々と輝きを放つ。まるで私の心の内を見透かすようで目を背けたいのに、できない……。喉元に牙を付き足られるような気分。体が硬直した。ヒヤリと恐怖を感じる。その一瞬の隙を付くように、レイの頭部を擦っていた私の指が捕まる。レイの細くて長い指が私の指に喰い込んだ。ぎ、ぎ、ぎ……と骨が軋む感覚が私の中で轟いた。優しく握られただけなのに強烈な威圧感を覚えた。

 ──出会った当初はスキンシップ過剰! と若干驚いていたレイの接触も、次第に慣れた。……慣れたけど、夏を通り過ぎ、秋、そして冬──に至ると、なんか今度は一周して驚いちゃう。ただそれは「わっ!」と勢いに任せて驚くような感覚と違い、私の体にしっとりと染み込んでくるような冷たさを含んでいる。

 ずりずりとレイは私の体に自身の体を擦りながら、這い上がってくる。擦れるたびにゾクゾクと何かが背中を通り抜けていく。震えそう。動揺がどろりとこぼれそう……。けど必死に我慢する。「どうしたの?」と声が上ずるのを我慢する。もっと冷静に──気付かれないように、何に? レイに──レイに? 私が、……私が──。

「読まないの?」
「……読むわよ」

 レイは私の首と胸の間にそっと頬を寄せ、はぁ……と満足そうに息を吹きかける。じわっと私の首元が湿った。安っぽい挑発、いちいち反応してられないわ、と私に言い聞かせる。「ふーふー」「冷たい息が当たるから辞めて」「はぁぁぁぁ」「生暖か……そういう意味じゃない」

 意識をレイから遠ざけようと続きを読む……けど、「あっ」「ん?」「何でもない」「ん~?」
 思わず声を上げてしまった。
 何故なら、ここから先は──濡場が始まるから。
 普通の一般小説だけど、この作者は度々そういう描写を入れることでも有名で、ページを捲ると、紆余曲折あった男女が互いの想いを確かめ合うために体を重ねて……という官能小説に劣るともまさらない赤裸々な描写が始まった。
 な、生々しすぎるじゃない。
 それにタイミング悪い──ってどうして悪いのよ。
 だって、
 だって──レイが、さっきから私の体を擽るように締め付けてくるから。いつの間にか足を絡ませ、ひしっと癒着するように身を寄せて、そのまま吸い込まれる!? って恐怖するくらいに。私の恐怖を読み取ったのか、レイは鼻で笑う。

「サクラ、ぷるぷる震えてるよ?」
「レイがひっついてくるから」
「最近一緒に寝る時はいつもじゃん。どうしたの、動揺して──」
「そう見える?」
「ふふ……そっか、うん……そうだよね。冬は、寒いからサクラも私が抱きついても赦してくれる。寒いもんね、仕方がない、仕方ないよ。ねぇ……サクラ、そういうことにしとこうねぇ。はぁ……暖かい……」

 私の返事を遮るようにレイは頬を擦り付ける。すりすりと肌が摩擦を帯びて擦れ合うだけなのに、私の皮膚がえぐれるような快感が迸る。どうしよう……と怖くなる。レイは、私を促すために──寒いから、と口にしたのかしら。普段はそれとなくレイの接触をセーブするけど、寒いから……そうよね、寒いし、だから──レイは触れると冷たいのに? だから、こうして抱き合っていても何もおかしくない。

 そのはず……。
 どうして「サクラ」心臓が「うるさい」壊れたみたいに脈動を続けるの。ドキンドキン! と私の中で心臓が暴れまわる。痛みを覚えるほど。レイは、うるさいと口にしながらも、それを聴くために敢えて顔を胸に押し寄せてくる。私の中にレイが埋もれるのがわかる。体の中にレイがめり込むようで……。ドクン、ドクン、ドクン……とレイが振動する。

「レイ、苦しいから」
「うわ、うわっ……めっちゃうるさい。ドクッ、ドクッ、ドクッ! って動いてるのわかる! サクラも生きてるんだね」「……はい」「しかしホントうるさいね」
「……あんたがくっついてきて、前に見たあのホラー映画思い出して怖くなったの」
「嘘だ」もちろん……。
「嘘じゃない。とにかく、苦しい」
「苦しくないよね? ふふ……ねぇ、私も一緒に読みたい」「何を?」「サクラが読んでるの。ね、ね……音読してよ。ほら、子どもに昔話を読み聞かせる感じでさ──」

 さっとレイはスマホの画面を見やる。
 私は咄嗟に画面を消灯させようとしたけど、レイに手首を強く掴まれた。骨を掴まれた感じで親指が動かせない。
 レイはそのまま強引に画面を眺める──。

「ふむふむ……【赤々とした血管を浮き上がらせたそれは、先程とは打って変わった凶悪な見た目であった。凶器を眼前に突きつけられるような鋭い恐怖を覚えた。勃起した──】勃起、ねぇ……勃起ってなぁに!?」
「……さぁ」「おち◯ちんが硬くなることだよ。真面目に保健体育受けてないの?」
「……はいはい知ってます」
「えぇ、じゃあなんで嘘ついたの~!?」
「あんたがダル絡みしてくるからよ」
「さっきまで私はエロ本なんて読んでないわ~って顔してたのに、まさか友達の前で堂々と読んでいたなんて──」
「たまたまよ」「たまたま? え、おちん◯んのこと?」「そっちの玉じゃない! 偶然! このページでやり始めたのよ!」
「しかもドキドキしながらそれ読んでるし……」
「それは……」
「怖い映画思い出して~なんてバレバレの嘘ついて……。あのねぇサクラちゃん、もう私たち半年以上殆ど毎日一緒です。サクラの思考なんてさ、全部お見通しだから」

 レイはそこまで言い切り、そっと手を離してくれる。
 掴まれた部分がじんじんと痛い。
 けど、私は。
 なんか……レイの言葉に促されるように「じゃあ、どうして私が胸を高鳴らせたのか、レイはわかるの?」
 と訊いていた。

☆★☆★


//続く
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