傷を舐め合うJK日常百合物語

八澤

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炬燵再び、冬休み残り2日

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 まるで猫のようにそっとレイが近づいてくる。レイの動きなんてお見通しだけど、私は気づいていないフリを続けた。
 微かな期待をじわっと漏れて、それが全身に行き届くような感覚。
 レイに抱きつかれて一瞬ヒヤリと胸が凍るけど、即座にレイからぬくい温度が流れ込んでくる。

 ──嗚呼、冬が一番好き……と実感する。

「もぉ、びっくりするじゃない」と軽く笑いながら言う。もちろん嘘だった。白々しい言い方、って笑っちゃうわ。
「ねぇ炬燵入ろうよ~」

 レイの甘ったるい声色にドキンッと私の中で快音が響く。小さな波紋が私の中で無数に広がり、全身から歓喜が滲み出る。
 声だけで、ううん──私に声をかける瞬間にぐいっと体重を預け、レイの温度や匂いを私に浴びせ、最後に私の指を握る。こうすればサクラはビクビク反応しちゃうよね、と小馬鹿にするレイの声が聴こえてきそうで腹が立つ。けどまぁ事実なので仕方がない。

「一人で入ればいいじゃない」
「一緒がいい」
「ちょっと……レイ」

 ベッドの上でタブレットを眺めていた私に飛びついたレイは、強引に私を立たせると引きずるようにして炬燵へ誘う。私は抵抗するように体重をベッドに預けたけど、レイはそれを見越して逆に反動がつくように引っ張り上げられた。袖を掴まれ、私は仕方なくレイに炬燵まで導かれる──フリをする。

 炬燵の前に設置された座椅子に座ると、レイは迷うこと無く私の上に座った。
 腰から少し下がった位置、太ももの上辺りに腰を乗せ、そのまま私に倒れてくる。一瞬重みを感じる。ぞわっと何かが私の中で膨れ上がる。それは泡のように膨らんだ後にパチンと失せて、その衝撃でなんか笑わないように毎回苦労する。はぁ……とレイが私の胸の中で溜息をつく。気持ちよさそうに。

「……これさ」「ん?」「足先しか入ってないから、炬燵の意味ないんだけど」
「だって部屋暑いじゃん。炬燵に少し入るくらいがちょうどいい」
「まぁ、そうだけど──はぁ」

 呆れた溜息を──これもまた演技をして、レイに抱きつかれた衝撃を緩和するために深呼吸をする。その瞬間を狙っていたかのように、ぎゅうっと手を掴まれる。掴まれるだけは癪なので指先を絡めた。温かい……。そうなの、レイは実は温かいのよ。冷たいのは、触れた瞬間だけ──。こうして肌と肌を直接触れ合わせていると、じわっとレイの温度が私の肌に浸透する。すりすりと擦られた後、ずぶり──と内部に侵入してくるような感覚を覚えた。それが好きだった。

「でね、タオルケットをかけたら……完璧じゃん」

 レイは床に丸まっていたタオルケットをぱっと広げて自身にかけた。私に寄り添うレイを覆うように被さり、その僅かな重みが私とレイを更に密着させ、私たちの体が癒着するように合わさる。

 ──大晦日を通り過ぎ、お正月を堪能し、あと2日で学校が始まる。外は氷点下を下回り、雪が積もっている。お正月を乗り越えると途端に疲れて、外も寒いので私たちはお互いの家でダラダラしていた。イベントの終えた冬休みが通り過ぎるのを二人で傍観していた。

「この温度がちょうどいいんだよ! 部屋と炬燵とサクラのトリプル暖房はホント最高」
「重い……」
「私、筋肉あるし」「お餅食べすぎて太ったんじゃない?」「ううん、体重は維持してる」

 あっけらかんとレイは言う。焦った様子も無いので、きっと本当なのね……。驚愕してるとレイは握っていない方の指で私の腹筋をさすり始める。

「あれれ~、なんか普段よりもお餅度がパワーアップしてません?」
「少し……食べ過ぎたかも」
「自分を棚に上げて……。どうせお腹プニプニ仲間と思っていたんでしょう? 期待を裏切って悪いね」
「……うるさい。ってか仕方ないわよ、母の知り合いや友達がお餅たくさんくれるんだもの。全部焼くわけにもいかないから、きな粉や納豆とか、色々試してそれが全部美味しくて……」たくさん食べてしまったの……。
「お餅に……納豆!? えぇ、美味しいの?」
「元がお米なんだから合うに決まってるじゃない」
「あ、そっか。他には?」
「んー大根おろし、あと……バター餅も甘くて美味しいわ」
「なにそれ、醤油とバターをつけるの?」「お餅を使ったお菓子よ。一旦電子レンジで柔らかくしたお餅に砂糖とバターと卵を入れた後に片栗粉で再度お餅に戻す感じで作るの。甘くてふわっとした食感がやみつきになる……。って、ちょっと、涎こぼさないでよね」

 指摘するとレイは慌てて口元を拭う……。

「じゅるり……。危ない危ない。そのバター餅って想像しただけで美味しそう! 今度作ろう」「でもしばらくお餅は……」「じゃあサクラが作って、私が食べる」「絶対イヤ! 私も食べる」「食べると太るよ」「う……」「ほら、料理する人って、作った料理を食べた人の喜ぶ姿が何よりのご馳走って言うじゃん」「食べる側の人間の台詞じゃない」「私も手伝うよ~」「はいはい、今度作りましょう」

 私が折れると、レイはふふふっといつもの笑いをして、お腹を触りまくる。これも戒め──と受け入れながらまぁレイが喜んでくれるのなら作ろうかな……とちょっと甘えた思考に入ってしまう。

「お腹触ると気持ち良いけど、顔まで脂肪つけちゃ駄目だよ。サクラのシャープな顔つき崩れたらなんか私がショック受ける!」
「努力する」
「しろ。徹底的に!」

 レイは楽しげに私のお腹を撫で回した後、はぁと溜息をまたついて私に体重を預ける。
 レイの部屋で、レイが毎日使ってる炬燵や座椅子、タオルケットに包まれそしてレイに抱きつかれているのだから、レイの香りが凄い。濃厚だ。うぅ……幸せ。レイは私の身体を擦り付けるように定期的に身をよじる。まるでマーキングするみたいに……。猫や犬を飼ったことが無いからわからないけど、そんな気がする。スリスリ、ぐにぐにってレイの感触がヤバイ……。そっとレイを抱き締めながら、ふぅ……と息を吐く。じーんと全身に響き渡る心地よさを感じる。

「サクラ……」
「ん?」
「テレビ見たい」
「もう年明けて少し経つから番組も微妙よね」「ドラマとか再放送でやってない?」「あるけど……」

 私はタブレットを弄りながら、その番組を見つけてしまったことを後悔する。少しホラー要素の入ったミステリー作品だった。人気があるらしく、終了して数年経ってもこうして度々再放送されている。

「……もう終わったようね」
「嘘つくな。あ、ほら~やっぱまだ途中じゃん。素直に怖くて見たくありませんって言えばいいのに」

 レイに嘘は通用しない……。未だに納得できないけど、レイは私の思考を見抜く。私の胸の内を全て見透かされているようで恥ずかしい。けど、レイなら……いいかな、とか思っちゃう私が恐い。

「別に怖くはないわ。けど……」
「見ても夜眠れなくなったりしないよ~」
「そう?」「恐いってもオバケとかじゃなくて、雰囲気がおどろおどろしいというか……。それに、怖かったら私に抱きついてもいいんだぞ」
「既に抱きつくような格好になってるじゃない……」
「え、あ……確かに」

 タブレットを操作し、番組を選択して炬燵の上に乗せる。レイが背後に振り向かないと見えないので、炬燵に入る角度を変えて、顔を横に向ければ見れるような位置に調整した。私の足首から先だけしか炬燵に入ってないじゃない。炬燵に入るからこうしてレイが抱きついてくれる。だから、私はついつい炬燵のあるレイの家に向かう。そして、まるで呪縛のように私を炬燵に拘束する。

 レイは弛緩した身体で私に張り付いている。私は、レイの頭部に頬を寄せ、そっとレイの腰辺りに手を回した。いつの間にか繋いでいた指が離れている。レイを拘束すると、カチリ、と鍵がかかるような達成感があった。今、この瞬間だけはこの世界で私一人だけがレイを堪能できる、と嬉しくなる。もっと強くぎゅうっとレイを締め付けるように抱きしめたいけど、レイは苦しいだろうし、それに……もしも拒否されたら? と思うと怖くて力が入らない。

 レイの柔らかい四肢が私の身体に食い込むとぶるっと体が震えるような快感を覚える。
 小さな頭部が私の胸に埋もれていると愛らしさがドバっと頭の中で吹き出す。
 心地よくて……このまま爆発四散しそう──。

 タブレットで映像を眺めていると睡魔に襲われた。レイは重たいけど……心地よすぎる。
 ふわぁ……とあくびをすると、私の変化に気づいたのかレイがくるっと顔を私の胸の上で回転させて口を開く。

「サクラ?」
「もう終わった?」「まだ途中だよ。見てないの?」「ん、眠くて」「寝てもいいけど、私の頭に涎垂らさないでよ」「頑張る……はぁ……」

 いい匂い──。
 思わず口に出しそうになってはっと我に返る。
 
「……サクラが寝るなら私も寝ようかな」
「人の上で寝ないでよ」
「サクラの上は適温なんです。もうなんか……安心するんだ」「私も……」

 今度ははっきりと声に出てしまった。
 だって事実──。
 レイと抱き合い、レイを感じていると悦びを通り越して今では安心感を覚えるの。レイと離れて一人で居る時は不安を覚えるほど。
 僅かに、レイを拘束する腕に力を込めて、レイが私にもっとくっつくように促す。
 もう眠ったの? と思ったけど、……ドキンドキン──とレイの心音が痛いほど私に響いてくる。やはり聴こえていたのね。普段なら飄々と弄ってくるはずなのに、何故聴こえなかったフリをするのよ。なんか……私まで意識しちゃうじゃない。

 レイの頭部に頬を寄せながら呼吸をすると、肺の中にレイの匂いが充満する。意識すればするほど、今こうして抱き合っていることもなんかおかしい気がした。レイの私が温かいから──という言い訳を合図に、今日まで簡単に抱き合って過ごすようになっていた。
 安心する……もなんか今は言い訳。
 ドキン……と呼応するように心臓が強く跳ね上がった。
 それが私かレイのかわからない。
 互いの胸を重ね、私たちの血液が交差しているような状況なのでわからない。まぁ、多分私の心音なんだろうけど、でも……レイかもしれない、と期待する。ドキンドキン──と揺れる心音を聴きながら、いつの間にか眠っていた。まどろみの中で、レイが嬉しそうに微笑んでいる気がした。


//終
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