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第02話 ダンジョンモーラーへの一歩目
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「ふぅ」
三枝が席に戻ってきて軽く息を吐く。目が合った。俺はお疲れと言う意味をこめて軽く目礼する。三枝はやはり小さくニッと笑うのだった。
「続きまして学長挨拶──」
この後も式は何事もなく進み、終わって退室する頃には入り口にクラス分けが張りだされていた。
なんとなく俺は三枝と一緒にそれを見に行く。
「おっ、辰巳一緒じゃん」
「だな」
俺たちは二人とも1‐Aを見ていた。クラス分けの基準は全生徒が知っていることなので、俺たちも事前に自分のクラスは分かっていたのだ。
「何月生まれ?」
「五月だ。三枝は?」
クラス分けの基準は誕生月。十八歳にならないとダンジョンゲートに入れないため、クラス単位での進行度をなるべく一緒にしようと、誕生月三か月×四クラスというわけだ。
「俺は四月だねー。つーか、ぶっちゃけ今日。アッハッハ、あと、陽太でいいよ」
「マジか、それは誕生日おめでとう」
「さんきゅっ。さ、教室行こうぜ」
「ん」
校舎は四年前に出来たばかりということもあり近代的で汚れもほとんどない。専門学校と言っても経営母体は国と国際ダンジョン機関、通称IDOだ。全世界が最優先としている問題に対する育成機関というだけあって投じられている資金は莫大なものなのだろう。
「お、あったあった1‐A。おーっす」
陽太はまるで何年も通ってるかのような気軽さで扉を開け、中にいるクラスメイトに挨拶をする。
「…………」
ここで陽太に続いておーっすって言える性格ではないので、俺は無理せず無言で入る。
「ま、俺らくらいの年頃ってついつい初対面構えちゃうよなぁ。ま、一週間もすればみんな慣れるっしょ。んで、俺の席は、っと。あっちか、んじゃ辰巳、またな。よーっす。俺三枝陽太──」
陽太は自分の席を探して着席するや否や隣のヤツに挨拶をし始めた。なんというかマジでスゴイ。
「……どうも」
俺はと言えば、隣の人に一応軽く声を掛けるくらい。向こうも少し緊張しながらどうもと返すだけだ。きっと俺と彼がコミュ障なんじゃない。これが普通なんだ。そう心の中で言い訳している時点でコンプレックスを自覚しているのだろうが。
それからはチラホラと隣の席同士などで自己紹介が始まったのだが、
「うーし、お前ら黙って席につけ。三秒以内だ」
その言葉によってクラス内は無言となる。クラスメイトたちは言われた通り、すぐに席に座り、その者を見る。
「いいか、最初に言っておく」
ヒゲを生やしてはいるが、小ざっぱりとした大柄の男だ。スーツを着ていてもその体格の良さが分かる。年は三十~四十くらいだろうか。まず間違いなく担任だろう。その担任であろう教師はぐるりと俺たちを睨みながら見渡し、威圧的な低い声で喋りはじめた。
「学生気分は昨日で終わりだ。お前らは高校でもう一年ガキでいられたところ、飛び級で卒業して大人になったダンジョンモーラー見習いだ。まずは規律、規則に従え。精神を鍛えろ。お前らが飛び込んだこの世界は、比喩でもなんでもなく死と隣り合わせだ。今の言葉が理解できた者は手を挙げろ」
クラスメイトが教師の醸し出す空気に呑まれる中、その言葉で瞬時に手を挙げたのは半数程だろうか。中には周りを見て、そろそろと挙げる者もある。最終的には全員が手を挙げた。
「言いたいことはあるが……まぁ、無事全員に理解してもらえたようで嬉しい限りだ。さて、お前らも喜べ、明日、明後日は休みだから三日後だな。三日後からお前らを地獄へ招待してやる。二年間でダンジョンオーバーの際、死なずに市民を守れるようなモーラーに仕上げてやろう」
その教師は不敵に笑った。反面クラスメイトたちの胃からはキリキリという音が聞こえてきそうな空気だ。
「おっと、名前を言ってなかったな。石動勇人だ。C級モーラー、レベルは四千の後半。それと当校での教員の呼び方は先生ではなく、教官だ」
ホワイトボードに自分の名前を書きなぐる教官。意外と言っては失礼だが、綺麗な字体に驚いているのは俺だけじゃない筈。だがそれ以上に驚くこと、目の前の人物がC級モーラーということにクラスメイトたちは動揺していた。C級モーラーはかなりの上位。それにレベル四千後半ともなればぶっ飛んで強いということだ。
「ま、一年の間は難しいだろうが、二年になればほとんどダンジョン実習だ。中にはC級モーラーで卒業した者もいる。モーラーの歴史もウチの歴史も短い。お前らの中からC級、B級で卒業してくれる奴が出てくれることを期待しているぞ」
不思議と強い人の言葉というのは胸に響く。俺はその言葉に心を動かされた。この時点で俺はこの人を尊敬してしまったのだ。
こうして、俺は石動教官という指導者を得て、ダンジョンモーラーとして一歩目を踏み出した。
◇
「と、思ったんだけどなぁ。なんだこれ……」
<名前> 獅堂 辰巳
<Lv> 1
<ステータス>
HP:10
MP:10
STR:1
VIT:1
DEX:1
AGI:1
INT:1
MND:1
LUK:1
<装備>
右手:チュートリアルダガー
左手:チュートリアルハンドガン
頭:なし
上半身:チュートリアルロンT
下半身:チュートリアルジーンズ
靴:チュートリアルスニーカー
アクセサリー:なし
<ジョブスキル>
<アクティブスキル>
<パッシブスキル>
<特殊スキル> 【レベル転生★】【アイテムボックス(仮)】
<スキルポイント> 0
<称号> なし
それから三ヶ月、ダンジョンでスライムを倒すことによって得られるステータスボードにはそう書かれていた。
三枝が席に戻ってきて軽く息を吐く。目が合った。俺はお疲れと言う意味をこめて軽く目礼する。三枝はやはり小さくニッと笑うのだった。
「続きまして学長挨拶──」
この後も式は何事もなく進み、終わって退室する頃には入り口にクラス分けが張りだされていた。
なんとなく俺は三枝と一緒にそれを見に行く。
「おっ、辰巳一緒じゃん」
「だな」
俺たちは二人とも1‐Aを見ていた。クラス分けの基準は全生徒が知っていることなので、俺たちも事前に自分のクラスは分かっていたのだ。
「何月生まれ?」
「五月だ。三枝は?」
クラス分けの基準は誕生月。十八歳にならないとダンジョンゲートに入れないため、クラス単位での進行度をなるべく一緒にしようと、誕生月三か月×四クラスというわけだ。
「俺は四月だねー。つーか、ぶっちゃけ今日。アッハッハ、あと、陽太でいいよ」
「マジか、それは誕生日おめでとう」
「さんきゅっ。さ、教室行こうぜ」
「ん」
校舎は四年前に出来たばかりということもあり近代的で汚れもほとんどない。専門学校と言っても経営母体は国と国際ダンジョン機関、通称IDOだ。全世界が最優先としている問題に対する育成機関というだけあって投じられている資金は莫大なものなのだろう。
「お、あったあった1‐A。おーっす」
陽太はまるで何年も通ってるかのような気軽さで扉を開け、中にいるクラスメイトに挨拶をする。
「…………」
ここで陽太に続いておーっすって言える性格ではないので、俺は無理せず無言で入る。
「ま、俺らくらいの年頃ってついつい初対面構えちゃうよなぁ。ま、一週間もすればみんな慣れるっしょ。んで、俺の席は、っと。あっちか、んじゃ辰巳、またな。よーっす。俺三枝陽太──」
陽太は自分の席を探して着席するや否や隣のヤツに挨拶をし始めた。なんというかマジでスゴイ。
「……どうも」
俺はと言えば、隣の人に一応軽く声を掛けるくらい。向こうも少し緊張しながらどうもと返すだけだ。きっと俺と彼がコミュ障なんじゃない。これが普通なんだ。そう心の中で言い訳している時点でコンプレックスを自覚しているのだろうが。
それからはチラホラと隣の席同士などで自己紹介が始まったのだが、
「うーし、お前ら黙って席につけ。三秒以内だ」
その言葉によってクラス内は無言となる。クラスメイトたちは言われた通り、すぐに席に座り、その者を見る。
「いいか、最初に言っておく」
ヒゲを生やしてはいるが、小ざっぱりとした大柄の男だ。スーツを着ていてもその体格の良さが分かる。年は三十~四十くらいだろうか。まず間違いなく担任だろう。その担任であろう教師はぐるりと俺たちを睨みながら見渡し、威圧的な低い声で喋りはじめた。
「学生気分は昨日で終わりだ。お前らは高校でもう一年ガキでいられたところ、飛び級で卒業して大人になったダンジョンモーラー見習いだ。まずは規律、規則に従え。精神を鍛えろ。お前らが飛び込んだこの世界は、比喩でもなんでもなく死と隣り合わせだ。今の言葉が理解できた者は手を挙げろ」
クラスメイトが教師の醸し出す空気に呑まれる中、その言葉で瞬時に手を挙げたのは半数程だろうか。中には周りを見て、そろそろと挙げる者もある。最終的には全員が手を挙げた。
「言いたいことはあるが……まぁ、無事全員に理解してもらえたようで嬉しい限りだ。さて、お前らも喜べ、明日、明後日は休みだから三日後だな。三日後からお前らを地獄へ招待してやる。二年間でダンジョンオーバーの際、死なずに市民を守れるようなモーラーに仕上げてやろう」
その教師は不敵に笑った。反面クラスメイトたちの胃からはキリキリという音が聞こえてきそうな空気だ。
「おっと、名前を言ってなかったな。石動勇人だ。C級モーラー、レベルは四千の後半。それと当校での教員の呼び方は先生ではなく、教官だ」
ホワイトボードに自分の名前を書きなぐる教官。意外と言っては失礼だが、綺麗な字体に驚いているのは俺だけじゃない筈。だがそれ以上に驚くこと、目の前の人物がC級モーラーということにクラスメイトたちは動揺していた。C級モーラーはかなりの上位。それにレベル四千後半ともなればぶっ飛んで強いということだ。
「ま、一年の間は難しいだろうが、二年になればほとんどダンジョン実習だ。中にはC級モーラーで卒業した者もいる。モーラーの歴史もウチの歴史も短い。お前らの中からC級、B級で卒業してくれる奴が出てくれることを期待しているぞ」
不思議と強い人の言葉というのは胸に響く。俺はその言葉に心を動かされた。この時点で俺はこの人を尊敬してしまったのだ。
こうして、俺は石動教官という指導者を得て、ダンジョンモーラーとして一歩目を踏み出した。
◇
「と、思ったんだけどなぁ。なんだこれ……」
<名前> 獅堂 辰巳
<Lv> 1
<ステータス>
HP:10
MP:10
STR:1
VIT:1
DEX:1
AGI:1
INT:1
MND:1
LUK:1
<装備>
右手:チュートリアルダガー
左手:チュートリアルハンドガン
頭:なし
上半身:チュートリアルロンT
下半身:チュートリアルジーンズ
靴:チュートリアルスニーカー
アクセサリー:なし
<ジョブスキル>
<アクティブスキル>
<パッシブスキル>
<特殊スキル> 【レベル転生★】【アイテムボックス(仮)】
<スキルポイント> 0
<称号> なし
それから三ヶ月、ダンジョンでスライムを倒すことによって得られるステータスボードにはそう書かれていた。
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