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第15話 AIBO
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「あ、これなら経験値貰えるかも知れませんね」
【契約を交わされた者Lv1】の詳細を見て、少しホッとする。
「ですね。後で試してみましょう。それと獅堂さん、この【レベル転生★】というのは……?」
「あ、それはですね、実はレベル100にならないと──って、このスキルが見えるんですかっ!?」
「……えぇと、はい」
引かれた。というか、どうにも一ノ瀬さんと会ってから俺は俺らしくない、というか、調子が狂う。
「あー、一ノ瀬さん。ちょっと先に確認なんですけど、この契約者っていうのは解除はできるんですか?」
「? ……えぇと、恐らく無理か、と」
急に話題が変わり不思議そうな様子。そしていきなり契約解除について聞かれて気まずそうだ。しかし俺の意図はそこではない。
「なら、俺と一ノ瀬さんはこの先、相棒、バディ、パートナーという関係ですよね。正直に言ってこの喋り方かなりやりづらいんで、素でもいいですか?」
俺は限界とばかりにそう言う。一ノ瀬さんは元からパッチリしたおめめを、更にパチクリとさせ──。
「フフ。もちろんいいですよ。じゃあ私も」
微笑みながらそう返してくれた。
「あぁ、良かった。もちろん一ノ瀬さんも気楽にどうぞ」
これでようやく肩の力が抜けた。なんでこう敬語ってヤツは肩が凝るのだろうか。
「じゃあ、早速。えと、この【レベル転生★】は、今まで誰に見せても視認できず、口にすることも──あれ、できる。ま、いいや。えぇと、恐らく一ノ瀬さんだけに言えて、見えるのは、契約者スキルの効果だと思う」
「なるほど。うん、こっちが素の辰巳君なんですね」
急に下の名前で呼ばれて少しむず痒いがイヤな気はしない。
「はい。それで、このスキルはレベル100にならないと使えないから俺はレベル100を目指していたところです。この世田谷ダンジョンで装備品を揃えて、そのあとはE3ダンジョンをソロで目指してレベルキャップ解放が次の目標だった、けど、一ノ瀬さんとデュオを組むならE1ダンジョンを目指すことになるね」
「問題ありません。私の目的はその先にあるので」
その先?
「C級?」
首を横に振る。
「A級?」
これも違うようだ。
「世界ランカー?」
……これも違う?
「……えと、魔王?」
コクリ。頷いた。
「……なるほど。お互い強くならないと、ですね」
魔王。すべての元凶。平和に暮らしていた日本国民に『殺されるかも』という恐怖を持ち込んだ敵。もちろん、俺の最終目標も魔王なのだから目的は一緒というわけだ。
「じゃあ善は急げってわけで、とりあえず一ノ瀬さんの新しく得たスキルを確認したら、世田谷ダンジョン潜ってみませんか?」
「賛成です。あと辰巳君、敬語戻ってますよ?」
「……いや、そういう一ノ瀬さんこそ」
「私はこの言葉遣いが素です」
「……さいですか」
「はい、フフ」
こうして相棒として一歩近づいた俺たちはそれからスキルを二人で確認して、ゲートへと向かう。
◇
「やぁ、おかえりお二人さん。……ふむ、どうやら上手くやってけそうな感じだね。さっきはいきなり突っ走って二人だけの世界に行っちゃったから不安だったけど、安心したよ」
山下さんにそう言われ、俺たちは顔を見合わせて苦笑いする。
「すみません、なんというか恥ずかしいことした自覚はあるんで、できれば忘れて下さい」
俺はニヤニヤする山下さんになんとかお願いする。
「おや? 一ノ瀬さんは気にしていないみたいだけど?」
「え?」
そう言われて一ノ瀬さんを見ると、確かに堂々としているように見えた。
「その、突拍子もないことをした自覚はありますが、私はもしあの場面に戻ったら何度だって同じように辰巳君に契約して下さいと言いますから。それを恥ずべきことだとは思いません」
「……こりゃ、まいったね。辰巳君」
「……入場お願いします」
凛として言い切るその姿はめちゃめちゃカッコよくて、それを恥ずかしがってた自分が余計恥ずかしいし、山下さんは山下さんで呆気に取られながらも茶化してくるしで、もうダンジョンに逃げたかった。というか逃げた。
「はい、いってらっしゃい」
「「いってきます」」
こうして俺たちはデュオとして初めての攻略、世田谷E5ダンジョンへとやってきた。
ゲートを潜ると、いつもの支度部屋へと転送される。そこで待ちきれないとばかりに俺は一ノ瀬さんに、
「神剣を見たいっ」
「はいはい。辰巳君も男の子ですもんね」
そう頼み込んだ。契約した時に一ノ瀬さんのアイテムボックス内に現れたソレ。なぜそんな超レア装備を手に入れられたかは不明だが、貰えるものはありがたく貰っておけの精神だ。当然、まずはその神剣なるものを見せてもらいたい。俺も男の子だからだ。
「装備、神剣カーディナル」
「おぉー……」
荘厳(?)かつ神秘的(?)でいかにもな神剣が出てきた。その重厚さたるや、マッチョな男でも持つことは難しそうな大剣だ。一ノ瀬さんは両手で持ってるとは言え、涼しげな顔だ。
「めちゃめちゃカッコいい……。そして一ノ瀬さん似合ってる」
「ありがとうございます……。でも、どうなんでしょうか、女性として大剣が似合うというのは」
苦笑いされてしまった。確かに大剣が似合う女性というのは誉め言葉ではないだろう。
「あ、いえ、なんか絵になるというか、神話の世界というか、物語の……、あの、いえ、なんでもないです」
変にフォローしても傷口を広げるだけであった。そんな俺を見て一ノ瀬さんは微笑んでいる。絵画に出てきそうな綺麗な笑みだ。
「……ステータスは?」
こんな調子じゃいかんと思い、俺は努めて厳めしい顔で、低い声を出す。
「!? ……はい、装備の詳細に合った通り全ステータスが500増えて、かつ素のステータスの200%分が足されるので502増えてますね……」
流石神剣と言われるだけあって破格のステータスアップ効果だ。一ノ瀬さんが苦笑したのは、素のステータス分が1なせいで、200%の上昇量がたった2しかないこと。それ以外に理由はない。気持ちはわかる。俺のゴブリンダガーなんて乗算ボーナス1.02倍、つまり2%の上昇量だから切り捨てだ。俺の素のステータスなんて切り捨てなんだ。
「フ、暗黒面に落ちるとこだった」
「?」
「いえ、なんでもないです。でも全ステータスが500も上がったならボスまで一撃でしょうね。それにレベルアップすれば素のステータスも上がると思うし」
「……ですかね。頑張ります」
「あ、そう言えば装備してステータスが上がった感覚はどう?」
「そうですね……」
一ノ瀬さんは手をグーパーしたり、剣を振ったり、ステップを踏んだり。
「んー、ダンジョンに入る前と感覚が全然違って、自分の体なのに上手くコントロールできない感じですね」
「なるほど。じゃあ丁度良かった。このダンジョンは身体の動かし方にも慣れながら行こう。よし、俺も装備、っと」
俺はホブゴブリン装備一式に着替えた。
「さ、行こうか」
「…………」
俺は自分の装備が一ノ瀬さんの目にどう映っているかは極力気にしないよう努め、平静を装いながら、くるりと背を向け、転送門まで歩いた。だが、なんとなく一ノ瀬さんはついてきていない気がする。
「……よし、分かった。一ノ瀬さん、俺たちはバディだ。言いたいことは遠慮せずに言おう」
仕方なく一ノ瀬さんの方を振り返ると、彼女はジト目でこちらを見ていた。
「……パンツ見えてますよ」
「……すまん」
そういう仕様なんだよ。仕方ないでしょうが。薄汚れた茶色い革の腰ミノをグッと下に引っ張り、パンツを隠す。
「言いたいことはそれだけだな。さて、気を取り直して──」
「パンツ、まだ見えてますよ?」
「…………。はい、じゃあ一ノ瀬さんが先導して下さい。俺は後ろから銃でチクチクやります」
俺のお尻をジッと見つめる一ノ瀬さんの後ろに回りこみ、その背中をグイグイ押して、転送門に乗せる。さぁ地下一階だ。
【契約を交わされた者Lv1】の詳細を見て、少しホッとする。
「ですね。後で試してみましょう。それと獅堂さん、この【レベル転生★】というのは……?」
「あ、それはですね、実はレベル100にならないと──って、このスキルが見えるんですかっ!?」
「……えぇと、はい」
引かれた。というか、どうにも一ノ瀬さんと会ってから俺は俺らしくない、というか、調子が狂う。
「あー、一ノ瀬さん。ちょっと先に確認なんですけど、この契約者っていうのは解除はできるんですか?」
「? ……えぇと、恐らく無理か、と」
急に話題が変わり不思議そうな様子。そしていきなり契約解除について聞かれて気まずそうだ。しかし俺の意図はそこではない。
「なら、俺と一ノ瀬さんはこの先、相棒、バディ、パートナーという関係ですよね。正直に言ってこの喋り方かなりやりづらいんで、素でもいいですか?」
俺は限界とばかりにそう言う。一ノ瀬さんは元からパッチリしたおめめを、更にパチクリとさせ──。
「フフ。もちろんいいですよ。じゃあ私も」
微笑みながらそう返してくれた。
「あぁ、良かった。もちろん一ノ瀬さんも気楽にどうぞ」
これでようやく肩の力が抜けた。なんでこう敬語ってヤツは肩が凝るのだろうか。
「じゃあ、早速。えと、この【レベル転生★】は、今まで誰に見せても視認できず、口にすることも──あれ、できる。ま、いいや。えぇと、恐らく一ノ瀬さんだけに言えて、見えるのは、契約者スキルの効果だと思う」
「なるほど。うん、こっちが素の辰巳君なんですね」
急に下の名前で呼ばれて少しむず痒いがイヤな気はしない。
「はい。それで、このスキルはレベル100にならないと使えないから俺はレベル100を目指していたところです。この世田谷ダンジョンで装備品を揃えて、そのあとはE3ダンジョンをソロで目指してレベルキャップ解放が次の目標だった、けど、一ノ瀬さんとデュオを組むならE1ダンジョンを目指すことになるね」
「問題ありません。私の目的はその先にあるので」
その先?
「C級?」
首を横に振る。
「A級?」
これも違うようだ。
「世界ランカー?」
……これも違う?
「……えと、魔王?」
コクリ。頷いた。
「……なるほど。お互い強くならないと、ですね」
魔王。すべての元凶。平和に暮らしていた日本国民に『殺されるかも』という恐怖を持ち込んだ敵。もちろん、俺の最終目標も魔王なのだから目的は一緒というわけだ。
「じゃあ善は急げってわけで、とりあえず一ノ瀬さんの新しく得たスキルを確認したら、世田谷ダンジョン潜ってみませんか?」
「賛成です。あと辰巳君、敬語戻ってますよ?」
「……いや、そういう一ノ瀬さんこそ」
「私はこの言葉遣いが素です」
「……さいですか」
「はい、フフ」
こうして相棒として一歩近づいた俺たちはそれからスキルを二人で確認して、ゲートへと向かう。
◇
「やぁ、おかえりお二人さん。……ふむ、どうやら上手くやってけそうな感じだね。さっきはいきなり突っ走って二人だけの世界に行っちゃったから不安だったけど、安心したよ」
山下さんにそう言われ、俺たちは顔を見合わせて苦笑いする。
「すみません、なんというか恥ずかしいことした自覚はあるんで、できれば忘れて下さい」
俺はニヤニヤする山下さんになんとかお願いする。
「おや? 一ノ瀬さんは気にしていないみたいだけど?」
「え?」
そう言われて一ノ瀬さんを見ると、確かに堂々としているように見えた。
「その、突拍子もないことをした自覚はありますが、私はもしあの場面に戻ったら何度だって同じように辰巳君に契約して下さいと言いますから。それを恥ずべきことだとは思いません」
「……こりゃ、まいったね。辰巳君」
「……入場お願いします」
凛として言い切るその姿はめちゃめちゃカッコよくて、それを恥ずかしがってた自分が余計恥ずかしいし、山下さんは山下さんで呆気に取られながらも茶化してくるしで、もうダンジョンに逃げたかった。というか逃げた。
「はい、いってらっしゃい」
「「いってきます」」
こうして俺たちはデュオとして初めての攻略、世田谷E5ダンジョンへとやってきた。
ゲートを潜ると、いつもの支度部屋へと転送される。そこで待ちきれないとばかりに俺は一ノ瀬さんに、
「神剣を見たいっ」
「はいはい。辰巳君も男の子ですもんね」
そう頼み込んだ。契約した時に一ノ瀬さんのアイテムボックス内に現れたソレ。なぜそんな超レア装備を手に入れられたかは不明だが、貰えるものはありがたく貰っておけの精神だ。当然、まずはその神剣なるものを見せてもらいたい。俺も男の子だからだ。
「装備、神剣カーディナル」
「おぉー……」
荘厳(?)かつ神秘的(?)でいかにもな神剣が出てきた。その重厚さたるや、マッチョな男でも持つことは難しそうな大剣だ。一ノ瀬さんは両手で持ってるとは言え、涼しげな顔だ。
「めちゃめちゃカッコいい……。そして一ノ瀬さん似合ってる」
「ありがとうございます……。でも、どうなんでしょうか、女性として大剣が似合うというのは」
苦笑いされてしまった。確かに大剣が似合う女性というのは誉め言葉ではないだろう。
「あ、いえ、なんか絵になるというか、神話の世界というか、物語の……、あの、いえ、なんでもないです」
変にフォローしても傷口を広げるだけであった。そんな俺を見て一ノ瀬さんは微笑んでいる。絵画に出てきそうな綺麗な笑みだ。
「……ステータスは?」
こんな調子じゃいかんと思い、俺は努めて厳めしい顔で、低い声を出す。
「!? ……はい、装備の詳細に合った通り全ステータスが500増えて、かつ素のステータスの200%分が足されるので502増えてますね……」
流石神剣と言われるだけあって破格のステータスアップ効果だ。一ノ瀬さんが苦笑したのは、素のステータス分が1なせいで、200%の上昇量がたった2しかないこと。それ以外に理由はない。気持ちはわかる。俺のゴブリンダガーなんて乗算ボーナス1.02倍、つまり2%の上昇量だから切り捨てだ。俺の素のステータスなんて切り捨てなんだ。
「フ、暗黒面に落ちるとこだった」
「?」
「いえ、なんでもないです。でも全ステータスが500も上がったならボスまで一撃でしょうね。それにレベルアップすれば素のステータスも上がると思うし」
「……ですかね。頑張ります」
「あ、そう言えば装備してステータスが上がった感覚はどう?」
「そうですね……」
一ノ瀬さんは手をグーパーしたり、剣を振ったり、ステップを踏んだり。
「んー、ダンジョンに入る前と感覚が全然違って、自分の体なのに上手くコントロールできない感じですね」
「なるほど。じゃあ丁度良かった。このダンジョンは身体の動かし方にも慣れながら行こう。よし、俺も装備、っと」
俺はホブゴブリン装備一式に着替えた。
「さ、行こうか」
「…………」
俺は自分の装備が一ノ瀬さんの目にどう映っているかは極力気にしないよう努め、平静を装いながら、くるりと背を向け、転送門まで歩いた。だが、なんとなく一ノ瀬さんはついてきていない気がする。
「……よし、分かった。一ノ瀬さん、俺たちはバディだ。言いたいことは遠慮せずに言おう」
仕方なく一ノ瀬さんの方を振り返ると、彼女はジト目でこちらを見ていた。
「……パンツ見えてますよ」
「……すまん」
そういう仕様なんだよ。仕方ないでしょうが。薄汚れた茶色い革の腰ミノをグッと下に引っ張り、パンツを隠す。
「言いたいことはそれだけだな。さて、気を取り直して──」
「パンツ、まだ見えてますよ?」
「…………。はい、じゃあ一ノ瀬さんが先導して下さい。俺は後ろから銃でチクチクやります」
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